死に別れENDばかりのゲームに転生しました。   作:超高校級の切望

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早まったイベント

「おかあさん」

 

 

「おかあさん?」

 

 

「おかあさん!」

 

 

「おかあさ〜ん!」

 

 

 

 

 

「…………子育てめっちゃ疲れる」

「………え、は? こ、子育て?」

「お前、子がいたのか」

 

 食堂で天音と透也に愚痴る。二人共困惑していた。そういや言ってなかったか。

 

「だ、だだ、誰との………?」

 

 特に天音が目茶苦茶動揺していた。なんか振動している。

 

「強いて言うなら美波葬儀官だな…………」

「佐条家の? 姉の方に知られたら殺されるんじゃ…………」

「もう知られてる」

 

 美波葬儀官と関わるうえでの死亡フラグの糞シスコン女の顔を思い出しげんなりする。

 あの女は佐条の血が濃いだけあって価値観がおかしい。

 

 原作で美波の好感度を上げると敵対する可能性が増えてぶっ殺されるし、逆にあれの好感度を上げても死亡フラグになる。

 

「良く生きてるな」

 

 透也もひいている。俺も初めて出くわした瞬間「あ、死んだ」と思ったよ。でもこうして生きているってことは、目をつけられてるってことか? はは、死ぬかも。

 これも死を呼ぶ標のマナコのせいなのだろうか………。

 念の為鏡を持ち歩こう。いや、今も持ってるけど。

 

 お守りと言うにはあまりに不穏なそれが入っている胸ポケットに意識を向けながら、今後の厄介事に頭痛がした。

 

「まあ実際やったわけじゃないから見逃されてるのかもな」

「やるって生々しいですねえ。え、ていうかやってないのに子供? 体外受精ですか?」

「美波葬儀官が拾った子供が俺にも懐いたんだよ。なんでかは知らねえが」

「隼人は尊敬できる父親になるだろうからな」

 

 うんうん、と頷く透也。いや、俺が何時お前の前で子に尊敬できる姿を晒したよ。前々から思っていたことではあるが、こいつの中での俺の評価がやたらと高い。

 まじで勘弁してほしい。

 

「先輩が父親? あっはは、子供にもいじめられそうですねぇ」

「母親がお前だったら子もそうなるかもな」

「んな!?」

 

 ボッと顔を赤くする天音。メスガキみたいな態度を取るがこの手の話にめちゃくちゃ弱いのだこいつは。

 二次創作でヒロインにされる回数が伊達に多いだけはある。ただ、どのルートでも死ぬせいでどの二次創作でも不憫かわいい扱いを受けるが。

 

 彼女の照れる姿が見たくて、彼女の生存が見たくて様々な猛者が頑張った。頑張ったって無駄だった。

 好感度を上げて百鬼夜行を乗り越え腑廢(ふはい)の王を打倒し喜べば最後、地産みの超死星に殺されたりアンデッドロードに殺されたり、そこで選択肢ミスらず逃亡に成功しても後で他国のスパイに殺されたり自国の政治家の私兵に殺される。

 主人公は時計を確認してまだかな、と待つ。

 

 最悪なのはこいつが死んでもストーリーの大まかな動きには何の影響もないということ。アンデッドに対抗できる装具はどの国も欲しいし落ちこぼれ扱いとはいえ天藍家のご令嬢は商品価値を求める屑とは結局戦う。

 ロードや超死星は言わずもがな。実はこの子も死を呼ぶ者だったりするのだろうか?

 

「な、なんで私が先輩と子供作らなきゃいけないんですか!」

「そこまで嫌がるな、傷つく。冗談だ……お前の家ならそのうちいい奴と縁を繋いでくれる」

 

 好感度を上げすぎず、或いは女主人公で友として接した場合彼女から婚約者ができたと惚気けられるというシーンがあるのだ。

 まあ、死ぬけど。『この任務が終わったら結婚するんだ』と言ったせいだろう。

 因みに二次創作ではその婚約者に憑依転生することが多い。

 

「…………先輩なんて死ねばいいのに」

「今の隼人の言葉の何処に死を望むほど怒りを覚える場所があった?」

「俺が知るかよ」

 

 純粋に嫌われてるのか?

