あなたと私とこの大地 作:ハクゲツロウ
前回のあらすじよ。
キララちゃんの作戦、上手いことはまったわね。まふゆも……気に病む必要はないわ。大丈夫、自信を持ちなさい。
今回のことなんだけど……私がほんのちょっとだけ出てくるわ。それはお楽しみ。
それじゃ、本編よ。
それからは、何とも呆気ないもので、ムシにも遭遇しないし、盗掘家なんかも出てこない、平和な探索だった。ぐんぐんと深部まで進んでいく。
壁にチラホラと黒い結晶が見えるようになってきた。
「ようやくご対面、ってね。……あ〜〜……疲れた」
「ここで帰る訳にもいかんでしょう。データは持って帰らないと……アンジェリーナ、帰り道は記録してますね?」
「うん、バッチリ!」
源石がキラキラとランタンの光を反射する。
「はぁ………鉱石病なんて無けりゃただの宝石だってのに……こうも憎たらしくなるもんだね」
「…………」
沈黙が訪れる。どうやらキララは禁句を言ってしまったようだ。
「(やべ、やらかした)」
「………! 止まれ!」
沈黙に響くガヴィルさんの声で全員が立ち止まる。
「な、何? どうしたの?」
「……崖だ」
少し先を見れば、ランタンの灯りが途切れ、底なしの闇が広がっていた。
「うわ……気づかずに進んでたら、って考えるとゾッとするね」
底はランタンの灯りが届かない程に深い。
「ふむ……アンジェリーナ、何とか飛んで行けませんか? おれたちごと」
「全員一気には厳しいね。せめて二人づつ」
「じゃあそうしましょう。分け方はさっきの組でいいですか?」
「問題なし」「同じく」「了解です」
なるほど、その手があったか。アンジェリーナのアーツなら簡単かつ安全に降下できる。
「じゃ、下の様子見てくるから、ちょっと待ってて」
「で、どうでしたか? 下は」
「何も問題ないよ。何なら歩いてきた道より少し広いくらい」
「なら、早速降りましょうか」
「順番は?」
「キララちゃんとガヴィルさん同時にできる? それなら二往復で全員移動できるから」
「わ、分かった」「よし、頼んだぜ」
3人分の灯りがどんどんと落ちていく。私はリーさんと二人。とても静かだ。
「……クレマチスさん。何か聞こえません?」
「え?」
「なんかこう……羽音みたいな。ぶ〜んぶ〜ん、って」
耳を澄ます。……確かに何か聞こえる。音の所在は……私?
ポケットを見ると、入れていた携帯デバイスが振動して光っていた。
「携帯デバイス?」
「何か通信ですか?」
「いえ……あれ、消えちゃった」
手に取ると、光が消える。何だったんだろう。
「よい、しょ、っと。二人とも、準備はできた?」
「勿論です。クレマチスさん、行きましょう」
「はい」
携帯デバイスをポケットに戻して、アンジェリーナの手を取った。
「うわ……ぁ」
「こりゃあ……データ取ったか?」
「取ったけど……」
崖の底に降り立つと、一面に広がる黒い結晶。これら全てが源石だと考えるとゾッとする。
「これ……サルゴン政府に知られるとちょっと面倒だな」
「こんな大規模な鉱脈となると、今まで見過ごしてたのが不思議なくらいですがねぇ……おや、まだ先が有りますね」
リーさんの視線を追うと、確かにランタンの灯りが反射されない暗闇がある。ちょうど扉くらいの大きさだ。
「私、ちょっと見てきます」
「あ、じゃあおれも行きましょう。一人は危ないですからね」
「お願いします」
「私達はもう少しデータ取るから、ゆっくりでいいよ〜」
キララの間延びした報告に背中を押され、暗闇に歩を進める。入ると、ランタンが有っても無くても変わらないような漆黒。伸ばした手すら見えない。なにより。
「これ……は、ちょっと予想外ですねぇ」
「敵の気配は有りませんが……警戒して進みましょう」
気配が無い。恐ろしいほどに感じられない。上とは真逆に近いほどに。有り難いと同時に気味が悪くもある。これもあの大量の源石の仕業なのだろうか。
ヴーーン ヴーーン ヴーーン
「…………ん? クレマチス、携帯デバイスが……」
「え?」
先程と同じく携帯デバイスが光っている。何が起こっているのだろうか。
今度は触れても消えなかった。画面を見ると……。
「……『悔やむと書いてミライ』……」
見慣れた文字列。思わず言葉にしてしまった。まずい。ここにはリーさんが……。
「……それは一体?」
「あ、いえ、これは……」
「うわーーーっっ!! え!!?? 何何??!! ここどこ??!!」
携帯デバイスから聞き慣れた声とホログラムが飛び出す。いつも通りの茶色い髪と喧しい声。
「……絵名?」
「は………あ!!! あんた!!!! 今までどこに行ってたのよ!!! 勝手に死んでんじゃないわよ!!!!!」
「絵名、おちつ」
「落ち着いていられるかっての!! 大体ねぇ! こんな事になる前にあんたも私達を頼ってくれれば良かったじゃない!!! あんたと奏が死んだって聞いてからどれだけ絵も、動画も作ってたと思ってんの!!?? 30よ30!! もう数えてないけど!! ミクが行けたから生きてるのは分かったけど! それでもよ!!」
