死に別れENDばかりのゲームに転生しました。   作:超高校級の切望

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地下の呪い憑き

 電話を媒介にした拡散型の『呪い』。これまた珍しくもない呪いだ。

 そういった呪いに目覚めるアンデッドが『ゲーム』を行うのも珍しくない。

 

「──!?」

 

 縄張り内への強制転移。

 巨大な貯水槽の天井付近に転移させられ、床が遠い。隼人は直ぐ様鵺を鉤爪付きの鎖に変え、柱の一つに突き刺し落下を止める。

 

〘なんだなんだ? 急に場所が変わったぞ!〙

「転移か……人間がどれだけ電力を使ってると思ってんだ。これだから常識の通じねえ呪いは」

『じょーしきの、つーじ………ねぇ』

「…………は?」

 

 と、天上に張り付いていた単眼のアンデッドが隼人の言葉を真似る。ニィ、と歪な笑みを浮かべ腕を振るう。

 

「!?」

 

 咄嗟に距離を取ったはずなのに、刻まれる生体装甲。『斬撃の呪い』……!

 ポピュラーな呪いの一つ。よくよく見ればこの中級不死者(ミドルアンデッド)、ゲーム中盤辺りからワラワラと出てくる雑魚敵だ。

 

 解りやすく異形。自己の認識の薄いアンデッドだと、似たような形を取るのだ。

 

『ヒッヒャヒャヒャヒャハアアアア!』

 

 鋭い爪の生えた腕を振るう。明らかな距離を保ちながら、再び切り傷が生まれる。

 斬撃が飛んだ……訳では無い。振り下ろされるのと切り傷が生まれたのは同時。強いて言うなら、斬撃が()()()。空間跳躍……斬撃のみの瞬間移動。

 

 防ごうと鵺を構えても意味がない。そもそも爪の延長線ですら無い。

 爪を振るう、その動作が行われれば必ず斬られる呪い。

 

『ヒャアアアア!!』

「…………!!」

 

 不可視の斬撃を、すんでで回避する隼人。避けきれぬ呪いが生体装甲を削るが、そこまで深くない。

 

『!?』

 

 その結果に動揺するアンデッド。

 確かに、呪いを纏う者に自身の呪いは効きにくい。だが、避けられるのは初めてだ。

 足りない知能を巡らせ、しかしどうでもいいから殺そうと結論づける呪いを持っただけの下級不死者(ローアンデッド)と変わらぬ知性。

 

『シャアアアア!!』

 

 乱雑に振るわれる爪。放たれる呪い………隼人は、それを()()

 『死の予兆』。『死』を予見する隼人の力が不可視の呪いの前兆を読み取り、回避する。

 

 斬撃を跳ばす呪いは、攻撃力は本体が出せる威力より上をいかない。其の上で、呪いであるが故に呪いと干渉しアンデッドや装具を纏った墓守には威力が落ちる。

 

 そして、発動条件は………

 

「鵺……!」

 

 タワーシールドに変え全身を隠す。斬撃は鵺とぶつかり金属音を立てるが、触れたただけで大概の存在を上級不死者(ハイアンデッド)……それもその枠組みでも上位の存在に変える呪いの塊たる鵺に傷一つつけられない。

 

〘痒いんだよ! どんな感覚かしらねえけど!〙

 

 鵺の声は基本的に隼人にしか聞こえないのだが、ゲラゲラと煽る。頭の中に響く声に顔を歪める隼人。やめて欲しい。

 

『ギィ、ギイイイ!!』

 

 苛立ったように吠えるアンデッド。隼人がアンデッドに向かい何かを投げ、動くものに反応し巨大な単眼を向ける。

 直後、発光。

 

『──!?』

 

 スタングレネードの光に網膜を焼かれるアンデッド。通常兵器の効果が薄いとは言え、五感に訴えかける兵器なら多少効果を望める。やみくもに振り回そうとした腕が斬られる。

 

 鉄すら切り裂く爪が宙を舞い、反対の腕を振るおうとして踏み付けられる。大口を開け鋭い牙をぼんやりと見える人影に突き刺そうとして、口内に銃身が突っ込まれた。

 

 ドドドドッ! と連続で打ち込まれる非実体弾。ボゴリと喉が膨れ、次の瞬間には弾け飛び体と首が分かれる。

 

 首が地面を転がり、そのまま踏み潰された。

 

〘なあアニキ。俺を鎧として纏えばよかったんじゃねえ?〙

「形を認識されたらその下を斬られるかもしれねえだろ」

〘なるほどな〜〙

 

