死に別れENDばかりのゲームに転生しました。   作:超高校級の切望

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死する者と死した者

 腑廢の王、緋佐奈。

 『彼岸の園』とはまた別の、その昔アンデッドを崇めていた宗教団体において『彷徨う泥』の異名を持つ神として崇められていたという設定がある。

 腐敗は肥沃な大地を生み出すからと豊穣の女神とされていたらしい。最も、この女が腐らせた地は向こう数百年命が芽生えることはないらしいが………。

 

 人間時代、掃き溜めに捨てられた上級国民の私生児。美しい顔立ちに目をつけられ散々使()()()、嫌がらせで腐った飯ばかり与えられ最終的には客の妻に顔の半分を焼かれゴミ処理場に捨てられた。

 それもきちんと生ゴミ捨て場だ。

 強かなことにそんな環境でもイキている人間はいる。生ゴミを喰い漁り、病に冒されながら醜く生きていた者達にとって美しい緋佐奈は神にでも見えたのか崇めつつ………まあ、成人版では儀式と称して………。

 

 それでもなるべく腐っていないものを渡され、もとより病に侵されていた者達よりは長生きし、人が腐っていくのを見ていた。

 皮膚病で醜く爛れた者達に縋られ、己に感染することも恐れず手を握り、時に抱きしめ………最終的には死んだ。

 

 そしてアンデッドとして目を覚まし、国を腐らせた。しかもそれは、アンデッドの本能たる人類への忌避感ではない。

 嫌悪も忌避もなく人々が妬み、蔑み合う光景を消したくて纏めて腐らせた。

 

 だって彼女にとってはそれが基準だから。

 

 幸福を知らない彼女にとって一番幸せだった時は皮膚を腐らせながらも互いに支え合う人間が最後に行き着くゴミ捨て場。不幸なことに、あるいは幸いな事に芥溜の人間達は彼女の体を求める以外、街のグズ共よりよほど人間が出来ていた。

 

 アンデッドになり暫く人間を観察し、持っているものほど不幸に見えた。優しさを忘れてしまう人間が哀れに思った。だから全員同じにしてあげた。

 

 嫌悪を持たず、されども歪んだ『慈愛』はアンデッドの本能と混じり合い世界を染め上げた。

 全てが腐り落ちた腐泥の沼で動くは彼女が腐らせた者達。醜く爛れたアンデッドとなり、彼女に付き従う。

 

 数多の死者を付き従えた腐肉の女王。死者の王(アンデッドロード)緋佐奈はそうして生まれた。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 包帯女子は一般性癖とはバイト先の同僚の言葉だったか…………。

 そりゃまあ、俺も前世じゃお世話にはなった。だがそれは画面越しだからこそであり、近くに存在するだけで世界を歪め何もかも腐らせる。

 

 人の心すらも、だ。欲も願いも無ければ争わないと思っているから、此奴がその気になれば人は抗うのをやめ、生きるのすら億劫になる。

 だから腑廢の王の配下は下級不死者(ローアンデッド)しか居ない。【呪い】を生み出すだけの意思が存在しないから。

 

 ただしその身には腑廢の王の【呪い】が染み付き、他者に触れると腐らせ新たなアンデッドに変える。感染性の【呪い】………それこそゾンビ映画さながらの光景をよりおぞましくした光景を作り出す。

 

「うふふ。そう緊張なさらないで? 久し振りにお話したいだけなの」

 

 腐臭を漂わせながらも美しく微笑む緋佐奈。

 アンデッドロードでありながら現生人類を愛しているこの女は容姿も相まってかなり人気の高いキャラだ。

 ただし生前から狂った価値観を持っているので何が爆弾になるかわからない。こいつもこいつで、三大核地雷程ではないが十分地雷だ。

 

「緋佐奈………そう、緋佐奈。なんだかとても懐かしいわ………人に名前を呼んでいただけるなんて、何時以来かしら?」

 

 ニコニコ微笑み親しげだが、また指で触れられたら、その瞬間腐敗するかもしれない。

 

「あら逃げたいの?」

「!? ぶわ!!」

 

 地面が腐り、沼のようになって俺の身体を半分ほど飲み込む。俺が逃げないように、だろう。傷口が腐った地面に触れ鈍い痛みを放つ。

 

「それにしても不思議ね。貴方からはどうして『死』の気配がするのかしら?」

「…………………」

 

 死の気配………まあ、死を呼ぶ者だからそりゃするだろう。前世があるのと関係あるんだろうが………。

 

 そういや俺何でこっちに転生したんだ………?

