あなたと私とこの大地   作:ハクゲツロウ

5 / 18
 前回の〜〜あらすじっ!
 ロドスで目覚めたまふゆ。最初は信じられなかったみたいね。でも、ススーロのおかげで打ち解けられたみたい。
 ドクターはまふゆのことを知っているみたいだけど…どうなるのかしら?
 本編とはんぺんって似てるわよね。


第四話 決意と不穏

 

「まふゆさん。定期検診の時間だよ。」

 なんとなしに暗いパソコンをいじっていた私に、ススーロさんが声をかける。

「ススーロさん、こんにちは」

「うん、こんにちは」

 にへらっと笑って挨拶を返してくれるススーロさん。

「まふゆさんは、ロドスの外に身寄りはあるの?」

 カルテに何か書き込みながら、ススーロさんは私に質問をする。

「えっと、日本の、シブヤに家があります」

 そう言うと、ススーロさんは怪訝そうな顔をして、

「ニホン?……シブヤ?………」

 と私の言葉を反芻した。どうしたんだろう。特に変なことは言ってないはずだけど。

「えっと…とっても田舎だったりする?地図にも載らないような」

「え?…いえ、ビルとかは立ってますけど」

「まふゆさん、多分だけど、テラにそんな地名はないよ」

 

 ……え?

 …落ち着いて、冷静に考えよう。『源石』、謎の黒い宝石のこと。そしてこの宝石は超有毒で、長く触れていると『鉱石病』という不治の病気に罹ること。そしてその患者は『感染者』として迫害されていること。

 新たな単語『テラ』。これまでの情報から、ここが私の元いた世界とは別の世界なのだと、感づいていた。とすると、この『テラ』はこの世界の地名、それも大きな括りで、大陸だとか、惑星だとかという結論に至る。

 

 ここまで五秒。リカバリー可能範囲内。

「ああ…そうなんですね。すみません。私の思い違いだったかもしれません」

「じゃあ…身寄りはないの?」

「あー…はい、そうなりますね」

 しかし、そうなると私は今どこにも頼れるところが無いことになる。どうしたものか…。

「じゃあさ、ロドスで一緒に働こうよ。私達と」

「え?」

 ススーロさんからそんな話を切り出される。

「いいんですか…? 私はまだ未成年なんですが」

「大丈夫だよ。あなたより小さい子もいっぱい在籍してるし」

 それはそれで問題なのではないだろうか。

「ロドスは非営利団体じゃないからさ。患者さんからは治療代を払ってもらわなきゃいけないんだ。で、それを払える能力がない人は、ロドスでの奉仕活動をしてもらうことになってるんだよ」

 なるほど、そういうことか。

「治療代は、その人の給料から天引きされる。ロドスでの生活を気に入って、そのまま定職にする人も多いよ」

 それなら、そんなに悪い環境じゃないのかもしれない。だが…。

「少し、時間をもらってもいいですか?」

「いいよ。大事なことだから、ゆっくり考えて。 それじゃ、今日の検診は終わり」

 ススーロさんが立ち上がる。

「ああ、そうだった」

 何か端末を操作している。

「ここをこうして…よし。そのパソコン、つくようにしておいたから、使ってもいいよ」

「…ありがとうございます」

 見られていた。別にどうとは思わないが。

 ともかくこれは本当にありがたい。病室で暇をすることはなくなりそうだ。

 ススーロさんの背を見送る。

 しかし…ロドスで働く。考えたこともなかったが、この世界で生きていくには、これしか無いんじゃないだろうか。充実した医療設備。数日のうちに出された病院食は、どれも不味いものでは無かった。あの言い方だと治療代さえ払いきればちゃんと給料も出る。

「悪くは…無いかな…」

 ここが本当に異世界だと言うなら、元の世界に帰る方法も、探さなければならない。しかしそうなると一つ問題が出てくる。

 あちらの世界の私は、トラックに轢かれて死んでいるはずだ。そうなると戻る方法はないのかもしれない。

「………………」

 もし、そうなら。

「奏……………みんな…………」

 最悪を想像して、吐き気がした。

 

 

 その日の夜、暇つぶし用に支給された知恵の輪を解いていると、扉が開く音がした。

「やあ。君がアサヒナマフユだね」

 真っ黒いコートに、これまた真っ黒なバイザー。顔も見えない。いかにも「不審者です」といった風貌の人物に、警戒心を強める。

「……貴方は誰ですか」

「警戒されてるねえ……まあ仕方ないか。こんなんだし」

 その人物は肩を落とす。気を損ねたんだろうか。自業自得だ。

「グラベル。この部屋に誰も入ってこれないようにしてくれ。聞き耳も立てるな」

「この子にやらしいことする訳じゃないわよね」

「まさか、からかわないでくれ」

「うふふ…了解」

「!?……どこから……」

 とにかく、出口を塞がれたようだ。まずい。

「自己紹介が遅れたな。私はドクター。ロドスの戦場指揮官をしている」

 戦場…指揮官…?

「戦争でもしているの? 製薬会社なのに」

「ロドスの目的は、鉱石病が起こす全ての問題の解決だ。時にはそういう手段に頼らざるを得ないときもある」

 頼らざるを得ない?戦争が?