 と、納得する鵺。考えもなしに宣うのは脳がないからだろう。

 

「………お前がいるとはいえ、中級不死者(ミドルアンデッド)ともやりあえたか」

 

 中級の中でも下級に近い個体だったが、それでも呪い憑き相手にやりあえた。

 

〘俺と兄貴ならあの程度何匹いようが楽勝だな!〙

「あ? あ〜……そうかもな…………」

『そー、かもな?』

「………………………」

『イ、ヒ……』『ヒャハハハ』『キキキリ、霧、麒麟斬り刻ム』『ハハ原をヒヒひらい手』

 

 と、現れる先程のアンデッドに似たアンデッド達。手が爪ではなく鎌だったり、目が3つや4つと細かい違いはあるが似たりよったり。

 

 ゲームではリッパーアンデッドと名付けられていた凡庸な呪いを持つアンデッドの群。呪いが似ているがゆえに群れることもある中級不死者(ミドルアンデッド)の群れとかいう、序盤ならDEAD END確定の接敵。

 

〘よっしゃ! 纏めてぶち殺して──〙

「逃げるぞ!」

〘え?〙

「俺が勝てるわけねえだろうが!!」

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「………その昔、アンデッドの分け方は大雑把だったんだ」

 

 上級と下級。分け方は、たったそれだけ。呪いの強さではなく、知性があるか無いかで分けられていた。何故なら、当時は殆どのアンデッドが呪い憑きだったからだ。

 

 知性の有無は関係ない。今でこそ中級という枠組みになる無知性の呪い憑きの数も多く、それらを下級としていた。

 人類は飽和攻撃で下級を倒すのがやっとだった。今でこそ枠組みを細かく区別できるようになったのは、反撃するだけの力を得たからだろう。

 

 そして、力だけでなくアンデッドは明らかに弱体化した。理由は月に眠る神………原初の超死星の誕生。

 宇宙規模で理を塗り替える神の出現により、自身の理を通すにはそこそこの力が必要になったのだ。

 

「それでも当時はアンデッドに対する忌避感は強く、後天的な異能………呪いに目覚めた人間に対する差別も大きかった。後天性異能なんて名付けられたのもそれが理由だな。昔は後天性異能持ちも上級不死者(ハイアンデッド)扱いされていたそうだ………お前もその時代に産まれていたら、恐れられていただろうにな」

「……………………!!」

 

 ヒカリが視線を向ける先にいたのは、呪い憑きの人間。裏で出回る違法の装具を使用し続け呪いに目覚めた男だ。

 

 新なる人類であるアンデッドを崇め、強力なアンデッドを探し潜り、突然かかった通信機に耳を当てた瞬間何処かに跳ばされ、たまたま出くわしてヒカリに襲い掛かるも手も足も出ずに地面を転がされる。

 

 というか、出る手足がない。

 

「私と同じ、斬撃の呪い……!」

「同じ呪い? ああ、今じゃこの程度も呪いだったな」

「何………?」

「斬って殺す、殴って殺す、燃やして殺す………割と当たり前の死のイメージは、呪い憑きなら誰でも本当は使えるんだよ………『斬撃の呪い』って枕詞をつけたいなら、この程度じゃ駄目だ………」

「何を、言っている………?」

「視線の先? 切り払う行動? なんでそんな理屈(ルール)をつける………呪いってのは、世界の法則(ルール)を超えた力。理不尽で、身勝手で、理屈の通じない力だ………」

 

 血の匂いに誘われ、アンデッド達が集まってくる。呪いを持つ中級不死者(ミドルアンデッド)。触れたものを脆くして砕く、或いは打撃の衝撃を強化する『撲殺の呪い』を持った腕が異様に発達した異形の群れ。

 

『つぶ粒つぶぷぶ潰れるろろろ!!!』

 

 振り下ろされる腕。

 ヒカリはそれを片手で受け止める。

 

『………?』

 

 衝撃が消えたかのように空気は揺らがず床も震えない。数メートルはある巨大なアンデッドの拳を叩きつけたのに、だ。

 呪いが変質させた理どころかこの世の本来の理すら歪められている。

 

『!?』

「嘗ての時代の、呪いの初歩を教えてやろう」

 

 

 

 

 

「まったく、たかが半世紀程度しか生きてねえガキの分際で、人を小僧呼ばわりしやがって………」

 

 ヒカリは自称二十代で通しているが、年下に侮られるのが嫌いだ。だいたい今の時代金さえかければ見た目10代の200歳ですら珍しくないというのに。

 いや、そこまで金をかけられる奴は珍しいが。

 

