死に別れENDばかりのゲームに転生しました。   作:超高校級の切望

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月の女神

 『死を呼ぶ者』。

 『生』と『死』を内包する者。世界から外れた不死者達にとっての道標。

 本来の歴史において、マナコのみが該当する。五条家の汚点とされる()()()()()ですらそう判断されない、世界唯一の存在。

 

 『死』と共に在り、されど【呪い】を持たぬが故に他の不死者(アンデッド)と同調し、『生者』であるが故に世界から拒絶されたアンデッドにとって、再び世界に繋がれたかのような安心感を与える存在。

 

 対して隼人は、『(ひかり)』こそこちら側なれど、同じ『(みち)』を歩いていない。

 隣り合っているのに触れられない。彼が此方に来てくれれば、近いからこそそう思う。故にアンデッドはマナコ同様彼を求め、同時に殺そう(自分と同じにしよう)とする。

 

 両者の共通点は、形はどうであれ『死』と『生』、どちらも併せ持つこと。

 存在自体がとても近く。故にウブメは勘違いした。

 強固な個を持つ超死星としてはまず在りえぬ未練に狂った神故に、己の子供の性別すら忘れて。

 

 目の前のこれは自分の子供に違いない。少し違う? まあ、産み直せば問題ないと。

 

 なんと愚かなことか。そんな事をしても、死の記憶と未練に突き動かされる不死者(アンデッド)は満たされないというのに。

 

 きっと彼女は世界全ての生き物を自分の子として産み直すまで止まらない。いや、世界そのものを産み直せたら、きっと別の世界に移動する。

 

 超死星とはそういうものだ。最初の超死星が理性的だったが故に他の超死星が動けず、排除し世界の後で覇権をかけ殺し合う為に手を組もうとする前に、たった2人で全ての超死星を殺し尽くせる化物達が原初の超死星についた。

 

 ウブメは生まれたばかりの一柱。そんな神々の事情などまるで知らない。自分の子供になりたいという『あの子』のために、母親として願いを聞いてやっているだけ。

 

 だから、自分の意志で自分の子供かもしれない隼人を産み直そうとする。『あの子』が、隼人という存在の価値を知っていて事前に言い含めてしたとしても、止まらなかったろう。

 

 世界が塗り替わる。たった一つの存在によって、空間そのものが飲み込まれようとしている。

 正真正銘全能な神がそうすると望んだ。そうすると行動した。ならば、それを止められる者は居ない。

 

『ああ、まったく。こうならないためにあの子の親にしたのに、何をしてるのかしら彼奴は』

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「………………」

 

 不意に、ヒカリは顔を上げる。感じた気配に何処か忌々しげに顔を歪めた。

 

 この気配は、彼女だろう。遥か天、古代の人々が神の国と定めた雲の上よりも上に位置する星に眠る女神。

 

 『蒼白い月の目』。無知全能の超死星の中でも、特に全能性が高い序列1位。輝夜の『毛先』が『指先』程度に変化した。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

『……………?』

 

 ウブメはキョトンと首を傾げる。

 美しい女の姿をしながら、その仕草は子供のよう。あらゆる生命を半端に溶かし混ぜ合わせたかのような冒涜的な肉塊から生えていなければ数多の男を虜にしただろう。或いは、気が狂ってしまった男は唯一美しい『そこ』を求めて肉塊を登ろうとして呑まれるかもしれない。

 

 そんな、存在そのものが精神を侵し、世界を歪めるウブメの権能が弾かれた。

 赤く染めた水に青いインクを垂らしたように、そこだけが染まりきらない。むしろ、染まりかけていたそこが別の法則()に染められる。

 

『ああ、まったく。こうならないためにあの子の親にしたのに、何をしてるのかしら彼奴は』

 

 そんな声が聞こえた。何処から? 気絶したあの動物からだ。

 喋った? いや、間違いなく気絶してる。

 

 その、大きくも小さな口から白い指が現れる。

 ひたりと口の端に触れ、獣の身体が凹む。

 

 ベキッと骨が内側に折れ、内臓が潰れたのかゴボッと赤い泡を吐き出す。同時に、布団を剥がすように、或いはテントから出るようにその腕は口の奥から姿を現していく。

 

 手から手首、手首から腕。

 人が姿を現れると、獣が()()()()()()()()()

 

 リバーシブルのぬいぐるみのよう。ただし、質量を無視している。

 獅子よりも巨大な獣の身体が裏返り現れるのは、触れれば手折れてしまいそうな細く柔らかな女体。

 

『…………貴方、だあれ?』

 

 この世全てを産み直せるウブメが、()()を『子』ではなく『個』と認識した。産み直す存在ではなく、同格の存在。その欠片。

 

 ブルームーンのような蒼白い瞳がウブメを見据える。

 美しい女だ。夜闇を濃縮したかの如き黒曜の長髪に、如何なる陶芸家でも再現不可能な白磁の肌。

 パン、と手を叩くと何時の間にか着物を着ていた。

 

『私は輝夜。月に眠る、原初の超死星…………の、指先程度の力よ』

『そう………ねえ、輝夜。その子、返して?』

『どうして?』

『私の子だもの』

『…………この子は、私が()()()()()()()()のだから、どちらかというと私の子よ? ホムラが認知してくれるかはしらないけど』

 

 クスッと微笑み目を細める輝夜にウブメはムッと眉間に皺を刻み、腕を振るう。それだけで世界が抉れていく。

 刹那にも満たぬ破壊の中、輝夜は()()()

 

『【沈め】』

『…………?』

 

 広大な地下空間を破壊させ、上の町を崩壊させかねなかった破壊が掻き消える。

 

『むう!』

『無駄無駄。確かにほんの指先程度のこの私じゃ、貴方には勝てないけど、防御に徹すれば時間稼ぎは出来るわ』

 

 全能である超死星は宇宙と同質量を容易く生み出せる。通常攻撃が銀河と同質量を飛ばすなんて、銀河を容易く破壊する一撃が当たり前。

 

 物理法則ねじ曲げてそれを世界を破壊しない一撃にするんだから本当に滅茶苦茶だ。当然、歪みに歪んだ一撃をアンデッド風情の思想法則で歪め直すことなど出来ない。それを、輝夜は容易く行う。

 

『優しいのね、貴方』

 

 指先でしかない彼女が行えるのは、ウブメが世界を傷付けないよう気を使っているから。そうじゃなければ本来の力の1%にも満たないこの身が稼げる時間など、たかが知れてる。

 

『でも、時間が稼げれば十分。そうでしょう? ヒカリ』

「黙れクソババア」

 

 忌々しげな舌打ちと共にヒカリが現れる。ウブメが慌てて止めようとするも間に合わず放たれる太陽系と同質量の一撃。

 

 舌打ちしたヒカリは、輝く光で一瞬にして消し飛ばした。




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