死に別れENDばかりのゲームに転生しました。 作:超高校級の切望
知性を持つアンデッド。異形化しながらも人の形をある程度保った存在。
さっきのカマキリモドキがなりかけていた存在。
『ルアアアア!』
「!!」
鞭のように振るわれる触手。【陣地】の壁を容易く壊す。【呪い】の
「う、え………?」
困惑するマナコ。あの子にとっては、一緒に【陣地】で行動していた少年だったのだろう。それが合流した知り合いを襲ったのだから混乱している。
(つまり、あのガキはマナコと会ってからは誰も殺してないんだろうな………)
生者を嫌悪するアンデッド。ただし、マナコは特別。例外なのだ………それが原作主人公がルート次第でアンデッド側につける所以でもあるが。
今回はそれがいい方向に転んだな。いかに特別とはいえ、殺されてる可能性があった。
「マナコ、下がってろ」
「…………」
良い子だ。幸い此方にしか意識を向けていない。
目茶苦茶睨んできて超怖い。どうしよう………。
逃げたいが【呪い】の詳細も解らぬアンデッドに背を向けるなんてそれこそ自殺行為だ。
『シャア!』
「づぅ!」
触手が掠っただけで生体装甲に亀裂が走る。だが、異形化したばかりで己の体を使いこなせていない!
「らあ!」
『ぐっ!』
浅い……!
結構本気で斬りつけたんだが………。仕方ない、追撃を!
「………は?」
引き金を引き非実体の銃弾を撃ち込む。この距離ならそれなりのダメージを与えられるはず……なのに、傷一つつかない。体の表面に疾走る妙な揺らぎ………薄いバリアか?
『お母さんは何処だ!?』
「ぐっ!?」
腹を蹴られ、体が浮かぶ。この力、下手したらカマキリモドキ以上の………
『返せえ!』
続いて振るわれる拳。咄嗟に左腕で塞ぐが、生体装甲が砕け内部の骨にまでミシミシと衝撃が伝わる。
「が! ぐぅ! だぁ!」
床を2回ほど跳ねて壁に激突する。何だ今の、防御系の【呪い】か?
最初の一撃は通じていた。二度目が、表面に触れることなく止まっていた。
『がああ!』
「ちぃ!」
再び迫ってくるアンデッドに銃弾を放つ。狙いは、足。
地面に接触する瞬間の足を撃ち………当たる。当たった?
倒れてきたアンデッドの顔面に向かい剣を斬り上げる。倒れる勢いも乗せてやったが………やはり浅い。
『ぎい!』
「!!」
首を狙った触手の刺突。ギリギリで致命傷は回避したが、首筋が僅かにえぐられる。お返しとばかりに首を蹴りつける。
ふらついたアンデッドの胸を蹴りつけながら後ろに飛び距離を取る。
「…………3回か」
最後の攻撃は当たらなかった。当たる前に見えない壁に防がれた。
「報復以外受け付けない【呪い】か…………」
最初に当てられた攻撃は1回。続いて3回………いや、2回と1回。
彼奴が攻撃を当てた数だけ此方も攻撃を当てられる。自身が害をなした後以外では攻撃をさせない【呪い】………。
「そんなに母親に会いたいか………てめぇを虐めてた相手だろうに………」
『違う! お母さんは、僕を叱っていただけだ! 僕が悪い子にならないように罰を与えてただけだ!』
悪い子に………罰。
それがこいつの【呪い】か………。
自身に罪がない限り他人からの罰(暴力)を否定する。今はわかりやすく攻撃を当てる、だが……何時
そうなれば間違いなく、生者のいかなる攻撃も正当性を失い此奴に傷つけられなくなる。
(【呪い】の容量を超えるだけの力で打ち砕くか、【呪い】を中和するかで突破できるだろうが………)
そんな事出来るならとっくにやってる。前者を行えるとしたらこの場なら美波葬儀官だけで、後者を行うには最低限
つまりどちらも俺には無理。
どう考えても初期装備であっていい相手じゃない。
『どうして皆お母さんを悪く言うんだ! おじいちゃんも、お前も、近所の皆も!!』
「…………お前、自分の祖父を殺したな?」
目立った抵抗の跡もなく死んでいたのはこいつの祖父か。恐らく、殺されたこいつの屍を抱き寄せそのままアンデッド化した孫に胸を貫かれた。
「じいちゃん殺して、何も感じなかったのか…………って、アンデッド相手にいっても意味はねえだろうけど」
『お母さんを悪く言うからだよ………』
「マザコンが!」
銃弾を放つ。当然、呪いで防がれる。再び迫ってくる攻撃を回避する。
重要なのは回数で、ダメージの総量ではない。多少のダメージでも頭を狙って良い。通じるかは別として………
「………お前の母親はな」
『──!!』
「すげえ嫌な女だったぞ」
『がああああ!!』
激昂し、襲いかかってくる。動きは速いが単調。良く観察すれば、避けられないことはない。
これを僅かに当てながら…………いや無理だ!
