こんにちは。入学初日にボッチが確定した一色いろはです。こんなところまで先輩の真似してどうするんでしょう?
ここは体育館。部活動説明会の最中です。壇上では、堀北会長が例のパントマイムを始めていました。次第に静まってゆく館内。て言うか前から思ってましたけど、これってマイケルのパクリですよね?
ピクリとも動かない生徒会長を見ながら、意識はさっきの出来事へ・・・え?またアレ蒸し返すんですか?だって仕方ないでしょう?そうしなきゃお話が進まないんですから!(一人二役)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
茶柱先生が去り、クラスの時が止まってから数分後。
「えっと・・・僕たちはこれから三年間、一緒に学ぶ仲間だ。互いに自己紹介しないか?」
やらかした私が呆然と突っ立つ中、果敢にも声を上げたのはやはり彼でした。さすが平田くんです。
「う、うん!そうだね!」
「さ、賛成〜!」
その言葉に女子たちが続きます。どうやら私の一件はスルーされることが決まったようです。もはや諸々手遅れですが。(/_;)
「俺らはガキかよ?くだらねえ」
ええ、ガキですよ。貴方も私も。
原作通り、須藤くんや堀北さんは出て行きましたが、私は敢えて残りました。それを見た平田くんがギョッとしたのを責めることは出来ません。まさかこの状況で、私が自己紹介するとは思っていなかったでしょうから。
「じ、じゃあはじめに僕からやらせてもらうよ。僕は平田洋介。中学ではサッカーを・・・」
クラスメートたちの自己紹介を上の空で聞きながら、私は見えざる敵の手強さに戦慄していました。彼らを警戒するあまり、私はまんまと嵌められてしまったのです。勝手に暴走して自滅とか、アホな子ですね。早急に次なる一手を考える必要があるでしょう・・・(妄想癖)
「えーっと、次お願いしてもいいかな?」
「にゃ?!」
戸惑い気味な平田くんの言葉で我に返ると、なんということでしょう!もう順番が・・・ビックリしすぎて一之瀬さんが入っちゃいました。てか、なにも考えてない・・・
「あ!ご、ごめん!不愉快にさせたなら謝るよ。別に強制じゃないからね」
(グーグルいろはす翻訳:一色さんの自己紹介は要らないよ。どうせみんなもう、君の名前は覚えちゃったし・・・)
全力で謝罪してくる平田くん。彼がみんなの前でそんなことをすれば、ますます私の立場が悪くなることには気付かないのでしょう。残念ながら、このひとは葉山先輩と同類のようです。
「そうだよいろはちゃん。無理しないで!」
(グーグルいろはす翻訳:頼むからもうやめて!これ以上貴女を見てると吹き出しちゃいそうだから!)
猿芝居でフォローする櫛田さん。てか完全に腫れ物扱いですね、私・・・
「怯むな!反撃だっ!我が艦隊に退却の文字はない!」
「射線上に味方がいます!」
「構わん!撃て!ファイエル!」
脳内で繰り広げられる妄想艦隊決戦。そして・・・
「千葉県千葉市出身の一色いろはです。ガチのアニメヲタクなのでどうか放って置いて下さいごめんなさい」
ぐはっ!な、何を言ってるんですかいろはさん?
「あ、あはは・・・ありがとう。じゃ、じゃあ、次のひとお願いできるかな」
もはや拍手すらありません。すでに頭がオーバーヒートしていた私は、自らにトドメを刺してしまいました。戦いに敗れるとは、こういう事だぁー!!(ランバ・ラル大尉)
クラスに回復不能なダメージを与えた私は、逃げるように教室を後にしました。これから入学式ですが、どんな顔して参加すればいいんでしょう?こうなったらもうヤケクソです。転生者たちを徹底的に洗い出し、懲らしめてやるとしましょう。オーベルシュタインならぬ、一色いろはの草刈りです。
冷たい視線に晒されながら入学式を終えた私は、作戦行動を開始しました。このタイミングなら、きっとやつらはコンビニで無料商品を前に蘊蓄を傾けていることでしょう・・・
ところが。
何故??誰も居ません。(TOT) 転生オリ主どもはいずこにありや?全世界は知らんと欲す。
唯一、レジで騒いでいたのは須藤くんでした。バスケットに青春を懸けるスポーツ少年。確かに彼は勇者です。ただし昭和時代のね。
そんな、生まれてくるのが数十年遅すぎた彼は、端末を忘れて支払いが出来ず店員さんに絡んでいました。ここは原作準拠みたいです。
「どうしたんですか〜?」
取り敢えず男子相手なら、いつものアレが自動的に起動するようです。慣れって怖いですよね。
「あ?なんだお前?」
いきなり現れた私に失礼な態度の須藤くん。
「なにって、支払いを立て替えてあげようと思ったんですけど余計なお世話でしたか出直して来ますごめんなさい」
「へ?そりゃサンキューな」
私の自己紹介を知らない彼は、普通の態度で接してきました。まぁ、単にデリカシーが無いだけでしょうけど。
「腹減ってたんだ。助かったぜ」
屈託のない笑顔を向けてくる須藤くん。はっ!?何ですか?傷心につけ込んで口説いてるんですか?絶対無理ですごめんなさい。
さて、嬉しそうにインスタントラーメンへお湯を注ぐ須藤くんでしたが、ここで彼の空腹が満たされることは決してないでしょう。
「おい、どけよ新入り!」
やはり始まりましたね。例のラーメンぶちまけイベントです。煽られた須藤くんは、ひとしきり上級生たちと揉めてから去って行きました。残されたのは、床の上で湯気を立てるラーメンの残骸。つか、そのまま帰んな!フードロス、ダメ!絶対!
