集うのは
ブラックマーケットの中に、とあるカフェがある
決して目立つ場所には無い。建ち並ぶ建物の中、ひっそりと隠れるように存在する、知る人ぞ知る隠れた名店
だが、そこはブラックマーケット。例えどんな名店だろうと、金を求める強盗に襲われる事もある
「──オラァ!動くんじゃねぇ!」
「金寄越せ金!」
しかし──まぁ、そんな所で商売を続けていられるのには、もちろん理由がある訳で
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「……またか。ありがとワカモ。外に返してきて」
「はーい」
ボコボコにされた不良達を外へ放り出してもらい、皆で開店準備を進める。ミレニアムでの一件から再び転生し、そこで一つ心変わりがあった
行きたくなくなったのだ、学校に
元々、転生を繰り返しても学校に通っていたのは、二度目の青春を楽しみたいという気持ちが少しあったから。けれど、そんな気持ちがどういう訳か全て消えてなくなってしまった
「リンネ、豆の在庫があまり無い。今日で切れるぞ」
「マジ?アキラに買い出し頼も」
「私の薬をコーヒーって事にして出せないかな」
「無理」
何でだろうな、という疑問が解消されるのは意外と早かった。シロコと名乗る女の子が俺の元に現れたからだ
何でも、前の俺はミレニアムではなく別の時間軸に転生していたようで。そこで色彩?とかいうのに触れたり色々あった影響の心変わりではないか、という話をタブレットの中の女の子──プラナから聞いた
「リンネ、掃除終わったよ」
「リンネ先輩、私も」
「カヨコもシロコもありがとう」
そうして、やる事もないので何となくカフェでも開いてゆっくりしようかな、と思い立ったのがきっかけだった。シロコと、集まってきた子達──狐坂ワカモ、清澄アキラ、申谷カイ、鬼方カヨコ。彼女達を従業員に迎え、細々と経営している
彼女達はどういう訳か俺の転生の事を知っている。カヨコは俺の前のバイト先──柴関って所で俺の情報を得たり、トリニティに侵入したりヴァルキューレのセキュリティに入り込んだりして俺のことを探ったらしいけど、他の子は知らん。何で知ってるの俺のこと
「それじゃ、そろそろ開こうか」
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「お疲れ様、シロコ」
「あ……リンネ先輩」
閉店後の店内で、シロコと二人きりになる。基本的に、カヨコ以外はうちで泊まり込みをしてもらっている
理由は二つ。別の時間軸から来たシロコと、七囚人である三人にとって、安心できるのは恐らくここだけだと思うから
もう一つは……まぁ、単純に皆に居てもらった方が安全だからだ。何かあっても対処できるしね
「コーヒー淹れるね。ミルクと砂糖はいつものでいい?」
「うん」
俺に、シロコとの交流の記憶は一切残っていない。プラナとシロコ本人から聞いた話だけしか知らない。だからなのか、こうして一緒にいても、どう接すれば良いのか分からなかったりする
「はい、出来たよ」
「ありがとう」
カップを受け取り、口をつける。一息ついてから、彼女は言った
「……リンネ先輩」
「ん?」
「その…ありがとう、助けてくれて」
「あー……気にしなくていいよ」
「ううん。本当に感謝してる」
「……そっか」
事実としては知っていても、記憶が無い以上実感はない。だけど、彼女が嘘をつくような子じゃない事は分かる。それだけで充分だった
「……ずっとそうだった。私が危ないことしようとすると、いつも助けに来てくれた」
「……それは、俺じゃない俺だよ」
「変わらないよ。どっちもリンネ先輩だもん」
彼女の言う通り、どちらも俺には違いない。それでも、違うものは違う
「今も、こうやって居場所をくれてるし……」
「居場所が無いのは俺も同じだし……あぁいやあるっちゃあるのかもしれないけど…」
「……ふふ」
今のは何の笑いだろう。呆れられたのかな
「……だから、その。私、リンネ先輩には凄い感謝してるんだ」
「そっか」
「……だから、さ」
シロコが席を立った。そのまま俺の方まで近づいてくる。俺よりも身長が高いせいか、圧みたいなのを感じて、俺も席を立って後退りした
「し、シロコさん?一体何を」
「……リンネ先輩は、私のこと嫌い?」
「えっ?いや別にそういう訳では」
「なら好き?」
「す、好きだよ?もちろん」
「……」
無言のままジリジリと距離を詰めてくるシロコ。俺はもう壁に背中が当たっている。逃げ場がない