あたっちまった時を数える。
頬1、左脹ら脛1、脇腹左右に1ずつ……もう1回追加。計5回!
『はししるなああああ!!』『めいめくめいわくくく!!』
『!?』
「!!」
と、【陣地】の破壊に反応して異形共が現れる。当然、攻撃は通じず逆に触手で貫かれる。
『シャアアア!』『キィヤアアア!!』
断末魔を上げながらも襲いかかる異形。隙ができた………!
「あん?」
当たったのは、3回だけ。何がどうなって………いや、そうか。結局は
あのクソガキ、人を傷つけといてあたったと認識してやがらねえ。
「じゃあ、
『………?』
『ろろろかであばれるなあああ!!』『おおとおとなおとなしく!!』
廊下の柱を切り裂き天井を撃ち抜く。
すぐに崩れ、瓦礫がクソガキを圧し潰す。
『────!?』
あれは罰(暴力)とは認識できないらしい。幸いにも敵意は俺に向いている。瓦礫から這い出てくると同時に逃げ出す。
『まてえええ! お母さんを、返せえええ!!』
これ、もう殺したことを知られたら一切攻撃できなくなるな。
『廊下ろろ老化はあそびばじゃ蟻ません!』
と、【陣地】を破壊されたことで現れた新しい異形の腕を掴みクソガキに向かってぶん投げる。目隠しにはちょうどいい。
まともに相手できるか。こっちは向こうの攻撃をある程度受けないと攻撃できないのに、その攻撃すらまともに通じない。
「くそが、だから【呪い憑き】はいやなんだよ!」
どいつもこいつも当たり前のように自分の
モブは滅茶苦茶殺されまくる。この世界は本当に『死』に溢れている。
『シャアア!』
「ちっ!」
少しずつ己の体の動きに慣れてきたのか触手が先程より正確に狙ってくる。咄嗟に近くの病室に飛び込み………。
「うお!?」
何かで足を滑らせる。これは………死体? 装飾品からして『彼岸の園』の信者………。
「ひっ………!」
「は?」
病室の奥に少女が居た。ベッドの上でシーツにくるまった可愛らしい少女。逃げ遅れ? 違う、こいつ……!
「こな、こないでえええ!!」
壁や天井の一部が飛び出して襲いかかってくる。咄嗟に体を転がして回避する。その間に、少女の姿も変わっていく。
皮膚が醜くただれ、それを隠すように包帯が壁から伸びてくる。いや、あれは皮膚と言うか己を隠しているのか。
繭のようにくるまり包帯の隙間から此方を怯えきった目で睨む。
『ああ、あっち………あっち行って!!』
その言葉とともに再び壁や天井が襲い掛かってくる。
『逃がすもんか! 母さんは何処だ!?』
「あ………」
病室に飛び込んできたクソガキが吹き飛ばされる。どうやら今のを罰(暴力)とは認識できなかったようだ。まだまだ発想が人の子供だな。
『う、あああ!』
「!!」
が、状況は最悪。【呪い憑き】2体同時に相手しろだと? 平団員の俺に? ふざけてんのか、ゲームの難易度設定バグってんぞ!
