生暖かい目でお読み下さい。
「ふーっ……手こずらせやがって」
黄金樹の内部、宇宙を思わせる幻想的な空間で、剣を使う異形の獣【エルデの獣】を殺した俺は、減った体力を戻す為に聖杯瓶に溜まった水を一気に飲み干した。
「しっかし……いくら何でも現実にこんなことが起こるなんてな」
俺、まぁ今はしがない褪せ人としてこの狭間の地を歩いているが、元は普通の何処にでもいるゲーマーだった。
そうしていつものように面白いゲームがないか某有名サイトで探していると、ふとあるゲームが目に止まった。
エルデンリング。
あの死にゲーで有名なフ○ムが出した新作ゲーム。
これをプレイしないのはゲーマーの名が廃る、そう考えた俺は迷うことなくエルデンリングを購入し、その日のうちに一周目を終わらせる程ハマってしまった。
そうして二週目、三週目とエンディング分岐や、サブイベなどを順調にこなしていき、もうこのゲームでやれることは全てやり残したと思った頃……俺は気付けばこの世界にいた。
そう……このエルデンリングというゲームの世界に俺が居た。
「初めはびっくりしたよなー、訳も分からず初期位置に引き篭もってた事もあったし」
見慣れた風景、見慣れない視界。
非日常過ぎる展開に俺は混乱しかけていたが、そこはゲーマーの意地がある。
どんな突発イベや難関イベも諦めずにクリアして来た俺にとって、こういう展開は寧ろゲーマーの意地の見せ所、ノーデスノー祝福でクリアしてやるよ! ……っと意気込んだ次の瞬間には、接木の貴公子に滅多刺しにされ、あの洞窟で目を覚ましたわけだが……。
「辛い事も沢山あったなぁ……ツリーガード先輩は容赦ないし、マルギットは糞強ぇし、ライガードはキモいし、ラダーンは訳分かんない事してくるし……オマケにヒロインのラニやメリメリとも全然話せなかったしなぁ」
一応この世界では褪せ人の俺は、例えばメリメリにレベルアップをしてもらえたり、円卓に呼ばれたりと、エルデンリングのゲームプレイ通りの事が出来た。
そこは何も問題なかったんだが、どういう訳かゲームではある程度話せば同じ会話を繰り返すだけだった人達は、普通の人間の様に俺が話す事に対してリアクションをとれる様になっていた。
まぁ例を出せば……フィアたんに何度も抱いてくれと頼んだら気持ち悪がられたり、メリメリに何度もレベルアップだと嘘ついて体に触れて貰った後でレベルアップを断って気持ち悪がられたり、ラニの部屋でずっと体育座りして俺が嵌めた指輪を眺めるラニを眺めていたら気持ち悪がられたり、ラーヤの蛇化した鱗を一枚ずつ指でなぞって気持ち悪がられたり……うん、キモいな俺。
「まっ……そんなキモい一週目ともこれでおさらばだ、どうせエンディングを迎えたら二週目に行くだろうし、そしたらエルデの王なんてならないで、出会う女性を片っ端から口説いてこの狭間の地をハーレムの地に変えてやるぜぇ……」
ぐへへへへっ……ん?
何だこの変なリング?
エルデの獣を倒した俺の前には、元の世界と同じ様に壊れかけのマリカ像が佇んでいて、確か地面にある顔を首に嵌め込めば通常のエンディングに行くはずだ。
……しかし、そのマリカ像の後ろに何か変に湾曲した光が見える。
あんな光りは元の世界でプレイしたどのエンディングにもなかったはず……レベルをカンストするまでやり込んだ俺がエンディングを見逃す筈もない……一体あれは……?
「……何かエンディング分岐する様な事でもしたのか、俺? まぁ何でもいいや……どうせ二週目行くなら、見てないエンディングを回収しときますかね」
そう言いながら俺は腰にあるメイスを片手で握り締めた。
フ○ムゲーを触った時からの俺の相棒であるメイス、生身の体でこの狭間の地に来てからも、やっぱりこいつが1番しっくり来たんだようなぁ。
っていうか重量武器とかでどうやってローリング回避すんだよ、回避が死ぬ理由って笑えねぇぞ、祝福で復活するとしても痛ぇもんは痛ぇんだからな。
「取り敢えず……なんか光ってるし壊せばいいだろ」
おぉ、何かもう神秘的な見た目しちゃって。
近づいただけでなんか神々しさというか……上手く言葉に出来ないけど、この世界そのもの的な、そんなサムシングを感じる。
「では……ありがとうそしてさようなら! 一週目!!!」
パリィィン
エルデンリングは砕け散った
異世界から来た男によって砕かれたそれは
もはや修復する事すら叶わない
完全にエルデンリングが失われた地で
男はそれでも二週目を求めたという