 確か前世で最後の記憶は………?

 

「!? う、ぐぅ……!!」

 

 まただ………『死の予兆』で緋佐奈を見た時と同じ。脳味噌の血管に逆流する油でも流し込まれたかのような違和感。

 思わず頭を抑える。

 

〘兄ちゃん! 大丈夫か!? くそ、この腐れ女何しやがった!! でも無理だ! 早く逃げよう!〙

 

 逃げられたら逃げてんだよ。後、誰が兄ちゃんだ………。

 背を向けたら死ぬ。話し相手として生かされてるんだ。話す気がないと知られたら腐らされ此奴の配下の仲間入りだ。

 

「本当に、不思議ですね…………『死』(わたしたち)を理解しているのに、脳はただの生者の如く目を逸らし理解を拒む」

「……………?」

「う〜ん……………よし、一旦死にましょう!」

「!!」

「そうすれば、貴方の脳は適応し………あら?」

 

 恐らく善意で殺そうとしてきた緋佐奈は、俺が突き刺した鵺を見てキョトンと首を傾げる。

 

〘ぎゃああああ!! 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!〙

 

 うるせえ騒ぐな!

 すぐに引抜く。傷は…………治ってんな。一瞬だって傷を残すことが出来ていない。

 

「…………貴方、やっぱり独自の法則に守られてるのね?」

 

 追撃を食らわせようとして、首を掴まれる。ただ添えるかのような動作で、なのにびくともしない。

 

「ふふ。貴方、何処からいらしたの? いえ、いいえ、いいわ………ねえ、私と来て? 話し相手になってほしいの」

「すぐに何も話せなくなるぞ」

「あら、大丈夫です。だって、私今貴方の心を腐らせようとしたんですよ?」

「!? このクソババア………!!」

 

 グジュクジュと腐っていく首の痛みに意識が持っていかれそうになるも、その言葉に怒りがこみ上げる。手首を切り落とさんと鵺を振るうが手首を捕まれ止められる。

 

「貴方の魂………私達の影響を受けないのね? でも、貴方が自身のルールを持っているからでもない」

「…………?」

 

 精神に、影響を受けない? 俺が鵺を扱えるのは、それが理由か?

 

「私達が関わられない……? いいえ、違うわ。認識できないのね………ううん、もっと力があれば、干渉できるのかしら?」

「っ!!」

 

 『死』の気配が膨れ上がる。

 思わず吐き出す。頭の中をかき回されるように不快感、これが、無理矢理の干渉!?

 

「でも、それじゃあお話できないもの」

「か、は…………はぁ!」

 

 頭痛が消え、首に添えられた手を離される。浮泥の上にドチャリと顔が落ち、立ち上がれない。

 

「それに………貴方は()()()のほうがあってると思うの。貴方も、周りとのズレを感じているのでしょう? ここが自分の居場所じゃないって、そう思うでしょ?」

「─────!!」

「それは私達アンデッドなら誰でも持っているの。【呪い】が強いほど、敵意より孤独感に襲われる。だから、私達は世界を変えようとする…………貴方の世界を作ってはあげられないけど、貴方のそばには居てあげる。淋しい思いをさせないわ」

 

 腐臭のする身体に抱きしめられる。触れた箇所から腐っていく。それに気付き、慌てて離れる。本気なのだろう。

 この女は、本気で……俺が寂しがっていると思って、さみしくないよう連れて行こうとしている。

 

「ふざけるな…………勝手に俺を、お前が決めるな!!」

 

 鵺を銃形態に変化させる。最大出力で、傷一つつけられなくとも、俺がここにいる事を知らせるぐらいは出来るだろう。

 最大火力だ!!

