【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン籠もり10年目にしてダンジョン配信者になることになった男の話   作:アママサ二次創作

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第3話 地上の人たちこんにちは

 外の様子を見せたあと騒がしくなったコメント欄を放置して、昼の残りの肉を加工していく。肉の大部分はハムとベーコンに、残りの骨の周りなどは燻製と、今晩食べるスープの出汁用にわけておく。ロボが食べたそうに近づいてくるがお預けだ。

 

 実はダンジョン深奥の先にあるこの世界、野菜類の入手が難しい。果物や肉、スパイス類なんかは割りと手に入ったりするんだが、野生の野菜というのはなかなか見つからないものだ。というか現代で食べられるそれらは基本品種改良の上に管理して栽培しているものなので。

 

 とはいえ今日は怪我人もいるので、とっておきや採集せずに置いておいた野菜を後で回収してくるつもりだ。

 

「撮るのは良いが邪魔すんなよ」

 

 一旦室内の雨宮嬢の方へ行っていたドローンが戻ってきたので一応注意しておく。さっきの発言で聞きたいことはあるのだろうが、俺が邪魔をするな、強制するなと言ったので腰が引けているのだろう。

 

 実際雨宮嬢の命は今現在俺にかかっているので、そこで強く出れないというのもあるだろう。というか出られたら困る。

 

 その後、しばらくの間撮影されながら肉の加工に勤しんだ。眠っている雨宮嬢を映し続けるわけにもいかないのだろう。

 

 

 

******

 

 

 

 空が夕焼け色に染まってきた頃、小屋の方から人の動く気配がした。

 

「起きたみたいだぞ」

 

 あっち、と示すと、俺を撮影し続けていたドローンが慌てて小屋の方に戻っていく。というかあれバッテリーはどうなってるんだろうか。

 

 俺もほとんど完成したスープを火からおろして後に続く。

 

「あっ、……誰……?」

「細かいことは配信のコメント欄で説明してもらえ。その方が早いだろう」

 

 机の上に置いておいたスマホを彼女の寝るベッドの上に放り投げておく。

 

「あ、はい、えーと?」

「服はそこに置いてある。インナーだけ治療のときに切っちまった。すまん」

 

 雨宮嬢はまだよくわかって無いようであったが、一旦俺は外に出ておく。逐一説明するよりは何が起こったかをコメント欄に聞いた上で、そこから疑問を出してくれた方が答えるのが楽だ。

 

「ロボ! 飯にすんぞ!」

『バウバウッ!』

 

 スープの傍ら葉に包んで蒸していた肉がいい感じになっていたのでロボにも声をかける。俺の食べる分と彼女が食べるかもしれない分を切っておいて、残りをロボ用のバカでかい器にうつして地面においてやった。

 

「ちらかすなよ」

 

 一心不乱に食べ始めたロボには俺の声は聞こえていないらしい。

 

 そろそろ室内の方も解決したかと、自分の分と、少女の分のスープを更に盛って、肉を乗せた皿とともに室内に入る。

 

「邪魔するぞ」

「あ、はい、あの……」

「飯は食えそうか?」

 

 机の上に夕食を並べながら尋ねると、慌ててベッドから降りた雨宮嬢が立ち上がるので手で抑える。

 

「あの、お手伝いを、したいんですけど」

「ん、まあ後でな。まずは食えるなら飯にしながら話をしよう」

 

 椅子を彼女の隣に置くと、おずおずとそれに座る。俺も木箱を置いて彼女の対面に座った。

 

「いただきます」

「あ、い、いただきます」

「地上の飯ほどうまくはないと思うが、まあ素材はだいぶ良いから」

 

 まずはスープの前に肉をひとかけ自分の皿に取ってかぶりつく。雨宮嬢には一応細かく切る用のナイフも渡している。

 

「あ、おいしい」

「そりゃ良かった」

 

 肉の方はクライディアの肉を塩とスパイスで味付けしたのを焼いている。タンドリーチキンとかそういう系統の味だろうか。結構頑張ってスパイスの組み合わせは考えた。

 

