あなたと私とこの大地 作:ハクゲツロウ
前回のあらすじ。
絵名ちゃん、参戦!! ちょっとしたまふゆへのご褒美よ。賑やかなのはいいことね。……そうなると奏ちゃんが少し心配ね。まふゆとちゃんと会えるといいわね……。
やっとロドスへ帰還するわ。……タイトルが不穏ね?
それでは〜〜本編!
太陽の照りつける荒野をしばらく進むと、黒い大きな艦が見えてくる。ロドスに帰ってきた。
……思えばそんなに離れていたわけじゃない。本当に小さな任務だったんだ。
「もうすぐ着きますよ。降りる準備を。あとキララはデータの報告を忘れずに」
「分かってる」
私は特に何もすることがないな、と思っていると、絵名が話しかけてきた。
「ねぇ……まふゆ……何あれ……」
信じられないものを見るような目で訴えかけてくる。そう言えば、私も外からまじまじと見たことは無い。もうここに来て一ヶ月くらいは経ったというのに。
「『ロドス・アイランド号』。あたしたちの本拠地だよ。社名にもなってるんだ」
「そういや移動都市も馴染みが無ぇ訳か、そっちは」
「ある訳ないでしょ……こんなに大きい建物もほとんど無いのに、それも動くなんて……」
絵名はまさに圧巻といった表情でロドスを見上げている。私は「こういったものなんだな」と、案外すんなり受け入れられたので、少し意外だった。
「ま、これからクレマチスと行動するってんなら、慣れておいた方がいいぜ」
ガヴィルさんが話しかけても、絵名は心ここにあらずといった感じで、耳に入っているかすら怪しい。失礼だと思う。
「……まふゆ」
「何?」
「………私、ついていけるかな……」
「……うーん……頑張って」
「はぁ……『その』まふゆに言われると腹立つわ……」
心外だ。
ロドスの出入り口が見えてくる。当然、いつもは閉まっているが、私達の車を入れるために大きく口を開けていた。
「……陸上ユニット一つにこんなに開放するか? 普通」
「まぁドクターからこっちに来い、って言われたんですけどね。何でも他の作戦のチームも帰って来るってんで」
「あー、何だっけ。最近力つけてるっていう感染者団体。それの調査でしょ?」
感染者団体。キララの発した言葉に耳を立てる。
訓練の時に見せられた実践記録のビデオの中に、同じ肩書の集団がいたのを思い出す。指導者を得てテロを起こし、二つの国に混乱を巻き起こした感染者たち。名前は確か……レユニオン。
「なんだ? レユニオンみたいな奴らか?」
「いや、まだテロみたいなのは起こしてない。あくまで色んなところで感染者の保護をしてる、ってだけ。名前何だっけ」
「え! いい人達じゃん! 何で調査なんか?」
「なーんかきな臭いんだって。結構大きくなった団体なのに、指導者は一切不明。目撃者も居ないんだってさ」
「そりゃ不自然極まりないですね」
「でしょ? 最悪、レユニオンの後継者かもね」
なんとなく聞き耳を立てていると、話の腰を折るように車が停止する。
「さて、到着です。資材の搬入は別の班が担当なので、おれはこのままドクターに報告に行きます。この後は、それぞれやるべきことをするように。解散!」
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仕事が一段落つき、コーヒーを飲んでいると、来客を告げるブザーが鳴った。
「えーっと……リーか。よし、入っていいよ」
許可を出すと同時に、ドアが横にずれてリーが姿を表す。例の任務の報告かな?
