あなたと私とこの大地 作:ハクゲツロウ
ロドスで目覚めたまふゆ。最初は信じられなかったみたいね。でも、ススーロのおかげで打ち解けられたみたい。
ドクターはまふゆのことを知っているみたいだけど…どうなるのかしら?
本編とはんぺんって似てるわよね。
「まふゆさん。定期検診の時間だよ。」
なんとなしに暗いパソコンをいじっていた私に、ススーロさんが声をかける。
「ススーロさん、こんにちは」
「うん、こんにちは」
にへらっと笑って挨拶を返してくれるススーロさん。
「まふゆさんは、ロドスの外に身寄りはあるの?」
カルテに何か書き込みながら、ススーロさんは私に質問をする。
「えっと、日本の、シブヤに家があります」
そう言うと、ススーロさんは怪訝そうな顔をして、
「ニホン?……シブヤ?………」
と私の言葉を反芻した。どうしたんだろう。特に変なことは言ってないはずだけど。
「えっと…とっても田舎だったりする?地図にも載らないような」
「え?…いえ、ビルとかは立ってますけど」
「まふゆさん、多分だけど、テラにそんな地名はないよ」
……え?
…落ち着いて、冷静に考えよう。『源石』、謎の黒い宝石のこと。そしてこの宝石は超有毒で、長く触れていると『鉱石病』という不治の病気に罹ること。そしてその患者は『感染者』として迫害されていること。
新たな単語『テラ』。これまでの情報から、ここが私の元いた世界とは別の世界なのだと、感づいていた。とすると、この『テラ』はこの世界の地名、それも大きな括りで、大陸だとか、惑星だとかという結論に至る。
ここまで五秒。リカバリー可能範囲内。
「ああ…そうなんですね。すみません。私の思い違いだったかもしれません」
「じゃあ…身寄りはないの?」
「あー…はい、そうなりますね」
しかし、そうなると私は今どこにも頼れるところが無いことになる。どうしたものか…。
「じゃあさ、ロドスで一緒に働こうよ。私達と」
「え?」
ススーロさんからそんな話を切り出される。
「いいんですか…? 私はまだ未成年なんですが」
「大丈夫だよ。あなたより小さい子もいっぱい在籍してるし」
それはそれで問題なのではないだろうか。
「ロドスは非営利団体じゃないからさ。患者さんからは治療代を払ってもらわなきゃいけないんだ。で、それを払える能力がない人は、ロドスでの奉仕活動をしてもらうことになってるんだよ」
なるほど、そういうことか。
「治療代は、その人の給料から天引きされる。ロドスでの生活を気に入って、そのまま定職にする人も多いよ」
それなら、そんなに悪い環境じゃないのかもしれない。だが…。
「少し、時間をもらってもいいですか?」
「いいよ。大事なことだから、ゆっくり考えて。 それじゃ、今日の検診は終わり」
ススーロさんが立ち上がる。
「ああ、そうだった」
何か端末を操作している。
「ここをこうして…よし。そのパソコン、つくようにしておいたから、使ってもいいよ」
「…ありがとうございます」
見られていた。別にどうとは思わないが。
ともかくこれは本当にありがたい。病室で暇をすることはなくなりそうだ。
ススーロさんの背を見送る。
しかし…ロドスで働く。考えたこともなかったが、この世界で生きていくには、これしか無いんじゃないだろうか。充実した医療設備。数日のうちに出された病院食は、どれも不味いものでは無かった。あの言い方だと治療代さえ払いきればちゃんと給料も出る。
「悪くは…無いかな…」
ここが本当に異世界だと言うなら、元の世界に帰る方法も、探さなければならない。しかしそうなると一つ問題が出てくる。
あちらの世界の私は、トラックに轢かれて死んでいるはずだ。そうなると戻る方法はないのかもしれない。
「………………」
もし、そうなら。
「奏……………みんな…………」
最悪を想像して、吐き気がした。
その日の夜、暇つぶし用に支給された知恵の輪を解いていると、扉が開く音がした。
「やあ。君がアサヒナマフユだね」
真っ黒いコートに、これまた真っ黒なバイザー。顔も見えない。いかにも「不審者です」といった風貌の人物に、警戒心を強める。
「……貴方は誰ですか」
「警戒されてるねえ……まあ仕方ないか。こんなんだし」
その人物は肩を落とす。気を損ねたんだろうか。自業自得だ。
「グラベル。この部屋に誰も入ってこれないようにしてくれ。聞き耳も立てるな」
「この子にやらしいことする訳じゃないわよね」
「まさか、からかわないでくれ」
「うふふ…了解」
「!?……どこから……」
とにかく、出口を塞がれたようだ。まずい。
「自己紹介が遅れたな。私はドクター。ロドスの戦場指揮官をしている」
戦場…指揮官…?
「戦争でもしているの? 製薬会社なのに」
「ロドスの目的は、鉱石病が起こす全ての問題の解決だ。時にはそういう手段に頼らざるを得ないときもある」
頼らざるを得ない?戦争が?
