死に別れENDばかりのゲームに転生しました。   作:超高校級の切望

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姉を名乗る者

 戻った場所は、取り込まれる前に居た場所とは別。抱きついていたマナコはここに居る。

 すぐに周囲の気配を探る。襲撃は……無い。『彼岸の園』の信者共は全員死んだか?

 

「マナコ! 佐々木葬儀官!」

「あ、おとうさん……!」

 

 と、美波葬儀官がやってくる。マナコの姿をみてホッと安堵し、続いて俺の姿を見てぎょっとする。変身解けても傷はそのままだからなあ。

 

「佐々木葬儀官、大丈夫ですか!?」

「結構大丈夫じゃないです。片腕も絶対罅入ってるし………」

「と、とにかく治療を……!」

「わかってますよ」

 

 と、治癒ナノマシンを取り出し体内に注入する。1日2本とかそこそこな出費になるな。

 

「………そのアンデッド達は、貴方が?」

「いえ………」

「えっとね、おじいちゃんがたすけてくれた!」

「お、おじいちゃん………?」

 

 確かにヒカリは見た目よりずっと年行ってるけど………。

 何も知らない美波葬儀官に突然おじいちゃんが助けてくれたと言っても混乱するだろう。

 

「片方は変質型………もう片方は変成型です」

 

 変質と変成……呪いの特徴。

 自身の『死に場所』や『死』のイメージを外界に及ぼすのが変質型。

 外界を恐れているものほど目覚めやすい【呪い】だ。

 今回のように空間の一部を飲み込み変質させるものから周囲の腐らぬはずのものを腐らせるなど、世界の法則(ルール)を【呪い】に使う。

 因みに【陣地】は殆ど閉じた世界を作るため呪いの密度が薄くなる。

 

 逆に変成型は自身を世界の法則(ルール)から逸脱させる。

 今回のクソガキのように虐待を受けていると目覚めやすい。自身の理想に『死の記憶』が混ざり歪んだ形で顕現する。既存法則による影響を受けにくく、独自のルールを押し付ける。【呪い】の密度が高い分外界への範囲が狭い代わりに影響が深い。

 

 炎の【呪い】で例えるなら街を燃やすのが変質型で建物を溶かし尽くすのが変成型とでも言おうか。どっちも最期にして最大の記憶である『死の記憶』が混ざり、実体化した思想概念にそれが混ざるということは『死』そのものが顕現するということ。それこそが【呪い】。

 

 この【呪い】の影響規模が宇宙クラスなのが超死星。文字通り宇宙の法則に守られ……守られ? 守ってんのか? 自分で書き換えてるわけだが………。

 

 まあ兎に角、その気になれば宇宙全体を己の法則(ルール)の影響下に出来る文字通りの神が超死星共。

 互いにぶつかり合えば基盤たる宇宙を跡形もなく消してしまうから睨み合い、存在しているだけで世界が歪みアンデッドの発生率が増えている。

 

 そして全能のくせに死者だからこの世界において『死』そのものであり既存の法則に不快感を覚えずにはいられない。

 

 アンデッドの宿命たる殺人衝動は既存法則の基準点たる人間が独自の思想法則や思想概念を持つアンデッドにとって不快で、その衝動から唯一開放される事が出来るのが超死星。

 

(まあ、つっても制作者曰く『つまり古い世界を滅ぼしたらってことなんですけどね』とのことらしいが………)

 

 つまり【呪い憑き】とは超死星の雛形。その亡骸は利用価値がある。詳細を後で報告しないとならない。

 どんな人生を歩んで来たかと、予想でも良いのだが纒める必要もある。鬱だ………。

 

「【陣地】の(あるじ)だけではなかったんですね………『彼岸の園』の信者でしょうか?」

「巻き込まれた子供でした」

「…………そう、ですか」

 

 その言葉に顔を歪める美波葬儀官。救えなかった、そう思っているのだろう。まあ、あのクソガキも時間をかければまともになったかもしれないが、あの時点では救いようがなかったけどな………。

 

「…………少し疲れました」

「え? あ、はい………」

「暫く休みたいので、その間マナコを見てます」

「それは………いいんですか? その………」

 

