死人の二度目   作:かゆ、うま2世

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RE:ミレニアム

「お」

「んえ」

 

 

あの後、リオ会長とヒマリを置いて外に出た。リオ会長は……ヒマリを残してるし、多分大丈夫だろう。それよりも今は目の前の人だ

メイド服にスカジャンという、中々奇妙な格好をした小さな女の子。名前は確か……美甘ネル、C&Cのリーダーだった筈

 

 

「ネルさん、だっけ」

「あぁ……?あぁ、記憶が無いんだったな。ネルでいい。まぁ…色々混乱してるんだろうが、それはお互い様だ。あんま気にすんな」

 

 

あんまりしっとりしてないので、多分ネルとは普通に友達してたんだろう。心配はしてくれてたんだろうけど

 

 

「あと、できれば他の奴らにも会ってやれ。心配してたからな。特にトキは……」

「おや」

「……噂をすれば、だな」

 

 

ネルとは違った声が背後から聞こえた。振り向いてみると、そこにいたのはちゃんとしたメイド服を着た女の子。話の流れから読み取るに、恐らくトキさんだろう

 

 

「リンネ先輩、お久しぶりです。記憶喪失のようですが、構いません。私も生まれ変わりましたから」

「……どんな風に?」

「無敵の後輩が無敵のメイドになりました」

『……リンネ、中学時代の縁のようです』

 

 

……やたら自己肯定感高い奴だけど、まぁ後輩だったら可愛がるだろうなって性格はしてる。C&C所属って事は結構強いんだろうな。微妙に想像できないけど

 

 

「では改めて。飛鳥馬トキです。よろしくお願いしますね」

 

 

──────────────────

 

 

 

「エンジニア部はここか……よし」

 

 

プラナの案内通りに進んで辿り着いたエンジニア部の工房。俺が会うべきは…白石ウタハ、という人らしい

 

 

『白石ウタハ。貴方が持っている銃……ウタハの制作者です』

「俺宛てに作った銃に自分の名前をつけたのか」

 

 

自分の名前をつけたものを人に持たせるとか、ちょっと理解できない感覚だが……まぁ、そういう感じの人なのだろう。多分

 

 

「……ウタハさん、いる?」

「─────」

 

 

カラン、と。紫色の髪の少女が工具を落とす音が響いた。紫色の髪──ウタハと思われる少女は、俺の姿を瞳に映して硬直している。

 

 

「……リンネ」

 

 

信じられないものを見るように──長年求めた物がようやく見つかったように、彼女は俺の名を呼ぶ。

 

 

「……リンネ、なんだね?」

「……その通り。いや……記憶喪失だから、この答えは厳密には間違ってるか?」

「……ううん。私のよく知るリンネだ」

 

 

ウタハはそう言って笑う。彼女はそのまま俺の元に向かうと、俺を正面から抱きしめた

 

 

「記憶を失っても、君は変わらないんだね」

「……そうらしい。俺は俺のままだって、皆そう言ってる」

 

 

皆、同じ事を言っていった。俺が俺以外の何かになる事はないのだと、そう言って何もかも忘れた俺を受け入れる

……友人が自分の事を忘れているというのは、一体どういう感覚なのだろうか。俺には、よくわからなかった

 

 

「……記憶、無いんだよね」

「あぁ。何も思い出せない。だから……君を知らない」

 

 

俺の言葉を聞きながら、ウタハは俺の頭を撫でる。それが心地よくて目を細めると、彼女は安心したように笑った

 

 

「……私の銃は役に立ったかい?」

「……それは勿論。めちゃくちゃ役に立った」

「そうか。それは良かった」

 

 

腰のホルスターにしまってある銃──ウタハに手を添えながら、俺は彼女の問いに答える。本当にお世話になった

 

 

「……私はね、君と離れたとは思っていないんだ」

「……そうなのか?」

「信じていたからね。君の側には──必ずウタハがあるって。君と私は、いつどんな状況でも繋がっている」

 

 

そう言って微笑んだウタハの顔には、悲しみだとか寂しさだとか、そういうネガティブな感情は全く見られない。ただ、本当に信じているだけの表情だ

 

 

「……私の言いたい事はこれで終わり。私にばかり構っている訳にはいかないんだろう?私はそれでも構わないけどね」

「……行ってくるよ。ありがとう、ウタハさん」

「ウタハで構わないよ」

 

 

抱擁が解かれ、ウタハはヒラヒラと手を振る。妙な名残惜しさから、それを一瞬だけ眺めて……俺は踵を返した

 

 

「……そうだ。作って欲しい物があるなら遠慮なく言ってくれたまえ。君の依頼なら、私も全力で当たるからね」

 

 

 

──────────────────

 

 

 

「あの……ち、チヒロさん……?」

「黙ってて」

 

