死に別れENDばかりのゲームに転生しました。 作:超高校級の切望
感想嬉しいやったー!
なんか急にお気に入りが増えてランキングにも乗ってた。皆さん、ありがとう!
「あの人の徹底ぶりは、やはりお前には合わないか」
「ああ」
秒で断られたことに何処か不満そうな透也。
本当にあけすけとした性格だ。なんで俺のような男を引き抜こうとするのか……。
「無理強いはしない。俺が大隊長になった暁には、また誘っていいか?」
「ん? まあ、お前ならなれるだろうな……」
てかなるし。
流石に特尉にはならなかったが、それでも大隊長は十分強い。天音も大隊長にこそなれなかったが別に弱いわけではない。
そもそも相手が強すぎるだけ。
装具のイノベーション、集団戦による削り、デバフによる弱体化などを行って漸く倒せる相手だからな。
それを倒しても世界は延命しただけで滅ぼしうる存在がまだまだ居るってのがこの世界の恐ろしいところだ。
まあ、それでも後半弱体化してるはずのホムラやヒカリがその気になれば勝てる相手はまずいないんだけどね。
それなりにつらい過去を持っているが、それ以上につらい過去を持つ者達もいる。それすら差し置いて、ルート次第ではそんな連中を一方的に蹂躙できるまさにチート。
制作者曰く『結局才能です』とのことだ。
「天音の方は? 本題はなんだったんだ?」
天音も『あの子も腐らずに、あそこで生き残ってたら特尉になれました。いやぁ、ざんねんですねえ(笑)』と言われるぐらいには才能持ってんだけどな。
因みに物理的に腐るシーンもある。死に方の殆どがそれだ。
あれは制作者の皮肉だろう。コメントに『人の心を忘れた男』とか言われまくってたな。
「別に? さっきもいったように心配しただけですよぉ。先輩弱いんですから」
「………そうか。まあ確かにな」
ゲームをプレイしていればわかるが、天音は強がりなだけで悪い子ではない。直接対面する身としてはくっそムカつくが、死んでくれとまでは思わない。
むしろ助けてやれるなら助けてやりたいが、自分より遥かに強く才能に溢れた少女に何を教えろというのか。
俺はこの世界にいる。だが、いるだけだ。歴史の大筋を変えるようなチートはない。
神様に送られたわけでもなければ、別の世界の主人公だったわけでもない。
「言い返さないんですか?」
「言い返せねえからな」
言い返してほしかったのか、ムッと顔を歪める天音。
「まあ、どっちにしろ俺は二人の下にも付かねえよ。完全にコネじゃん、肩身が狭い」
「…………そうか」
「…………」
奇妙な沈黙は、そのまま数秒だけ続いた。
「……だが俺は、お前が強くなれると思っている」
「買い被りだな」
いや実際マジで。卒業成績平均値よ俺?
そりゃ、下位層よりは強くなれるだろうけどさ……。まあ原作開始時にはミドルランクの装具はつけられるかもしれないが。
「………ま、こうして修練場に来たんだ。もう一つの要件もわかる………久々にやろうぜ、透也」
「ああ………」
「男っていつもそうやって友情深めるんですか〜?」
ジャージを脱ぐ透也と脱いだジャージを腰に巻く俺を見て天音が呆れたようにため息を吐く。
「環境設定はどうするよ」
「今度深層へ遠征に行く。森林エリアだ」
「まじかよ。俺にはなんの得もねえ」
とは言いながらも、俺は俺で機械を操作し森林エリアを選択しシミュレーションルームの環境を調整する。
超高度な
所持数には限度はないが、所持するには資格がいる。
葬儀社には宗一郎総長が所持する全てのシミュレーターが存在する。シミュレーターは全部俺達の訓練に使わせてくれるのだ。
『転送準備開始』
「異能は?」
「無しに決まってんだろ。俺の勝ち目が完全になくなる」
まあ、異能や装具無しなら勝てるかと言われたら微妙だけど。
装具は人の肉体を直接変える。
細胞レベルから未だ存在の証明しかされていない魂まで変質させる。
装具の適性が高ければ高いほど使用する度に変化していく。ましてや透也は異能大家にこそ登録されていないが生まれながらの異能者。元より基礎スペックが違う。
「良くやりますねえ」
だが、只人である筈の隼人は異能を封じているとはいえ透也と互角に闘っている。
「只人は大変ですねえ、高いお金払って肉体改造して、それでも異能を封じた能力者と漸く互角」
もとより戦闘用に作られた能力者は異能の元となるエネルギーを無意識に肉体の強化に回す。
一見幼く見えるほどの天音ですら、鉄の扉を紙のように引き裂ける。