 チラリとマナコを見る美波葬儀官。俺がこの子を避けていたことに気付いていたのだろう。そりゃそうだ、結構あからさまだったからな。

 

「避ける理由がなくなったからな」

「それは………」

「それは何より! やっぱり家族は仲良くしなきゃ駄目よねえ!」

「「!?」」

 

 唐突に耳元で投げかけられた言葉に振り返りながら距離を取る俺と美波葬儀官。振り返った先には、美波葬儀官に良く似た、でも胸が一回り大きく目元がたれ優しそうな印象を与える女が居た。

 

「お、お姉ちゃん? もう、急にびっくりするじゃない!」

「さ、佐条葬儀官…………」

 

 そこに居たのは『WoD』三大核地雷女と呼び声高い佐条舞香。超絶シスコン女がニコニコ立っていた。

 

「驚かせちゃってごめんなさい美波ちゃん。それから弟君も、私のことはお姉ちゃんって呼んでいいのよお?」

「お、お姉ちゃん!?」

「いえいえ、恐れ多い…………」

 

 何で俺に興味もつの、やめてマジで。

 そもそもなぁにが弟君だよ………知ってるぞ、原作でも主人公を甥っ子くんだの姪っ子ちゃんだの弟君だの妹ちゃんだの家族同然の呼び方をしていたが………この女が()()()()()()()()()ってことは。

 

 だが、悟られるな。気付かないでくれ。

 恐怖とか敵意とか、持ってると思ったら殺される。『佐条』の敵となると認識されたら容赦なくぶっ殺しに来るんだろ。

 

「連れないなあ弟君。ああ、ところでその娘が美波ちゃんが拾って育ててる子? じゃあ姪っ子ちゃんだ」

「!!」

 

 それはほぼ反射に近い。

 咄嗟にマナコの前に立つ。あ、これ俺殺されるかも。

 本来ならまだ会うはずのない二人。ここで会う理由は、まさか俺が呼んだ『死』なのだろうか? なら自業自得だな、クソが……!

 

「うふふ。なぁに、取られるかと思ったの? そういえばお母さんって懐かれてるんだっけ? 大丈夫、可愛い娘を取ったりしないわよぉ」

 

 クスクスと笑う佐条葬儀官……。とりあえず、安心して…………良いのか? 良いんだよな?

 いや無理だ。安心なんて出来ない。だってこの女好感度どれだけ上げてても選択肢一つで0になって殺しにくるし、好感度が高いままでも監禁逆レ◯プしてくることもあるバッドエンド製造機。

 

 笑顔すら恐ろしい。

 こいつの好感度上げてハッピーエンド迎えるのが難しすぎて二次創作じゃ『奇麗な舞香』や『聖なるお姉ちゃん』など性格改変がされてるからな………。

 三大核地雷には共通してるけど。

 

「あの、お姉ちゃんはどうしてここに?」

「可愛い可愛い妹ちゃんが【陣地】に飲まれたって聞いたら心配するわ。私、お姉ちゃんだもの」

「お姉ちゃん……」

 

 抱きついてくる姉に複雑な表情を浮かべる美波葬儀官。そりゃ、言外に保護対象と言われてるわけだからな。

 別に弱いとは思ってない。ちゃんと強いと思ったうえで…………でも私の足元にも及ばないし、と本気で心配してるのだ。

 

「ほらほら、弟君と姪っ子ちゃんも………」

 

 大丈夫? そのまま鯖折りされない?

 

 

 

 可愛い可愛い妹を抱きしめ、弟君をよしよししてご満悦な舞香はご機嫌に鼻歌まで歌っている。

 ちょっとした後始末。

 『彼岸の園』が控えさせていた信者と中級不死者(ミドルアンデッド)を見つけ出して全員殺した。

 血の付いた日本刀を振るい落ちきらなかった血を自分の服で拭う。

 

「私、貴方達に感謝してるのよ? 何があったか知らないけど、弟君の目が前よりこの世界を諦めてて、だからこそ抗う光が強くなっていたの!」

 

 佐条家の特性は『家族愛』。より厳密には家を守ろうとするのが佐条の遺伝子に刻まれた本能。

 佐条舞香は、それを歪に、強く受け継いだ。

 彼女は『佐条』を守ろうとする。それは血であり、歴史であり、財産であり、家格である。

 そして、故に『佐条』にそぐわぬ者が『佐条』に混ざることを良しとしない。

 

