死に別れENDばかりのゲームに転生しました。   作:超高校級の切望

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反抗期のクソガキ

「うおおお!!」

『ゴゴゴ、ごしょう後生ご招待ぃぃィィ』

 

 追ってくる蜘蛛のようなアンデッド。いや、おそらくアンデッドではない。ウブメの子供だ。

 アンデッド同様世界を歪める力を持ちながら、アンデッドより世界の抵抗を受けない存在。屍肉でありながら生者としての性質を持つマナコの妹弟達。

 

『お客様々島サマー!』

 

 蜘蛛のくせに尻からではなく口から糸を吐く。しかも既に網の形。

 場合によってはそのまま切断されることもあり得るのがアンデッドの出す糸だ。

 

「鵺!」

〘おうよ!〙

 

 鵺の纏う【呪い】を濃くし、切り裂く。そのまま長さを変え大蜘蛛を切り裂こうとするも、防がれる。

 

「っ!!」

 

 体毛が金属のように硬い。【呪い】の密度的に、ダメージを通せるはずなのに隼人の技量と膂力で通せない。

 剣を弾かれ腕を上げたままの隼人を捕らえようとする大蜘蛛の足。鵺を鎖とアンカーに変え、天井に逃げる隼人。

 

『…………?』

 

 知能は高くないのか、キョロキョロと辺りを見回す大蜘蛛。探知能力は低い。蜘蛛といえば体毛で周囲の空気の流れを感じるらしいが、あれは違うのだろうか?

 

 複眼の目も複眼の割に死角が多い。創造主であるウブメのイメージが雑だからだろうか? まあ今は助かるが、と隼人はそっとその場から移動する。

 強化された身体能力で天井の凹凸を掴みながら移動する。その姿はさながら台所のゴキブリ。超発展し、数多の生物を全滅させた人類でも殺し切れぬ害虫によく似ていた。

 

 

 

 

〘なあ兄貴、兄貴の女に頼めば良いんじゃね?〙

「鏡華の事か? 俺の女って言うな………」

 

 鵺の言葉にはぁ、と疲れたように息を吐く隼人。ここに来るまで少々汚れたので磨いてやると妙なことを言い出した。

 

「不用意に使うと閉じ込められそうだから最終手段だそれは。それに、ここは地下だから窓ガラスとかもないしな」

 

 助かるのは鏡を持つ隼人だけ。それは、寝覚めが悪い。何より隼人達をここに転移させたアンデッドがいるのだ。【陣地】とは異なる『縄張り』内への転移。

 

 まだ見ぬ【呪い憑き】に鏡華を認識される可能性は十分にありえる。

 鏡華の【陣地】は強者なら十分干渉できる。ある意味では奥の手とも言える鏡華の存在を出来るだけ悟られたくはない。

 

〘じゃあ俺達を転移した奴を殺そう! 斬って、潰して、焼いて、撃とう!〙

「いや、無理。勝てるか」

〘? 勝てるかどうかではなく、勝たないとだろ〙

「………ノウキンのくせに核心つくよな」

 

 因みに脳みそ金属という意味だ。だがまあ、的を得ている。

 捕捉され捕らえられた以上、まな板の上の鯉。何時気分で手元に呼び出されるか解ったものではない。

 

「距離を無視する場合もあるしな………そうなるとここ下手したら外国の可能性も。いや、ウブメの子が居るってことはあの街の地下と繋がって入るんだろうが………」

〘まじかよ、アンデッドって何でもありだな〙

「………………」

 

 鵺もその何でもありなアンデッドの【呪い】の残滓なのだが、まあ自覚がないのだろう。馬鹿だから。

 

〘何で【呪い】は何でもありなんだ?〙

「宇宙が人間使って自分の寿命を伸ばそうとしたからだ」

〘?〙

「つまり……」

 

 と、説明しようとした所で通信機が音を立てる。慌てて音を消す。今の音をなにかに探知されてないかと周りを見回すが、幸にも近くに何も居なかったようだ。

 

「………メール?」

 

 メールが来ていた。差出人は『Mr.M』。なるほど、ふざけているようだ。

 

『ミッション1 蜘蛛退治。現在10体の蜘蛛がいる。

 制限時間内に倒せ。

 討伐数1位に報酬。

 制限時間1時間。

 成功報酬・任意の相手1名を任意の場所に転移。

 失敗罰則・アンデッドの追加。』

 

