死に別れENDばかりのゲームに転生しました。 作:超高校級の切望
「みいくんとおふろ、おっふろ♪」
「ミッ、ミッ、ミキュ、ミ〜♪」
墓守に敵意を抱く組織も珍しくない。故に精密検査を受け、問題なしと判断されたルナビーストことミイは晴れて我が家の一員となった。
「あまねおねえちゃんもはやく〜」
「はいはい。あ、覗かないでくださいよ先輩?」
因みにマナコは幾ら精神年齢が幼くとも体は14なので風呂は知り合いの女性に任せている。今日は天音だ。
天音は背が小さいから子供から舐められることも多い。マナコはちゃんとお姉さん扱いしてくれるから好きなようだ。チョロいな。
「別に覗かん。俺の好みのタイプは、もっとこう………いや、なんでもない」
ジェスチャーで胸から腰のラインを描こうとして途中でやめる。天音が便所で潰れたゴキブリを見る目で睨んできたからだ。
まあお前もその手の界隈じゃ人気だったから元気出せよ。
「ふ〜んだ。私もお母さんみたいになりますからね」
ベッと舌を出す天音。でも原作開始時点でもなぁ………そして、さらなる成長があったとしても死んだし。
そもそも今更自分が成長すると思っているのだろうか?
「ミィ、ミィ〜♪」
風呂から上がったミイをタオルで拭きドライヤーで乾かしてやると早速体を擦り付けてくる。モフモフで気持ちいいがちょっと落ち着け。
「おかあさん、みいくん、なかよし……」
そこにマナコも抱き着いてくる。風呂上がりで体温が高い。少し熱い………。
「本当に貰ったばかりなんですか? 人懐っこい子ですねえ」
「ミィキャウ!」
「きゃ!?」
余談だが、天音の声優は見た目通りロリキャラを主に演じる声優だ。そしてコンプレックスから強がっているが実は気弱な面もあるという設定通り、驚くと可愛い声で悲鳴をあげる。
突然爪を立てたミイに困惑の表情を浮かべている。
「そいつ俺とマナコ以外に懐かないんだ」
風呂場ではマナコが洗っていたから気付かなかったのだろう。皆触ろうとして引っ掻かれそうになっていた。
何故俺達には懐くのか………俺やマナコが持つ『死』の匂いが好き、とか?
ホムラが持ってた動物だし、何があってもおかしくない。
「選り好みしてるんですかそのペット………それはそれで珍しいですね」
普通、番犬などに使うタイプはともかくペット用は人に懐くように調整されるものだがミイは全然懐かない。作ったやつが素人の可能性もあるが、あのホムラが持ってたんだ。絶対なにかあるよなこいつ?
「ミ」
うん、怪しい。でも可愛い。
お腹を撫でてやると気持ちよさそうに身を捩る。
「おとうさんもすきになってくれるかな?」
「お父さんはミイを好きになるだろうが、ミイがお父さんを好きになるかはわからないな」
「ミュィ?」
呼んだ? というように首を傾げるミイ。懐いてくれねえかなぁ、餌代は美波葬儀官持ちにしてほしい。
「ちゃんと美波葬儀官と仲良くしろよ?」
「ミイ〜?」
「じゃなきゃ捨てる」
「ミュ!?」
ガーンとショックを受けるミイ。仮とはいえ疑似家族の大黒柱である美波葬儀官に懐かないなら仕方ない。
「ていうか先輩、何でそんなに簡単に家族関係受け入れたんですか………」
「美波葬儀官もそうだったように………相手は子供だからな」
おかあさんじゃない、おとうさんじゃないなんて言ったら泣いちゃうだろ。
「いや、あの人の場合……って、そうじゃなくて! だって、お父さんとお母さんですよ? 夫婦ですよ!? 逆だけど!」
「確かになぁ………」
一先ず佐条葬儀官に殺されなかったのは安堵すべきことだが、とはいえ擬似的な夫婦というのも何時までもしていて良いものではないだろう。
「その………好きなんですか? 美波葬儀官………」
「人間として好ましくは思っているが、恋愛的な観点では…………」
というか俺が死を呼ぶ者である以上、浅はかな恋愛なんて出来ねえし。俺かその相手が死ぬからな………。
あくまで俺達に『死』が引き寄せられるわけだから俺より遥かに強い相手を選べば、その人は死なないかもな。
「…………………」
佐条葬儀官や四条女医達が手招きする姿が見えた気がしたが、あの2人と恋愛しようとすればぶっ殺される可能性のほうが高いし仮に成立してもあの地雷共相手じゃ死ぬより酷い目に合いそう。
画面の外から見る分にはうわぁ、で済むんだ。でも自分がいざその立場になったら絶対に逃げるね俺は。
