死に別れENDばかりのゲームに転生しました。 作:超高校級の切望
超死星。
アンデッドロードすら容易く凌駕するこの世界最強の存在達。
生命すら越えた星命。50光年の生命に壊滅的な被害を及ぼす超新星爆発に例えられる宇宙規模の死を振りまく存在。
結局倒せず、それを利用してたアンデッドロードを倒す、それがこのゲームの終幕の一つ。
倒すか封印するのは他の超死星か、本人自ら死を望むか………。死んでるから消滅か?
まあ、そんな滅茶苦茶な存在の一柱が主人公の母親なのだ。断じて前世の記憶を持ってるだけしか特徴のない俺ではない。
「………お、お母さん? 佐々木葬儀官が?」
「いや、違いますって」
確かに主人公の母親は主人公を生んだ後大きくその性質を変えたが、断じて男になったりはしていない。
そんな設定はない。この時期は何しているかきちんと書かれていて。
(人間社会に紛れ込んでるアンデッドはいれど超死星はいないはず。いや、続編なら…? いや、どちらにしろ俺には無関係………)
というか主人公に目をつけられたくないので離れてほしい。
人の心のない制作者は確かに言ったのだ『死人が出たのはだいたい全部主人公のせいでもあります』と………。
主人公自体は仲間の死に苦しむのに、その死の誘因は主人公だと………。
(……関わりたくねぇ〜)
関わったら最後。死亡フラグが乱立する。
「えっと………マナコ………ちゃん。保護者の迎えが来たみたいだから、そっちに……」
「おかあさんといっしょ………」
今が原作開始2年前だから………14歳の筈。しかし育った環境が環境なので反応が一々幼い。
「俺はお前の母ではない」
「…………?」
「いや首傾げられても」
何故俺を母親と思った?
実は俺もあのラスボス級おっぱいおばけの血縁だったとか? 確か設定的には壁外の女のはず。
俺は壁際街の生まれ………あり得なくはない、のか?
え、やだ目茶苦茶不穏。
「えっと………佐々木葬儀官。その……良ければついてきてくれませんか? この子、色々謎が多いので………」
一見お願いに見えるが、向こうは上司なので断れない。こちらに引っ付く死を呼ぶ灯はじっと此方を見つめ続けている。離れる様子は、ない。
「…………佐々木葬儀官」
「………了解しました」
だっこ、と両手を差し出してきたマナコを抱え医療区画に向かう。
美波葬儀官は申し訳無さそうだが、この餓鬼全く気にしてやがらねえ。当然とでも良いだけだ。
本当、何でこんなに懐いてんだ?
原作ゲームでこいつが初対面で親しみを覚えていたのは………解らん。そもそもあの時点では精神面も成長してるし、一部のキャラとは既に知り合いだったし……。
「四条特尉、失礼します」
「おや佐条大隊長殿。特尉はやめてくれ、私は医者だよ」
「………佐条もおやめください。姉も所属していますから」
医務室の一つにやってくると四条女医がいた。医療班班長でこそないが、班長すら地位ではなく素直に知識と技術で頭を下げる天才だ。
こうして彼女が診察してくれるのは、彼女本人から来るか特尉や大隊長クラスが頼む時だけ。
「それで、どうかしたのかい? さっきの子なら………佐々木隼人葬儀官? 幼いとはいえ初潮も終えた女性を抱き上げるのはどうかと」
「生々しい………」
というかこのグリグリ額こすりつけてくる子供が既にそういう年齢なのか。いや、それもそうか。
成人版だと女主人公は孕まされるルートもあるからなあ。いや、場合によっては男主人公でもだけど……。
「実はマナコが彼……佐々木葬儀官のことを自分の親だと?」
「……………は?」
べキャッと四条女医の持っていたペンが砕け散る。人差し指と親指の力だけで………。なんか、キレてない?