「お茶は?」
「お気になさらず」
私もデスクから離れてリーと向い合せにソファに座る。
「それで、用は?」
「分かってるでしょう……リー臨時分隊、全員無事に帰還いたしました」
「お疲れ様。大変だったろう?」
「まぁ、そうですね……今回持ち帰ったデータ、ちゃんと目ぇ通して下さいよ。少々厄介な事になりそうですからね」
「……と、言うと?」
リーが少し言うのを躊躇うように、目頭を抑える。彼がこんなになるなんて珍しい。
「……予想以上でした。源石」
「………なるほど、分かった」
その一言で大体察する。データは消去したほうが良いかもしれない。だがサルゴン政府の事もある。気づかなければ交渉のカードとして使えるが……いや、流出のリスクが高すぎる。第一気づかれたら終わりだ。それは多くの感染者を犠牲にする上、更なる感染者を産む。……でもなぁ……折角持ち帰ってくれたんだから、新たに調査隊を派遣して近辺の鉱脈の分布を……。
「……あの〜ドクター? 聞いてます?」
「………はっ! ごめん! 何だい?」
「はぁ……全く、考え始めると耳が塞がるのは相変わらずですね。むしろこれからが本題じゃないんですか」
……本題、本題。……あ。
「クレマチスのこと! どうだった?」
「ちょっと忘れてましたね? ……まぁ、何かしら抱え込んでるところはあると思います。あの境遇じゃ仕様がない感じもありますがね。問題は、それを本人が全く表に出してくれないことなんですけど」
「……君でもそれか。ふむ……本格的にパフューマーに任せる方がいいかも知れないな……」
「あいや、そこら辺は大丈夫だと思います」
「その心は?」
「あー……それは……まぁ、本人から聞いてください。おれから言えるのはここまでです」
それの報告が君の任務じゃ無いのか、って言うのは置いておいて、それだけデリケートな問題なんだろう。こんなに言葉を詰まらせるってことは。そう思うことにする。
「ま、何はともあれご苦労さま。今日はしっかり休んでくれ。報告書は後日で構わない」
「言われなくても、そうさせていただきますよ」
リーがソファから立ち上がり、執務室を出ていった。ありゃ怪我したな。今度隠してたらアに診させてあげよう。
その後、デスクに戻って業務をしているとき、再びブザーが鳴った。
「チェンか……いいぞ」
「失礼する」
流れるような動作でソファに座るチェン。私も先程と同じ位置。
「早速本題に入ろう。……例の感染者団体について」
「ああ、頼むよ」
チェンには、最近運動が活発化してきているある感染者団体の調査を行ってもらっていた。レユニオンの前例があるので、人員は惜しむこと無く割くことにした。そこで隊長に抜擢されたのが、元龍門近衛局員のチェンというわけだ。
「結論から言うと……指導者に関してはほぼ何も分からない状態だ。なかなか尻尾を掴めない」
「君が音を上げる程か」
「まだ音を上げた訳じゃない。すぐに捕らえるさ。奴は身を隠すのが上手い。……何度か連中に遭遇したとき、間違いなく尋常ではない気配がしたんだ。なのに、肝心の奴と思しき者ははどこにも居ない。気味が悪かったよ」
気配までは察知できるのは、流石はチェンと言うべきか。というかそこから発見まで漕ぎつけさせないあちらもなかなか。
「……しかし、収穫は0じゃない。その団体の中で、指導者が何と呼ばれているか……つまりコードネームだ。その情報を入手した」
「それは……お手柄だな。むしろそこまで行って見つけられなかったのか? 君が?」
「不甲斐なくもな。……自信を無くすよ」
お、珍しくチェンがしょげている。写真撮ってスワイヤーに送りたい。
「で、だ」
誤魔化すように咳払いをして続ける。眉間に皺の寄ってないチェンはレアだから、もう少し見ていたかった。
「その指導者の名前だが……『調律者』と呼ばれているらしい」
なるほど、調律者。調律者……調律…………。
───わたしってオペレーターになれないかな?
違う。違う。何故君が居る。
───放浪旅っていうのはどう?
頼む。お願いだ。やめてくれ。
───うん、もう大丈夫。
違う。君は。
───いってきます。
感染者じゃ、無い。
「ドクター! 話を聞いているのか!」
チェンの叱りの言葉で、やっと現実に帰って来る。危ない、もう少しで卒倒するところだった。
「まったく……組織の上に立つ者として、その態度はどうかと思うぞ」
「ああ……ハァ……すまない……」
「……どうした? 具合が悪いのか? なら、医療部に連絡を……」
「いや……問題無い。……ハァ……フゥー……落ち着いてきた」
「……無理はするなよ?」
「君にだけは……言われたくないな」
ばつが悪そうに顔を反らすチェン。お互い何も言うまい。我々は『ロドス無理をするやつ選手権』第一位二位である。
「……今回の報告は以上だ。また何か進展があれば報告する」
「ああ……頼んだぞ、チェン」
「勿論だ」
チェンが去った後、私は直ぐ様トイレに駆け込み、胃の中身を全てぶち撒けた。ボトボトと嫌に音が響く。気分が悪い。吐いてもすっきりしない。腹の底にずっと何かが居る。
「…………何だったんだ……今のは……」
調律者。音楽に関する言葉だったからだろうか。カナデを思い出してしまう。……しかし何故こんなに悪寒がした? カナデが指導者なんてチェンは言わなかった。そもそもカナデのことを詳しくは知らないはずだ。
……カナデが、感染者?
───放浪旅っていうのはどう?
「……やめてくれ」
───いってきます。
「………最悪の気分だ……」
また吐き戻しそうになったのを堪え、言葉を絞り出す。そうでもしないと気が狂ってしまいそうだった。
「……仕事するか」
いつまでも反芻するカナデの言葉に耳を塞ぎながら、またデスクへと戻るのであった。
お気に入り件数やUA数が増えているたびに、少しだけホッとします。どうも、私です。
というわけで、お気に入り件数49件ありがとうございます!!!! このまま突っ走って行くつもりです!! 何卒よろしくお願いします!!
次回は……どうしましょう。奏サイドのお話も書きたいし、まふゆのお話も書きたいし、同時進行だとグダるし。難しいところですが……多分奏のお話になるかな……。気長にお待ちいただけると幸いです。