「し、シロコ?あの、近いんだけど」
「ねぇ、リンネ先輩」
シロコが俺の顔のすぐ横の壁に手を置いた。片手は俺の頬に添えられている。これはいわゆる壁ドンって奴だろうか。顔が熱い
「……恩返しが、したいの。リンネ先輩に」
「……へ?お、おう。ありがたいけど」
「私は今の生活に満足してる。だから何も望まない。リンネ先輩が居てくれるだけで幸せ。でも」
シロコが顔を近づけてきた。吐息がかかる距離。彼女の目は潤んでいて、吸い込まれそうなほど綺麗な瞳をしていた
「リンネ先輩が望むなら……私、何でもするよ?」
「……何でも、って」
「リンネ先輩が私を求めてくれたら、私、どんな事でも応えられるように頑張るから」
「ちょ、ちょっと待った!落ち着け!」
慌てて肩を掴み、押し返す。しかしシロコは抵抗するように更に身体を寄せて来る。俺はそれを必死に押し返そうとするが、力が強すぎてビクともしない
「し、シロコ、マジで落ち着いて。それ以上はシャレにならないというか」
「私は、それでもいいよ?」
「い、いやいや。良くないよ。ね?」
「……私じゃ、ダメ?」
「シロコじゃダメというか誰でもダメというか」
何故こんなに距離を詰めて来る。前の俺はシロコに何をしたんだよ。何があったらここまで好かれるようになるんだよ。ていうか、このままだとマズくないか。誰かに見られたりでもしたら
「……リンネ先輩」
「ひゃいっ!?」
突然耳元で囁かれ、思わず変な声が出てしまった。それが恥ずかしくて口を塞ぐ。シロコはそんな俺を見て微笑むと、俺の首筋へと唇を触れさせた
「……ッ!!」
柔らかい感触と生暖かい舌の感覚。ゾワっとするような快感にも似た刺激が背筋を走る。シロコはそのまま首筋をなぞるように舐め上げた後、軽く歯を立てて甘噛みしてきた
「……んぅ……ふぁっ……んんっ」
「シロコッ……やめて…」
何とか引き剥がそうと、シロコの両肩を掴む手に力を込めるが、彼女は一向に離れてくれない。それどころか、さらに強く抱きついてきた
「んっ……ちゅぷ……ふぁ……んぁ……」
何度も角度を変えながら繰り返される行為。頭がボーッとしてきて、段々と思考力が低下していくのを感じる。抵抗しようと掴んでいたはずの手は、いつの間にかシロコの腰に回されていた
「ん……はぁ……ふふっ」
「ダメだって……これ以上は……」
「手……説得力無いよ?」
「う……」
いつの間にかシロコの腰に回していた手が、引き剥がすどころか逆に引き寄せるような形になっていた。自分から求めているような体勢になっている事に気づき、羞恥心と罪悪感に苛まれる
「……触るの、腰だけでいいの?他にもあるよね?」
「…………っ」
「いいよ。全部、して?」
そう言って、シロコは俺の手を取り自分の胸へと導いた。服越しに伝わる柔らかさと温かさに、心臓が跳ね上がる
「リンネ先輩、こういうの好きでしょ?」
「……好き、だけどさ」
「我慢しなくていいよ。リンネ先輩がしたい事、何でもしてあげるから」
腰に回していたもう一本の手も取られ、段々とシロコの体を這って下に下ろされて行く
「んっ……はぁ……あっ……」
そしてついに尻に触れた。俺の意思じゃない。シロコの意思だ。彼女は俺の手を誘導しながら、甘い吐息を漏らしている
あの、いくらなんでも積極的すぎないかな
「やめようシロコ。本当に」
「んっ…指、動いてるよ?」
……これは、何を言っても止まらないやつだ。それならそれでいい。打開策は今思いついた
「……して欲しい事、あるんだけど」
「ん、何でも言って」
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「……あの状況から、頼むのがただのハグって」
「これが一番幸せなんだよ」
打開策はシンプルだ。ハグを頼む、たったそれだけ。ピンク色な雰囲気も一瞬で消えた。わかるか諸君、これが正解だ
「……これからも、私達の人生は続いてくけど…」
「うん」
「リンネ先輩は私と一生一緒にいるべき。ヘイローもお揃いだし」
「ヘイローに関しては喜んでいいのかな……まぁ、あの人に任されたし、とりあえずは一緒にいるつもりだよ」
いつまでかは分からないけど、皆が自分で生きていけるようになるまでは面倒を見るつもりだ。その先どうなるかは、その時になってみないとわからないけど
「私、リンネ先輩の役に立てるように頑張るね」
「もう充分だって」
「ん、まだまだ」
きっと、しばらくは死ぬ事のない平和な日々が続くと思う