あなたと私とこの大地   作:ハクゲツロウ

12 / 18
 前回のあらすじンバブエ(爆笑神ジョーク)。
 ミクちゃん消えちゃったわ!? 消えてないわよ!?また来るって言ったじゃない!?
 お待たせしました、任務の時間よ! …私としては、洞穴に近づかれるのは少々怖いんだけどね。まふゆがまた怪我したらって考えるとね。でも、お友達もできたみたいで嬉しいわ。
 それでは本編よ。神ジョークは忘れなさい。 


第九話 洞穴へ

 

「それでは…これより、この陸上ユニットに乗って、目的地まで向かいます。運転は俺。酔い止めも持っていってくださいね。揺れますから」

 任務当日の朝、私たち臨時分隊は、移動に使うバンの前で、最終確認を行っていた。私は入職のときに支給されたロドスの制服を着ている。

「クロスボウよし。ボルトよし。食料…よし。簡易医療キット…よし。ブーツよし。ナイフよし。ロープよし。酔い止め…よし。クレマチス、準備完了です」

「ガヴィル準備完了。いつでも行けるぜ」

「アンジェリーナ、準備完了!」

 同じくらいのタイミングで全員が報告をする。

「よしよし。皆さん迅速でよろしい。それじゃ出発しましょうか。荷物はここへ」

 それぞれトランクに荷物を放り込み、座席に乗り込む。リーさんは運転席。私とアンジェリーナとガヴィルさんは後部座席。

「えーっと、エンジンは、っと。よし」

 エンジンをふかす小気味よい音が流れ、いよいよ出発だ。

 

「…おい、クレマチス」

「はい、なんでしょう」

「お前、まさか遠足みたいだな〜とか思ってねぇよな」

「? いえ、特には」

「なら良いけどよ。酔い止めは手に持っとくもんだぜ。いつ気分悪くなるか分かんねぇからよ。アタシでも吐き気は治せねぇからな」

「分かりました、ご忠告ありがとうございます」

 そんなに揺れるんだろうか。まあお医者さんが言うなら持っておくに越したことは無いのか…。

 

 

「……ヴッ………」

「おい、顔青いぞ。大丈夫か?」

「大丈夫? クレマチスちゃん」

「一旦止まりますかぁ?」

「……いえ……大、丈夫、です……」

「きつくなったら言ってくださいね。すぐ止まりますんで」

 ロドスを発ってからしばらく、荒野を走るバンの中の私の顔は、真っ青に染まっていた。この車、とにかく揺れる。跳ねると言った方が良いレベルで。酔い止めは全く効かなかった。

「この陸上ユニット、なまじでけぇ分めっちゃ揺れんだよなぁ」

「私達はもう慣れてるけ、っど! 今すごく跳ねたね…初めての人はきついよね」

「そ、うな、んですか……ォェ……」

「おいリー、止まってくれ」

「了解で〜す」

 とうとう車を止めてしまった。…もう少し我慢できればな。

 

 ガヴィルさんに連れられ、車から降ろされる。

「すみ、ません。迷惑を、かけてしまって…」

「いいよ、気にすんな。新人なら誰もが通る道さ」

「クレマチスちゃん。はい、お水」

「ありがとう……」

 アンジェリーナから水を貰い、少し飲む。途端。

「ゥ゙ッ………オエェェェ……」

 胃の中がひっくり返るような衝撃。胃液で喉が焼けてイガイガする。ボトボトと液体と個体の混合物が落ちる音が荒野に響く。

「よし…ゆっくり吐け…落ちつけ…吐けば少しは楽になるからよ…」

「(炎国語)言い回し拷問みてぇ……」

「リーさん? 何か言った?」

「いやぁ何も?」

 やはり吐いてしまった。ガヴィルさんに背中を擦られる。

「ゲホッ! ガハッ! ……ケホ…」

「よし、落ち着いたな。おいアンジェリーナ! 水だ! うがいをさせろ。タオルも持ってきてくれ」

「ラジャー!」

「朝飯は全部出てきたかもな…こりゃ着くまで何も食べねぇ方が良いな」

「これ、どうしますか?」

「土で埋めといてくれ。こんなとこ掘り起こすやつなんて居ねぇだろ」

「了解」

「クレマチス、うがいしたら口開けろ。喉を診る」

「はい゙……あ……」

 みんな行動が早い。やはり対処は慣れているんだろうか。

「……大した炎症は、無し。続行できるか?」

「…はい。問題ありません」

「よし。リー! 処理が終わったら出発だ! …お前は座って休んどけ。無理すんな」

 手伝おうとした私をガヴィルさんが咎める。みんなに申し訳ない…やはり付いてくるには早かったのでは無いか…。

「……まふゆ、大丈夫?」

「うん…大分楽になった」

 ポッケの中の携帯デバイスから声がする。ミクの声だ。ここ数日でこちらの世界に慣れたのか、頻繁に出てくるようになった。…相変わらずあちらへは行けないけど。

「無理は、しないでね。二人とも、心配してるから」

「……分かった……ミク」

 足音が近づいてくる。どうやら終わったようだ。一応ミクのことは隠してるから、帰らせないと。

「おまたせ! クレマチスちゃん! …あれ、誰かと話してた?」

「ううん? 話してないよ?」

「あれぇ? うーん……声が聞こえた気がするんだけど」

「そいつだって独り言の一つや二つするだろ。つべこべ言ってねぇで行くぞ。クレマチス、着くまで何も腹に入れるなよ」

「はい、分かりました」

 バンに乗り込む。今度こそ酔い止めが効くことを祈る。

「それじゃ、出発」

 

 

 そこからは特に何事もなく、目的地まで直行した。

「クレマチス、体調は?」

「はい、特に問題はありません」

 多少気分が悪いが、慣れたことやお腹に何も入っていないので、吐く前より遥かに楽だ。

「よし、じゃあ偵察班と合流するか」

 ドクターの話によると、事前に洞穴近辺を調査している偵察班がいるらしいので、それに合流しろとの指示だった。

「えーと? 確かこの辺りにキャンプが…あ! いた! おーい!」

 アンジェリーナがいち早くキャンプを見つけ、声をかける。

「すみませーん! 誰かいますかー!?」

 

 ………………。

 

「あれ? おーい! 誰かー!?」

 

 ……………………。

 

 一向に返事がない。留守中なのだろうか?