 彼女には4歳下の弟がいた。だが、自分と比べあまりに不出来で、歴史の浅い異能者家系の者にも劣る()()を『佐条』の名を落とすとして『出涸らし』しか産めなかった母体もろとも処分した。

 そしてより血を濃くするために自ら()()()()()。父の血が悪いのか、自分には劣れど『佐条』の名に相応しい可愛い妹を手にした舞香はそれはもう可愛がった。

 

 だから『佐条』に取り入ろうとする者達を排除してきた。そこそこ地位があるやつはバレないようにしなくてはならなくて少し面倒だったが、まあなんとかなった。

 

 そんなある日の事だ、美波から特定の男性の名前が頻繁に出るようになったのは………。

 調べて見たら特に異能も持たず、才能も財産も無い何処に興味を持つのか解らない男。なので殴り殺そうとした。

 

 防がれた。

 厳密に言うと自分が直前で力を抜いたのだが………。

 

「あれってなんだったんだろう?」

 

 右頬を狙った拳は右腕の骨を圧し折る。そう、反応されたのだ。なのに()()()()()()()()()

 目で追ったわけでも殺気を感じた訳でもなく、自分が目の前に現れた瞬間防御態勢を取った。

 

 直前に速度を落とし力を抜かなければそのまま頭をザクロのように弾けさせていたが、それでも反応された事実には変わらない。

 

 吹き飛ばされ気絶した男を調べても異能の気配はない。つまり予知系の異能を持っていたわけではないのだ。

 ならどうやって? さっぱり解らない。解らないけど、それだけで興味はわかない。

 

「良い目をしてたのよねえ」

 

 自分を目にした瞬間、防御態勢に移りながらもその目には死への絶望が宿っていた。なのに、死んでたまるかと生への執着の光を宿していた。

 

 生への執着だけで生き残れるならこの世界はとっくに人間が取り戻している。何の意味もないものだ。

 だが、じゃあ自分相手に生を渇望出来るものはいただろうか?

 いいや、居なかった。

 どいつもこいつも死にたくないと喚きながらその目に宿すのはもう助からないという絶望。必ず生きてやると思う者など居なかった。

 

 だから、彼を少しだけ観察してみることにした。

 『死』に愛されてるのかと思うほどついてない。初任務で中位不死者(ミドルアンデッド)に遭遇したり、報告より数の多いアンデッドに追われたり、装具を狙う組織に狙われたり、機竜が起動したり………。まあ、中には自分がけしかけた存在もあるのだが……。

 

 普通の人間なら人生を2桁以上諦めるような状況の中でも彼は生きるために足掻き続け、そして生き延びてみせた。

 

 故に認めよう。彼は弱くとも、なにかある。

 この世界において生き残る力というのは重要だ。可愛い妹と結ばれ成した子にその生存力が受け継がれるのは、彼女としても喜ばしい。

 

「ああ、でもぉ…………美波ちゃんにあげるのも、勿体ないなぁ…………」

 

 彼を見てきた。何度も死にかける姿を、何度も足掻く姿も。

 その無様な姿にハラハラして、ハッとして、ホッとして………端的に言ってしまえばファンになった。と、本人は思っている。

 

「私が()()()と結ばれるのも、どっちにしろ『佐条』の利益にはなるのよねえ」

 

 本来の……ゲームの歴史においてはより優秀な血を『佐条』に残す種としてしか誰かとまぐわらない舞香は、()()()()()()()()()己と血と汗に塗れた彼が結ばれる世界を夢想する。

 

「うふふ。美波ちゃん、ちゃんと仲良くするのよ? じゃないと、お姉ちゃんが取っちゃうから」

 

 


 

 

佐条舞香(さじょうまいか)

パンチをして耐えたら「お前も家族だ」される超邪悪なファミパン使い(兄貴に邪悪と言ったら「邪悪じゃないファミパンがあるとでも?」と言われたから超邪悪で)。

本人曰くファン。

 

読心理解者面 四条世看 核地雷

ストーカー理解者面 ■■鏡華 地雷

家族兼理解面 佐条舞香 核地雷

 

 

 

 

親友理解者面 黒井透也

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