特尉に選ばれるだけあり、彼女は目茶苦茶強い。素手で大概の相手はぶち殺せるほど。何よりここには今
「………失礼。少し意外な言葉に取り乱した」
幸い怒りはすぐに消え、ホッと一息。神など信じないし居たとしてもこんな世界に転生させたことに恨みしかないが此時ばかりは神に感謝……いや、やっぱ無理だな。
ていうかこの世界の神ってそれもう超死星じゃん。数え方が一柱だし。
いやだよ、睨み合いしてるから宇宙を壊してないけど存在してるからアンデッドの発生数を上げて世界を少しずつ殺してる神々に祈るなんて。
「この子は自分の記憶も曖昧です。もし佐々木葬儀官がなにか親と関係があるなら、記憶の手がかりになるかもしれません」
「肉体年齢は14だけど………佐々木葬儀官は24だから、流石に親とするには………」
「あの、それが母親と認識しているようで………」
「…………母親?」
「ん、おかあさん」
何処か自慢するように言うマナコ。くそが、かわいいじゃねぇか。
「ん〜?」
これには四条女医も首を傾げる。
「懐いてるね」
「懐いてます」
「懐かれてます」
「……………ちょっと失礼」
そう言ってパソコンを操作する。画面に映るのはデータ化されたDNA。照合しているのだろう。
「母方はもちろん、父方にも血縁者はいない。ねえマナコ君、君はどうして彼をお母さんだと思ったんだい?」
「……………? …………だって、わたしたちにてる」
「似てるとしても、そこは父親じゃない?」
思わず呟く俺に首を傾げるマナコ。
「ちち、おや………?」
「あー………おとうさん。男親………お母さんとは別の親。一緒にいて安心できる人、とか?」
まあ、こんな今この場でまともな親を持ってるのは俺だけだろうが。
というか何で俺が母親なんだ。原作じゃ、親のように慕い懐いていたのは美波葬儀官の筈だろ。
「おとうさん!」
「……………え、私?」
と、美波葬儀官を指差すマナコ。
あ〜、なるほどね。お母さん枠が埋まってるから、必然的にお父さん枠になるのか…………いやそうはならんやろ。
「………まあ、懐いてるようだしこの際二人で育てますか?」
「え……」
「………その子の精神安定には良いかもしれないけどねえ」
美波葬儀官の言葉に考え込む四条女医。
「いや、俺は了承してません」
「……この子を認知しないと?」
「おかあさん、にんちしてくれないの?」
認知も何も俺は全くの無縁だっての。何だって目をつけられなくてはならんのだ、勘弁してくれ。悪意のない死神など、憎むわけにもいかないのだから質が悪い。
「…………まあ、この子の処遇については上と話し合おう」
結局その日は解散となった。
「……あの子は人間か?」
「心臓も肺も、全てが正常値。人でない、とするのには無理があるね」
世看と宗一郎は二人っきりの部屋で話し合う。幼馴染み、美男美女、時折二人っきりで話す。二人の関係を邪推する者は数多いる。
尤も、二人の間にそんな甘い関係など無いが。
宗一郎は多少の犠牲を平然と受け入れ人の命を利用する人間だ。その目的が人類延命であろうとも、その心の内まで読めぬ世看は当然のように警戒するし、宗一郎もそれに気付いている。
「私はキミが好きではないけど、公的なやり取りで隠し事はしないさ」
私的ではするけど、と言外に言う。宗一郎もそれを察してため息を吐いた。
調整体能力者は国への帰属意識が高い。そういう風に作られたのだから当然だろう。例外はそもそも異能者を生み出した始祖三家。
ただし長い年月をかけ、他の家もだいぶ変質している。
宗一郎なら国に住まう千と一人のためならば千人を犠牲にしても国民を守るという信念。彼の中では華族も政治家も庶民も等しく数でしかない。
そして、子をなし育てる可能性の低いスラムよりも一般人を優先しながらも、生活を保証してやれればと一人勝手に気落ちする。
本音を言えば私欲を満たし税を貪る国の上層をぶち殺したいのだろうが、混乱により失われる命を計算し実行に移せない。
五条家はそういう性質だ。
強力な異能を持つゆえに、市街地で暴走しないよう命の数を求める。
では四条家は?
