死に別れENDばかりのゲームに転生しました。   作:超高校級の切望

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俺には荷が重いって

 壁の外はアンデッドの領域。ならば壁の中にはいないのか、と問われればもちろん違う。

 誰かが死ねばアンデッドになる。特に、貧しい壁際街では野垂れ死にも多く、把握する前に逃げられる。

 ただし死してアンデッドになるのは個人差があるゆえに、こうして中町にも現れるのだが。

 

『またアナタはこんなに遅く苦くく』『仕事ダ、うるさ胃』『なんデ起きテおききき木!』『根な菜』

 

 恐らくは生前聞いたり口にした言葉を体中の無数の口から再現するアンデッド。蜥蜴のような、タコのような、それでいて人の髪が生えているのは何時見ても不気味だ。

 縦に裂けた口がガチガチと歯を鳴らしていた。

 

『悪い子悪イ湖……ココココ、ココロ!!』『やめ手お母さン!』

 

 ブルブルと震えていたかと思えば此方に向かって跳んでくる。触手のような腕を振り回し、地面を抉る。デロリと紫の舌を伸ばし迫る。

 

「撃て」

 

 触手を剣で切り裂き頭を踏みつける。同時に俺の号令とともに放たれる無数のアンカー付きワイヤー。

 アンデッドの身体を貫き縛り付ける。

 

『居たイ痛い! 病めておお母左ん! イイ子ニスルよ!』『あんたたたのセイでぇ!』『難で雄レの子かがこの程度!』『ごめ米んなサイ後綿ナさい!』

 

 無数の口が喧しく騒ぎ立てる。そのうちの言葉に一部が反応する。してしまう………

 

『ゆる子テ緩市て!』『遺体の刃ヤヤヤだ夜!』『茶んと言う琴キくくくら!』

 

 聞くに堪えない戯言に動揺する部下に舌打ちしながら、子供の声で喚き立てるアンデッドの腹を切り裂く。ボトリと落ちてきたのは幾分か()()()()()()子供。

 まだ生きてはいる。

 

 恥晒しの子供を人目のつかないところで殺しておきたかったのだろう。道中死ぬ可能性があるとか、アンデッドはそんなの考えない。

 

「引け」

「っ!!」

『アア吁嗚呼aaaaa!!?』

 

 体に無数の切り傷を刻む周りに命令する。すぐにワイヤーが回収され、切り口からアンデッドの体が解体されていく。

 

『ここの溺そこネイ!!』

 

 筋繊維を伸ばして無理やり体を繋げ、叫ぶ。舌を槍のように伸ばす。

 回避するが壁に突き刺さった。顔を蹴りつけると自らの歯で舌を噛み千切る。

 

『!!? ルバアアア!』

「吠えるな!」

 

 蹴りつければ繋がりかけのパーツが崩れる。上半身が地面に落ち、ギョロリと目が子供に向いた。

 

『何時も逝っテ聞かせてルンです。あのコがん腹なくテェ! おたく我うらやま山ししい!』

 

 口がさらにガバリと開き、子供に襲いかかる。が、辿り着く前に無数の弾丸に撃ち抜かれ地面に転がる。

 すぐさま駆け寄り、ビクビクと痙攣するアンデッドの頭を踏み潰す。なりたては頭を潰されただけで動けないと思い込むから楽でいい。

 

 子供に止血剤と増血剤を打ち込む。前世ならいっそ安楽死させてやるレベルの傷だが、この時代の医療技術なら数週間で五体満足になるだろう。

 

「この子を医療施設へ。残りはアンデッドの肉片を回収、細かくな」

「は、はい!」

 

 慌てて行動に移す部下達。子供が運ばれ、アンデッドの肉片が回収されてから俺は再び口を開く。

 

「今回の任務はアンデッドに攫われた人間の保護だ。アンデッドの大きさから考えて、攫われたのは子供。仮にアンデッドが子供だったとしても、隙を見せるな。次に死ぬのはお前達だぞ」

「は、はい………」

「申し訳ありません」

「………………」

 

 アンデッドはどんなに低能でも殺し方を模索する。子供の声真似など最たる例だ。

 しかし今回のは、相当胸糞悪い事件だったな。

 近隣住民からの通報で向かえば揉み合ったのか頭打って死んだ父親の死体。息子と母親は見つからず、アンデッドの気配が一体出たことから何方かがアンデッド化して攫ったと推測。

 

 低能なアンデッドの行動は生前の人間性に影響される。子供を誰も知らぬところで殺して死体を隠そうとするなんて、相当な屑だな。

 

『お、かあざん………ゆ、じで…………』

「………まだ残っていたか」

 

 グチグチ筋繊維を動かしナメクジのように這う肉片を踏み潰す。この程度なら、ここで焼いておくか。

 

「分隊長、回収終わりました」

「撤収するぞ」

 

 分隊長、ね。

 新入り共をまとめているけど。俺が相応しい立場とは思えない。

 大隊に属さぬフリー。こういった緊急で小規模な任務に向かわされるとはいえ、一応一等兵よりはマシ。

 給料も上がる。

 

 でも責任ある立場っていうのは、どうにも落ち着かない。自分一人の命でさえ重いのに、この上他人の命まで預かるなんて荷が重いってレベルじゃない。

 

「だっる………」

 

 

 