そういや四条女医に関しては女相手でも問題ないんだよな。俺がマナコを守らねば………。
佐条葬儀官に関しても美波葬儀官の娘的な立ち位置のマナコに何をするか……あ、だからか。
原作じゃお父さんはもちろん、お母さんと呼ぶのもルートの一つの最後の方だし………あ、つまり死に別れ際ってことね。
まあ、兎に角娘として美波葬儀官が接しているから、原作より早めに来たのか。
「じゃあ先輩は、どんな人が好きなんですか?」
「…………俺より強くて、マナコが懐いてくれる相手かな」
「本気でおかあさんでも目指してるんですかぁ?」
と、何処か呆れたような天音。
ヒョイとマナコを抱え上げる。
「貴方は、良いね……私はあなたのお父さんにおいていかれるのに………」
血も繋がらない、まだ何が出来るかも解ってない。それなのに両親に優しくされるマナコが羨ましいのだろう。
「天音……」
「な、なんですか?」
「俺はお前を頼りにしている」
「は?」
突然何を、と困惑する天音。
「美波葬儀官も………だから副官のお前に留守中の隊を任せたんだろ」
「そうだといいですけどね…………」
「そうだよ。少なくとも俺は………」
と、頭を撫でてやる。
確か撫でられた記憶がないんだったか。
「普段は強気のくせにこういう時は落ち込むな………お前はもう少し自信を持て。俺よりもずっと強いお前がそんなんだと、俺は堂々と外を歩けねえよ」
「じゃあ私と美波葬儀官、戦場で背中を預けるならどっちですか?」
「美波葬儀官」
「この野郎………!」
天音がキレた。そりゃそうだ。
気を使って嘘をついてやればよかったのか?
「でも俺死にたくないし、嘘を付きたくない」
後で天音に嘘とバレると目茶苦茶傷つくだろうし。
こいつ今まで兄や姉、弟に虐められて嘘もつかれてきたからな。
「ミィミィ………!」
「みいくんが、おかあさんはしなないって」
「ミュッキュン!」
「ぼくがまもるって」
なんで分かるの?
子供って不思議だね。ていうか僕が守るって、こいつ俺が同種のメスとでも思ってんのか?
それともボクっ娘?
そういや性別どっちだろう? ああ、無性だったなこいつ。
「ていうか、死にたくないならなんで墓守になったんですか………」
「アンデッドに襲われた場合戦う力がないと困るから」
というか俺が死を呼ぶ者であった以上、マジで葬儀社に入っててよかった。
「それって葬儀社を信用してないって言ってるようなものですよ?」
「実際、アンデッドによる被害は出ている」
「それは…………」
被害は出ている。その被害者の中に自分がいない保証など何処にもない。というか俺の家族が死んだのも俺が原因だったりするのだろうか?
良く生きてたな俺。
「だいじょうぶ! わたしもね、はかもりになっておかあさんたちをまもるから!」
「そりゃ、心強いな……」
いや本当。原作主人公が戦ってくれるなら……戦う?
戦うのかぁ……。ルート次第では容赦なく主人公も死ぬんだよな。ていうかバトルでもミスれば死ぬ………。
戦いから遠ざけるべきでは…………でもなぁ、オーバーロードはともかくそいつが利用している超死星を止められるのは娘であるマナコだけ。
「…………ううむ」
「…………うれしく、ない?」
「その優しさは嬉しいけどなぁ………ちゃんと、強くなるだろうし」
「いいですねぇ先輩は、娘さんに才能があって」
「何いってんだ。お前だって特尉になるんだろ?」
「目指してますけど………なれるかは別でしょう?」
「なれるだろ、お前なら」
制作陣曰く遅咲きの才能。腐らず鍛えれば特尉になれた、と言っていたしな。そんな相手に才能が開花する前に腐るような環境に突っ込んだのも制作陣だが………。
「って、どうした?」
「何がですかぁ?」
「いや、なんで急に振り返って顔をそらす」
「…………ちょっと先輩の顔見たくないので」
褒めたじゃん俺。何でそんな事言われにゃならんのだ。
「…………ふりん」
「ミミィ……」
「何でだ………」
「おとうさんはいつかえってくるの?」
「ん〜………行くのは大変だけど、ポータルさえ設置出来りゃ帰るのはすぐだからなぁ。もうすぐじゃないか?」
「そっか………」
そして3日後、帰還した美波葬儀官の部下達により十三名が死亡、殿を務めた美波葬儀官の生死は不明との報告。救出活動が開始された。
「本当にくるんですか?」