心の中で罵倒しつつ、モップを借りて床掃除をやる羽目に。ですが、精神的疲労で警戒心が低下していた私は不覚にも気付きませんでした。もう一度私に集ってラーメンをせしめようと戻ってきた須藤くんが、お店の外からこちらを見ていたことに。
彼の目に映ったのは、自らがぶちまけた獣欲の残滓を黙々と後始末する、健気な美少女の姿。あ、そういうフラグ要らないんで。
「やべぇ、俺、惚れたかも」
だから絶対無理ですごめんなさい。キモ。
尾けられてる・・・?
コンビニからの帰路。部活動説明会に向かっていた私は、追跡者の存在に気付きました。ここは実力至上主義の学校ですから、この程度は想定内。相手は・・・三人。足の速い
ファンネル!
集中力を高めるために、目を閉じます。頭の中ではあのテーマが流れ始めました。因みに、これらの言動に大した意味はありませんので気にしないで下さい。単なる中二病です。
急速に近付く足音。迎撃すべく、私は振り返りました。
「ヘッ!なかなか良い反応じゃねえか」
目の前に居たのは、まさかのドラゴン龍園くんでした。そのうしろには伊吹さんと石崎くん。もう手駒にされてしまったんでしょうか。
「どちら様ですか」
正直、いまは彼らと遊んでる暇がありません。
「ククク・・・そう警戒するなよ。まだ何もしてねえだろ?」
「ってことは、これから何かするつもりなんですね」
「ヘヘッ!話がはやくて助かるぜ」
あーこれはアレですね。暴力行為に対する学校側の対応を見極めるため、CクラスがDクラスに嫌がらせをするやつ。原作では確か中間テスト前だったはずですが、色々とイレギュラーが生じているのでしょう。てか、なんで私が標的に?
「さすがの貴方も、ペナルティーの基準は気になるんですね」
彼の表情が変わりました。
「・・・なんでそう思った?」
「何故だと思います?」
さっきやりましたよね、これ。
「ククク・・・気に入ったぜ。名前は?」
「こういう時は、先にそちらが名乗るべきでは?」
「て、てめぇ!龍園さんに向かってなんて口を・・・!」
ボスの他己紹介??をする石崎くん。お馬鹿な手下は困りものです。
(回想シーン終了)
部活動説明会からの帰り道。ようやく寮まで戻って来たところです。すっかり日も暮れ、辺りはもう真っ暗。いい加減ヘトヘトです。入学初日で三年分の気苦労を味わった気分です。もうフィニッシュ自主退学しちゃっても良いよね・・・(ダメ、絶対!)
ため息が漏れたところで、寮の入口から誰か出て来ました。あれは・・・掘北さん?これはまさか、例のお兄ちゃんイベントでしょうか?時系列がズレてる気もしますが、私という存在が原作の流れをかき乱しているのかも知れません。そして・・・
「今すぐこの学校から去れ、鈴音」
「嫌です兄さん!私は必ずAクラスに・・・!」
(グーグルいろはす翻訳:嫌です兄さん!もっと私をいじめて、めちゃくちゃにして下さい!)
こんなの、ほとんど痴話喧嘩だ。BPO案件だ。てか私も混ぜてほしい・・・ゲフンゲフン!