 

「ああ、これで良いと思うよ」

「ありがとうございます。明日提出してきます」

 

 報告書を元分隊長の木島正継さんに教わり作成する。

 除隊したとはいえ色々調整があるらしく、改めて面談して記憶処理なども行うか判断してから葬儀社から出るのだ。

 

 まあ装具の秘密が世間に知られたら間違いなく混乱するだろう。

 使い続ければ異能に目覚める可能性のある装備なんて誰もが欲しがるだろうし。

 

「しかし新人も運が無いな。こんな人の闇を見せられるなんて…………人を守ろうとする気も失せるだろ」

 

 通報自体はこれまで何度もあった。

 それでも結局はこうしてこういうことは起こる。人の本質は変わらない。

 カウンセリングとかは昔より安くなってるのに、行く事を恥だとして行かない。

 

「その結果があれだ。子供が殺されなくてよかったが………」

「子供…………」

「佐々木葬儀官?」

「…………俺は、子供が殺されていないことより、アンデッドになったのが母親の方でまだ良かったと思いました」

 

 素質もあるが、アンデッドというのは生前のストレスが高いほど人から外れた異形となり高い力を持ちやすい。

 

「下手したら【呪い憑き】になっていた可能性もある。そうなれば中隊が最低ラインの案件になっていたでしょうから」

 

 尤も、今の段階ではだが。

 原作開始時では小隊でも十分相手出来る。この技術革新は、原作主人公であるマナコが保護された結果だ。

 

 まあ、それでも【呪い憑き】はピンキリで中隊をあっさり殺し尽くす奴等もいるが。

 

「虐待にあっていた【呪い憑き】なんて、碌でもないに決まってますからね」

 

 部屋に飛び込み血に濡れた包丁を持った男の死体を見て、思ったことが血の飛び散り方からして刺した相手は母親だろうという安堵。

 安堵したのだ、俺は。子供が死んでない可能性があることより、俺の命の安全が少しでも増えたことに。

 

「………それの何が悪いんだ?」

「……………はい?」

「少なくとも、命の安全のために逃げ出した俺とは比べるべくもない」

 

 俺も命惜しさに力を求めているだけなんだがな。

 

「俺は貴方が思うような立派な人間じゃありませんよ」

 

 本当に、笑える。

 死にたくないと武器を持ちいずれ来る日に怯える俺が、逃げ出したとはいえ人を助けるために武器を求めたこの人より立派なわけがないというのに。

 

 

 

 

 

「おかあさん!」

「…………………」

 

 装具の出力が上がったので暫くは検診する必要があると医療エリアに向かうとマナコが駆け寄ってきた。

 行動は幼くとも肉体は14。飛び付かれるとかなりの衝撃。

 

「………………」

 

 チラリと美波葬儀官を睨むとごめんなさい、と声に出さず仕草で謝られる。

 待ち伏せしてやがったな。

 

「けんさ、おわった?」

「…………ああ」

「えほん、よんで」

「お父さんに読んでもらえ」

「…………だめ?」

 

 と、不安そうに見つめてくるマナコ。こいつが親として懐いているのは、何故だが俺だ。美波葬儀官にも懐いてはいるが、俺の方により懐いている。

 

 本当に、何で俺を母親と認識しているんだよ。

 共通点なんてまるで無いぞ。

 

「おかあさん………」

「…………何を読めばいい?」

「! シンデレラ〜赤き色硝子の靴〜武道会決勝編!」

「…………………よし、読むのは俺が決める」

 

 ほんと、二千年の間に何があってこうなったんだ。

 マッチ売りの『復讐の焔編』とか白雪姫の『赤く染まる処女雪』とか竹取物語の『月の都殲滅戦争』とか………。

 何で有名な物語の続編が作られ、しかも訳がわからんバトルものに。作者があの世から殴りに来るだろこれ。

 

「君は結局折れるよね」

 

 と、今回検査を担当したそれなりの顔なじみの医師が呆れたように言う。

 

「子供に甘いのは自覚してます」

「そうか…………子供といえば、先日の子供は完治して祖父母に引き取られたよ」

「……………」

「事前に人物調査はしたさ。人格面に問題はない」

「そこまで聞いてませんよ」

「でも、聞けるなら聞きたかったろ?」

 

 わかったような口を聞くな、とでも言ってやれば良いのか……。いや、実際気になってはいたが………。

 

「おかあさん、はやくいこ……」

「………ああ」

 

 

 

 与えられた部屋で、スヤスヤ寝息を立てて寝るマナコ。ずっと起きてる、なんて言いながら本当に子供だな。

 

「ご迷惑をおかけします佐々木葬儀官」

「いえ……俺に懐いている理由は、わかりましたか?」

「………いいえ」

 

 面倒なことだ。

 死を呼ぶ者に懐かれるなんて。理由が分かれば対処できるのに。

 

「佐々木葬儀官は懐かれたくないようですけど、なら優しくしては駄目なのでは?」

「泣き出しそうで」

「…………優しいんですね」

 

 クスッと微笑む美波葬儀官。優しい………?

 違うな。主人公に嫌われる立場になることを恐れてるだけだ。

 

「明日、お暇ですか?」

「ええ………」

「じゃあ、またこの子と遊んであげてくれませんか?」

「…………………上官命令ならば」

 

 


 

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