 こいつのタイプは確か優しい男だったはずだし、俺はこいつに優しくしたことなんて無いしな。

 

「しかし直接の子ではなくただ懐いているだけなら、言い方は悪いが無関係なんだろ? 拒絶してもいいと思うが………」

「ただ関わりたくないってだけで何も悪くないガキ泣かせられるかよ………」

「先輩って、中途半端ですよね……関わりたくないとか言ってるくせに面倒見て」

「…………」

「その甘さは貴方を殺しますよ?」

 

 死にまくるのはお前だよ。

 

「まあ確かに君はあの子に甘いよね」

「四条女医………?」

 

 と、俺達が集まった机に四条女医も現れる。

 医者でこそあるが特尉である四条女医に、大隊長補佐と隊長補佐の天音と透也。その中に交じる分隊長。しかも例外みたいなもんで、昇格したが三等兵。

 何者だ彼奴、と疑念の視線。やめてほしいぜ全く。

 

「君、あの子を嫌ってはいないけど恐れてるだろ?」

「………………」

「わかりやすいね」

 

 言葉に詰まる俺にクスクスと微笑む四条女医。そりゃまあ、恐れている。この世界の主人公にして、死を呼ぶ者。

 

「でも君は、恐れの原因はあの子の責任ではないと思っている。だから突き放せない………天藍君ではないけど、君の甘さは君を殺すよ。君ほどそれを望んでいない人間もいないのに、ね」

 

 クスクスと笑う、嗤う、嘲笑う。

 まあ、俺も馬鹿だとは思うけど。マナコにどれだけ悪意がなくとも、彼女が死を呼ぶ者であることには変わらない。

 この世の歪みそのもの。故に終わりたる死が付き纏う。

 

 制作者も言っていた。

 『別に彼、或いは彼女の周りだけが死ぬわけじゃありません。彼女だって死んでもおかしくないんです』だの『本当にいい子なんですよ。周りの人間に死が近づくけど』と………。

 

 この世界では悪意を持って、本人の意志で死を振りまく屑どもが幾らでも居る。悪堕ちルートもあるとはいえ、未だ無垢の彼女はそんな存在に比べれば遥かにましだ。

 死にたくない、だから関わりたくない。

 だけど個人的な願望だけで、子供を傷つけたくはない。

 

「私が思うに、君………()()自体は忌悪していても、嫌悪していない。その歪みは、君を何処に導くんだろう」

 

 

 

 

 

 

「本当に、気にしなくて良いんだぞ?」

「そうは言われても、色々世話になったのは事実ですから」

 

 正継さんの正式除隊。人格面を考慮し記憶処置は一部だけ。なのでお別れ会的なものを開くことにした。

 会と行っても、正継さんの部下の生き残りは俺だけだから二人だけだけど。

 

 やってきたのはとあるビル。内部に様々な店がある。

 なにか適当に買って、適当に飯を食う。何やら人が集まっているのが見えた。

 

「何かのイベント?」

「新作ペットの紹介ですね」

 

 遺伝子改造で作られたストレスに強く寿命も長く、それでいて餌代も安く済む、庶民向けのペット。その紹介。よくある光景だ。

 新作のペット達は見た目も可愛らしく、それこそファンタジー世界に出てきそうな見た目をしている。

 

「………見てきていいか?」

「好きなんですか?」

「昔、両親と住んでた頃は手乗りサイズのを飼ってた事があるんだ」

 

 そりゃまた、庶民向けの小型とはいえ、そこそこ金を持っているようだ。羨ましい限り。

 会場に向かえばやれエサ代がどうだの獣がどうだのと売り込んでいた。

 

「お〜」

「命を育てる。これは情操教育に良いんですよ?」

「…………何でいんの?」

「どうした、佐々木」

 

 見知った顔を見つけて速攻でこの場から逃げたくなった。というか逃げよう、うん。と………

 カン! と壁際のロッカーが音を鳴らす。反応したのは俺と正継さん、そして美波葬儀官………。

 