 

〘ヒャッハー! 消し飛べ!!〙

 

 俺の手が焼けるほどの熱量。それを………緋佐奈は片手で掻き消す。

 

「ちっ! この………!?」

 

 と、追撃を放とうとした時、何かに足を掴まれる。

 

『まああああ!』『あぶぶ』『いいいいしょにいいい!!』

 

 腐肉と化した大怨霊だ。緋佐奈の【呪い】に染められ本来の【呪い】を失ったのか、融合ではなく直接食おうとしてくる。

 

『ひひ、ひかり…』『さむい』『いき、いきかか』『おにいちょあああん』『ゲラゲラ』『ねねねねこさん』

「あらあら………そう………そういうことね。駄目よ、貴方達」

 

 グジュリと完全に溶け崩れる。ただの腐泥と化し、二度と動くことはないだろう。

 

「貴方………目印なのね」

「めじ、る………?」

「この世とこの世ではない場所の、狭間にいる。だから、貴方を通してまたこの世に繋がれると思わせる………貴方が側にいるだけで、私達はこの世界と繋がっていられると錯覚できる。だから皆、貴方が大好きなのね」

「…なん、だそりゃ………生憎、アンデッドにゃ嫌われたことしか、ねえ………」

 

 マナコと同じく死を呼ぶ者だってのにな!

 マナコと違って【呪い】に耐性のある肉体でもなし………いや、精神面にはあったようだが。

 

「嫌ってないわ。接し方が解らないの、だって私達は死んでいるのだもの。そして、貴方は………不思議ね。死の気配はあるのに、死んでない。だから、死を理解できなくて苦しむの」

 

 

 

「だから、1回死にましょう?」

 

 

「大丈夫。貴方は間違いなくアンデッドになります……【呪い】を生むかは解らないけど、知性は間違いなく残るわ」

 

 手が伸びてくる。万物を腐らせる手……いや、手に触れずとも行える。この距離で、認識されてる時点で本来は詰んでいる。

 

「それに………『死』を引き寄せる貴方が側にいても、人間には迷惑よ?」

「────」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 優しい子………。

 死にたくないと抗っていたのに、他人の死を出された途端に固まってしまった。

 可愛い子。こんな世界、誰が傍にいようと人は何時か死ぬのに。

 

「大丈夫。ちょっと心臓を握りつぶすだけだから、数秒で楽になるわ」

 

 顔は、折角だからこのままで…………少し腐ってしまったが漏れ出た【呪い】に触れただけ。『死因』が自分のような存在になる傷が残るが、顔の方は消えるだろう。

 

「…………確かに」

「あら?」

「………俺が死を呼ぶ者である以上、皆危険な目に遭うだろうな」

「そうね………悲しいことだわ」

「勝手に悲しむなボケ。墓守は、死を覚悟してなるんだよ………『死』を恐れる奴がいても、死から逃げる奴はささっと辞める。それでも飛び込んだ奴の死に、俺の責任があるわけねぇだろ」

「……………嘘つき。言い訳が好きなのね……死にたくないから、力を手放せない自分を納得させたいのね。安心して、死んでしまえば、貴方はただの変わったアンデッド。死を呼ぶことは…………」

 

 と、そこで手を止める。気配を感じた。生き物の………人の気配。

 

「先輩から、離れろ!!」

 

 周囲に感じる、世界を書き換える力。異能の気配………ただしそれは、死者の王たる自身の周囲の空間に影響を与えることなく霧散し…………

 

「……あら?」

 

 目の前の青年が消えていた。新たに現れた少女がその腕に抱き、腐泥の上に浮いた瓦礫に降り立つ。

 

「先輩………足が………!」

「その子……返してくれません? 人といても、その子は幸せになれないわ」

「……………………」

 

 睨まれた。嫌われてしまったようだ、悲しい。

 

「ぶっ殺してやる…………変、身!」

SPACE(スペース)

 

 空のように蒼い姿。まだ距離があるのに、剣を振るう。

 

「…………あら?」

 

 剣の先が消えたかと思えば背後から斬られる。空間操作…………【空間支配の呪い】。だが……

 

「うふふ………その人が大事なのね? こんな弱い力で、私に挑むなんて」

「…………っ!」

 

 彼我の実力差が解っていながら、尚も向かってくる。それだけ彼を傷つけたことが許せないのだろう。

 

「解ったわ、相手してあげる………触れただけで溶けてしまわぬように、どうか気を付けて?」

 

 ズルリと、肩から新たな腕が2本はえる。

 包帯が、無事な皮膚が溶け崩れ一部から骨が飛び出す。

 死者の王が、その力を振るうべく顕現した。

 

 


 

 

腑廢の王

最初はアンデッド形態に蓮の花でもつけようかと思ったけど、この子生まれてこの方枯れた花しか見たことない貧乏人なのでやめた。

腐泥の塊。近づくだけで【呪い】すら腐らせる。

この形態のLv.は425。

皆のトラウマ製造機。

裏設定で彼女の父である上級国民は天上五家のとある家と関わりがあるとか……

 

 

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