死人の二度目   作:かゆ、うま2世

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足音

「あー!」

「ん?」

 

 

ケイの声……?だけどなんか違う。ケイはこんなにテンション高くない

 

 

『王女……アリスです。私ではありません』

「アリス……あぁ、なるほど」

 

 

ケイは自身を鍵、と表現した。つまりは……廃墟の奥で眠っていたあの体の…というより、ケイの主人はアリスになるのだろう

 

 

「アリス、どうかしたの?」

「アリス、リンネ先輩とケイにお礼を言いに来ました!」

「……お礼?」

『私にも……?』

 

 

ケイはわかるが、俺も?何かしただろうか。……まぁ、いいか。アリスの嬉しそうな顔を見ただけで、そんな些細な事はどうでも良くなる

 

 

「……私と一緒にいると、アリスはいつか魔王になってしまう。だから離れなければいけないと、ケイはそう言いました」

「そうなの?」

『……否定はしません』

 

『……早クシロ』

 

 

……まぁ、ケイがアリスを大切に思っているのは前ミレニアムにいた時からわかっていたが、何ともケイらしい不器用さだ

 

 

『……大切な人と離れるのがどういう事か、多少はわかっているつもりですから』

「今、ケイはリンネ先輩の中にいるんですよね?」

「そうだけど」

「ならよかったです!多分、ケイがやりたい事はリンネ先輩の側にいる事なんだと思います!」

「……ちょっと照れるね」

『……やめてください』

「リンネ先輩は、これからもケイといてあげてくださいね!」

 

 

彼女の性格特有の直球さというか、思った事をストレートにぶつけてくる事に対して……少し戸惑った。ここまで素直な想いというのは、中々に受ける側としては恥ずかしい

 

 

「アリスの方はどう?楽しい?」

「はい!こうやって楽しく過ごせるのも、ケイとリンネ先輩のおかげです!」

「そっか。なら良かった」

『……えぇ』

 

 

俺もアリスを探していたけど、アリスの方から来てくれた。ミレニアムでの用事はこれで終わり……

 

 

『死ネ』

 

 

……いいところだったのに、うるさい

 

 

「ケイもリンネ先輩も、いつでも遊びに来てくださいね!アリスはいつでも大歓迎です!」

「あはは、ありがと!じゃあね、アリス」

『……また会いましょう、王女よ』

 

 

手を振ってから走り去っていくアリス。彼女の笑顔が見えなくなるまで……俺たちも手を振り続けた

 

 

『早ク死ネ』

 

 

……幻聴を、気にしないフリをして

 

 

 

──────────────────

 

 

 

「……リンネ先輩、会いに行くって本当?」

 

 

カフェに戻り、自室のベッドに寝転んだ俺のすぐ側に座ったシロコがそう聞いてきた。シロコの言う会いに行くというのは……まぁそのままの意味だ。以前の俺が会い、関わった人達に会いに行く

 

 

『願イガアルダロウ?』

 

「いいの?」

「……流石にほっとく訳にはいかない状況になってるかもしれないからな」

 

 

……うるさい。頭が、痛い

 

 

「……リンネ先輩がそうしたいなら、私は止めないし協力する。……でも、本当にいいの?危ないかもだし、それに…リンネ先輩は覚えてないんでしょ?」

「っ……それでも、行かなきゃいけないんだ」

 

『長スギル』

 

 

実際、シロコの言う通りではある。相手が俺を知っていても、俺は相手のことを何も覚えていない。会いに行っても、お互いが辛い思いをするだけかもしれない

 

リオの事が、頭に浮かぶ。死に際の俺が残した呪いが、彼女だけじゃない、他の誰かを縛り付けて苦しめているかもしれない。もし……そうだとしたら、俺は

 

 

「リンネ先輩」

「……ん?」

「大丈夫だよ。私はどんな時でも側にいるから」

 

 

そう言って俺の手を握ってくれるシロコ。どうしていつも、彼女は俺を安心させてくれるのだろう。別の世界で、シロコと俺にあった事を俺は知らない。それでも、俺の事を先輩と慕う彼女の存在は、俺にとっては特別だ

 

 

「私はリンネ先輩に助けられてここにいる。……リンネ先輩がいなかったら、どうなってたかわからない。だから、今度は私がリンネ先輩を助ける番」

「シロコ……」

「私は何があっても離れない。ずっと一緒にいるから……だから大丈夫。私を頼───」

 

『死ネ』

 

 

……頭が、痛い

 

 

「……リンネ先輩?」

「……あぁ、悪い。ちょっと考え事してた」

「ならいいんだけど……」

 

『早ク死ネ』

 

「…シロコ、ちょっと、こっち来て」

「……?」

 

 

手招きすると、シロコは素直に俺の方に寄ってきた。ベッドに座ってる俺の前に立つシロコ。俺はそんなシロコの腰に手を回し、引き寄せる

 

 

「っ!?」

「……」

 

 

そのまま彼女の胸に顔を埋めた。柔らかい……それに、落ち着く匂いがしてとても心地いい。頭の痛みも、多少はマシに……

 

 

『死ネ』

 

 

……なる訳がないか。だが、シロコに触れる事で多少は冷静になれるようだ。彼女の胸に耳を当てて目を閉じると、心臓の音が聞こえてきてなんだかほっとする

 

 

「り、リンネ先輩?」

「……ごめん。ちょっと、このまま」

「……うん。いいよ」

 

 

シロコは嫌がる素振りを見せる事なく、俺の頭を撫でてくれる。本当に……なんでこう、優しい子ばかりなのだろう

 

 

「……悪いな」

「いや…大丈夫。ちょっと、びっくりしたけど」

「ごめん」

「ううん。……いいよ、謝らなくて」

 

『早クシロ』

 

……せっかく、いいところなのに。あの声さえ消えれば、全て上手くいく筈なのに

 

……頭が、痛い

 

 

『リンネ、少しまずいかもしれません。貴方の精神を探ってみましたが、幻聴の原因が特定できず───リンネ?聞いていますか?』

「リンネ先輩……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………寝ちゃったの?」




ここで今回と全く関係ないリンネ君豆知識を一つ
リンネ君はキサキから貰った上着を今でも大事に持ってるし普通に着てます
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