「絵名、絵名、後ろ」
「は!!?? 後ろがな……に………よ」
押し黙る絵名。絵名の後ろ、私の正面には、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をするリーさんがいた。
「あ……えと、初めまして、東雲絵名です」
「ああどうも……リーです。すみません邪魔して」
お互い律儀に自己紹介をし合う。……何かムズムズする。
「……………」
長い沈黙。気まずい。
「お〜い、データ取り終わった……って何それ!?」
私達を呼びに来たアンジェリーナがそれを破る。……私が説明しなきゃいけないのか。
「……へぇ……クレマチス、ねぇ……」
「じゃあ、あなたはクレマチスちゃんのお友達なんだ!」
「あ〜……まぁ、そうね。うん、友達」
みんなの元に戻り、何とか双方に説明をし終える。意外とすんなり受け入れてもらえた。
「ホントに一回死んでこっち来たんだな。医者としちゃそれが意味不明なんだが」
「え? 医者?」
「文句あんのか?」
「……いえ……(小声)ねぇまふゆ、パワハラとか受けてない?」
「もう、みんないい人達だよ」
「あぁそう……(小声)あんたここだと『それ』なのね」
確かに、チェーンソーを携えて仁王立ちする今のガヴィルさんは到底医者には見えない。絵名に本気の心配をされる。『いい子』に関してはもう仕様がない。
「うわぁ……こんなの、マジで漫画でしか見たこと無いんだけど……」
「私も。こんな事になったの初めてだし」
「おや? クレマチスが言ってた友達とは、貴女のことでは?」
「まふゆの友達? ……あ、ミクのことね」
「絵名、呼んだ?」
「うわぁ!? もう一人出てきた!」
絵名の隣に突然ミクが現れる。至近距離で見ていたアンジェリーナが驚いてのけ反った。
「……まふゆの、友達?」
「うん、そうだよ」
ミクがみんなを見渡す。腕を組むリーさん。起き上がるアンジェリーナ。体育座りのキララ。仁王立ちのガヴィルさん。
「……良かったね、まふゆ」
「………うん」
「……あ、そうだ。一つ言っておきたいことがあるの」
絵名がみんなの方を向く。
「この世界が私の居る世界より厳しいのは分かった。あんたたちがいい人ってのも。でも、ね。」
一瞬息を吸う。
「まふゆを傷つけたら、承知しないから」
絵名らしい、感情を全面に押し出した勢いの啖呵。語気は強いが声は少し震えている。
「はは、了解です。肝に命じておきますよ」
リーさんが代表するように答える。他のみんなも頷いている。
「……リー、そろそろ時限」
「分かりました……そんじゃ、お互い積もる話もあるでしょうが、ここは一先ずお開きということで、撤収しましょう」
「「「了解」」」
「……何で絵名はここに来れたの?」
「知らない。絵書いてたら突然光って、気づいたらここ」
「使えないね」
「はぁ!? 何よそれ!? 大体こんなの初めてなんだから分かるわけないでしょ!? あ、こら! 耳塞ぐな!」
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「フフ」
「まふゆは頑張ったからね」
「少しだけ、私からのご褒美」
「奏の所にも行ってくれたら……」
「もう一人、ね?」
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「あ゙〜〜〜……やっっっと帰ってきた」
「う〜ん……日の光………」
ぐでんとするキララと、伸びをするアンジェリーナ。長いこと洞穴にいたから仕方ないかもしれない。
「あ〜みなさん、一息つく間もなくで申し訳ないんですが、偵察班のテントの撤収を……」
「分かりました」
「おい二人! ダラダラすんな、やるぞ」
「え〜……は〜い……」
「はぁ……」
忙しいのはここからか。割りとしっかりした造りのテントだから、解体に手間がかかりそうだ。
「資材は、全部陸上ユニットに載せてください」
「これ、全部載せられるんですか?」
「問題無い……はずです。技術部を信じましょう」
確か購買部の人が技術部だったはず……一目で胡散臭いと分かるあの人。
「あーい……クエスト達成……終わったー……」
「お疲れ様でした、っと。このまま休憩しますか?」
「いや……さっさと帰ろ……」
「了解です」
リーさんが運転席に乗り込む。続けて私達も座席へ。今回はキララが助手席に座っている。
「酔い止めは持ちましたね? それじゃ、出発」
再び荒野へと入っていく。今度は帰るために。
みなさんお久しぶりです。更新が遅れて本っっっ当に申し訳ない……。これに関しては私の怠慢です。最近忙しかったのもあるけどこれは……ひどすぎる……。これからはできる限り挽回していきます。どうかよろしくお願いします。