あなたと私とこの大地   作:ハクゲツロウ

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 諸君〜私よ私。作者から登場予定は無いって言われた八重◯子似の神様よ〜。神様権限であらすじだけ担当することになったわ。よろしく。ね?
 さて、前回はまふゆの洞穴探索が中心だったわね。源石の存在にも気づいたみたいだけど…この話はまた今度。
 最後の二人組、誰なのかしらね〜(しらけ顔)。
 それじゃあ、今回も楽しんで。ね?


第二話 出会いと交流、そして疑問

 

「…………落ちた…………」

 落ちた。ものの見事に落ちた。というのも、出口に繋がっていそうな横穴を、少し高いところに見つけて、登れそうなところを選んで登ったつもりだったが、踏み外してしまったからだ。

 起きたときのように全身が痛む。幸い頭はぶつけなかったが、

「痛っ………」

 足首を捻ってしまったようだ。思うように動かせない。それに物資も、落ちた衝撃でそこかしこに散らばってしまった。

「………ふぅ………」

 その場に寝転がる。頭を冷ますために、一息ついた。

 そういえば、絵名と瑞希もこんな事になった、って言ってたっけ。絵名と桃井さんが急斜面を落ちて、それを神代さんと瑞希で助けたんだって。確かそんなことを言ってた気がする。

 そうやって思い出に浸っていた、その時、

「ッ!……この音……」

 あの動物の這い回る音だ。数が多い。ぐんぐんこちらへ迫ってくる。

「あ……ああ………」

 物資が食い荒らされていた。まだ使えるものは、そう多そうにない。弓も…弦を食い切られていた。

「………まずい」

 どうやら標的を私に変更したようだ。私はほふく前進の要領で距離を取ろうとする。

「ッ………ッ………!」

 足を負傷しているからか、思うようにスピードがでない。そうしている間に、あれとの距離はどんどん縮まる。

「ッ………嫌………来ないで…………」

 迫る、迫る。こちらの様子などお構いなしにどんどんと侵攻してくる。

 先頭のやつが私に追いつこうとした、その時だった。

 

「(ヴィクトリア語)ここだよ」

 

「……?」

 先頭のやつは、矢が突き刺さって死んでいた。他の奴らも、それを見て蜘蛛の子を散らすように去っていく。何匹かは逃げずに向かってきたが、それらも全て射抜かれてしまった。

「…………助かった…………?」

 安堵してあたりを見渡すと、四人ほどの人影が見えた。男の人と女の人が二人ずつ。白い髪に前髪を一部赤く染めた男の人が、私に話しかけてきた。

「(ヴィクトリア語)大丈夫かい? お嬢さん」

「………」

 何を言っているかは、分からなかった。

 

──────────────────────

 

「………」

 

「……………」

 

「…………………」

 気まずい沈黙が流れる。やばい。ファーストコンタクトまずったかも。

「(小声)ねえ!! どうしようブラザー!!」

「知るか。俺に聞くな」

 クソっ、このイベリア男め!

「うーん……言葉が通じてないんじゃないかな?」

 そんな僕らに割って入ったのは、医療オペレーターのススーロちゃん。僕の報告で、急遽作戦基地から駆り出されたベテランだ。

「とりあえず、患部を見せてもらっていいかな」

 ススーロちゃんが救助対象の子に歩み寄り、話しかける。しかし、やはり言葉がわからないのか、動くことはなかった。

「………難民の子供か?」

「ううん、違うと思う。それにしては着てるものがしっかりしてるから」

 ソーンズと会話しているのはクルースちゃん。狙撃オペレーターだ。高低差が激しそうだったから、ついてきてもらった。結果としては大正解だったかな! クルースちゃんがいなかったら危なかったかも。

「なら……こいつは何だ?」

「こらソーンズ。言い方には気をつけなよ。相手はレディなんだからね」

「エリジウムさん、ちょっと気持ち悪いかな…」

「おおう言うねえ!? クルースちゃん!?」

「ちょっと皆、静かにしてて」

 怒られちゃった。黙ります。

「えっと、なにか話すことはできる?何でもいいから。あなたの名前とか、好きな食べ物とか」

 ススーロちゃんが語りかける。

「…………(極東語?)アサヒナ、マフユ。」

「!(極東語)あなたは、どこから来たの?」

「…(極東語?)トラックに轢かれて、気づいたら、ここに」

「…………(極東語)患部を見せて。分かる?」

 そう言うと、その子は始めて表情を変えた。いや、変えたなんて次元じゃないな。なんかこう………根本から変わった? いや、仮面を被ったみたいな。うーん…うまく言葉にできない。

「(極東語?)ありがとうございます。ここです。」

「(極東語)痛かったら声を上げてもいいよ。我慢しないで」

 ススーロちゃんが治療を始める。ススーロちゃんはこの子の感情の変化に気づいているんだろうか。

「うわぁ……けっこうやっちゃってるね……」

「ああ、随分腫れている。さっき這いつくばっていたから、折れていることは無いと思うが…ロドスに連れて行くのが得策だろう。まともな医療設備があるからな。」

「よし、そうと決まれば、帰るルートを探しておくよ。何かあったら、無線で伝えてね」

 そう言って、僕はその場を離れた。

 

