骨崎リンネによる先生襲撃のニュースは、瞬く間にキヴォトス中に広まっていった。リンネの生存を知る者も、知らぬ者も、平等にその心に陰と動揺を走らせた
だが──それでも、余計な事を全て振り切って、やるべき事の為に動ける人というのはいる
「──さて」
トリニティ総合学園。ある一室に、複数人の少女が集まっていた。ティーパーティーの三人、歌住サクラコ、蒼森ミネ、剣先ツルギ、錠前サオリ……各組織の代表達が、一人の少年について話し合っていた
「先生襲撃の犯人は間違いなくリンネさんです。何故生きているのか、何故先生を襲ったのか、聞きたい事はたくさんありますが……今は、最優先でやらなければいけない事があります」
「うん。リンネ君を止めないと……」
骨崎リンネはトリニティの生徒だ。少なくとも彼女達の中において、その認識は揺らいでいない。ならば、今やるべきは動揺することよりも、一刻も早く骨崎リンネを止める事だろう
「だが、どうする?奴はマダム……ベアトリーチェを一人で殺した男だ。生半可な戦力では止められるとは思えん」
「狐坂ワカモのせいで正義実現委員会はまともに動けませんし……」
骨崎リンネの死後、トリニティはアリウスと和解した。一人の人間の命と、魔法の言葉と美味しいアイスで、だ。誰もが互いに歩み寄り、溝はほとんど埋まっている
正義実現委員会がまともに動けないのは、突如として狐坂ワカモが大勢の不良生徒を率いてトリニティ自治区に攻め込んで来たからだ
「……ですが、シスターフッドは動けます」
「結論は出たようですね」
不良生徒は剣先ツルギを抜いた正義実現委員会が抑え、それ以外が骨崎リンネを追う。これが、トリニティの出した結論だった
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骨崎リンネの新たな標的。その銃口の向く先は──ミレニアムのC&Cだった
「っ──!」
と言っても、もう残っているのは飛鳥馬トキ、美甘ネルの二人だけ。残りの三人は、時間停止中の一撃目で足をへし折られている
範囲攻撃の爆破と、異常なまでの直感力、遠距離からの狙撃は、骨崎リンネにとって厄介極まりない能力だった。その点、他の二人はただ圧倒的に強いだけ
「っ…!リンネ先輩、何故……!」
「やりたい事ができたんだ、単純だろ?」
「よそ見すんな!」
トキ専用のパワードスーツ、アビ・エシュフの両手に搭載されているガトリングの銃弾は、プラナによって一撃も命中することなく弾かれる
だが、それでも一瞬注意は逸れる。その隙に、ネルがリンネに接近し───
「っ、また……!」
次の瞬間、リンネの位置はネルから遠く離れた場所にいた。少し前から、これを数回繰り返している。単純な話だ。ネルが近づいてきた瞬間に時を止め、遠く離れただけのこと
時間停止中に足を折る事も考えたが、相手はあの美甘ネルだ。足を折られようと、完全に制圧しなければそのまま至近距離で反撃を貰う可能性が無いわけじゃない。リスクを一つ一つ丁寧に消していった結果がこれだ
「……お前は、俺に近づきさえすれば勝てると思っているな?」
「っ……」
「実際その通りだろうな。接近戦でお前に勝てる奴はこのキヴォトスに存在していない。それはよーくわかってるさ。だから……」
「俺はお前に近づかない」
ゼロ距離での射撃じゃなければ、銃弾は全て弾かれてしまう。だが、リンネは近づいてこないし近づけない。有利なのは、未だにリンネ側だ
「ま、ネルは後回し……」
飛鳥馬トキ。正確にはそのパワードスーツ、アビ・エシュフ。名もなき神とやらの技術が一部反映されているらしい。リンネはそれがどんな物なのか知らないが、この場に置いて一番の不確定要素だと認識している
「リンネ先輩───」
全てを無視してトキの元へ走り出す。リンネは争いや面倒事を嫌う性格だ。だから、殆どの人間はリンネが戦うところを見た事がない
だからこそ、想像よりも速く動くリンネに二人は対応できない
「トキ───」
───瞬間、リンネの姿が掻き消え、アビ・エシュフの右肩がどこかへ千切れ飛んだ
「……まさか、ここまでのパワーとは」
それをやったであろうリンネ自身も、少し驚いているように、目の前の光景を見つめていた。力試しのつもりだったのだろう
前のリンネが、命を使って定めた運命──暴力的なまでの身体能力を手に入れる。それが、一体どの程度のものなのか。それを知る為の、ただの力試し