『マアァァァアアアアア!』

 

 ガン! とロッカーの扉が吹き飛び、現れたのは赤子の頭を持ったアンデッド。自身の枠組みの認識が曖昧な赤子の不死者はボコボコと巨大化していく。

 

『マァマアァァァォォォァァァ!!』

 

 甲高い鳴き声を上げてあっという間に5メートルになった赤子のアンデッド。形は常にグニョグニョ変わるスライム状。

 マッドベビーと呼ばれるタイプのアンデッド。

 

「赤ん坊をロッカーに放置だと!? こんな人気の多い場所で、正気か!?」

「正気でしょうね。考えてやったテロだ」

 

 火薬の匂い。あの赤ん坊、死にたて…………殺されたてだ。人が集まるこの瞬間を狙いやがった。

 

「正継さんは下がって………変身」

PLAIN(プレイン)ver2】

「マナコ、危ないから下がって! 変身!」

AQUA(アクア)

「へん──っ!!」

 

 電子音声が響き、俺と美波葬儀官が灰色と青い生体装甲を纏う。正継さんは左手首に右手を添え、ハッと手を下ろす。

 

 墓守の感覚が抜けきっていないのだろう。

 

『オギャアアアアア!!』

 

 生まれたばかり、死んだばかりのマッドベビーは己の状況を理解する事なく、体に這う虫を赤子が叩くように不快感から生者を叩き潰そうと触手を振るう。

 体の動かし方に慣れていないのが明らかなそれらを二人で切り裂く。

 

「って、佐々木葬儀官!?」

「あ、おかあさん!」

「話は後! 来ます!」

『うぅ、うぇ……びええええ!!』

 

 傷口が泡立ち回復する。更に大きな肉塊となる。最早赤子の面影は何処にも残っていない。そもそも自分の形も、他の形も知らないのだ……。

 

「…………眠りなさい」

 

 変身してしまえば表情はわからぬが、声からしてその表情が見えていたら悲痛そうに歪めていた事だろう。

 無数の水のレーザーがマッドベビーを貫く。濃密な殺意………『死』を打ち込まれ、再生出来ない。

 肉片がビクビクと痙攣するだけ。

 

「………ごめんなさい」

 

 マッドベビー程度なら、美波葬儀官なら火葬せずとも()()()()()()。ただしそれはその気になればの話で、やはり赤子に本気の殺意を抱けなかったのだろう。

 

「アンデッドが出たのか!?」

「一般人は避難を……!」

 

 と、遅れながらこの辺りに居たのであろう他の墓守達もやってくる。

 

「……………っ!」

 

 まさに、その瞬間。悪意を感じるほどに最悪なタイミングで、それは起こった。

 死の気配が空間に広がる。空間そのものが、変質していく。

 

「【呪い憑き】………それも、これは!」

「いけない! 一般人の避難を早く───」

 

 だが、間に合わない。

 景色が歪む。人の気配が消えていく。世界が塗り替えれる。

 

「………これ、は………まだ、早いだろ!」

 

 前日譚を記した小説の出来事一つ。マナコを取り返そうとする『彼岸の園』のテロ行為………。マナコが保護されてから2ヶ月後のはずだろ!?

 

 

 

 

「……………」

「どうしたの、ヒカリ?」

 

 カチャカチャと機械をいじりバイクを作成していたヒカリがその腕を止める。

 

「あの子の気配が()()()

「【陣地】に巻き込まれたんだね………どうするの?」

「…………あの子の人生に俺は関わるべきじゃない」

「………とか言いながら出かけるんだ」

 

 


 

美波葬儀官の姉

ヒロインにしてヒドイン

その性格をわかりやすく言うなら邪悪な姉を名乗る不審者。

 

 

 

墓守の階級

総長

大隊長   ランク外 特尉

大隊長補佐

隊長・大隊兵

隊長補佐

小隊長・中隊兵

小隊長補佐

小隊兵・分隊長

三等兵

二等兵

一等兵

 

各隊長は基本的に上位の隊員クラスから選ばれる

 

隊長は中隊長とも

 

指揮経験から小隊長が中隊兵を指揮することもある

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