─────────────────────

 

 今、私は知らない人の背中におぶさって、洞穴を登っている。この人たちが来なければ、今頃はあの動物たちに食い殺されていたかもしれない。その上傷の手当までしてもらえた。本当に感謝してもしきれない。咄嗟に『いい子』になったのは……もう仕方ないか。

「(日本語?)あなたを襲ったあの虫はね、オリジムシっていうの。武装してる人にはあまり脅威じゃないけど…あなたみたいな丸腰の人には別。怖くなかった?」

「ええ、大丈夫です」

 手当をしてくれた、耳の生えた……待って、耳の生えた?

「これは………コスプレ?」

 思わず手が伸びる。その人はその手を避けた。

「(日本語?)あっ、ちょっと!あんまり触らないで」

「あ……ごめんなさい」

 無遠慮なことをしてしまった。罪悪感が込み上げてくる。………悪い子。

 よく見れば、同行している金髪の人の頭にも、うさぎの耳のようなものが生えている。仮装大会でもやっているのだろうか。

 そんなことを考えながら、先頭に立つ白髪の人の言葉に耳を傾ける。ずっと喋っているけど、相変わらず何を言っているかは分からない。けれど、疲れ切った心と体には子守唄のように聞こえた。人におぶさってもらったことなどいつ振りだろうか。心地よい振動の中、私はそのまま、意識を手放した。

 

──────────────────────

 

「ん?」

「あっ」

「あれ」

 ソーンズの背には、すやすやと眠るあの子の寝顔があった。

「疲れて寝ちゃったのかなぁ」

「こうしてまじまじと見てみると…やっぱり、難民の子供には見えないね。肌につやがあるし、唇の色も健康的だし」

 ススーロちゃんが真面目に分析する。だとすると…。

「ますます謎だね。こんなサルゴンの辺境に、富裕層の極東人がいるのは考えにくいし」

「そのことなんだが…あれは本当に極東語か?俺が知っているものとは随分ニュアンスが違うように思えたが。」

「うん、極東語なのは間違い無いんだけど…」

「「うーん…」」

 僕とクルースちゃんが揃って頭をひねる。

「この子…種族は何なんだろうね?」

 とススーロちゃん。そう、この子には角も尻尾も耳も羽も光輪もない。となると、それら全ての特徴に当てはまる可能性のあるエーギルが消去法で選ばれるのだが…。

「やっぱりエーギルじゃないのかい? ソーンズ」

「ああ。こいつから同族の雰囲気はしない。そもそもイベリアのエーギルと極東のエーギルの違いのせいかもしれないがな。だが、可能性は低いだろう。」

 ソーンズがそう言うんだからまあそうなんだろう。そうなると完全に迷宮入りになるのだが。

「まあ、ややこしいことは全部…」

 ドクターに丸投げしよう。

 僕ら全員の意見が一致したところで、出口が見えてきた。

「さぁ、ちょっと急ごうか。みんなを待たせちゃってるからね」

 

──────────────────────

 

 そうして僕たちは、少し駆け足気味でロドスの作戦基地に戻った。あの子は医療部に到着するや否や、たまたまいたガヴィルに担がれて搬送されて言った。運がいいんだか悪いんだか。

「さて、僕もぼちぼち、仕事に戻ろうかな」

 まぁ、そう言いながら結局ソーンズのところに行くんだけどね。

 見れば、彼は戦闘で使用する薬剤の整理をしているところだった。

「やあブラザー。邪魔して悪いね。…ちょっと聞きたい事があってさ」

 ソーンズがこちらを振り向く。

「お前がそんなにかしこまるとは珍しいな。何の用だ?」

「いや、大したこと…ではあるかな。あの子のこと」

「ああ…あいつか」

「ススーロちゃんが治療を始めた時さ、気づいた? なんかこう…あの子の表情が変わったっていうか」

「…いや、気づかなかったな。そんなに露骨だったか?」

「ううん。すごく小さい。けど、違和感は感じたかな」

「お前でそのレベルなら、俺に分かるわけ無いだろう」

「開き直りがすごいね! それも君のいいところだけどさ! …まあそういうこと。場合によってはカウンセリングが必要かもしれないね」

 ソーンズが眉をひそめる。

「何?…精神疾患の類か?」

「解離性同一性障害、躁鬱症、まあいろいろ考えられるよ」

「そうか…お前、それはちゃんと報告しろよ」

「わかってるさ」

 ならいい。と言って、ソーンズは作業に戻った。

 やはり気がかりだ。僕もついていけば良かったかな。もし挙げた中のどれかなら、治療…というか緩和は可能だ。ロドスにはラナさんがいる。だけどそうでないなら…割りと複雑な問題かもしれない。

「まあ、今はとりあえず報告書か」

 独り言を言って、僕は仕事に戻った。

 

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