あなたと私とこの大地 作:ハクゲツロウ
ミクちゃん消えちゃったわ!? 消えてないわよ!?また来るって言ったじゃない!?
お待たせしました、任務の時間よ! …私としては、洞穴に近づかれるのは少々怖いんだけどね。まふゆがまた怪我したらって考えるとね。でも、お友達もできたみたいで嬉しいわ。
それでは本編よ。神ジョークは忘れなさい。
「それでは…これより、この陸上ユニットに乗って、目的地まで向かいます。運転は俺。酔い止めも持っていってくださいね。揺れますから」
任務当日の朝、私たち臨時分隊は、移動に使うバンの前で、最終確認を行っていた。私は入職のときに支給されたロドスの制服を着ている。
「クロスボウよし。ボルトよし。食料…よし。簡易医療キット…よし。ブーツよし。ナイフよし。ロープよし。酔い止め…よし。クレマチス、準備完了です」
「ガヴィル準備完了。いつでも行けるぜ」
「アンジェリーナ、準備完了!」
同じくらいのタイミングで全員が報告をする。
「よしよし。皆さん迅速でよろしい。それじゃ出発しましょうか。荷物はここへ」
それぞれトランクに荷物を放り込み、座席に乗り込む。リーさんは運転席。私とアンジェリーナとガヴィルさんは後部座席。
「えーっと、エンジンは、っと。よし」
エンジンをふかす小気味よい音が流れ、いよいよ出発だ。
「…おい、クレマチス」
「はい、なんでしょう」
「お前、まさか遠足みたいだな〜とか思ってねぇよな」
「? いえ、特には」
「なら良いけどよ。酔い止めは手に持っとくもんだぜ。いつ気分悪くなるか分かんねぇからよ。アタシでも吐き気は治せねぇからな」
「分かりました、ご忠告ありがとうございます」
そんなに揺れるんだろうか。まあお医者さんが言うなら持っておくに越したことは無いのか…。
「……ヴッ………」
「おい、顔青いぞ。大丈夫か?」
「大丈夫? クレマチスちゃん」
「一旦止まりますかぁ?」
「……いえ……大、丈夫、です……」
「きつくなったら言ってくださいね。すぐ止まりますんで」
ロドスを発ってからしばらく、荒野を走るバンの中の私の顔は、真っ青に染まっていた。この車、とにかく揺れる。跳ねると言った方が良いレベルで。酔い止めは全く効かなかった。
「この陸上ユニット、なまじでけぇ分めっちゃ揺れんだよなぁ」
「私達はもう慣れてるけ、っど! 今すごく跳ねたね…初めての人はきついよね」
「そ、うな、んですか……ォェ……」
「おいリー、止まってくれ」
「了解で〜す」
とうとう車を止めてしまった。…もう少し我慢できればな。
ガヴィルさんに連れられ、車から降ろされる。
「すみ、ません。迷惑を、かけてしまって…」
「いいよ、気にすんな。新人なら誰もが通る道さ」
「クレマチスちゃん。はい、お水」
「ありがとう……」
アンジェリーナから水を貰い、少し飲む。途端。
「ゥ゙ッ………オエェェェ……」
胃の中がひっくり返るような衝撃。胃液で喉が焼けてイガイガする。ボトボトと液体と個体の混合物が落ちる音が荒野に響く。
「よし…ゆっくり吐け…落ちつけ…吐けば少しは楽になるからよ…」
「(炎国語)言い回し拷問みてぇ……」
「リーさん? 何か言った?」
「いやぁ何も?」
やはり吐いてしまった。ガヴィルさんに背中を擦られる。
「ゲホッ! ガハッ! ……ケホ…」
「よし、落ち着いたな。おいアンジェリーナ! 水だ! うがいをさせろ。タオルも持ってきてくれ」
「ラジャー!」
「朝飯は全部出てきたかもな…こりゃ着くまで何も食べねぇ方が良いな」
「これ、どうしますか?」
「土で埋めといてくれ。こんなとこ掘り起こすやつなんて居ねぇだろ」
「了解」
「クレマチス、うがいしたら口開けろ。喉を診る」
「はい゙……あ……」
みんな行動が早い。やはり対処は慣れているんだろうか。
「……大した炎症は、無し。続行できるか?」
「…はい。問題ありません」
「よし。リー! 処理が終わったら出発だ! …お前は座って休んどけ。無理すんな」
手伝おうとした私をガヴィルさんが咎める。みんなに申し訳ない…やはり付いてくるには早かったのでは無いか…。
「……まふゆ、大丈夫?」
「うん…大分楽になった」
ポッケの中の携帯デバイスから声がする。ミクの声だ。ここ数日でこちらの世界に慣れたのか、頻繁に出てくるようになった。…相変わらずあちらへは行けないけど。
「無理は、しないでね。二人とも、心配してるから」
「……分かった……ミク」
足音が近づいてくる。どうやら終わったようだ。一応ミクのことは隠してるから、帰らせないと。
「おまたせ! クレマチスちゃん! …あれ、誰かと話してた?」
「ううん? 話してないよ?」
「あれぇ? うーん……声が聞こえた気がするんだけど」
「そいつだって独り言の一つや二つするだろ。つべこべ言ってねぇで行くぞ。クレマチス、着くまで何も腹に入れるなよ」
「はい、分かりました」
バンに乗り込む。今度こそ酔い止めが効くことを祈る。
「それじゃ、出発」
そこからは特に何事もなく、目的地まで直行した。
「クレマチス、体調は?」
「はい、特に問題はありません」
多少気分が悪いが、慣れたことやお腹に何も入っていないので、吐く前より遥かに楽だ。
「よし、じゃあ偵察班と合流するか」
ドクターの話によると、事前に洞穴近辺を調査している偵察班がいるらしいので、それに合流しろとの指示だった。
「えーと? 確かこの辺りにキャンプが…あ! いた! おーい!」
アンジェリーナがいち早くキャンプを見つけ、声をかける。
「すみませーん! 誰かいますかー!?」
………………。
「あれ? おーい! 誰かー!?」
……………………。
一向に返事がない。留守中なのだろうか?
