「……結構硬いかなって思ったけど、案外柔らかかった」
さて……果たしてどんなエンディングに行くのか。
一応ゲームでは全エンディングを回収し終わってるが、ここに来るまでに特別何か分岐した感じは無いし、そもそもあの光っていたリングが何だったのかも謎のままだし。
ゲーマーとして謎を残したまま二週目に行くのは少し気が引けるが、仕方ない。
俺には酒池肉林のハーレムリングが待っているんだ、一つや二つの謎なんてどっかのゴドリックにでも接いでおけ。
「そういえばゲームだとアクションをしたら、すぐエンディングに切り替わってたけど、今の俺の場合だとどうなるんだ?」
通常のゲームプレイでは、エンディングの演出は当たり前っちゃ当たり前だがムービーとして演出されていた。
しかし今の俺はコントローラーを持つプレイヤーではなく、このエルデンリングというゲームの世界に実在する一人の褪せ人。
という事は、もしかしたら待っているだけではエンディングには行かないとか? あり得るな……。
確かノーマルエンドはこの黄金樹を出て、目の前の広場にある椅子に座って終わるんだっけか。
「ま、考えていても仕方ないしとりま此処から出てみるか」
確かこの黄金樹の中から歩いては出られなかった気がする、となると祝福を使って出るしかないけど……ここに祝福ってどっかにあったっけ?
「祝福や〜、出ておいで〜っと……ん?」
……あれおかしいな。
さっきまで俺以外誰も居なかった筈なのに、何か人影がある。
後ろ姿しか見えないが髪が長い……女? しかもパツキンだぞあれ。
何かさっき光ってたリングを壊した場所に立ってるけど……もしかしてあの人のエンディングか? いやいやいや! あんな人知らないんですけどぉ!?
「あ、あの……は、初めまし……て?」
「……エルデンリングは砕かれた……深く感謝するぞ、褪せ人よ」
振り向いた女の人は俺にそう言った。
エルデンリング? エルデンリング……ってどんなやつだっけ? 何かトレーラーとかで聞いた事はあるけど、ゲームをしている時にはあんまり出てこなかったからなぁ。
何となく凄いものってのは分かるけど。
「えっと……もしかして俺何かしちゃいました?」
「……? お前が砕いたのではないのか? あの獣を殺したのもお前だろう?」
「あ、エルデの獣の事ですか? いやマジ大変でしたよ。
ゲームだったらただコントローラーを押せば走れましたけど、今は生身であの地獄のシャトルランをしないと行けなかったんですから。
あんなの獣じゃなくて害獣ですよ、害獣」
「……よく分からないが兎に角、あの獣そしてエルデンリングを砕いたお前は英雄だ、お陰でここに閉じ込められていた私も解放された」
女の人は楽しそうに腕や足を動かしてる。
はて……何かが引っ掛かるな、黄金樹に閉じ込められていた女の人、そして長い黄金の髪。
……そういえばこの人の顔、エルデの獣の前に戦うラダゴンの顔に少し似てるな。
ラダゴンと似ている顔……え、もしかして【マリカ】?
「あの、もしかして貴方……マリカ様だったりします?」
「そうだ」
俺の質問にマリカは何を今更と言った感じで、つまんなそうに答えた。
えー……どうしよ超有名人じゃん、サイン欲しい。
っていうか確かゲームの設定だと、この人がエルデンリングを壊した後、ラダゴンが壊れたエルデンリングを修復しようとしたんだっけか。
それでエルデンリングを壊した罪として、マリカはこの黄金樹の中に閉じ込められたんだっけ……ん? じゃあ俺ももしかして閉じ込められたりしちゃうのか? ひょっとしてそれが隠しエンディングだったり……。
ったくフ○ムめ、変なエンディング隠しやがって。
主人公が閉じ込められるエンディングとか誰得だよ、もっとこう……星の世紀エンドみたいなサービスはないのか。
「えっと……もう一つ聞きたいんですけど、俺ってエルデンリングを壊しちゃったじゃないですか?」
「そうだな」
「じゃあ俺も罰としてここに閉じ込められたりしちゃいます?」
「いいや褪せ人よ、その心配はいらない」
そう言いながらマリカは上を見上げた。
そんなマリカに釣られて俺も視線を上に向けると、まるで腐った木の様に朽ち果てている黄金樹が見えた。
「……エルデンリングが完全に砕かれた今、最早狭間の地に律は無い。
黄金律無き今、祝福も呪いも力も失われただろう……しかしもうよいのだ、可愛い我が子や我が王をこれ以上……私は苦しめたくはない」
「……」
そう言ったマリカは悲しそうな顔をしていた。
……いや、え? ちょっと待って?
多分マリカ的には今感動シーン中なんだろうけど、ちょっと待って?
いや、【二週目】は?
全然行かないんだけど、どういうこと? こんな長いムービーシーン隠しエンディングに使わないでしょ、勿体無いし。
それに今マリカさん何て言った? 何か祝福が失われたとか言ってませんでした? いやいやいや困るんですけど。
聖杯瓶どうすんの? 移動とかもどうすんの? 壊した俺が言うのも何だけど頭おかしいんじゃ無いの? こんな魑魅魍魎な敵だらけででバンバン死ねる狭間の地で祝福なかったら終わりなんだけど。
でも何か雰囲気的にここで、「エルデンリング、直しましょっか! マリカ様!」なんて言ったら壮大なBGMをバックにマリカが敵対しそうだしなぁ……。
ってか、何でマジで二週目行かないの? 確かゲームだとエンディングの後に暗転して、選択が出て来たよな……とするともう何処かに俺に見えないだけで選択肢が出てるのか……?
「ここか? ……いやこっちか?」
「……何をしてるんだ?」
「あ……いや、お構いなく」
「そ、そうか……ところで褪せ人よ、お前はこれからどうするんだ?」
「え? どうするって……」
どうするもこうするも俺はこんな難易度爆上がりのふざけた一週目なんてとっとと終わらして、酒池肉林のハーレムを味わいに行くんだよぉ……!
「お前はエルデンリングを砕いたのだ、多かれ少なかれ黄金律を信仰していた者達からは、恨まれるだろう」
「へ、へぇ〜! ま、まぁ関係ないっすけどね!」
「我が半身もお前に対して強い怒りを感じている、恐らくラダゴンが私と入れ替わった時、真っ先にお前の事を殺そうとするだろう」
「は? ラダゴン? いやいや俺はさっきそいつを殺したばかりで……」
「あぁ、どうやら黄金律が失われた事で黄金律へ回帰していた魂が全て元の肉体に戻ったようだ」
マリカの言葉に俺は思わず、倒した筈のデミゴット達の追憶を確認する。
おい……おいおいおい、冗談じゃねぇ。
無い、追憶どころか他の黄金のルーンとかその他諸々が無くなってる。
それってつまり俺が必死こいて倒して来たデミゴッドが復活してるって事か? やべぇ……自分で言ってて頭痛くなって来た。
頼むから早く俺を二週目に行かしてくれ、なんなら手持ちのルーン全部払うから……あ、100ルーンしかねぇ。
「私はこれからこの狭間の地を再び治める為に動く……英雄よ、選ぶがよい」
そう言いながらマリカは、朽ち果てた黄金樹の隙間から覗く光に当たり、俺に満面の笑みを浮かべながらこう言った。
「私と一緒に来るか、それとも黄金律なぞに媚びない真の狭間の王となるかを!」
ははっ……そんなの一つしかないだろ。
「エルデンリング、直しましょっか! マリカ様!」
デェーン(タイトルBGM) 永遠の女王 マリカ