「戦争なんて、ない方がいいに決まってるじゃないですか。人の命をなんだと…!」
「断じて軽んじてはいないよ。ただ…」
言葉を詰まらせる。どんな弁明が飛んでくるんだろうか。
「それは必要な犠牲だったと、より良い未来への礎だと、そう思わなければ、
我々は前に進めない。
この世界は、そのくらい残酷なんだ。アサヒナマフユ」
絶句する。命を軽んじているとか、そういうのじゃない。今まで死なせてきた人の全ての命を背負っている。その上で、この飄々とした態度を取れるのだ。意味がわからない。それがどれ程重いものなのか、私には知り得ない。
「まあ、そのことは…君がロドスで働くといったあとに、嫌というほど思い知ることになるよ。君がそう望めばね。私は今日、君を絶望に叩き落としに来たわけじゃない。」
まだ衝撃から立ち直れない私に、単刀直入に聞こうか。と、ドクターと名乗る人物は、本題を切り出す。その時、
「ヨイサキカナデという少女を知っているか」
私の時間が、止まった。
「………………え…………………?」
「あれ……人違いだったかな…ごめん、心当たりがないなら…」
「奏が! この世界にいるんですか!?」
「うおっびっくりした」
奏がいる。この世界に奏がいる。
「ああ…実は数週間前までロドスにいたんだ。旅立ってしまったが」
「奏と連絡は取れないんですか!?」
「安静に! 君足をけがしてるんだよ!」
ハッとする。そうだった。絶対安静。
「ふう……」
「落ち着いたかい? ……結論から言えば、カナデとは連絡が取れない状況だ。この世界に全世界で通用する通信機は存在しない。」
「そうなんですか…」
「君がロドスに搬送された時、まさか、とは思ったんだ。カナデはしきりに君の名前を言っていたから。『わたしが来れたんだからマフユもいるはず』ってね」
なんだかぽかぽかする。奏も私を探してたんだ。
「で、確信したのがこれ。君の源石関係の検査結果」
そう言って、ドクターは私にタブレットを見せた。
【源石融合率】0%
【血中源石濃度】0.00u/L
「これはカナデの検査結果と全く同じだ。…理由は分かるか? …君たちはこの世界に来たばかりで、源石に触れることが今まで一切無かった。それがこの数値を実現したんだ。」
よく分からないが、まあそういうことなんだろう。
「さぁマフユ。ロドスで働く気になったかな?」
「………?」
奏のこととロドスで働くことがうまく線で結ばれない。どういうことだろう。
「ロドスはその性質上、様々な場所に遠征をしたりするんだ。だから、いずれはカナデと出会うことがあるかもしれない」
「やります」
即決だった。
「いいね、速戦即決。よし、わかった。君のことは、私が人事部に推薦しておくよ。足が治ったら適正テストがあると思うから、それに備えておいてくれ。」
そう言うと、ドクターは踵を返して扉へ向かう。その背中に、声をかけた。
「あの! …カナデは、なんでここから出ていったんですか?」
ドクターは振り向いて言う。
「もっと違う世界をこの目で見てみたい。私の音楽で、この世界の人々の心を、マフユを救うために。 ……これは旅立ちの前、カナデが私に言った言葉だ。あの子は本当に音楽が好きなんだな」
奏らしいな、と思った。でも、
「今度は、私が見つける番」
私と奏の、終わらないかくれんぼが始まった。
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「ふう……グラベル、もういいぞ」
グラベルに声をかけ、ドアを開ける。
「お話はすんだ? ドクター。」
「ああ。もちろん穏便にな。」
「うふふ…」
グラベルが姿を表す。本当にどこに隠れてるか分からないな。
「それで? ロドスに入るの?あの子」
「ああ、なんとか説得した」
「でもあの子…きっと苦労するわよ?」
「そりゃまた何で?」
グラベルは少し考える素振りをしたあと、答える。
「なんていうのかしら…体の構造が、そもそも私達と違う気がするの。筋繊維の密度とかね。戦闘オペレーターには向かないかもね。かと言って、あの年齢で医療の知識があるとも考えにくいし…」
「なるほどなあ…」
「そうなると、術師オペレーターや後方支援部ね。彼女、アーツは使えるの?」
「いや、わからない。適正テストがまだだからな」
「そうねぇ。…アーツ適性がないとなると、茨の道よ。探してる人がいるんでしょう?」
「君、やっぱり聞いてただろう」
「〜♪」
「はぁ…」
後方支援部が直接作戦や遠征に参加することは、前衛や術師オペレーターなどと比べて極めて少ない。故に積極的に外勤させてやりたい彼女には足枷になる。
「ままならないなぁ…」
私には、彼女の願いが叶うのを願うことしかできなかった。
10!? 10!!?? もらって良いんですか!? やったァァァ〜〜〜〜〜〜!!!!! もう止まれない止まらない! これからも応援よろしくお願いいたします!!!