死に別れENDばかりのゲームに転生しました。 作:超高校級の切望
あっさり外出許可が降りた。前回狙われたばっかりなのに。
あの腹黒眼鏡、完全にこっちを餌にする気だな。
「おかあさ〜ん、こっちこっち!」
「ふっ、可愛い子だな……」
まあ今回は護衛の透也がいるのだが………。
透也の異能は【陣地】とも相性がよく、それでいて戦闘でも役立つ応用性の高い。
「マナコ、あまり離れるな」
「ん!」
と、手を差し出してくる。手を繫ごうという事だろう。今この場には死を呼ぶ者が2人………。
また襲撃でも起きたりしないだろうな?
『何人か捕らえましたけど、下っ端も下っ端ですねえ。知ってるのは支部の場所だけ………』
と、天音が連絡してくる。此方は休日で暇だから手伝ってくれるらしい。
『ていうかせんぱ〜い、14歳ぐらいの無知な女の子侍らせるなんて犯罪臭が凄いですよ〜?』
「そうか?」
『そうですよ〜。近くに女性でも居れば犯罪臭も薄まると思いますけどね〜。なんなら………』
「なら、美波葬儀官に早く帰ってきてもらわないとな」
「おとうさんがどーかしたの?」
「おとうさんが速く帰ってくるといいなって………なにか言ったか天音?」
『………別に』
明らかに不機嫌になっている。俺が何かを聞き逃したからだろう。でも聞き返しても文句言われるだけだろうな。
「天音……」
『なんですか?』
「ありがとな、折角の休みなのに」
『………………』
ブチッと通信機が切れた。ただ、機嫌は直ったようだ。そこそこの付き合いだから分かる。
「ねえねえかわいいのがいたら、かっていい? おとうさんにきょかとらなくていい?」
「まあ、美波葬儀官は金持ちだしお前がペット勝手に飼っても大丈夫だと思うが…………」
「………そこは美波葬儀官の金なのか」
そりゃ預かってるのは美波葬儀官だし。
あの人だって本家の方には金持ち用の古代生物………俺からしたら普通の動物飼ってるし許してくれるだろ。
「どんなこがいるかな………」
「まあ色々いるだろう。好きな子を選ぶと良い……」
死を呼ぶ俺達がまともに動物を飼えるかは知らないけどな。高い確率で死ぬだろう。
まあ原作でも死に別れのグッドエンドと死に別れのないハッピーエンドもあるから、確実とは言えない。ひょっとしたら死なないかもしれない。
「なるべく強そうな子を選ぶといいぞ」
と、その時だった。
「くそ、彼奴何処行った?」
赤いパーカーを着た青味がかった銀髪の少年がキョロキョロと何かを探している。
「……………え?」
何で彼奴がここに居るの?
あの少年………間違いなく赤騎士ホムラだ。
ヒカリと並ぶ作中最強クラスの存在。装具【
まあホムラも最終的には笑顔で炎に包まれながら死ぬルートが殆どなのだが………。
死に別れ以外のルートが存在しないくせに殺せる存在が限られてるから全部ほぼ自殺の自滅主義者。
序盤からちょくちょく出てきてこのインフレ世界に全然置いていかれず、どころか逆にインフレしてくる最強格。趣味は散歩…………ここで偶然出会うのも俺やマナコが死を呼ぶからか?
「マナコ、まだ時間があるからあっちに…………」
「おにいさんどうしたの?」
「おっと………」
この場から離れようとしたのにマナコがホムラに駆け寄っていく。
やだ、うちの子いい子。
でも今回は自重してほしかったよ…………。
「ん?」
と、ホムラが振り返る。
ヒカリの友達だし、滅多なことはしないと思うけど………。
「……ああ、友人からの預かりものがね」
ホムラの友人って、ヒカリ?
でもヒカリって結構真面目だからホムラになにか預けるだろうか?
「なくしたの?」
「なくしたというか、逃げたと言うか………今日は新作ペットの発表会だろ? 参考にでもと思ったんだけど」
ペットが参考? 画家か、ペットデザイナーだろうか? まあ、ホムラはヒカリと違って普通の人間の知り合いも沢山いるらしいから、此奴に何かを預けるしたらそっちか…………。
「わたしもさがしてあげる」
「うちの子いい子……えっと、それってどんな形してますか?」
ペットを参考にすると言うぐらいだから、カメラとか?