「だー! もう! しゃらくせえ! うちの施設なんだからもう入っていいだろ!」
ガヴィルさんが大股でキャンプに近寄る。ガバっとキャンプの入口を開けると、そこにはパソコンに向かうピンク髪の少女がいた。
「……………」
こちらが中に入ってきても気づかない。まさか気づかないフリをしているのか…。
「キララ! 何やってんだオメェ!」
「うわっ!? 何々誰!?」
キララと呼ばれたその人は、ガヴィルさんからヘッドセットを外されて心底驚いたようだ。
……キララ? キララって確か…。
「え、あ…えと……その……」
「…お前これゲームか?」
「あ、ハイ……」
「いただけませんねぇ。ゲームに没頭して侵入者に気づかないなんて」
「あ、ゴメンナサイ……」
「まぁいいでしょう。次から気をつけてください…改めて、洞穴のデータを貰っていいですか?」
「あ、ハイ、どうぞ」
キララが端末を操作し、こちらの端末に情報を送る。リーさんはそれを確認すると、大きく頷いた。
「よしよし、ちゃんと仕事はしてたみたいですね」
「キララちゃん久しぶり〜! 元気だった?」
「あ、うん、元気…」
キララがアンジェリーナと談笑を始める…話しかけるタイミングを逃してしまった。
「はい皆さん、あんまりここで立ち止まってる暇も無いんでね、そろそろ行きますよ」
それから少しの間、キャンプで物資を補給したり、不必要な物の整理を、各自行った。
「ところで…キララさん、クレマチスさんに挨拶しとかなくていいんです?」
「え……ッスゥー……うん、はい」
ぎこちない歩調でキララがこちらに歩いてくる。人と話すのが苦手なんだろうか。
「はい、キララ…です。今回は…えと…あなたたちのサポートです。よろしく」
「はい、よろしくお願いします」
「(小声)ウェヒッ、陽キャ………」
何か聞こえた気がしたが、よく聞き取れなかった。
「…ところでキララさん。少しお話してもよろしいですか?」
「ヒッ……あ、はいダイジョブデス」
「簡潔に済ませろよ。もうすぐだからな」
「分かりました」
キララと一緒にキャンプの外に出る。
「(うわぁ…久しぶりに外出た)」
「…それで、お話なんですけど」
「あ、ハイ」
「……奏のこと、ご存知なんですよね」
「!」
〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰
「ああそうだ。マフユ、これあげる」
ドクターからメモ用紙を渡される。人の名前が羅列してあった。
「? これは?」
「以前にカナデと交流があったオペレーターの一覧だよ。ここで奏が何をしていたのか、知りたかったら訪ねて見るといい」
「!」
つまり、この人たちは奏の知り合いということか。…結構多いな。
「…奏は、お人好しなんです。いつも自分のことは後回しで…」
「…そうだね、身近で見てわかったよ」
「…そっか、こんなにお知り合いが……」
…なんだろう、やはり少しモヤモヤする。
「まぁ、気難しい人も多いから、ダメ元で行くことになると思うけど…」
「いえ、大丈夫です。伺ってみますね」
〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰
「え、何、カナデの知り合いなの?」
「まぁ、そういったところです」
「マジ!? …あーそっか、名前何て言うんだっけ」
「…まふゆ、朝比奈まふゆです」
「そうそうマフユ! あんたのことだよね!? ずぅっと探してる探してるってさ。一緒にゲームとか結構やってたんだよね…元気かな。BGMとかめっちゃよく聞いててさ! 出ていくって聞いた時は少し寂しかったなぁ…」
「………」
さっきまでのオドオドした感じが嘘のように言葉を連ねている。少し呆気にとられた。
「…あ、ごめん、ずっと喋ってて」
「……いいえ、気にしないでください。…奏と仲良くしてくれて、ありがとうございます」
「あ、うん…頑張ってね。カナデも会いたいだろうからさ」
「…ええ」
この世界で、奏が一人じゃないってことを知れて良かった。それは大きな収穫だ。
「ほら、もう行かないと。みんな呼んでるよ」
振り返ると、もう既にみんな準備ができていたようだった。
「クレマチスちゃーん! もう行くよー!」
「分かった! …じゃあ、また会いましょう」
「うん、またね」
キャンプを離れて、洞穴へと向かう。少しだけ足取りが軽く感じた。
うおおおお九評価!!!!!ありがとうございます!!!!!!
うーん、投稿頻度が落ちている。これと言った理由はほぼ無いので、私の怠慢ですね。すみません。皆さんから見てもらっている以上、私も頑張らねばなりませんね。
(小声)ちなみに次回は番外編(奏サイド)の予定です。少々お待ちを…。