それが能力者だ。そしてそれは、そう簡単に量産できない。当時はクローン技術もあったらしいが、出力はオリジナルより大きく劣るどころか発現しない可能性のほうが高い。
代わりに用意されたのが人体改造。筋肉を強化したり神経の情報伝達速度を加速させたり……そんな戦争時代の技術は今も使われている。
無能者は装具使用による身体強化では満足せずにそれを使用することが多い。後天的異能者である藤堂蛍大隊長も異能に覚醒するまで違法一歩手前まで使用していた。
隼人はそこまで使用していないから、身体能力でも透也に劣る。それでも戦えるのは、戦い方が上手いからだろう。いや、小狡いと言うべきか。
転送後送られたのは森のど真ん中。即座に石を数個拾い木の上に隠れる。
一つ空へとぶん投げる。
葉や枝を揺らしながら落ちる音が聞こえた。鳥がバサバサと逃げていく。
「…………見つけた」
そして、石の投げた方に向かう移動の音。
どれだけ隠そうとしても森の中では肉体を持つ以上隠せぬ音だ。葉が擦れ、落ち葉が潰される音。
風に紛れれば聞き逃してしまいそうなそれを、しかし俺は聞き逃さない。
「まだまだ下手だな透也」
壁の外に存在する本物のスラムよりまし、程度の治安の壁際の街。親に死なれ、ゴミを漁り生きてきた頃に比べれば森にはブザーが多すぎる。
風が吹くと同時に木々の枝、葉の隙間を狙い石を投げる。
同時に風の音に紛れ最低限の音を立てながら移動し、石の音に振り返った透也の後頭部を蹴りつける。
「っ!?」
「ちっ!」
反応されかわされる。勢いを殺さず回転しながら蹴りを放つが、防がれた。
少しだけ後ろに下がった透也が踏み込むのと俺が地に足をつけるのは同時。
顔面狙った拳を躱し腹に拳を叩き込む。
「ぐっ………!」
「ってえ……」
掠っただけなのに頬が切れた。おまけに、浅い。
体勢を戻し、打ち合う。
生まれながらの人外の膂力と改造により手にした膂力での殴り合い。
受けて、流され、流して、殴る。
技術も膂力も向こうが上。押し切られ、吹き飛ばされる。地面に手を付きながら勢いを殺したところに影が差した。
「うお!」
後ろに飛び退くと同時に踵落としが地面を砕く。あの野郎、殺す気か!
いやまあ、もうあの程度じゃ死なねえけどさ!
「ふっ!」
「………」
顔を狙った拳が、掌を添えるように流される。同時に隠し持っていた小石を親指で弾き透也の右目付近に当てる。
「ぐっ!?」
潰れこそしなかったが、体が硬直した透也の腹に拳を叩きつける。
今度はまともに当たり吹き飛ばされる透也。
地面の土や木の葉を蹴り上げ目隠しにし、再び接近。
土煙で此方からも見えない。だから、狙うのは的の大きい胴。
だが、土煙を越えた先に透也の姿がない。いや、ある。反撃に備え姿勢を低くした俺の視界にわずかに映る爪先。
「で!?」
右目を蹴られた。咄嗟にまぶたを閉じたが、暫くは開けられない。
透也も片目に血が入り、開けられないようだ。
頭がクラクラする。とはいえ、透也もさっきの腹へ叩き込んだ一撃が効いているのか、体幹がぶれている。
同時に飛び出し、拳を振るう。
「…………くそ」
俺の拳が外れ、逆に正確に向かってくる透也の拳。
「負けた………」
「勝った」
備え付けの使い捨て治癒ナノマシンを注入し休む俺と透也。体の中で何かが蠢く感覚が、相変わらず気持ち悪い。
「やはり、強いよお前は」
「馬鹿言うな。お前、能力も使ってねえじゃねえか。それに装具を纏えば速攻で終わってた」
「それはそうだ。俺はお前より先に居る………速く追いついてこい」
無茶言いやがるこいつ。
俺もなにか異能に目覚めたら良いのにな。【
属性付きのミドルランクなら目覚める方向性が決まったりするが。
「じゃ、俺は帰る………」
「大丈夫ですか〜? 私が部屋に送ってあげましょうか〜?」
「大丈夫だ………」
黒井透也は当時の主席である。
異能大家にこそ所属していないがそれでも異能名家に属する一族。
物心ついた頃から異能を扱い、戦い方を学んだ。
そんな彼が死を予感したのはよりにもよって初任務。
竜よりも遥かに強大な、意志ある死とも形容すべき怪物に襲われた。
大戦時代の遺物の一つ、機竜と呼ばれる竜に匹敵する脅威度………相性を考えれば墓守にとって竜以上の脅威を持つそれを、あっさり破壊した怪物は次の獲物として墓守達を狙った。
違う。
あれは獲物を横取りされたくなかっただけだろう。
70人もいた中隊の内、まず15人の頭が潰れた。
続いて7人の手足が床に染みを作り、5人の腹がトマトのように潰れ苦しみながら悶えるさまを、それはケラケラと笑っていた。