 

ヴェリタスの部室に着くなり、青っぽい髪色の少女──各務チヒロに胸ぐらを掴まれて壁に押し付けられた

 

 

「……数ヶ月も行方くらまして、結局何も覚えてないって…はぁ」

「えっと、その……ごめんなさい……」

「……謝らないで。余計に腹立つから」

 

 

俺とチヒロの間には一ミリの隙間もない。完全な密着状態なので、胸の感触がその…何というか……

 

 

「……気にするのも一緒、か。まぁ、元気だったのは評価点。……本当に、心配したんだよ」

「チヒロさん……」

「……チヒロでいい」

 

 

俺の胸ぐらを掴んでいた手が離れ、チヒロはそのまま顔を俯かせて俺にもたれ掛かった。震える声で、彼女は呟く

 

 

「……良かった。本当に、何も無くて……」

 

 

……死んでいるのだから、何もなかった訳じゃない。騙すような真似をして悪いが……このまま黙っておくのが最善の選択だろう

 

 

「……探しても、見つからなくて」

「……」

「どれだけ探しても、見つからなくて……。本当に、怖かったんだから……」

「……ごめん」

 

 

……何を言えばいいか、わからなかった。死んだ後まで、こんなに心配してくれる人がいるなんて思ってなかった。いや……違う。きっと俺は、自分が死んだ後の事なんて考えてなかったんだろう

 

 

「もう…もう、どこにも行かないで。いや……絶対、離さないから」

 

 

震える声でそう言って、チヒロは俺を抱きしめる力を強める。それに応えるように俺も……彼女を抱きしめた

 

 

「おかえり、リンネ」

 

 

──────────────────

 

 

 

「──お久しぶりですね、リンネさん」

「……何か、こうして会うと何言えばいいかわからなくなるわね…」

 

 

次に訪れたのはセミナー。出迎えたのは会計のユウカと書記のノア。いい人そうなんだけど、なんかやけに落ち着かないな。入るなり正座させられたのが原因の九割だと思うけど

 

 

「さて……リンネさん」

「うひゃっ!?」

 

 

俺の後ろに回り込んだノアの声が耳元で聞こえた。耳に吐息がかかる程の至近距離で、囁くような声が……待って、破壊力高すぎる

 

 

「ほら、ユウカちゃんも」

「わ、わかってるわよ!」

 

 

ノアは後ろ、ユウカは目の前。圧が強すぎて正直逃げ出したくなるが、正座状態で腕を掴まれてて逃げられない

 

 

「……アリスちゃんが持っていた貴方の上着。それに付着した黒い汚れ…単刀直入に聞きます。リンネさん、貴方は──一度死んだのですか?」

「…………」

 

 

ケイから聞いた話だ。生塩ノアは、一度見たものを完璧に覚える事ができる。俺があの日ケイ……アリスにかけた上着を、ただ一人俺のものだと分かったのだろう。そして黒い汚れ──血液のシミから、俺が一度死んだのかもしれないと結論を導いたのだ

 

 

「……」

「……無言、つまりは肯定でしょうか」

 

 

ノアが口を開く。声色から感情が読み取れない。怒っているのか、悲しんでいるのか、それとも別か。伝わってくる何かが、どういったものなのかわからない

 

 

「……そう、だよ。俺は一度死んだ。誰に殺されたわけでもないし、自殺でもない。ただ、死んだんだ」

「……やっぱり、そうだったのね」

 

 

ユウカが納得したように頷く。その呟きに込められた意味を、俺は読み取れない。俺は確かにここに生きているのだから、死を悲しもうにも……

 

 

「……どういう経緯で甦ったのかはわからないけど、まず」

 

 

ユウカは一旦言葉を止めると、俺の頬を両手で掴んだ。そして……視線を合わせた俺に、こう言い放った

 

 

「もし、もしまた復活できるとしても、自分の命を粗末に扱ったりしないで」

「……え?」

「私達にとって、貴方がどれだけ大事な存在なのか……わかるでしょ?」

 

 

泣きそうな声で、ユウカは続ける。彼女にとって俺がどんな存在だったかなんて知らない。わからないが……その言葉だけで十分だ。彼女の言葉は、間違いなく俺の心に響いているから

 

 

「……私からも、同じ事を伝えておきますね」

「……気をつける。ごめん」

「はい、反省してくださいね。……おかえりなさい、リンネさん」

 

 

そう言ってノアは微笑む。ユウカも頬を掴んでいた手を離して、俺の頭を撫でた

 

 

「おかえり。また会えて嬉しいわ」

「……ただいま。ありがとな」

 

 

──────────────────

 

 

 

 

………最近

 

 

『遅イゾ』

 

 

幻聴が、聞こえる

 

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