ちなみにリンネ君が怪我するとどこからともなくセリナが来る
「シャーレの先生ねぇ……もうそんな時期なんだ。プラナの世界でもこうだったの?」
『肯定。あちらでも同様にして先生が就任しました』
結構な衝撃ニュースが飛び込んで来た。連邦生徒会長が失踪し、連邦捜査部……シャーレの先生が就任した。プラナの記録で見たあっちの先生と瓜二つだった
「黒服は好きだろうな……」
「クックック、私の事をよくわかっていらっしゃるようで」
「玄関から入れ馬鹿」
いつの間にかそこにいる。それが黒服だ
「いやはや、驚きましたよ。まさか別の時間軸に行っていただけでなく、シッテムの箱に死の神、色彩の力まで持ち帰って来るとは」
「だから俺その辺のこと何も覚えてないんだって」
俺があっちの世界にいた時間が大体二十五日くらいらしい。その間の記憶は一切なく、気づいたらこの世界のどこかに倒れていた。記憶が無いのはいいとして、黒服は結構焦ってたらしい
「ま、プラナが凄いのはそうだけどね」
プラナにはうちのカフェの金銭面を任せてある。たまーに俺が横領してゲーム買ったりするから怒られるけど、仕事は本当に完璧にこなしてくれる良い子だ
「で、先生はどうなの、お前的に」
「興味深い存在ですね。直接話してみない事にはわかりませんが」
「会う予定とかあるの?あっちの先生と同じ性格なら、お前一番嫌いなタイプだと思うぞ」
「大人にそれは関係ありませんよ」
まぁ、ぶっちゃけこいつが何してようとそんなに興味無い。迂闊にブラックマーケット外を歩けない身だし、どうしようもないってのが正しいのかも
「……ところで、今日は何の用?」
「いえ、特に用というわけでは。暇つぶしです」
「帰れ。今すぐ帰れ」
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「ワカモの尻尾って凄いモフモフしてて気持ちいいよね」
「ふふふ、お望みがあれば何でも致しますよ」
男だろうと女だろうと、例え精神年齢がいくつだろうとモフモフには惹かれるもので。俺は今、ワカモの尻尾を堪能していた
先生の就任から数週間が経った。当然と言うべきか、俺たちが関わることは無く、平穏無事な毎日を過ごしている。これだよ、俺が求めていたのはこういう毎日だ
「ん〜……本当に凄くいい」
「ふふ、ありがとうございます」
戦いとは無縁の場所で、こうやって親しい誰かとゆっくり過ごす。こんな日常こそが俺にとって最も価値のあるものだ。改めてそれを実感した
「守る為とはいえ……何回も死んでるのって異常かな」
「……ご安心を。このワカモ、必ずやあなた様を守り抜きましょう。もう、誰も忘れさせません」
「うん……ありがと」
そう言って頭を撫でると嬉しそうな表情をする。このまま死に続ければ、いつかは一人になると思っていた。でも、こうしてどこまでも追ってきてくれる人がいる。これ以上嬉しいことはないだろう
「本当、ありがとね。見つけてくれて」
「えぇ、ずっと側におりますとも」
本当に何でこんなに好感度高いのかは知らないけど、悪い気は全くしない。それに、こうしている時が一番幸せを感じる。もう永遠にこのままでいいかなって思ってしまうほどに
「そういえば、もうすぐ買い出し行くけど来る?」
「勿論お供いたします!」
この生活が始まってからというもの、買い物に行く時は毎回誰かが一緒についてくる。護衛も兼ねてるみたいだけど、俺はそんなに弱くないと思うんだけどなぁ……
「よし、じゃあ行こうか」
まぁ実際、着いてきてくれるのはありがたかったりもする。うちの従業員は軒並みクソ強いからね。治安の悪いブラックマーケットでも結構安心して出歩けるくらいには
「ワカモ歩きづらい……」
「我慢してくださいまし」
腕に抱きつかれながら歩く。非常に柔らかいが、非常に歩きづらい。だがしかし、ここで離れろと言ってしまうと多分凄いしゅんとされる
まぁ、ワカモがここまでくっついてるとそもそも手出しして来る奴も居なくなるのだが
「せめて手繋ぐぐらいにして欲しい……」
「うぅむ……それならば」
そう言うと、手を繋いでくる。これで少しはマシになった
「……ワカモはさ、今の生活楽しい?」
「勿論ですとも。泥棒猫がいるのが玉に瑕ですが」
「あはは……」
良かった。ワカモにもちゃんとした幸せがあるんだってわかってホッとする。俺だけが幸せなんじゃなくて、ワカモも楽しんでくれている。それがわかっただけで満足だった
「いやさ、カフェ手伝わせたりしてるじゃん?嫌だったりしないかなって」
「まさか。あなた様と共に暮らし、あなた様のお役に立つ。これほど喜ばしいことはありません」
「そっか、ならよかった」
いい子。本当にいい子。なんで俺なんかの為にそこまで尽くしてくれるのかわからないけど、感謝してもしきれないくらいには俺のことを想ってくれている。本当にいい子だ
「……あれ、何か騒がしいね」
「あれは……銀行でしょうか」
銀行強盗でも起きたのだろうか。でも、ブラックマーケットで銀行強盗なんて相当度胸あるなぁ
「あ、あれが犯人か」
「ここは少し危ないですね。行きましょう」
そうして、その場を去る瞬間
「………どっかで会ったっけ」
銀行から出てきたピンク髪の少女と、目が合ったような気がした
──────────────────
「───え」
それを見た時の衝撃を、私は生涯忘れないと思う。二年前、目の前でバラバラに潰れた彼。旧校舎に骨だけが置いてある彼
見間違いかと思った。ヘイローも微妙に違うし、そもそも、彼が生きている筈がない
でも──あの一瞬で脳裏に焼きついたあの顔は、何度思い浮かべても間違いなく彼そのものだ
「ホシノ先輩?」
「え──あぁ、今行くよ」
考える時間も、追いかける余裕も無かった。ただ、焼きついた光景だけが頭から離れなかった
「……リンネ?」
久しく呼ばなかった名を呼ぶ。もし、もし生きているのなら、何故姿を見せてくれなかった?それに───
「……隣の女、誰?」