 スープの方はクライディアの骨周りからとった出汁で野菜を煮込んだもの。野菜は15層ほど上の野菜型のモンスターが多数出現する階層で取ってきたものを以前保管していたものだ。毎日取りに行くには遠いからね……。

 

 いずれも素材自体は高級品と言って差し支えない味がすると思うのだが、いかんせん調味料、それも日本的なものは全く用意できていない。

 

 しばし無言が続き、その様子を上からドローンが撮影している。おそらくコメント欄ではまた何かしら言われているのだろう。

 

「怪我は痛むか?」

「え、あ、はい。全然痛くないです。その、ありがとうございます」

「なら良い。一晩もすれば完全に塞がる」

「あ、ありがとうございます」

 

 食の進み具合を見るに、雨宮嬢の方も怪我の後遺症は特に無いようだ。まああの軟膏、内臓まで届く傷でも余裕で治るレア物だからな。言ったらまたうるさくなりそうだから言わないが。

 

「怪我が治り次第地上まで送る。何か質問はある?」

「あ、はい、えーと」

 

 チラチラと視線がスマホに行っているので、自分で考えるのが苦手なのか、あるいは聞けと言われたことがあるのだろう。

 

「別にスマホ見ても失礼とは思わんよ」

「あ、すいません……あの質問したいことがいくつかあるんですけど、大丈夫ですか?」

「内容による」

 

 彼女が確認したコメント欄にはそれこそさっき俺が言ったような面倒くさい思惑のやつがいるかも知れない。

 

「はい、それじゃあ1つ目なんですけど、さっき話した? 現在地がどこなのか改めて説明してほしい、です」

「……まあ良いけど。ここはダンジョンの一番下のその先にある」

「深層の先、ですか?」

「深層の一番奥まで行くと下の層への道が開いてな。それを何回も繰り返してどんどん下に潜ってく。そんで、俺の知る限りじゃあ新宿から繋がってるダンジョンはここにつながる階で最後だった」

「ここはダンジョンじゃないんですか?」

「ここは空があってその向こうに星が見えるからな。勝手な想像だけど、ダンジョンとは別物の異世界……それか上層、中層、下層、深層、そしてこの最深層、って言えばいいか? とにかく深層とは全くの別物だと思ってる。もしくは、宇宙まで再現されたダンジョンの階層なのかもしれんけどな。そこまでは知らん」

 

 天井が無いのはここだけだわ。

 

 なるほど、と言う彼女に、今度はこちらから興味が湧いて聞いてみる。

 

「今地上の最前線はどれぐらい?」

「え? あ、えーと、日本だと新宿が一番深くて深層の第11地区まで到達してるはずです。でもアイテムの調査が進んでるのは第3地区ぐらいまでで……海外は詳しく覚えてないですけど、日本よりは進んでたと思います。でも深層を踏破したって話は……」

「なるほど。そんなもんか」

 

 俺が地上にいた頃も探索の進行速度は遅かったが、今でもそれは変わってないらしい。いや、これに関しては俺が例外なだけか。

 

「それじゃあ次の質問です。えーと、そこからどうやって私を地上まで送ってくれるんですか?」

「ああ、それは気になるか。俺が飼ってるモンスターがいてな。そいつが足が速いから背中に載せてもらって運んでもらう。道中の露払いぐらいは俺がする」

「……深層のモンスターに勝てるんですか?」

「勝てなきゃここまで来てないだろ。流石に勝てない中をくぐり抜けてこんなところまで来るほど命知らずじゃない」

 

 なるほど、と頷きながらも雨宮嬢の表情から不安は消えない。もういっそのこと寝ているうちに運んでしまうか。確か睡眠か麻酔系の薬か魔法陣があったはず。

 

「ええと、ここから先は私の質問というか──」

「動画見てる人らの質問だろ。まあ良いよ別に。俺が、俺の意思で答える限りは何の文句も無いよ」

「ありがとうございます! ええとそれじゃあ────」

 

 そうして、日が沈んでゆく中、久しぶりに地上に触れる俺と、初めて深奥の先を知る彼女らとの質問会が始まった。

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