「クソが!」

 

 何処のどいつか知らないが、楽しんでやがる。Mr.M? 原作に少しも登場しない端役のくせに、と通信機をぶん投げたくなる隼人。

 

 息を整えメールを確認する。文字が動き残り時間と残りの数が表示される。蜘蛛の生みの親と遭遇して死ねばいいのに。いや、死んでるが。

 

 というかウブメに殺されたら例えロード級だろうと量産兵になるから別の誰かに殺されて欲しい。

 

〘ミッションだってよアニキ〙

「解ってるよ。目だ、目を狙う。目から突き刺してお前を巨大化させるぞ」

〘えげつねえ〙

 

 バキッと瓦礫を踏み潰す音が聞こえる。その場から飛び退くと同時に炎が隠れていた柱を焼く。

 

『てめぇか、俺をここに閉じ込めてんのは!?』

 

 焼け爛れた体を持つ頭が燃えたアンデッド。背後に2つの炎が回転しながら浮かんでいる。まるで車輪だ。

 回転しながら加速された炎が放たれる。

 

『逃げんなあ!』

「閉じ込めたのは俺じゃねえよ!」

 

 放たれる炎を開始しながら鵺を遠距離形態にして狙撃する。炎で防がれた。ただの熱でしかないのに弾を弾く……これだから【呪い】は理不尽なのだ。

 

 物理法則に喧嘩売ってる。だが、【呪い】を使うのはこちらも同じ。重要なのは世界を歪める【呪い】の密度と、世界を書き換える確信。斬れぬと思って剣を振るえば、【呪い】は現実を書き換え蒟蒻すら斬れなくする。

 

「斬るぞ」

〘おう、ぶった斬ろう!!〙

 

 【呪い】が濃くなる。アンデッドもその【呪い】の気配に距離を取り、炎の温度を上げ迎え撃とうと構え………

 

 

 グシャリと踏み潰された。

 

 部分変化で足を異形のモノに変えた少年。一切の抵抗許さず中級不死者(ミドルアンデッド)を挽き肉にする。

 

 しかも、殺そうとしたわけではないらしく「あっ」と今まさに気づいたように声を漏らす。足についた血を払い、何かを探すように周囲を見回し、隼人に気付く。

 

「あ、パパ」

「!? 人違いです!」

「パパ、帰ろう」

 

 このガキ、人の話をまったく聞かない。

 スタスタ歩いていくる少年アンデッドに剣を構える隼人。その敵意に、アンデッドは一瞬動きを止める。

 

 その顔に浮かぶのは、不快感と敵意。

 

「僕達を、叱るの?」

「は?」

「あの子も、いじめるの?」

「……………」

 

 対応を間違えた。此奴、虐待経験持ちのアンデッド!

 メキメキと体が巨大化していく。3メートルほどの巨人となったその姿は、例えるなら宇宙からの巨大ヒーローと怪物を混ぜ合わせたかのような異形。

 

『そんな事、させるもんかあああああ!!』

 

 鵺を盾にして構える。ずん、と腕に伝わる衝撃。足を浮かせ衝撃に身を任せたが、ミシミシと骨が軋む。そのまま吹き飛ばされ壁を何枚も打ち抜く。

 

『見ててパパ。僕があの子を守るんだ、ママから、パパから、お兄ちゃんから!!』

「クソが、反抗期にゃはえんだよガキめ………!」

 

 何故自分を父と呼ぶ? あの『家族』のアンデッドが新しく作った兄か? 【呪い】が集中したとしても、強すぎる。元よりアンデッドの素質が高い。

 

 その上で、あの幼さ。万能感に酔いやすい年頃が、実際万能の力を手にした。他の中級不死者(ミドルアンデッド)を瞬殺する濃度の【呪い】を持って……。

 

 あの姿からして、純粋な強化型。だが多分ビームとか撃ってくる。

 

「あのクソガキ、有望なお兄ちゃん連れてきやがって……!」

 

 ただでさえ面倒くさい事態に、さらなる面倒事。ここ最近『死を呼ぶもの』としての特性が仕事しすぎている気がする。

 

 いや、自覚ができただけだ。自分は、昔からこうだった。




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