四条家の直接的な戦闘能力は低い。肉弾戦こそ最強クラスに作られているが、殲滅力では他家に劣る。
その使用目的は要人警護。数いる調整体能力者の中でも特に美しい顔達なのも、まあつまりはそういう理由だ。
与えられた性質は執着。いっそ依存とも呼んで良いかもしれない。
対象の護衛のためなら眼の前で家族が殺されようが千人の人質が拷問されようが気にしない。護衛対象の命のみを優先する。
その性質は、変質するうちにより歪になった。
執着するものが護衛から番に代わった………まあ、
四条家は恋愛結婚しかしない。自ら選んだ相手に執着し、何ならその男、或いは女が浮気しようと気にしない。
何があったか、四条世看のその対象は五条が装具に安全装置を取り付けている青年。
彼のためなら世看は幼馴染みの宗一郎など簡単に裏切るだろう。実の子にすら愛情を向けないのが四条家なのだから。
世看もそれでつらい過去があるのに、今は父の態度も当然だと理解しているのだから質が悪い。
執着対象の男が擬似的に夫婦(男女逆だが)になりかけても口を挟まなかったのは、子を愛さぬ姿を見せないため。
自分の価値がその程度で下がらなくなるまでは、演技でも親などにはならないだろう。
「それにしても、美波葬儀官もまた変わった子供を連れてきたものだ」
医術革命により遺伝子レベルで健康診断が行える時代。殆どが病気になる前に薬を渡され対処できるレベルの医療技術を持って診断されたマナコ。
アンデッド崇拝教団の『彼岸の園』が何者かと取引しようとしていただけあり、死すれば間違いなく強力なアンデッドへと転ずるだろう。だが………
「装具への高い適性………現状開発されているあらゆる装具を十全に使いこなせる、か………」
装具は強力な程使える人間が限られる。
そして凡庸な装具では竜一匹討つのに数を要し、それを超える存在には太刀打ちできない。
例外としては相性のいい異能を持つものだろう。黒井透也葬儀官はそれに当たる。
そんな例外など早々なく、ゆえに強力な装具が使える必要がある。そうでなければ人類は確実に滅ぶ。
「量産は可能か?」
「それはもう医術の領分じゃないよ。君達五条のほうが、よほど詳しい」
そもそも装具を開発したのだって五条家だ。
その研究結果も読まされたとはいえ、全てではない。
「中途半端にやろうとすれば五条家の汚点がまた増えるだけだよ」
「……………」
「最悪それでも人類が延命できるなら良しとするんだろうけど………時期を見誤れば逆効果だよ」
そう言って、世看は出ていく。宗一郎が何を考えるかまるで知れないが、やると決めたらやる。自分の意見などまるで意味がないだろうから、いる意味がない。
「………あ」
そういえば、とふと思い出す世看。
五条家の汚点といえば、まだ生きているんだよなあれ
彼の記憶から読み取った。
五条家を憎みながらも、それでもなお人として人のために戦うあれ等。
大変仲がよろしいらしい。傷の舐め合いと言う奴だろう。
まあ、たった一人の裏切りで全滅するルートもあるのだが………。
(彼のために使えそうなのがいるんだよね。最悪脳だけでも回収出来ないかな………)
番を決めた四条世看には、全ての命がどうでもいい。彼の役に立つか立たないか………自分自身でさえ、その価値観の範疇。
「まあ、今はいいか。それよりも………」
彼の休暇中、如何に彼に偶然を装い会おうか………今の世看が考えるのはそれだけであった。
補足。
調整体能力者達は拗らせやすいよ。
ところで彼の周りには四条の他にも異能大家のお嬢様がいたね
皆感想ありがとう!
『しわてん』こそこそ噂話
五条家の汚点には五条の血筋もいるんだって