即死という分かり易い結果に恐慌する中、挑めたのはほんの数人。その中に隼人が居た。
透也は、逃げ出そうとしていた。いや、その場からは逃げた。ただし逃げ道が塞がれていた。
隠れてやり過ごそうとする透也の前に現れたのは、傷だらけになった隼人だった。隼人はまだ動く右手で透也の襟を掴み叫んだ。
「ここで何をしている? 何故戦わない!!」
あんな存在とどう戦えというのか、傷だらけの隼人を殴りながら透也は言い返した。
「お前が戦え。俺には倒せない、お前になら倒せる。お前が戦わなきゃ、皆死ぬんだよ!! 俺も、他の奴等も! 隠れられてると思ってんのか!? 遊んでんだ、生きてる限り奴等からは隠れられない!!」
そう、やり過ごせるわけなかった。
知識としては知っていた。知っていて気づかないふりをしていただけだ。
それでも、戦うのは怖かった。
「ふざけるな………そんなもん、誰だってそうだ。それでも死なないためには、力を手にするしかないんだよ! 戦う力があるのに、戦うのが怖い!? なら、その力を俺に寄越せよ! 必要なんだよ、俺には………この程度じゃ全然たらねえ、もっと力が!」
それは嫉妬だった。
それは嫌悪だった。
それは羨望だった。
それは叱咤などでは断じて無い。力ないものが力を持つものを妬み、嫌い、羨む浅ましいそれらの感情を乗せた叫びは、透也を困惑させた。
だって、そうだろう。力を持たないと自覚しているなら、透也より弱いと確信しているなら、どうしてあれに挑める。
その覚悟は、何処からくる。
死にかけのくせに、どうしてそうまでして生き残ろうと足掻けるのか。
困惑による沈黙を拒絶と勘違いしたのか、隼人は舌打ちして去っていた。
同年代の誰よりも前にいると思っていた透也は………自分が追うべき背中は先人達にしか無いと思っていた透也は、ふらつくその背に……初めて置いていかれたくないと思った。
そして生き残りと合流し、作戦を立て、仲間を失いながらも、なんとか倒せた。
誰もが透也を褒め称えた。だが、違う。自分にはたしかに力があったが、あっただけだ。
あの場で、本当に誰よりも強かったのは………。
「暫く休暇ね………」
まあそりゃそうだ。
どこぞの班に入るにも事前に手続きが居る。事前にある程度任務が決められているのだから、また新しいシフトを組まなくてはならない。
「さてどうするかね………映画でも見に行くか…………」
とはいえこの時代の映画って、だいぶ感性が違うんだよなぁ。超レトロ映画はやたら高いし……。
動物園、水族館…………八割がただのホログラムやロボットだけど………まあ楽しめる。
遊園地は………絶叫系は楽しめるのだろうか? 装具で変身すりゃジェットコースターより速いんだけど。
「わぷ!」
「おっと」
と、誰かにぶつかる。
あたった位置的に子供。アンデッドで孤児になった子供達が保護されるし、それだろうと下を見て………固まる。
黒と白が乱雑に混ざった長い髪。血のような赤の左目と、月のような金の右目。
その特徴には、見覚えがある。
「マナコ、何処に行ったの?」
「!」
聞こえてきた美波葬儀官の声。マナコ…………特徴的な瞳から、美波葬儀官が名付ける名前。この世界の主人公のデフォルトネーム。
つまり、眼の前の少女は保護されたばかりの主人公。
あ、まずいぞこれ。
主人公と関わるとかこの世界じゃ死亡フラグが立つと同義だ。
「だ、誰か迎えに来たみたいだな。俺はこれで…………」
「………………」
立ち去ろうとするとキュッと服の裾をつかんでくる主人公。え、何で?
じ〜っと此方を見つめている。
「あ、佐々木葬儀官。子供をみませんで………いた、マナコ!」
「…………みなみ」
「勝手に出歩かないでと行ったでしょう? すいません、佐々木葬儀官」
「あ、いえ………」
「ほら、行くわよ。まだ検査も済んでないんだから」
「ん〜! ん〜!!」
美波葬儀官が連れて行こうとするも、俺から離れない。まじで何で、まじで放して。
「………ひょっとして、知り合いなの?」
「…………おかあさん」
「…………は?」
………え、いや…………は?
おかあさん………お母さん?
誰が? 誰の?
俺が、主人公の?
誰が宇宙滅ぼしうる超死星の一人だ!!
黒井透也が討伐した存在
能力の相性的には本来透也の方が勝っている。
原作では仲間の死体を弄び、透也が無我夢中で倒した。
原作の透也は実はアンデッドにトラウマがあり、死因の幾つかはフラッシュバックにより戦えなくなるから。
なおその事件は詳しく描写されていないので隼人は透也が戦えば勝てると思っていたので来た。