私が間違った曇らせを書かぬよう、見守っていてください…!
感じたぞ…!『曇らせ』が……来るッ!
訳:啓示を受けました
『もしも』の話
───ずっと、人生が嫌だった
高校に上がった時には、悟ったような気でいたと思う。人生の全て──人が幸せになれるかどうかは、生まれた時には全て決まっている
努力だなんだというのはただの幻想で、結局最後に全てを決めるのは生まれ持った才能だ。何をやっても中途半端に終わった俺の人生が、それを何より証明していた
必要なのは才能だ。それがなければ、人は幸せにはなれないのだから
──────────────────
「…………」
病室のベッドの死体の側。かけてある白いコートを羽織る。ポケットの中にあるカードを確認して、病室を出た
「……リンネ先輩?大丈夫なの?」
「……大丈夫」
あれから──目覚めた時、周りにいた何かを皆殺しにしてここまで戻って来た。シロコは無事だ、プラナも無事。先生に託された以上、あの二人は守らなければいけない
「これから…どうしよう」
「どうにかして……まだ生きてる世界にお前を連れて行く」
「どうやって?」
「……まだ、わからない。けど必ず連れて行くよ、シロコ」
「うん……先輩は先輩だね、安心した」
俺の手を握り、微笑みをくれるシロコ。だが、その手は微かに震えていた
「あ………」
「……行こう、シロコ」
その手を強く握り、俺達は歩き出した
「プラナ、別の世界線に移動するにはどうすればいい?」
『……アトラ・ハシースの方舟。恐らくこれが唯一の手段です』
「名前からしてヤバそうだけど、起動できるの?」
『唯一の手段ではありますが、起動手段が問題です。システムは私がどうにかしますが、調整ができる技術者がいません』
「……これを使うしかないか」
先生のコートに入っていたカードを手に持って見つめる。ヤバい物なのは見ればわかるが、腹を括るしかないだろう
『……よろしいのですか?』
「何の事?」
『理解していない訳ではないでしょう、別の世界線に足を踏み入れるということがどういう事か。貴方がここに来た時とは訳が違いますよ』
「……それでいいんだよ」
『……そうですか』
それで、いい
俺の目的はシロコとプラナを俺の世界線に連れて行くこと。その過程で何が起きようと、俺がどうなろうと構わない
「それなら、早いとこそれを起動させに行こう。場所は分かる?」
『……恐らく、アビドス砂漠のどこかにあるかと』
「シロコが起きたら探しに行こうか」
病院の椅子の上……と言うより、俺の膝の上で眠るシロコの髪を撫でる。気持ち良さそうに寝息を立てていた
……俺は、これから、この子に
「リン、ネ、先輩……」
「……プラナ、シロコはどれくらいで起きる?」
『今眠りについて1時間ほど、もう目を覚ましてもいい頃だと思います』
「わかった」
そのまま時刻を確認する。現在時刻は15時を少し過ぎた所だった。あと4時間もすれば夕暮れだろう。砂漠の夜は冷える。あまり遅くなるのは良くない
「……俺も、眠くなって来た」
……こうなると、もう明日にしたほうが良いか
『賛成。肉体、精神の両方で疲労が溜まっています。一度休まれては』
「……だな」
シロコを抱え、適当な病室に運び込む。ベッドに寝かせた後、俺もそのベッドに入り込み、目を閉じる
少し、寒い。布団を被ってはいるが、それでも少し寒い
「……シロコ?」
無意識か。シロコが俺を抱き寄せてくる。その体温が、少しだけ暖かく感じた
でも、それだけじゃない。もう一つ、俺を後ろから抱きしめる温もりがある
「……プラナ?出て来れるんだ」
「影響は貴方に吸われましたが、私も色彩に触れましたから。こんな事ができるようになりました」
「……ありがとう、プラナ。プラナも休んでおいて」
「私は、寝なくても平気ですから。貴方が眠るまで側で見守っています」
後ろから抱き寄せてくるプラナの温もりが心地いい。シロコの体温と相まって、段々と眠気が強くなっていく ……今は、今だけはこの睡魔に身を委ねよう
「……ごめんなさい」