「戦争なんて、ない方がいいに決まってるじゃないですか。人の命をなんだと…!」

「断じて軽んじてはいないよ。ただ…」

 言葉を詰まらせる。どんな弁明が飛んでくるんだろうか。

「それは必要な犠牲だったと、より良い未来への礎だと、そう思わなければ、

 

 我々は前に進めない。

 

この世界は、そのくらい残酷なんだ。アサヒナマフユ」

 

 絶句する。命を軽んじているとか、そういうのじゃない。今まで死なせてきた人の全ての命を背負っている。その上で、この飄々とした態度を取れるのだ。意味がわからない。それがどれ程重いものなのか、私には知り得ない。

「まあ、そのことは…君がロドスで働くといったあとに、嫌というほど思い知ることになるよ。君がそう望めばね。私は今日、君を絶望に叩き落としに来たわけじゃない。」

 まだ衝撃から立ち直れない私に、単刀直入に聞こうか。と、ドクターと名乗る人物は、本題を切り出す。その時、

 

「ヨイサキカナデという少女を知っているか」

 私の時間が、止まった。

 

「………………え…………………?」

「あれ……人違いだったかな…ごめん、心当たりがないなら…」

「奏が! この世界にいるんですか!?」

「うおっびっくりした」

 奏がいる。この世界に奏がいる。

「ああ…実は数週間前までロドスにいたんだ。旅立ってしまったが」

「奏と連絡は取れないんですか!?」

「安静に! 君足をけがしてるんだよ!」

 ハッとする。そうだった。絶対安静。

「ふう……」

「落ち着いたかい? ……結論から言えば、カナデとは連絡が取れない状況だ。この世界に全世界で通用する通信機は存在しない。」

「そうなんですか…」

「君がロドスに搬送された時、まさか、とは思ったんだ。カナデはしきりに君の名前を言っていたから。『わたしが来れたんだからマフユもいるはず』ってね」

 なんだかぽかぽかする。奏も私を探してたんだ。

「で、確信したのがこれ。君の源石関係の検査結果」

 そう言って、ドクターは私にタブレットを見せた。

 

 【源石融合率】0%

 【血中源石濃度】0.00u/L

 

「これはカナデの検査結果と全く同じだ。…理由は分かるか? …君たちはこの世界に来たばかりで、源石に触れることが今まで一切無かった。それがこの数値を実現したんだ。」

 よく分からないが、まあそういうことなんだろう。

「さぁマフユ。ロドスで働く気になったかな?」

「………?」

 奏のこととロドスで働くことがうまく線で結ばれない。どういうことだろう。

「ロドスはその性質上、様々な場所に遠征をしたりするんだ。だから、いずれはカナデと出会うことがあるかもしれない」

「やります」

 即決だった。

「いいね、速戦即決。よし、わかった。君のことは、私が人事部に推薦しておくよ。足が治ったら適正テストがあると思うから、それに備えておいてくれ。」

 そう言うと、ドクターは踵を返して扉へ向かう。その背中に、声をかけた。

「あの! …カナデは、なんでここから出ていったんですか?」

 ドクターは振り向いて言う。

「もっと違う世界をこの目で見てみたい。私の音楽で、この世界の人々の心を、マフユを救うために。  ……これは旅立ちの前、カナデが私に言った言葉だ。あの子は本当に音楽が好きなんだな」

 奏らしいな、と思った。でも、

「今度は、私が見つける番」

 私と奏の、終わらないかくれんぼが始まった。

 

──────────────────────

 

「ふう……グラベル、もういいぞ」

 グラベルに声をかけ、ドアを開ける。

「お話はすんだ? ドクター。」

「ああ。もちろん穏便にな。」

「うふふ…」

 グラベルが姿を表す。本当にどこに隠れてるか分からないな。

「それで? ロドスに入るの?あの子」

「ああ、なんとか説得した」

「でもあの子…きっと苦労するわよ?」

「そりゃまた何で?」

 グラベルは少し考える素振りをしたあと、答える。

「なんていうのかしら…体の構造が、そもそも私達と違う気がするの。筋繊維の密度とかね。戦闘オペレーターには向かないかもね。かと言って、あの年齢で医療の知識があるとも考えにくいし…」

「なるほどなあ…」 

「そうなると、術師オペレーターや後方支援部ね。彼女、アーツは使えるの?」

「いや、わからない。適正テストがまだだからな」

「そうねぇ。…アーツ適性がないとなると、茨の道よ。探してる人がいるんでしょう?」

「君、やっぱり聞いてただろう」

「〜♪」

「はぁ…」

 後方支援部が直接作戦や遠征に参加することは、前衛や術師オペレーターなどと比べて極めて少ない。故に積極的に外勤させてやりたい彼女には足枷になる。

「ままならないなぁ…」

 私には、彼女の願いが叶うのを願うことしかできなかった。

 




 10!? 10!!?? もらって良いんですか!? やったァァァ〜〜〜〜〜〜!!!!! もう止まれない止まらない! これからも応援よろしくお願いいたします!!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。