「………こういうふうにムキになるのが、ガキなんだろうな俺も」

 

 ヒカリの背後には、細かく切り刻まれたアンデッドと先ほどの男の死体。

 ヒカリの後天的異能ではない。嘗ての時代ならば、呪いを持つ者なら当たり前のように使っていた言ってしまえば通常攻撃。

 

 緋佐奈の様な古いアンデッドも使えるが、自前の呪いのほうが効率がいいからと使わない使い方。ヒカリだって、わざわざ使う必要はなかった。

 

 年下に嘗められ得意げに呪いについて語られたのが思いの外ムカついていたようだ。

 

『もう少し落ち着いてください、貴方は父親になるんですよ?』

 

「………………」

 

 ふと、昔言われた言葉を思い出す。自分の長い時間の中ではほんの最近とも言える数年前の出来事なのに昔と感じるのは、あの一時を失ってからの数年を長く感じていたからだろう。

 

「父親どころかおじいちゃんだがな…………はぁ、むしろ余計に落ち着きを持たねえとなあ」

 

 ヒカリはそう言うと頭をかいて歩きだす。独特な気配………生者でありながら『死』を纏う気配を目指す。

 こうして自分が感じとっているのだから、『彼女』も感じ取っている可能性が高い。そうなれば、動き出す可能性が………。

 

「その時は…………」

 

 止めなくては、マナコが悲しむだろう。ヒカリはもう一度ため息を吐く。いっそ、手足を奪って危険な場所に近付けないようにしようか………いや、この世界に真に安全な場所などなかった………。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ヒカリが危惧するように、『彼女』はその気配を感じ取っていた。

 美しいとも可愛らしいとも言える容姿。幼さと妖艶さを内包した顔でキョトンと目を見開き首を傾げるさまは子供のようでいて、女を感じさせる媚態。

 括れた腰に、丸い肩に、関節から首筋に至るまで、それを見た男を捕らえる魔性の魅力を持つ。

 

 きっとそれを知っても捕らわれる男は出るだろう。それが蜘蛛の巣のような罠だと知っていても、その甘い毒に一時でも触れていられるなら全てを捨てる者も間違い無く存在すると、誰もが認めるだろう。

 

『…………私の子供かしら?』

 

 あの人が連れて行ってしまった、自分が最初に産んだ子供を思い出す。『世界を貴方で包めばいずれ家族3人で過ごせる』と言う子供の言葉に従い作り出していた子供達に目を向ける。

 

『貴方達のお姉ちゃんかもしれないわ』

 

 まだ不完全だった自分が産んだ、不完全な子供。今度こそちゃんと産んで挙げないといけない、可愛い子供。

 

 女の腹が膨れ上がる。妊婦のように……シャボン玉のように。やがてパンと弾けて中身が内臓とともにこぼれ落ちる。

 

『あ、はは………私の、前に……連れて、来て』

 

 それは蜘蛛のような姿をしていた。八本の足の先は、人の腕のようだった。ギョロギョロ動く複眼は、血のように赤い。

 でも体毛はとてもフワフワだった。これに乗って移動したら、きっと気持ち良くて眠ってしまうだろう。この化け物になんの警戒心も抱かなければの話だが。

 

『頼んだわよ』

 

 蜘蛛の頭を撫でる。飛び散った血も、溢れた内臓も、裂けた腹の傷も最初からなかったかのように消えている。

 

 時間を戻したとか、飛ばしたとか、そう言う()()()()()()では答えにたどり着けない理不尽。それを当たり前のように行使した女神は微笑む。

 

『お客様達も、丁重にね……』

 

 最も新しき超死星。ただ一柱だけ狂った神。

 マナコの母親にして、『WORLD of DEAD』の作中の敵として登場する唯一の超死星。

 

 未だ人類が観測していない序列外。『産み落とす腐肉』……人として生きていた頃の名は、ウブメ。ヒカリの────。

 

 


 

 

『呪いの初歩』

Fateで言うガンドのようなものだが、ヒカリやホムラクラスが放つ場合距離も視覚も無関係。相手がただの人間なら地球の裏側にいてもこんがり焼けたミンチやサイコロステーキに出来る。

古い呪い憑きは実は出来るが、使い慣れた自身から湧き出る呪いのほうが手っ取り早いので基本的には使わない。感覚としては蚊を殺すためにわざわざゴムベラ持ってくるような不要な手間だからね。

 

 

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