あなたと私とこの大地   作:ハクゲツロウ

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第一話 朝比奈まふゆ、異世界に立つ

 

 ───ピチャン───ピチャン───ピチャン───ピチャン───

 

「んぅ……………」

 目が覚める。全身が筋肉痛のように痛む。

「ここは…………?」

 のそりと起き上がった私は、あたりを見回して、ここが自分の知らない場所であると認めた。どうやらどこかの洞穴のようだ。

 最後の記憶を思い起こしてみる。確か奏の家に向かっていたはずだ。それで夢中になって走って、トラックに…。

「…………」

 おかしい。

 その記憶が正しいのなら、私は間違いなく死んでいる。あの速度のトラックにぶつかって生きていられるはずがない。仮に生きていたとして、なぜ洞穴にいるのだろう。

 

 ───ピチャン───ピチャン───ピチャン───ピチャン───

 

「…………よくわからない…………」

 いつも絵名に文句を言われる定型文を口にして、私はその思考を止めた。わからないことはわからない。そんなことよりも、今は。

「奏に会いたい」

 確固たる私の意思を確認し、立ち上がる。とりあえず周辺を周ってみよう。水滴の音がしているから、水源は近くにあるかもしれない。出口も探さないと…。

「………お母さん、心配してるかな……」

 自然とそう考えてしまう。私の体に染み付いた思考。お母さんを悲しませないために、失望させないために、『いい子』として認めてもらうために。

「……………あっ」

 何かを踏んづけて前のめりになる。幸い、転ぶことはなかった。

 足元を確認すると、黒い石のようなものが転がっていた。

「これは………宝石?」

 どこか不安になるような淡い光を放つそれを、私は触る気にはなれなかった。

「………。」

 躓いた足をさすって、私は逃げるようにその場を離れた。

 

──────────────────────

 

 結論から言えば、水源はなかった。とても飲めるものとは思えない色の水溜りが、延々と蒸発と結露を繰り返しているような場所だった。

 だが収穫はあった。

 破壊された馬車のような廃材の中から、食べられそうなパンや缶詰を入手できた。これで数日は持ちそうだ。あと、一応弓と矢も拝借してきた。手入れをすれば十分使えそうだ。

 また、私が躓いたあの石。あれはどうやらそこらかしこにあるようで、探索中に何度も見かけた。小石程度のものから壁と見間違うほどのものまで様々だった。

 気がかりなのは、出口を見かけなかったこと。どうやらここはかなり深いところらしい。

「……………?」

 気配を感じて、振り向く。耳を澄ませれば、何かが這いずるような音が聞こえた。

「…………ッ!?」

 見えたのは、黒い甲殻に覆われた、黄色い体のナメクジのような………動物? 虫? とにかく生物だ。体高は私の膝ほどまである。知らない生き物だった。

 一つだけ明確な事があるとすれば、

「キュゥ……」

 こちらの食料を狙っている、ということだ。

 

──────────────────────

 

 弓矢を手に取る。冷静に、無心で的を見定める。が、

(どうすればいいの……?)

 私は動物に矢を放ったことはない。そのことで少し動揺してしまった。

「あっ。」

 放たれた矢は狙いからはるか手前に刺さった。しかし、

「………逃げ……た………?」

 矢に驚いたのか、その生物はそそくさとどこかへ行ってしまった。体の力が抜ける。とにかく食べ物を守れて良かった。

 私以外にも生き物がいる。そのことを知るとより一層外へ出たくなった。いつ野生生物に襲われるか分からない中での生活はしたくない。

 今手持ちの必要な物資をかき集め、出口を探すための探索を始めることにした。

「早く見つかるといいけど……」

 

 

 私は、これから思い知ることになる。

 

 この世界が、いかに残酷であるのかを。

 

 

──────────────────────

 

「エジリウム! もうロドスに戻る時間だぞ!」

 

「エリジウムだよ! ちょっと待ってくれよブラザー! 僕のアーツが、この洞穴から人の生体反応を検知したんだ。遭難した一般人かも…」

 

「なに……この洞穴か?」

 

「そ! にしても…あの奥の方。傾斜がきついね。崖みたいだ。滑落したのかもしれない。医療オペレーターを連れて行こうか」

 

「ドクターへの連絡は、俺がしておこう」

 

「助かるよ。それじゃあ、準備を始めようか」




 ちなみに私の推しは奏ちゃんとマドロック、ソーンズです。天然ギャップに弱い。登場予定はもちろんあります(今回一人出た)。
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