目覚めた時、俺を支配したのは歓喜の感情だった
俺は確かに一度死んだ。無価値な人間の独りよがりな人生は、あっさりと幕引きを迎えた
それでも俺は生きていた。肉体じゃない。魂が生きていた。死人の二度目を、俺は持っていた
これが、これが俺の才能だ。あれほど渇望した才能を、俺は持っていたんだ。あぁ、あぁ!やっと──俺と言う存在に、価値ができたんだ!
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「っ───!」
「無駄」
方舟中心部──ナラム・シンの玉座にて、二人のシロコが戦いを繰り広げていた。色彩に触れていない──元々リンネがいた世界のシロコは劣勢……いや、最早戦いと呼べるようなものではなかった
「同じシロコでも、私の方が色んなものを見てきた。だから、私の方が上」
「はぁっ…!はぁっ……!」
シロコの息は完全に上がっている。それに対し、色彩に触れたシロコは呼吸一つ乱れていない
圧倒。完全に結果が見えている勝負を──プラナとリンネが、遠方から見つめていた
「……勝負あり、何だが…じっとしてるのはなんかなぁ…」
「方舟起動によるダメージがまだ後を引いている筈です。この後の戦いに備える為にも、今は休んでください」
「……わかった。どっちにしろ、そろそろ俺の出番だろうしな」
プラナと二人、戦いの様子を見守っている。二人の狙いは、恐らくもうすぐ玉座の元に現れるであろう先生だ
「……来た」
「行きましょうか」
色彩に触れたシロコとの会話の後、戦闘体勢に入った先生とシロコ。辿り着くより前に、時間を停止させた
「……リンネ先輩」
それに気づいた色彩のシロコは、動ける二秒間の間に撃てるだけの銃弾を、先生とシロコに撃ち込んだ
「───!?」
停止した時が再び動き出し、空中で止まっていた弾丸が無慈悲に二人に襲いかかる。シッテムの箱の防護がある先生には銃弾は届かなかったが、それがないシロコには弾丸が直撃する
「何、が……」
「……戦車の砲弾を、撃ち込んでやってもよかったんだ。減点だぞ、先生」
弾丸を受けたシロコが膝をつく。いきなり現れた俺と弾丸に対し、先生は警戒を露わにする
「シッテムの箱に大人のカード、装備品はほぼ同じだ。……言葉を交わす余地は無い。先生、生徒を守りきれるかな?」
「……シロコ、私の後ろに」
「……ごめん、先生」
カードを取り出すタイミングに、寸分の差もなかった。全く同じタイミングで取り出したカードを行使し、同じように戦闘ヘリを二機空中に生み出した
同じようにミサイルや機銃を撃ち合うが、互いにシッテムの箱の防護を破れない以上、その戦いに決着が付くことはない。二機のうちの一機が撃ち落とされるのを見ながら、俺は先生とシロコの元へ突っ込んだ
「シッテムの箱の防護──確かに強力だ。でもな、俺も同じ物を持っている以上、弱点だって理解している。それのせいで随分苦労したからな」
「……ッ!」
「ゼロ距離なら、バリアに意味は無い」
色彩のシロコから貰っていたハンドガンを手に、どんどん先生との距離をつめていく。その最中、弾丸が俺に向かって飛んでくるが、シッテムの箱で容易に防ぐことができる
相手のシロコが出てこようとも、俺が呼び出した戦闘ヘリはまだ一機残っている。下手に前に出れば、傷だらけの状態でまともにミサイルを受けることになる
「捉えた」
何をしても無駄である以上、先生に打つ手は無い。眉間に銃口を当て、引き金を引く────
「……流石に、そう上手くはいかないか」
停止させた時間の中、真横には──ショットガンを構え、こちらに飛んでくる桃色の髪の少女の姿。このまま時が動き出せば、俺は頭にゼロ距離で銃弾を貰うことになるだろう。拳銃数発程度で止まるとも思えない
「……小鳥遊ホシノ、か」
色彩のシロコが持っていた写真に写ってた少女。あちらの俺も、関わりがあったのだろう
「────!」
時を止めている間に後ろに下がったことで、ホシノの目には俺の姿がいきなり消えたように見えた筈だ
「……ホシノ、先輩」
「……シロコ、下がってろ」
「私も──」
「震えた手で何言っても説得力ねぇよ」
色彩のシロコを後ろに下がらせ、ホシノと向き合う。一目見ただけでわかる、強い。弱点さえ突けばすぐに終わる先生とは違う
「……先生、大丈夫?」
「ホシノ……他の皆は?」
「私だけ急いで先に来たんだ」
ホシノの目が俺を射抜く。明確な敵意、いや、殺すべき対象を見る目か
「…………」
「…………」
言葉を交わす事はなく──俺は、元々持っていた拳銃を取り出した
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「───あり得ない!」
ウトナピシュティム船内に、白石ウタハの絶叫が響き渡る。眼前の光景が、彼女には信じられなかった
「ウタハ、どうかしたのですか?」
『計器に異常は見られないわ。何かあったのかしら』
「銃だ!プレナパテスが持っているあの銃!あれは──私がリンネの為に作った物だ!」
その言葉に──多くの人間が反応を示した
『──それは本当なの?』
「私が見間違う訳がない。……あれには生体認証が付いている。私とリンネ以外は触れる事すらできない筈だ」
「……待ってください。何故リンネさんの事を知っているのですか?」
「何故も何も、リンネはミレニアムの生徒ですよ?」
「……リンネさんは、トリニティの生徒でした」
『……それは本当かしら』
プレナパテスが持っていた銃を起点として、リンネの謎が露見して行く
『……プレナパテスの正体は、まさか────』
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一定の距離を保ったまま、ホシノとの撃ち合いは続いている。ハンドガンとショットガン。射程の差と時を止める力によって、戦いは平衡を保っている。純粋に戦えば、俺に勝ち目はないだろう
時を止めて弾丸を放っても、いきなり現れた弾丸に完璧に対応してくる。ホシノの力量は、並外れている
「………」
「………」
互いに一言も喋らない。銃弾を避ける事と、引き金を引くことだけに思考を割いている。距離があっては避けられる。狙うのは、ホシノが限界まで近づいて来た時だ
そして、その時はすぐに訪れた
「……今しかない」
一直線に迫ってくるホシノに向けてハンドガンを構える。まだ、まだ距離が遠い。限界まで近づいてから時を止め、ありったけの銃弾を撃ち込んでやる
「──ここだ!」
停止した時間の中、眼前に迫るホシノに向けて引き金を引く。やがて時が動き出し──
「は──」
──全ての弾丸を正面から受け止め、俺の頭にショットガンを突きつけた
「っ───!」
銃声が響く。間一髪、ホシノの腹を蹴り飛ばして直撃は免れた。しかし───
『先生!プレナパテスの正体は──!?』
「え───」
パラパラと、仮面が細かく砕けて落ちた
「……どうした、幽霊でも見たか?」
書く?
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書かなくていいよ
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書け