死に別れENDばかりのゲームに転生しました。   作:超高校級の切望

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偽りの家族達
家族の繫がりは血じゃない


「……………」

 

 拝啓前世のお父様お母様、お元気ですか?

 不幸にも先立ち転生してから早24年。物心がついてからは20年。

 時の流れが同じかは分かりませんが、出産予定の弟は今や立派な大人になったことでしょう。

 私といえば人類が何時何の気まぐれで星ごと消し飛んでもおかしくない世界で健気に生きていると自負しております。

 血の繋がらぬ娘も出来ました。お二人なら私を何故か母と呼ぶあの子も深く考えず孫として受け入れるでしょう。そんな優しさを誇らしく…………ほこ、らしく……いや、普通に心配だな。

 

 さて、何故俺がこんな風に前世の両親について思いを募らせているかと言うと…………

 

『おおおおねえお姉ちゃんお人形遊びしよよう』『しし鹿しかたしたか仕方ないわねえ』『ぼくくもまぜまぜぜて』『ゆゆゆはんまでにはかたづけなさい』『あは、はは』

 

 『家族』のアンデッドに追われているからだ。

 

 家族とは一つの国。家とは世界。

 その思想を死後も持ち続けた結果生まれるアンデッドの種類の一つ。レギオンに近い………。

 ただしレギオンより融合個体数が少なくとも強力だし、【呪い憑き】の中級以上の可能性も高い。

 

『あはは………逃さないよ』

 

 ただし今回の『家族』はたった一人の【呪い】に染め上げられた『疑似家族』。家族のぬくもりを忘れられず、しかして家族の顔も思い出せず()()()()()のを取り敢えず殺して『家族』にするアンデッド。

 

『お父さん壊れちゃった、次は貴方がお父さんになって!!』

 

 背中から無数の手を生やす異形。

 その手が壁に埋まり、俺の目の前の壁から腕が映える。

 

「!?」

 

 ここは旧文明のマンションの一室。だが、同時にあのガキの【陣地】でもある。

 本来の部屋より広い。羨ましいね畜生!

 てかなんで俺だけ引きずり込まれた………いや、俺が『死を呼ぶ者』だからか………道中でも下級とはいえそれなりの数のアンデッドに見つかったし…………部隊の連中には悪いことをした。

 

『逃さない!!』

 

 背中の手が伸び床や壁に沈み、無数の手が迫る。おいこれ腕増えてね?

 

「鵺!」

〘おうよアニキ!〙

 

 出力37%、5秒!

 捕まれば父親にされるので鵺の形態をチェンソーのチェーンに変化させ、強化された腕力で振るう。

 迫ってきた腕が切り裂かれる。

 

 4

 

 驚愕したアンデッドにライフルに変化させた鵺を向ける。

 

 3

 

 放たれた凶弾から娘を守る母親役のアンデッド。顔の半分を失いながら突っ込んでくる。

 

 2

 

 母親役の頭を足場にしながらふみ砕きアンデッドに迫り………

 

『おかあさん!!』

「!!」

 

 一瞬だけ動きが止まる。『兄弟役』達が現れ、慌てて斧に変化させた鵺で力任せにぶった斬る。

 兄弟役を切り裂くも、大本のアンデッドの腕を切り落とすのみ………。

 

『っ!!』

「まっ……!?」

 

 家族ごっこで満足していたアンデッドは【陣地】を解除し窓から飛び出す。慌てて追おうとして、全身に激痛が走る。

 

〘アニキィ!?〙

 

 5秒過ぎた。限界を超えた【呪い】の使用に全身が悲鳴を上げる。『家長』には逃げられ、代わりに俺に誘われ下級不死者(ローアンデッド)が寄ってくる。

 

『アハ』『クスクス』『ギ、キキィ』『キャヒ、ハハ』

 

 緋佐奈の言葉を借りるなら、孤独感を癒やすための光として俺を求めてくる。が、生憎アンデッドの蔓延る場所に一人で来るほど自惚れちゃいない。

 

「佐々木葬儀官!」

「伏せろ!」

 

 新しい班の仲間達の声。激痛で蹲る体を床に倒す。

 装具を纏った墓守が飛び込んできて俺の周りに群がっていたアンデッド共を蹴り飛ばし、俺を挟んだ向かいを銃で蜂の巣に変えた。

 