堀北さんの足が、宙に浮きました。これはさすがにヤバいです。咄嗟に飛び出した私は会長の右手首を掴みました。
「なっ?!お前は・・・!」
なっ?!じゃないですよ眼鏡くん。原作読んだ時から思ってましたけど、ここで止めなかったら確実に暴力事件になってましたよね。会長自身が被疑者とかシャレになりません。だいたいそうなったら誰が事件の審議するんですか。南雲副会長が仕切ってお兄さんを退学させ、橘書記や一之瀬さんは哀れ花と散り・・・
ようこそハーレム至上主義の生徒会室へ。アニメ化は無理ですね。
「シスコンも度を過ぎると嫌われちゃいますよ?」
「・・・その手を離せ」
次の瞬間、鼻先を掠める裏拳。バックステップしながら続く上段蹴りを躱し、伸びてきた左手も払い除けました。分かってはいましたが凄い攻撃です。
「ほぅ・・・今のを躱すとは、何かやっていたのか」
「・・・香道と戦車道を少々」
一度言ってみたかったんですよね、このセリフ♪ホントはレッドショルダーに憧れて通信講座でマーシャルアーツを習っただけなんですけど。自分の才能が怖い・・・
一瞬固まる黒眼鏡先輩。あ、やっぱり通じなかった?このひと、絶対深夜アニメとか見ないだろうし。
「・・・ここは学園艦ではない」
てか通じてる?!その顔でガルパン見てるとかウケるんですけど〜(折本さんか)
「い、一色さん?どうしてあなたがここに・・・」
呻くように呟く堀北さん。やはり兄と妹がプロレスごっこをするのはまちがっている。色々と捗ります。
「なるほど・・・お前が一色いろはか」
ひゃん!?な、なんでお兄さんにまで個人認識されてるんですか?別に私、入試全科目50点とかやってませんけど??
「鈴音、まさかお前に友達が居たとはな」
「彼女は友達なんかじゃありません。ただのクラスメートです」
即答!?まぁ、偽物の友情振り翳すよりはよっぽどマシですけど。今のひとことで、寧ろ彼女への好感度は上がりました。
「50万PPだ」
は?
「端末を貸せ」
いえ、だからなんでもポイントで解決しようとするそのやり方、止めません?碌な子に育ちませんよ?やはりこの学校の教育方針はまちがっている。なんかラノベがひとつ書けそう・・・
「ほぅ・・・この額では不満か?」
私の反応が鈍いのを勘違いしたのか、眼鏡の奥に宿る殺気。慌ててスマホを差し出しました。こんな学校、もうヤダ・・・
「!?」
襲いかかる本気の前蹴り。当たらなければどうということはない・・・とか言ってる余裕は無いです。
一瞬、気が緩んでいたのは否めません。シスコン会長の不意打ちをバク転して躱した私でしたが、彼は更に着地の瞬間を狙ってきました。凄まじい速さで飛んでくる中段蹴り。もう避けようがありません。あ、いま完璧にスカートの中が見えちゃいましたよね。こんな荒事になるって分かってたら、スパッツ穿いておくんだった・・・
しばらくお待ち下さい。(自主規制中)
ん・・・?
気付けばそこは、見慣れた教室でした。教壇に立つのは白衣姿の黒髪ロング。
「よし、今日は作文を書いてもらうぞ。題名は『中学校最初の一年間を振り返って』だ。原稿用紙の使い方に注意しなさい」
淡い記憶とともに蘇る景色。見回しても監視カメラは無いようです。ここは・・・総武中学?平塚先生の言葉を聞くに、どうやら中二に進級したばかりみたいですね。周りでシャープペンシルを動かしているのは、とっくに忘却の彼方に消し去ったかつてのクラスメートたち。
よう実世界にヒロイン転生した私は、堀北会長の蹴りを受けたはず・・・リゼロしたんでしょうか。ようこそ公立中学校の教室へ。確実にラノベ大賞の一次審査で落ちそうなタイトルです。
それにしても、微妙な時期に生き戻り(?)して来たものですね・・・
小さい頃から男子受けが良いぶん、女子どもからは総スカンを食っていた私。もともとひとりで居るのが好きだったので、その状況も大して苦には感じていませんでしたが、そんな私の態度が余計に反感を買ってしまったのかも知れません。(TдT)
中学に入っても事態は改善するどころか、むしろ悪化の一途を辿り、気付けば同性で親友と呼べる相手はゼロに。因みにスマホの電話帳に入っている男子諸君は単なる「お友達」です。大事なことではないので二回は言いませんが。
明るくて可愛くて勉強ができて、でも部活も委員会活動もやらず、いつも男子に告白されてはお断り。はい、それ私です。そりゃモテない女子からは嫌われますね。
あまりにベタな展開で逆恨みされた私は、針のむしろで一年間を過ごし、中二に進級すると今度は知らぬ間に生徒会長に立候補させられて・・・←いまココ!
犯人の目星はついてますが、物的証拠がありません。立候補の辞退は校則上無理なはず。どっかになんでも解決してくれる部活とかないですかね。チラッ
このあと、あの部室に駆け込んだとして、私は、先輩は、そして奉仕部はどうなるのでしょう?二度目なら、私たちはもうまちがえずに青春ラブコメ出来るんでしょうか?それとも・・・
あーこうなったらもう、本音を書いてしまいましょうか。やはり私の・・・
作文用紙に向かうと、私は一行目を書き始めました。
曰く、青春は悪である。
あれ?なんかデジャヴ?
【次回第4話:ようこそひとりぼっちの日常へ】
実力至上主義の毎日。私は孤独と孤高を履き違えてしまったのでしょうか・・・
はっ?!これってやっぱり単なるぼっちですかごめんなさい。