死に別れENDばかりのゲームに転生しました。 作:超高校級の切望
壁際の街。比較的治安の悪いその場所で、子供が虐待を受けて育つのは良くあることだ。
その子供もそうだった。酒に酔った父親に殴られ、父の生き写しの如き兄に嬲られ、父親に逆らわぬ母親に踏まれ、暴力に怯えながら生きていた。
ただ、穏やかな時があった。希望に満ちていたこともあった。それは、母が妹を妊娠した時のこと。
その時は父親も酒を断ち、母親も慈愛に満ちた笑みを浮かべていた。兄も仕事に専念した。
きっと生まれてくる子は、天使に違いないと思った。自分が守っていこうと決めた。
まあ、そんなものはかない夢だったが。
妹が生まれることはなかった。
部屋には再び酒と煙草の匂いが充満して、暴力に満たされた。
地獄が戻ってきた。
少年にとってそこは地獄。家族はそこに住まう悪鬼。ああなりたくないと嫌悪し、憎んですら居た。
だから、だろう。良い人になりたいと思っていた少年は、ある日蹲っていた少女に声をかけた。
そして死んだ。
最初はただ呪を流されただけの動く死体。だが、家族を求めるという相性の良さと、少年本人の
その結果、
死のイメージは怪物、死後の強い願望はヒーロー願望。非常に分かりやすい、暴力の化身。
『ウオオオオオオ!!』
「………っ!!」
壁も柱もまとめて破壊しながら追ってくる。道中現れたウブメの子供である蜘蛛もものともしない。
隼人に勝ち目がない。
緋佐奈を追い払った力が使えたなら、話は別だろうが。
正直あの力の正体がまるでわからない。
イメージを実現する異能力は、イメージの構築ができていないと実現不可能。
『オオ、アアア!!』
柱を殴り、破片が散弾のごとく飛んでくる。隼人は致命傷にならない唯一の隙間に身を割り込ませるも、耳や頰、肩を破片で切り裂かれる。
「………………!」
死の気配を感じ取りながら、致命傷を回避する。
相変わらず頭が痛くなる。体力だって余計に消費する。長くは持たない。
『にぃがす、かあああ! あの子に、謝れ!』
「うお!!」
『謝れ! 謝って、今度こそ…………!』
「…………だから、俺はお前の親父じゃねえっての」
今度こそちゃんとした家族になんて、なれるわけがない。この少年がどれだけ家族に憧れようと、死者が生み出す家族など歪なだけなのだから。
「だから、ここで死ね」
『ぶっ殺すぞ、兄貴ぃ!』
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「さて………」
量産された
ウブメが新しく生んだ、正真正銘の世界を侵すアンデッドの大群。それが、より濃密な死で殺された。
「………………」
疲れた様子もなくウブメにふっとばされた位置まで戻る。壁が破壊されているのは、彼女が通った後か。
と、蜘蛛の群が襲いかかってきた。一瞬で消し飛んだ。
「…………邪魔だな、お前」
ヒカリは虚空を見つめながらそう呟いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『………!?』
目があった気がした。
Mr.Мを名乗るアンデッドは慌てて繋がりを断つ。
アンデッドの呪は基本的には死の記憶に基づくが、例外もある。彼はまさにその例外にあたり、死後に強く求めたのは遊戯を続ける事。
そこにアンデッドとしての本能が加わり、人を殺す遊戯を行いたくなった。その【呪い】は世界を己の思うままに組み替えようとする、形のない【陣地】。
世界の形を変えぬまま、範囲内で応用が効く。人の転移、構造の組み換え。その能力を買われ、
最新にして最弱の神を守る。他は好きにしていいと言われ、好きにやった。
今日も、ただその遊びを続け命を弄ぶ。それだけのはずだった。
突然神が動き出し、一人の男に会いに行った。しかも相手は
それがこちらを見た? 勘違い? いいや、強力な【呪い】を持つ者に物理法則も常識も通じない。
地球の裏側にいようと見つかることはある。
それでも、自分が見ていたからだと判断して繋がりを絶ち周囲の空間を己の【呪い】で汚染する。
格上の
亀のように籠もると決めたアンデッドは、音もなく、熱もなく、光源もなく発生した光に飲まれてこの世から消滅した。