死に別れENDばかりのゲームに転生しました。   作:超高校級の切望

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着信音

「うえぇ〜………」

 

 『死』の認識で脳が悲鳴を上げる。気持ち悪い………。

 

「うっぷ、ちょっと休ませてくれ………」

「樹菜さん、大丈夫なんすかそいつ?」

「それはどちらの意味かしら?」

 

 と、ナナナは二日酔いのような隼人を胡散臭そうに見る隊員を睨む。

 組んで数週間、気も合い話も合い、アンデッドの捜索も助けられた彼女としては不当な評価は当然受け入れない。

 

「何度も説明したように佐々木葬儀官には実績がある! 何より後天的異能として認められている!」

「まあ………確かに何年も平隊員やってた俺がいきなり中級装具持たされて佐条大隊の一員になるのは認め難いだろうよ」

 

 しかも隼人は美波葬儀官と一緒に子育てしているという噂が流れている。噂というか事実なのだが、とにかく人気がある美波とそんな関係となれば嫉妬もされる。

 

 イッテツは新しい仲間だ! と深く考えない。

 ナナナは別に美波のファンというわけではない。

 美波は自分の信者が集まりすぎるのを見て、ナナナや天音のような自分に盲目ではない隊員をスカウトするのだ。

 

「お、俺達は別に嫉妬で………」

「うむそうだ! 嫉妬で足を引っ張るような者はこの隊にはいない!!」

 

 イッテツのそうだろう!? という真っ直ぐな視線に隊員達は目を逸らす。

 

「とはいえ、深入りしすぎても危険だ。ルートは記録したし、後少ししたら戻ろう」

 

 ここまで深く潜っているのなら、逆に言えば向こうもそうそう地上に出てこないだろう。人の位置をなんとなく察せられるからと言って、地図もなく迷宮のような地下施設から抜け出るのは至難。

 

「ここ、匂いが濃い………別のアンデッドがいたな。追い出されたみたいだけど」

 

 匂いと言っても感覚的な話だが。色としても見えなくはない。やはり言葉にするのは難しい。

 実際に匂いや色に見えてるわけではないが、人間にある五感に無理に変換される感覚………。当然使い続けるたびに気分が悪くなっていく。

 

「匂い………」

 

 ナナナが鼻を鳴らすが、やはり良く解らない。

 

「やはり死臭のように臭いのか?」

「くさいともいい匂いとも言えねえ。実際に匂いを感じてる訳じゃねえし」

 

 ただただ不快。ならばくさいと言い表してもいい気がしてきた。

 

「ふぅ………」

 

 能力を解除し、五感がもとに戻る。

 まさにその瞬間だった。

 

「…………は?」

 

 天井から降ってきた何者か。染み付いていた死の気配に紛れ隠れていたアンデッド!

 

『ギヒッ』

 

 人のよりも大きな獣の骨に腐肉がついた気色の悪いアンデッド。ナナナとイッテツが振り返り距離を取り、装具に手を添える。

 

 アンデッドがさせぬとばかりに飛び出してくるが、隼人が鵺を振るう。

 

『ギギャ! ギャ、ハハハハハ!!』

 

 ゲラゲラと笑うアンデッド。と、周囲から小さな影が飛び出してくる。腐った鼠だ。よくよく見れば、骨格も人と鼠を中途半端に繋ぎ合わせたかのような形をしている。

 

 腐肉のネズミが纏わり付き、巨大な鼠に形を変える。

 

「変身」「変、身!」「変身!」

BOOST(ブースト)

WOLF(ウルフ)

ORCA(オルカ)

 

 即座に変身。イッテツが顔面を殴り付け、首が吹っ飛ぶ。飛び散った肉片や骨の欠片が大小様々な鼠になって襲いかかってくる。

 

「ぬぅ!? 力はないが、鬱陶しい!!」

 

 狼のような異形化をしていたアンデッドから造られた装具【WOLF(ウルフ)】で変身したイッテツが鋭い爪で引き裂くも無数の鼠になって集まり大きな鼠になったり本体に戻ったり………。

 

「物理無効のアンデッド!」

 

 因みにこれは呪いではない。そういう体をした下級不死者(ローアンデッド)というだけだ。プラナリアみたいなもん。

 

 生前の形にまるで執着のないタイプ。恐らく生前鼠に食われた死体を幾つも見た上、生きたたま喰われて死んだのだろう。何なら鼠に食われた中に家族もいた可能性はある。

 

「仮称『窮鼠』とでもしておくか………鵺、燃焼兵器」

〘おうよぉ!〙

 

 鵺の形態が変化し、剣のような形を取る。赤く発光し、周囲に陽炎が浮かび上がる。

 

『ギッチ、チ!』

 

 と、危険察知能力が高く逃げ出す窮鼠。ナナナが額を向け、衝撃波を放つ。ギチリと身体が固まる窮鼠。

 隼人が即座に胸を突き刺す。

 

『ギャアアア!?』

 

 ブスブスと焼かれていく窮鼠。鵺から飛び出した鎖が絡みつき、そこからも燃えていく。

 

『ギ、キィ!!』

「っ! 此奴………!」

 

 麻痺が解け、再び無数の小型の鼠に姿を変える。そのまま四方に駆ける。

 

「逃がすか!!」

 

 イッテツが大きく身をのけぞらせ、吠える。

 遠吠えのような大音波。鼠達の動きが止まり…………

 

「…………おい、他の奴等は何処行った?」

 

 隼人が隠れ潜んでいる鼠を見逃さぬよう再び死の気配を感じ取ろうとして、別の気配に気付く。

 慌てて振り返ると、団員達が消えていた。

 

「!?」

「何時の間に………!」

 

 即座に3人で背中合わせになり周囲に警戒する。なんの気配も感じなかった。今は、吐き気がしそうなほどの『死』の気配。

 

「………!」

 

 ピリリリリと鳴り響く電子音。何時の間にか、隼人の手に握られていた携帯電話。

 ピッと音がなり、勝手に通話状態になる。

 

『こっこ………こんこー……こんにーち、はぁ…………』

 

 ザーザーとノイズ混じりの声。咄嗟に携帯電話を壁に叩きつけようとするも、手から離れない。重ねるように現れた手が隼人の手を掴んでいた。

 

『遊び、魔性………ルールは、簡単。生き残れば、願いを叶えます』

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 コツコツと暗闇に響く足音。

 ヒカリは落ちている携帯電話を拾う。そのまま操作し、履歴から電話をかける。

 

「………………………」

 

 着信音が響くも、でない。

 はぁ、とため息を吐くと通信を切り踏み砕く。

 

「厄介な奴に見つかったなあのガキ。逃げ足早いんだよな、彼奴………」

 

 頭をかきながら、より深く気配を探る。

 『彼女』はまだ隼人に気付いてないのか、それとも気付いていても興味がないのか動く様子は、今のところない。

 

 気付いていない場合、隼人が近くに飛ばされたら………。

 

「はぁ……」

 

 もう一度ため息を吐く。その背後から音もなく襲いかかるアンデッド。

 蜘蛛のような細長い手足を持ったアンデッドは口が腹まで割け肋が牙のように生えていたが、次の瞬間には体の9割以上が消し飛んだ。

 

「マナコのためだ。死んでいたら魂を消し飛ばしてやるからなあのガキ」

 

 そう言うと床を消滅させ穴を開け、下の階層へ移動した。

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