小型からレトロな形をしたものまで色々あるけど自立式とかもあるし。
「う〜ん、多分可愛い?」
何故多分。
「じゃあさがしてくる!」
「あ、マナコ!」
まだ細かい形とか何処で逃げたのか、そもそも結局何なのか聞いてないのにマナコが走り出した。いい子だけど、本当に自重してほしい。
「わたし、なにをさがせばいいの?」
「俺が聞きたい」
「もうおかあさん、ちゃんとひとのはなしはきかないと」
「……………」
「むにゅう!」
ちょっとだけいらっときたので頬をムニムニしてやった。
文句を行ってくるが話を聞かずに走り出したのはお前だ。
「人気のない場所に行くな」
「おこってる?」
「怒ってる」
「ごめんなさい………」
しょんぼり落ち込むマナコ。ちゃんと反省しているなら、もう怒るのはやめよう。
「それじゃあ人のいる場所にもど──」
「隼人!」
「っ!?」
と、唐突に透也が叫び俺もなにかの気配を感じ振り返る。だが、遅すぎた。気配の主は……そのまま俺の顔面に張り付いた。
「…………は?」
「ミィ!」
引っ剥がすと、それは動物だった。
うさぎみたいな長い耳とリスやハムスターのような三角の顔、ライオンのようなフサフサした鬣。大きさは、中型犬ぐらい。
奇麗な毛並みだ、月のような金色をしている。
遺伝子改造で作られたペットか?
「ミィ、ミミィ、ミキュ〜!」
ジタバタ暴れるので離すと足にスリスリ体を擦り付けたと思うと登ってきた。
人造ペットって、人懐っこいの多いけど、こいつは特に懐っこいな。目茶苦茶フサフサしている。
「素晴らしい毛並みだ」
「ミュフン!」
言葉を理解しているのか何処か得意げにフサフサの尻尾を擦り付けてくる。
「かわいい………おかあさん、このこにする!」
「取り敢えず会場に戻るぞ。この子を届けなきゃ」
「あ、その子なら貰ってもいいよ」
「「!?」」
と、何時のまにかその場に現れたホムラが笑いながらそう言った。
「……………」
自分に気配すら悟らせなかったホムラに警戒の視線を向ける透也。だが敵対されたわけではないから警戒するだけ。
まあ在野の実力者もいなくはないからな。
「探しものは見つかった、探してくれてありがとね」
と、自立式浮遊カメラをフリフリと振るホムラ。視線を謎の生物に向ける。
「そいつはルナビースト。知り合いに飼い主を見つけろと押し付けられたんだ。丁度いいから貰ってくれ」
「え、いや……でも…………」
「僕、そいつ育てるつもりないし………」
「ミ!」
こっちもお断りだ、というように叫ぶルナビースト………月の獣?
確かに月みたいな毛色だ。
「でも目茶苦茶怪しい………」
「言うねぇ………なら、精密検査すると良い。仕込んだウイルスとかもないよ」
これは、どっちだ?
ホムラがなにか仕掛けてくるのか、本当に知り合いから飼い主を見つけてくれと頼まれたのか。
別に珍しくはないんだよな、作ったは良いけど飼うのは面倒って人造ペット。
夏休みの自由研究でも作れちまうし………倫理観? 20世紀もズレてたら変わるさ。
「おかあさん………」
「……………ちゃんと検査してからな」
「うん!」
「いいのか、隼人………」
「いいさ………」
そもそもホムラが回りくどい手を使う必要があるのは超死星ぐらいだし、何かの作戦ってこともないだろ。てかなにかの作戦だとしたら、ホムラと敵対した時点で終わりだし。
「約束通り渡してきた………で、これ持ってくる必要あったの?」
と、自立式浮遊カメラをヒカリに投げて返すホムラ。逃げられた際、探している姿を見かけられたらそれを探していたことにしろとヒカリに言われたのだ。
「一般人を誤魔化す分にはそれがちょうどいい」
「ふ〜ん………そうそう、彼奴こんな姿になってたよ」
と、紙に絵を描いて渡すホムラ。ヒカリは見ることもなくポケットにしまった。
「で、何なのあれ?」
「さてな……あの子とは間違いなく別物。だが、近いのは確かだ」
「あはは、面倒事を呼ぶ気配しかしねー。まあ、あの女があんなの渡してくるように言うんだからなにかあるんだろうね」
月を見上げながら酒を飲むホムラ。ふむ、と用意させられた月見団子を食う。
「単純にストーカーになっただけだったりしてな」
「それは………彼奴年下好きだからなあ」
2人だけの季節外れの月見を、夜空に浮かぶ月だけが見下ろしていた。