「無事か佐々木葬儀官! ん? なぜ寝ている! 危ないぞ、拠点に戻り布団に入って寝るんだ!」

「どう見ても動けないんでしょうが………立てますか?」

「ちょっと無理…………」

 

 体質に合わぬ、世界を歪める【呪い】を使用すれば当然拒絶反応に襲われる。そのせいで動けない俺に駆け寄ってくる墓守の男女。

 五木哲也ことイッテツと、樹菜奈々ことナナナ………。

 どっちも原作じゃ影も形もないキャラだ。

 

 新しい班で、現状この二人と仲が良い。

 何かと気にかけてもらっている。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「おかあさん、手………」

「ん………」

 

 マナコと手を重ね、体内に残った【呪い】を調律する。体のダメージは残ったままだがこれで治療できる。

 

「これって、家族以外にも使えるんですか?」

「不思議だな佐々木葬儀官のご息女は!」

 

 声のうるさいイッテツにビクッと震えたマナコは美波葬儀官の背中に隠れる。

 

「怖がられた!」

「あんたは声が大きいのよ。ごめんなさい、馬鹿だけど悪いやつじゃないのよ?」

「そうだな、良い奴だ」

「照れる!」

 

 だから声が五月蝿い。

 【WOLF(ウルフ)】の装具を持つだけはある。

 これといった【呪い】を持たぬ代わりに異形化の力を強く表に出した装具の一つだ。

 

 【PLAIN(プレイン)】の装具をある程度使いこなせアンデッドの【呪い】に耐性が生まれてきたものに与えられる………まあ、これも量産型だな。少し質の良い。

 

 因みに俺は鵺から作った【BOOST(ブースト)】だ……。

 

〘戻しちまうのかよもったいねえ〙

「馬鹿を言うな。使い続けりゃ死ぬんだよこっちは………」

 

 精神が染まらぬまま肉体が此奴の【呪い】に染まったら、どうなる?

 それも解らぬうちに【呪い】を使いまくれるわけがない。

 

「ちなみに誰にでも使える、おすすめはしないがね」

 

 と、四条女医。

 彼女曰くマナコの行うそれは装具の【呪い】のみならず後天的異能……アンデッドの力に触れつづけ手にした生者の【呪い】にまで影響を与えるらしい。

 

 【呪い】で燃えた木を戻せぬように、【呪い】に馴染んだものは戻せないらしいが………俺の腕の場合は【呪い】が染み付いた結果なのでその【呪い】さえ消えれば取り敢えず腕は戻る。

 

 まあ、未だに一度触れたら暫くは触れてなくても声が聞こえる程度には馴染んだらしいが。

 

「む〜」

「ミミ! ミ!」

〘うおお!? や、やめろぉ!〙

 

 鵺をハンマーでガンガン叩くマナコにペチペチ叩くミイ。

 

 ミイはともかくマナコは鵺を消してしまうかもしれないので回収する。俺が持ち上げた手から奪い取ろうとピョンピョン跳ねる。

 

「悪いがこれは母さんに必要なんだ。あまりいじめるな」

「ミ〜」

「むぅぅ………」

〘ヒャハハハ! 俺とアニキは一心同体だバーカバーカ!〙

 

 子供かこいつは………。

 

「しかし佐々木葬儀官。君が無事だったのは喜ばしい! だが、中級不死者(ミドルアンデッド)に逃げられたのはいただけない!」

「もう、今は労ったら? 一応、あの辺りのアンデッドは討伐か、追い払えたんだし………一先ず拠点には出来たでしょう?」

 

 直ぐに新しい壁で覆った。そのうち最低限の生活も出来るようになるだろう。壁際だから何時アンデッドに襲われるのかもわからない、何時捨てても良い環境だけどな……。

 

 今は残党処理。迷い込んだアンデッドを発見し次第討伐している。

 元住居区画だから、戦場跡地のように兵器はないだろうが資源はある。

 