「だー! もう! しゃらくせえ! うちの施設なんだからもう入っていいだろ!」

 ガヴィルさんが大股でキャンプに近寄る。ガバっとキャンプの入口を開けると、そこにはパソコンに向かうピンク髪の少女がいた。

「……………」

 こちらが中に入ってきても気づかない。まさか気づかないフリをしているのか…。

「キララ! 何やってんだオメェ!」

「うわっ!? 何々誰!?」

 キララと呼ばれたその人は、ガヴィルさんからヘッドセットを外されて心底驚いたようだ。

 ……キララ? キララって確か…。

「え、あ…えと……その……」

「…お前これゲームか?」

「あ、ハイ……」

「いただけませんねぇ。ゲームに没頭して侵入者に気づかないなんて」

「あ、ゴメンナサイ……」

「まぁいいでしょう。次から気をつけてください…改めて、洞穴のデータを貰っていいですか?」

「あ、ハイ、どうぞ」

 キララが端末を操作し、こちらの端末に情報を送る。リーさんはそれを確認すると、大きく頷いた。

「よしよし、ちゃんと仕事はしてたみたいですね」

「キララちゃん久しぶり〜! 元気だった?」

「あ、うん、元気…」

 キララがアンジェリーナと談笑を始める…話しかけるタイミングを逃してしまった。

 

「はい皆さん、あんまりここで立ち止まってる暇も無いんでね、そろそろ行きますよ」

 それから少しの間、キャンプで物資を補給したり、不必要な物の整理を、各自行った。

「ところで…キララさん、クレマチスさんに挨拶しとかなくていいんです?」

「え……ッスゥー……うん、はい」

 ぎこちない歩調でキララがこちらに歩いてくる。人と話すのが苦手なんだろうか。

「はい、キララ…です。今回は…えと…あなたたちのサポートです。よろしく」

「はい、よろしくお願いします」

「(小声)ウェヒッ、陽キャ………」

 何か聞こえた気がしたが、よく聞き取れなかった。

「…ところでキララさん。少しお話してもよろしいですか?」

「ヒッ……あ、はいダイジョブデス」

「簡潔に済ませろよ。もうすぐだからな」

「分かりました」

 

 キララと一緒にキャンプの外に出る。

「(うわぁ…久しぶりに外出た)」

「…それで、お話なんですけど」

「あ、ハイ」

「……奏のこと、ご存知なんですよね」

「!」

 

〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰

 

「ああそうだ。マフユ、これあげる」

 ドクターからメモ用紙を渡される。人の名前が羅列してあった。

「? これは?」

「以前にカナデと交流があったオペレーターの一覧だよ。ここで奏が何をしていたのか、知りたかったら訪ねて見るといい」

「!」

 つまり、この人たちは奏の知り合いということか。…結構多いな。

「…奏は、お人好しなんです。いつも自分のことは後回しで…」

「…そうだね、身近で見てわかったよ」

「…そっか、こんなにお知り合いが……」

 …なんだろう、やはり少しモヤモヤする。

「まぁ、気難しい人も多いから、ダメ元で行くことになると思うけど…」

「いえ、大丈夫です。伺ってみますね」

 

〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰

 

「え、何、カナデの知り合いなの?」

「まぁ、そういったところです」

「マジ!? …あーそっか、名前何て言うんだっけ」

「…まふゆ、朝比奈まふゆです」

「そうそうマフユ! あんたのことだよね!? ずぅっと探してる探してるってさ。一緒にゲームとか結構やってたんだよね…元気かな。BGMとかめっちゃよく聞いててさ! 出ていくって聞いた時は少し寂しかったなぁ…」

「………」

 さっきまでのオドオドした感じが嘘のように言葉を連ねている。少し呆気にとられた。

「…あ、ごめん、ずっと喋ってて」

「……いいえ、気にしないでください。…奏と仲良くしてくれて、ありがとうございます」

「あ、うん…頑張ってね。カナデも会いたいだろうからさ」

「…ええ」

 この世界で、奏が一人じゃないってことを知れて良かった。それは大きな収穫だ。

「ほら、もう行かないと。みんな呼んでるよ」

 振り返ると、もう既にみんな準備ができていたようだった。

「クレマチスちゃーん! もう行くよー!」

「分かった! …じゃあ、また会いましょう」

「うん、またね」

 キャンプを離れて、洞穴へと向かう。少しだけ足取りが軽く感じた。

 




 うおおおお九評価!!!!!ありがとうございます!!!!!!
 うーん、投稿頻度が落ちている。これと言った理由はほぼ無いので、私の怠慢ですね。すみません。皆さんから見てもらっている以上、私も頑張らねばなりませんね。
 (小声)ちなみに次回は番外編(奏サイド)の予定です。少々お待ちを…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。