死人の二度目   作:かゆ、うま2世

23 / 63
露見

 

目覚めた時、俺を支配したのは歓喜の感情だった

 

俺は確かに一度死んだ。無価値な人間の独りよがりな人生は、あっさりと幕引きを迎えた

それでも俺は生きていた。肉体じゃない。魂が生きていた。死人の二度目を、俺は持っていた

 

これが、これが俺の才能だ。あれほど渇望した才能を、俺は持っていたんだ。あぁ、あぁ!やっと──俺と言う存在に、価値ができたんだ!

 

 

──────────────────

 

 

 

 

「っ───!」

「無駄」

 

 

方舟中心部──ナラム・シンの玉座にて、二人のシロコが戦いを繰り広げていた。色彩に触れていない──元々リンネがいた世界のシロコは劣勢……いや、最早戦いと呼べるようなものではなかった

 

 

「同じシロコでも、私の方が色んなものを見てきた。だから、私の方が上」

「はぁっ…!はぁっ……!」

 

 

シロコの息は完全に上がっている。それに対し、色彩に触れたシロコは呼吸一つ乱れていない

圧倒。完全に結果が見えている勝負を──プラナとリンネが、遠方から見つめていた

 

 

「……勝負あり、何だが…じっとしてるのはなんかなぁ…」

「方舟起動によるダメージがまだ後を引いている筈です。この後の戦いに備える為にも、今は休んでください」

「……わかった。どっちにしろ、そろそろ俺の出番だろうしな」

 

 

プラナと二人、戦いの様子を見守っている。二人の狙いは、恐らくもうすぐ玉座の元に現れるであろう先生だ

 

 

「……来た」

「行きましょうか」

 

 

色彩に触れたシロコとの会話の後、戦闘体勢に入った先生とシロコ。辿り着くより前に、時間を停止させた

 

 

「……リンネ先輩」

 

 

それに気づいた色彩のシロコは、動ける二秒間の間に撃てるだけの銃弾を、先生とシロコに撃ち込んだ

 

 

「───!?」

 

 

停止した時が再び動き出し、空中で止まっていた弾丸が無慈悲に二人に襲いかかる。シッテムの箱の防護がある先生には銃弾は届かなかったが、それがないシロコには弾丸が直撃する

 

 

「何、が……」

「……戦車の砲弾を、撃ち込んでやってもよかったんだ。減点だぞ、先生」

 

 

弾丸を受けたシロコが膝をつく。いきなり現れた俺と弾丸に対し、先生は警戒を露わにする

 

 

「シッテムの箱に大人のカード、装備品はほぼ同じだ。……言葉を交わす余地は無い。先生、生徒を守りきれるかな?」

「……シロコ、私の後ろに」

「……ごめん、先生」

 

 

カードを取り出すタイミングに、寸分の差もなかった。全く同じタイミングで取り出したカードを行使し、同じように戦闘ヘリを二機空中に生み出した

同じようにミサイルや機銃を撃ち合うが、互いにシッテムの箱の防護を破れない以上、その戦いに決着が付くことはない。二機のうちの一機が撃ち落とされるのを見ながら、俺は先生とシロコの元へ突っ込んだ

 

 

「シッテムの箱の防護──確かに強力だ。でもな、俺も同じ物を持っている以上、弱点だって理解している。それのせいで随分苦労したからな」

「……ッ!」

「ゼロ距離なら、バリアに意味は無い」

 

 

色彩のシロコから貰っていたハンドガンを手に、どんどん先生との距離をつめていく。その最中、弾丸が俺に向かって飛んでくるが、シッテムの箱で容易に防ぐことができる

相手のシロコが出てこようとも、俺が呼び出した戦闘ヘリはまだ一機残っている。下手に前に出れば、傷だらけの状態でまともにミサイルを受けることになる

 

 

「捉えた」

 

 