「逃げたアンデッドも『家族』なら……」

「いや、あれは『疑似家族』………数が減ってからのほうが、ヤバい」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 『家族』と呼ばれるアンデッドは、その名の通り生前家族だったアンデッドの群だ。一家心中、事故、病、強盗………何らかの原因で家族揃って死に、その家族が強い絆で結ばれているも生まれるレギオンの亜種のようなもの。

 互いが互いを支え合い、物理的に繋がらず【呪い】の部分で繋がり場合によっては同時に倒さないといけなかったりする。

 

 初見殺しが過ぎるあのゲームでは倒したと思った瞬間他のが復活するは『家族』が現れるはでもう全滅。

 成人版では兄、姉の嫁、婿として弄ばれる主人公が………。

 

 まあ、『家族の絆』とやらを超えるだけの【呪い】でなら同時じゃなくても一体一体倒せるし、一体減る毎に弱体化する。

 

 じゃあ装具の適性上げて【呪い】強くして一体一体倒せば良いじゃんと調子に乗ると、『疑似家族』にやられる。

 

 『疑似家族』は本体以外は【呪い】で動く死体………鵺が操ってた赤鬼みたいなものだ。『家族』の一員が増える度に力が薄まり、倒されると力が戻る。

 あのガキは、その辺りを理解していなかったみたいだが今頃自分の力が家族が居る時より強いことに気付いているかもな………。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 腕の傷が治らない。何時もなら、直ぐに治るのに………!

 

 幼い頃アンデッドとなり、家族ごっこのみをしてきた少女は知らない。より強い【呪い】を受けるとアンデッドの不死性が揺らぐことを。

 

 お父さんも、お母さんも、妹もお姉ちゃんもお兄ちゃんも新しく見つけなきゃ!

 

「き、君……大丈夫?」

 

 と、人の姿をしたアンデッドをアンデッドと見抜けず声をかける男。少女の見た目より、少し年上。

 

「……………」

「ここは危険だから……」

 

 壁際の町………何時アンデッドが襲ってきてもおかしくない、半ば見捨てられた町。保身に走る古狸共のせいで、たまにアンデッドが現れるのだ。今回のように………

 

「あは、優しいね…………ね、私のお兄ちゃんになって」

「え?」

 

 

 

 

 

 思ったより力が入ったのか、壊しすぎてしまった()()()()()の形を整える。今度は強いお兄ちゃんがいいという無意識な【呪い】が、死体に注ぎ込まれる。

 

 まずは兄を取り返した。次は、親だ。

 私達の面倒を見てくれる親。守ってくれる、強い親。

 

 そして、親とは家が世界の子供を外の世界と繋げてくれる存在。

 

「はは、あはは…………見つけた。見つけた! 私のお父さん、あの人だ………あの人だったんだ!」

 

 今度こそ、本当のお父さんだ。必ず手に入れる………そんな欲望が彼女の【呪い】を強くする。いな、それは彼女が本来持つ【呪い(ちから)】………。

 

 不完全な鵺の【呪い】を押しのけ、腕が再生する。

 

「待っててねぇ…………お父さん…………」

 

 また家族揃って過ごす光景を夢見て笑う少女を、窓ガラスが静かに映す。

 

「ふぅ、ん? あはは、あの人本当に懐かれるんだから……」

 

 クスクスと嘲るように笑う鏡華は、どうしてくれようかと目を細める。彼女は頼まれれば手助けするし、本当に危険になったら頼まれなくても助けるつもりだ。

 

 前回は鏡のない場所で危険な目にあったらしくそちらで助けることは出来なかったが………。

 

 彼の力になりたい。助けたい。でも同時に、彼が世界を捨てるほど苦しんで欲しい自分もいる。

 だから迷う………。

 

「………あれは隼人の家族になりたいのよね? でも、隼人には家族がいる」

 

 形だけだが………。

 隼人自身は子供に甘いだけ。とはいえ、その甘さに甘える子供も擦り寄るメスも気に入らない。

 

「子供は子供同士で喧嘩してみるべきよね?」

 

 これがバレたら、嫌われてしまうだろう。それもいいが、頼ってくれなくなるのも悲しいな。

 だからバレないように、ちょっとだけ誘導してみよう。

 

「うふふ、楽しみ………」

 

 鏡の世界に一人住む少女は、自分にとって唯一人の同族の人間を思い微笑むのだった。

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