急遽組まれた救出隊。佐条葬儀官もいる時点で成功したようなものだが、俺も救出隊に志願した。そんな俺に天音が問いかけてくる。まさか本当に通るとは。
いやもちろん行くつもりだったけど。
「死にたくないんじゃなかったんですか? それとも、美波葬儀官との夫婦生活がそんなに楽しかったんですか?」
「いや、別に?」
「……………私ちょっと美波葬儀官と仲良くなれそうです」
「? 良かったな」
「………」
目茶苦茶睨んでくる。
「まあ………死にたくはないけど、最近逃げ回ってもあまり変わらないって知らされたからな」
何処にいようと『死』が向かってくるなら、何処にいようと同じだ。なら、助けたい人を助けに向かった方がまだマシな死に方を選べる。
「………美波葬儀官だけじゃないと?」
「ああ、お前でも助けに行くぞ」
「──!!」
「後透也だろ、御影先輩に葉山先輩、富山に雅子に結と寿一郎に………」
「………………………」
ポータル。
分かりやすく言えばテレポート装置。壁外の人類の領域はそのポータルを中心に新たな街を発展させていく。
地図上では人類の領域となっているが、人が住んでるのは点と点。たまに円……。
少しずつ拡張し円にし、円を繋げようとしているがまだまだ先の長い話だ。
そして、遠征の際には目的地に一番近いポータルに転移する。
「じゃあ行ってくるマナコ。いい子で待ってろよ」
戦場跡地に物資運搬用に持っていったポータルは向こうからはエネルギー補給が出来ないが、こちらから繋げることは可能。
修理道具を持っていき、周囲を警戒しながら探索。美波葬儀官を発見次第帰還。あの人なら無事だとは思うが………。
「うん、おかあさん、がんばってね」
「……ああ」
『総員準備!』
と、ポータルが起動する。すぐに全員並び、巨大な金属の輪の中心の空間が歪む。
「突入」
天音の声に、ポータルへと飛び込んだ。
「あ!」
「ん?」
今一瞬、マナコが慌てる声が聞こえたような…………。
「…………おお、夕焼け」
前世ぶりに見た本物の夕焼け。ところどころ風化した摩天楼の森を赤く照らす。
日光が吸収される範囲から抜けたため、赤い空が姿を表したのだ。周りの何名かもその光景に思わず呆けている。
「作業開始。ほら、皆急がなきゃ駄目よお?」
と、佐条葬儀官の言葉にハッと我を取り戻し作業に移る。近くに美波葬儀官の姿はない。戦いの余波でポータルを完全に破壊されるのを嫌ったのだろう。
幾つかの部隊に別れ、アンデッドに警戒しながら探索する。俺は臨時部隊長の指示に従いながら進む。
「聞いたぞお前、美波葬儀官と家庭を築いてるんだってな……」
「ちょっと誤解があります。まあ、似たようなものですが」
「そうか………なら、心配だろうが無理をするな」
良い人だな。
自然を装い離れたほうが、この人達の生存率も上がるか? いや、この人達だって死を覚悟して………
「ん?」
メキッと音がして、床が抜ける。
「う、うおお!?」
「捕まれ!」
部隊の一員が手を伸ばすが、間に合わない。俺はそのまま落ちていった。
「っ! へ、変身!!」
【
ロードが居なくても、アンデッドは時に群れる。
それは知能の高い
そこに居た群は
『キヒ、ケヒャ………人間、人間だあ』
アンデッドは生者を忌避する。故に、生者を傷つけ殺すことを好む者が殆どだ。そこに住むアンデッドもまさにそれ。
ただし彼は弱く、他のアンデッドから隠れるようにその地下に住み着き他のアンデッドを率い、ごくごく稀に現れた人間を殺し、苦しめ、その死体を【呪い】で支配していた。
数十年ぶりの獲物の気配に、舌舐めずりする。
その醜い内面に相応しい猫と人を中途半端に混ぜ合わせたかのような異形の相貌を闇に溶け込ませようとして………月の光のような金色を見つけた。
「ミ」
グシャ
「くそ、逸れた………いや、ある意味良かったのか?」
少なくとも自分に集まる『死』には巻き込まれない。いや、大規模な死なら話は別だが。と、なにかの気配を感じる。
「ミィ!」
「………は? ミイ!?」
「ミュ〜!」
旧下水道から飛び出してきたのは、ミイだった。
確かにポータルがある部屋にいたし、あの時聞こえたマナコの声はミイが腕の中から逃げたからか。
「俺を心配してくれたのか?」
「ミュイ………! ケップ」
「拾い食いでもしたか? 全く………俺から離れるなよ?」
「ミキュゥ!」