……翌日になっても、幻聴は止まない。頭の痛みもどんどん酷くなってる。プラナとケイ二人がかりでも幻聴の原因はわからなかった。だが、原因はどうあれ幻聴は止まない
頭が、痛い
『死ネ』
「っ…は、ぁっ……」
「リンネ先輩…」
「シロ、コっ……!」
「私はここにいるよ」
もうそれはただの幻聴とはとても思えなくて。俺の精神を蝕み始めたソレは、本当に何かの前兆のように思えて仕方がない。嫌な予感がする
……唯一の救いがあるとすれば、シロコが手を握ってくれる事ぐらい。それも、この幻聴のせいで殆ど無意味になってしまっているが
「……リンネ先輩───」
『早ク死ネ』
……本当に、うるさい
「うるさい黙ってろ!」
「……ごめんなさい」
「あ……いや、ちが……」
俺以外に幻聴は聞こえない。俺の精神に住んでいるケイにも聞こえていない。……だから、たまにこうしてすれ違いが起きる
「ごめん、違うんだ。今のは……」
「……無理しなくていいよ」
「……ごめん」
シロコの手を、より一層強く握る。そうしてないと、本当に頭がおかしくなりそうだった
『早ク死ネ』
「っ……黙れって!」
「リンネ先輩、大丈夫。大丈夫だから」
「……ごめん」
「……ううん。大丈夫だよ」
……シロコに頭を撫でられながら、目を閉じる。俺が精神をやられないように……シロコはこうして負担をかけないようにしてくれているのだろう。気を抜いたら、幻聴に意識を持っていかれそうだ
幻聴もキツいが、何よりも頭痛が酷い。形容の仕方が思いつかないぐらいには痛い。カイの痛み止めも殆ど効かないし、原因もわからないとなると、今は耐えるしかない
「……これじゃ動けない」
「今は大人しくしてて」
『幸セガ来ルト思ウナ』
……折角、皆に会いに行く覚悟を決めたところなのに。何をしていても、この声が離れない
『早ク死ネ』
頭痛のせいで寝ようにも寝られないし、仮に寝つけてもすぐに起きてしまう。……しかも、どんどん頭痛が酷くなってる気がする。幻聴は止まないし、寝れても痛みで起きてしまうから疲れが取れない
「……ごめん、何もできなくて」
「気にし…ない、で」
結局、数日経っても幻聴は治るどころか原因すら分からず、頭痛は増すばかり。寝れもしないし、何も出来ないしで……完全に詰みだ
他のカフェメンバーも色々動いてくれてはいるが、成果は無し。シロコがいなければ、俺は幻聴に意識を持っていかれてしまっていただろう
「いっ…ぅ」
「リンネせんぱ───」
「うるさぃ……黙って、くれ」
「ご、ごめん……」
『死ネ』
耳に入る音全てが鬱陶しい。頭が痛い ……薬も効かないし、寝れないし、何もできないしで……そろそろ、限界が近そうだ
『死ネ』
……もし、もしこのまま死んだとして、次の俺はまたこの頭痛と幻聴に悩まされるのか。今俺が味わっているこの苦しみを、また味わないといけないのか
「っ……嫌だ」
……ずっとこれを味わうぐらいなら、もういっそ
『死ネ』
うるさい。黙ってろ
『早ク───』
うるさい
「……リンネせんぱ──」
「──黙ってろって言ってるだろ!」
うるさい声の肩を掴んでベッドに押し倒し、そのまま──その肩に噛み付いた
「っ………!」
……こうやって噛んでれば、多少は気も紛れる。強く噛めば噛むほど、少しはマシになっていく。これ、いい
「いっ……」
何より、聞こえる声が良い。うるさかった声が、驚く程に心地いい。その声を聞いている間は、気が紛れる。だから、ずっとこうしていられるなら───
「─せ──い」
口の中に血の味が広がっていく。もっと、もっとこうしていたい
「……リンネ先輩」
頬に触れた手と、その声がやけに耳に届いた
「……いいよ。これで落ち着くなら、噛んでて」
「────っ!」
肩から離れて──すぐに自分の行動を後悔した。俺は、シロコに何を……
「シロコ、ごめ───」
「謝らないで。大丈夫だから」
肩を噛まれて痛いはずなのに、シロコは俺を抱きしめてくれた。そのおかげで、頭が痛いのも幻聴が聞こえるのも少し楽になった気がする
「……ちょっとは落ち着いたみたいだね、よかった」
……この先、俺はどうなる?
このまま、大切な人の事を忘れながら頭痛と幻聴に苦しんで輪廻し続けるのか?
大切な人が、皆死んだ後も永遠に?
「……?リンネ先輩?」
輪廻の理由。幻聴の正体。増えていく骨の腕
……そういう、事か
「……シロコ」
「どうしたの?」
「……ごめんな」
華奢なシロコの首を、両手で掴む。そのまま、ゆっくりと力を込めていく
「っ……!?な、なに、を……」
「……ごめん」
殺そうとしてる訳じゃない。ただ、ちょっと眠ってもらいたいだけ。でも、これしかない
「リンネ……せんぱぃ」
「……ごめん」
シロコが目を閉じて、動かなくなるまで首を絞め続けた。これでしばらくは目を覚まさない。その間に、俺は───
「っ……ぅ」
シロコをベッドに残したまま、部屋の窓を蹴破って外に出た。頭痛は止まない。幻聴も止まない
建物のすぐ裏の路地裏に着地した。場所はこの際どうでもいい。……後一回程度は大丈夫だろう
『リンネ!何をする気ですか!?』
『リンネさん!幻聴の原因は必ず見つけます!ですから、今は大人しく───』
「……悪い、無理だ」
右手に骨を纏わせ──頭に突きつけ、引き金を引いた
「……プラナ、ケイ、頼みがある」
『……従いましょう』
『……私は、貴方のOSですから』
やるべき事ができた
例え、この天国から転げ落ちるとしても、何もかも失う事になるとわかっていても
それでも、俺には為すべきことがある
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「……あれ?リンネ?」
「……あぁ」
「……先生、でよかったか?」
次回から最終章です