「このクソガキ! 男ならいい加減に母親離れしろ!」
『!? お、男………男?』
ゾワリと空間に満ちた嫌な気配が広がる。
これ、不味い………!
『で──出てってえぇぇぇ!!』
『ぎっ!?』
「うお!!」
壁が、天井が、ベッドが………世界そのものが襲いかかってくる。これが【陣地】の
世界を塗り潰す【呪い】!
「変身」
『
その全てが、一瞬で消し飛んだ。
「…………は?」
光の雨に貫かれて………クソガキも呪いを発動した揺らぎが見えたのに拮抗すらなく貫かれた。
壁や天井も撃ち抜かれた箇所から亀裂が走り、
こんな事が出来るのは………。
『か、は……』
『だ、誰………?』
2体のアンデッドの傷は、治っていない。未練や妄執を塗りつぶされる程の攻撃ということだ。
「おかあさん!」
「マナコ……!」
と、その声に振り返れば黒いコートを着て白い生体装甲に身を包んだ誰か。あったことはない、でも知っている。
「…………白騎士」
白騎士、ヒカリ。
作中最強の一角が、マナコを抱えてやってきた。
「………お母さんだあ?」
「うん、おかあさんだよ…………?」
生体装甲で顔はわからないが、絶対に訝しんでいる。そりゃそうだろうな。だってこいつはマナコの本当の母親を知っている。その関係も特別だ。
だから、討つには多大な被害が必要な超死星とはいえ殺せる機会があっても見逃した。見逃してしまったから、マナコを………原作主人公を守る。
「? お前……この子と似てるな」
「…………へ?」
「根本的な部分では違うようだが………」
じっと顔を覗き込まれ、良くわからない言葉を言われた。似てる? 俺が、マナコと?
容姿、ではないだろう。そもそも俺今変身してるし………。
「だが何故お前のような奴が……………」
『ウアアアア!!』
『アアアア!!』
「五月蝿い……」
まだ動けるクソガキが頭を貫かれ、確実に絶命する。少女の方は攻撃を防ぐだけ………【陣地】を残すためだろう。
「お前、【陣地】の
「い、いや………たまたま」
「たまたま、ね………無意識に誘ったか、誘われたか。それもお前の……いや、お前達のあり方か」
どういう意味だ?
困惑しているとヒカリはマナコを俺に渡してくる。マナコはぎゅうっと抱きついてきた。
「せいぜい気を付けろ
「…………は?」
「じゃあ………泣かせるなとは言わないが、悲しませるなよ?」
そう言うとヒカリは片手を包帯の繭に向ける。一瞬部屋が光ったかと思えば、繭にはどでかい穴が空いていた。
次の瞬間空間にノイズが走る。【陣地】が崩れる!
ヒカリは………もう消えていた。自分の力のみで脱出したのだろう。多分【陣地】へも
あれが白騎士ヒカリ。
作中最強クラスのホムラと並ぶ……『最強』。
存在が察知されぬよう
「…………はぁ」
マナコが懐いているから殺されないとは思っていたが、同時に『母親』の位置にいるからやっぱり殺されるんじゃとも思っていた。少なくとも、親代わりとしては認めてくれたらしい。
「………おかあさん?」
「…………………」
俺相手に嘘をつく必要なんてないし、それを抜きにしたってマナコに関わることで嘘を混ぜるとも思えない。
つまりはまあ、本当なんだろうな。襲撃が早まったのは、俺もまた死を呼ぶ存在だからか? その結果、正継さんは死んだ……。
「どうしたの、おかあさん………?」
「ああ、いや………」
死を呼ぶ者に引き寄せられる死は周りの者だけではなく……寧ろ本人に集まるものだ。周りが死ぬのは本人に死が集まった結果に過ぎない。
つまり俺は、この子に関わろうと距離を置こうと同じだったわけだ………。
「…………最近全然遊べてなかったから、今度は一緒に遊ぼうな」
「!!」
ぱぁ、と嬉しそうな顔をするマナコ。
「うん、あそぼう! おかあさん!!」
ノイズは広がり、【陣地】は完全に砕けた。