だかそれは、結果として──アビ・エシュフを引き千切る程の力を生み出すことになった
「ぐっ…!」
「トキ……!」
アビ・エシュフのパワーと耐久性は折り紙付きだ。それが千切られたという事は、ネルとトキが警戒すべきなのが、ウタハが作った圧倒的な性能のハンドガンではなく、リンネ自身の方であるという事の証明にもなる
だが──ハンドガンも、充分に脅威だ
「な────」
一秒の時間のズレもなく、トキの周囲を囲むように撃ち込まれた爆発弾。アビ・エシュフを装着したトキは、当然の事ながら的が大きくなっている。故に、弾丸を避けるなんて事は不可能だ
「っ、が───!」
爆炎が、トキの体を飲み込む。だが、それは終わりではない
「チェックメイト」
爆炎が消えた時には既に、トキの両足はおかしな方に曲がっていた。両足を折った事を確認したリンネは、すぐにトキへの興味を失くし、ネルに銃口を向ける
「っ……」
美甘ネルの中にあったのは焦りだった。リンネがトキを無力化するまでの時間に、自分は銃をワンマガジン撃ち切れたかどうかすらわからない。それ程までに無駄が無く、迅速な行動だった
「……テメェ、とんでもない事隠してやがったな」
「面倒事は嫌いだ。お前らの所にいた時の俺もそうだったんだろうな」
「……何でこんな事したのか、そんな事は後で聞く。──テメェをぶっ潰してからなぁ!」
全力疾走。地面を砕く程の勢いで、ネルはリンネに接近する。近寄らなければ倒さない。だが、近づくのは至難の業だ
それでも、何とか見出した突破口。ネルはリンネが五秒間時を止められることを知らない。だが、一瞬でどこかへ移動してしまえるような謎の能力に対する対抗策は既に見つけていた
単純だ、反応できない程速く、その懐に潜り込めばいい
「……?」
この期に及んで突撃を選択したネルに、若干の疑念をリンネは覚えた。だが、すぐにそれを振り払う。所詮は愚かで無謀な特攻だと
「……念の為、だな」
止まった時間の中、ネルの背後へと回り込む。時が動き出し、ネルはリンネの動きに対応できない───
「───今だ、トキ!」
「アビ・エシュフ。殲滅モード!」
「───!」
アビ・エシュフの両肩のレーザー砲。発射されたのはそれだ。声を聞いてからすぐさま横に飛んだおかげで、そのレーザーが命中する事は無かった
だが、リンネの驚愕はレーザーが放たれた事に対しての物ではない
「──リンネェ!」
そのレーザーと共に、ネルの体も飛んで来ていた。だが、レーザーは一直線に飛んでいる。なら、そのレーザーに巻き込まれる形で飛んでいるネルの体も一直線にしか動けない。ならば、ネルの銃弾がリンネに当たる可能性は無い
だが──予想に反し、ネルの体は空中で軌道を曲げた
「何──!?」
空中で軌道を曲げられた理由を、限られた時間の中で必死に考え──理解した
(ネルの銃に付いている鎖──二丁あるうちの片方を、地面に刺していたのか……!?)
地面に突き刺した片方の銃を軸に回転。それなら確かに空中で軌道を曲げる事もできる。時を止める事も、避ける事もできない速度で──ネルの銃口は、確実にリンネを捉えていた
「終わりだ───!」
ゼロ距離で、その引き金が引かれ───
「……念の為、動いておいてよかったよ」
瞬間、ネルの体が真横に吹っ飛んだ
「引きちぎったアビ・エシュフの右肩に骨を刺しといた。バラバラになった骨は勢いよくくっ付くからな。ちゃんとここまで飛んで来てくれたよ」
「クソ……!」
吹っ飛ばされたネルは、すぐさま起き上がる。だが──
「遅い」
「がっ────!?」
既に、その両足は折られていた
「……さ、ここでの仕事は終わり」
まるで、先程までの戦いが無かったことにかのように、平然と背を向けて、その場を後にしようとする。その背中に、ネルは声を投げかける
「こんな、事して……!テメェのやりたい事とやらが終わった後、テメェがどうなるか……!」
「……わかってるよ、そんな事。覚悟の上だ」
言葉は、何一つ届かなかった
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あの日以来、拠点としている廃ビルの前。C&Cを無力化してから、リンネは最短でそこまで戻ってきた。だが──そこには、招かれざる客が一人
「……やっほー、リンネ君。久しぶり☆見ないうちに、随分変わっちゃったみたいだね?」
「……聖園ミカ、だったか?」
テストがあっテェ……RE:4のエイダ編があっテェ……スタレが楽しくっテェ……