何をしても無駄である以上、先生に打つ手は無い。眉間に銃口を当て、引き金を引く────

 

 

「……流石に、そう上手くはいかないか」

 

 

停止させた時間の中、真横には──ショットガンを構え、こちらに飛んでくる桃色の髪の少女の姿。このまま時が動き出せば、俺は頭にゼロ距離で銃弾を貰うことになるだろう。拳銃数発程度で止まるとも思えない

 

 

「……小鳥遊ホシノ、か」

 

 

色彩のシロコが持っていた写真に写ってた少女。あちらの俺も、関わりがあったのだろう

 

 

「────!」

 

 

時を止めている間に後ろに下がったことで、ホシノの目には俺の姿がいきなり消えたように見えた筈だ

 

 

「……ホシノ、先輩」

「……シロコ、下がってろ」

「私も──」

「震えた手で何言っても説得力ねぇよ」

 

 

色彩のシロコを後ろに下がらせ、ホシノと向き合う。一目見ただけでわかる、強い。弱点さえ突けばすぐに終わる先生とは違う

 

 

「……先生、大丈夫?」

「ホシノ……他の皆は?」

「私だけ急いで先に来たんだ」

 

 

ホシノの目が俺を射抜く。明確な敵意、いや、殺すべき対象を見る目か

 

 

「…………」

「…………」

 

 

言葉を交わす事はなく──俺は、元々持っていた拳銃を取り出した

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

「───あり得ない!」

 

 

ウトナピシュティム船内に、白石ウタハの絶叫が響き渡る。眼前の光景が、彼女には信じられなかった

 

 

「ウタハ、どうかしたのですか?」

『計器に異常は見られないわ。何かあったのかしら』

「銃だ!プレナパテスが持っているあの銃!あれは──私がリンネの為に作った物だ!」

 

 

その言葉に──多くの人間が反応を示した

 

 

『──それは本当なの?』

「私が見間違う訳がない。……あれには生体認証が付いている。私とリンネ以外は触れる事すらできない筈だ」

「……待ってください。何故リンネさんの事を知っているのですか?」

「何故も何も、リンネはミレニアムの生徒ですよ?」

「……リンネさんは、トリニティの生徒でした」

『……それは本当かしら』

 

 

プレナパテスが持っていた銃を起点として、リンネの謎が露見して行く

 

 

『……プレナパテスの正体は、まさか────』

 

 

──────────────────

 

 

 

一定の距離を保ったまま、ホシノとの撃ち合いは続いている。ハンドガンとショットガン。射程の差と時を止める力によって、戦いは平衡を保っている。純粋に戦えば、俺に勝ち目はないだろう

時を止めて弾丸を放っても、いきなり現れた弾丸に完璧に対応してくる。ホシノの力量は、並外れている

 

 

「………」

「………」

 

 

互いに一言も喋らない。銃弾を避ける事と、引き金を引くことだけに思考を割いている。距離があっては避けられる。狙うのは、ホシノが限界まで近づいて来た時だ

そして、その時はすぐに訪れた

 

 

「……今しかない」

 

 

一直線に迫ってくるホシノに向けてハンドガンを構える。まだ、まだ距離が遠い。限界まで近づいてから時を止め、ありったけの銃弾を撃ち込んでやる

 

 

「──ここだ!」

 

 

停止した時間の中、眼前に迫るホシノに向けて引き金を引く。やがて時が動き出し──

 

 

「は──」

 

 

──全ての弾丸を正面から受け止め、俺の頭にショットガンを突きつけた

 

 

「っ───!」

 

 

銃声が響く。間一髪、ホシノの腹を蹴り飛ばして直撃は免れた。しかし───

 

 

『先生!プレナパテスの正体は──!?』

「え───」

 

 

パラパラと、仮面が細かく砕けて落ちた

 

 

「……どうした、幽霊でも見たか?」

書く?

  • 書かなくていいよ
  • 書け
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。