死に別れENDばかりのゲームに転生しました。   作:超高校級の切望

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ゲーム最強と設定最強は別

 『WORLD of DEAD』最強の敵は誰か? それはもちろんウブメだ。ゲームのラスボスで、設定上主人公を本気で殺そうと出来ないのだから当たり前。

 

 屍でありながら命を生む矛盾の権化。宇宙の法則を書き換える超死星の中でも異端。書き換える力を持っていたから超死星なのではなく、()()()()()()()超死星に変質したアンデッド。まさにラスボスに相応しい存在と言えるだろう。

 

 不死者の王(アンデッド・ロード)も、真なる不死王(オーバーロード)ですら及ばぬ絶対的な存在。

 

 だがそれはゲームとしての話。世界の設定として、最強は誰か?

 原作者は答える。

 

『ヒカリとホムラの二強ですよ。僅差でヒカリ……その僅差も2人にとってはで、超死星一体分くらいはあるかも』

 

 

 

 

 超死星の放った攻撃を変身することもなく身に染み付いた【呪い】の残滓で消し去ったヒカリはウブメを見つめる。

 

 やはり隼人に会わせるべきではなかった。超死星でありながら、思考が死を振りまく本能にほぼ飲まれているウブメは、隼人を殺して己の【権能】で染め上げようとした。

 

 母性が暴走してると言ってもいい。

 ()()()()()()()()()()、世界を染め上げる【呪い】を持つが故に世界を殺さずにはいられず、 世界を己で生み直そうとする母神。

 

 人間に観測されていない序列外でありながらその力は超死星の中でも上位に位置する。無論、輝夜の方が上だがここにいる輝夜はほんの指先程度。ウブメには勝てない。

 

『頑張れヒカリ〜』

「…………は?」

 

 なので輝夜は全部ヒカリに任せることにした。

 

『ヒカリがその子を守りたいのは知ってるよ。別に殺せとは言わないし、むしろ殺しちゃったら私の計画滅茶苦茶になるし。とりあえず落ち着かせて。ね?』

「このババア」

 

 キャハ、とウィンクしてくる輝夜を睨むヒカリ。ウブメ側から彼の顔は見えない。だからだろうか………見つめ合ってるように見えたのか、ウブメの額に青筋が浮かぶ。

 

『この、阿婆擦れがああああああ!!』

「ん?」

『えぇ…………』

 

 肉塊の下半身が形を変え、巨大なアギトを象る。

 

その人の隣(そこ)は、私の場所だああああ!!』

 

 煌々と輝く炎が放たれる。1兆度をゆうに超える、存在した時点で数多の銀河を滅ぼす絶対的な火力は目的の物だけを燃やす為に物理法則を無視して突き進む。

 

 終焉の焔の進撃は、しかしヒカリが片手を向けただけで消え去る…………いや、消え去っては居ない。温度と勢いは落ちたが、ヒカリの手が僅かに燃える。

 

『どいて、そいつ殺せない!!』

『すごい殺気』

 

 私好きな男別なんだけど、と肩を竦める輝夜。

 輝夜は正式に付き合っていないが好きな男がいるのだ。

 

『ん?』

 

 と、輝夜が不意に何もない空間に顔を向け、隼人を抱えて飛び退くと先程まで居た場所を空間が噛み付いた。

 

 ギョロリと壁が瞼を開き輝夜を睨む。

 柱が裂け口を開き、床が耳を澄ませ、空気が息を吸い空間が舌を伸ばす。

 

『世界そのものを自分の子供に産み直しているのか。他の超死星もいるのに、【権能】をここまで行使するか』

 

 その場の世界を歪める【呪い】を超えた、宇宙そのものを破綻させる神の御業。故に【権能】。 

 

『ヒカリ〜、助けて〜』

「この程度なら問題ねえだろ。変身」

 

 ヒカリはふざけた態度の輝夜に舌打ちしながら装具を纏う。先程よりも強い光が産み落とされた怪物を消し去る。

 

 怪物は次々と生み出され、ヒカリは仕方なく隼人を抱える。輝夜は離れなかった。

 

「お前、年下好きなのは知ってるが…………」

『私以上の年上を外宇宙規模で滅ぼしたから、好きになる相手が年下しかいなかっただけよ』

 

 余談ではあるが、ウブメにとって隼人は子供で輝夜とヒカリは大人の男女。

 なので、その姿は男女が子供を挟んでいるようにも見えるわけで…………。

 

『この、浮気者おおおおおお!!』

「人聞きの悪いこと抜かすな」

 

 腕を振り下ろす。その動作で起こるのは空間そのもの崩壊。数多の怪物を破壊しながら破壊が通過し、地下空間の一部を大きく抉る。

 

 それでも、終わりが見えない。床も壁も、空間すらも魔へと変成した万魔殿(パンデモニウム)

 

 一見すればレギオンの侵食にも見えるが、命なきただの無機物を生物のように変容させ新たな命を生み出すこの力をウブメは本来宇宙規模で行える。

 

 他の超死星の思想法則が邪魔をしているからそこまでではないが………まあ、大気圏外程度なら簡単にその範囲に収まる。

 

「…………降ってくるな」

 

 深い地下に居ながら、ヒカリは遥か天の向こうから迫る気配を察知。何処かの小惑星が『ウブメの子』となり平均第5宇宙速度で地球へ向かってくる。

 

 何故平均かと言うと、速いと明らかに光速を超えて移動しているからだ。空間そのものを跳躍もしているのだろう。

 

『この国が滅ぶね………』

 

 纏う【呪い】は真なる不死王(オーバーロード)すら超え、如何なる干渉も跳ね除けこの地へ堕ちるだろう。

 

 ただの巨大隕石ならいくらでも破壊する方法があるだろうが、それがウブメの子となれば現代文明になすすべはない。

 

 輝夜が起きればその限りではないが、その場合月文明が滅び、各地の超死星達も黙っていないだろう。

 

『だからお願い、ヒカリ』

 

 噛みつこうとしてきた鰐のような怪物を踏みつけるヒカリに輝夜は笑う。

 彼ならどうとでもなる。自分ならともかく、彼が動いたところで超死星は動かない。消えたくないから。

 

「お前、俺があのクソカスゴミクズの装具纏ってる(死体被ってる)理由知ってて言ってんのか? ここまで弱体化す(死にかけ)んのに何世紀使ったと思ってやがる」

『私はホムラも貴方も消えて欲しくないから。そのためのこの子』

 

 そう言って隼人を撫でる輝夜は蒼白い瞳を細める。

 

『この子は、そのためにこの世界に産んだ。そのために、この世界を予習させた』

「…………?」

『信じて、ヒカリ。私、友達にウソは………つくけど、ホムラが関わることに冗談は言わないから』

「ショタコンババアが…………」

 

 舌打ちして、ヒカリは装具を解除する。そして、その姿はまた別の姿へと変じる。

 

 星は後10秒もせず地球へ到達するだろう。

 

「消えろ」

 

 世界を滅ぼす星に対してヒカリはたった一言呟いた。

 

 音はなく、熱はなく、衝撃はなく、()()()()………巨大隕石は痕跡すら残さず消滅した。




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