「骨ー?卵割っといて……ってもうやってるし」
『────』
いつものように朝が来て、いつものように朝食を作る
この世界にやって来たのは数日前。学園都市キヴォトス、とか言うらしいし、俺の体の年齢も学生ぐらいなんだけど……いかんせん身分を証明できるものを何も持っていないから、こうしてブラックマーケットとかいう明らかにヤバい所に隠れ住むしかなかった
やたら高性能な銃を持ってたから、戦闘で負ける事は無かったのが不幸中の幸いか
「いただきまーす」
正直、引っかかる事は多い。何故か一本だけ生えて俺についてきた骨の腕。指の先が一部無かったりして不気味だけど、割と便利だからこれはあんまり気にならなくなってきた
ま、いきなりこの世界で目覚めた理由とか、気になる事だらけすぎて考えるのも馬鹿らしくなってくるけど
「ん?」
玄関からチャイムが鳴った。人がいなくなった建物を勝手に利用してるけど、チャイムの機能が生きてたことに驚いた
……どうしよう。ブラックマーケットで生活しててチャイム鳴らされるなんて初めての経験だ。開けていい物なのか……?いや、でもチャイム鳴らされて何もしないのは……
「……南無三!」
やばかったら全力で抵抗しよう。そう決めて、扉を開けた
「……どちら様ですか?」
……なんか、凄い美人な人がいた。俺と同じくらいの歳か、少し上ぐらいに見えるけど、とにかく綺麗な人だった
この世界には、獣耳が生えてたりする人は結構いる。彼女もそうで、銀の髪色と同じ色の獣耳が生えていた。身長は俺よりも少し高く、グラマラスな体型と黒いドレスのような服が、どこか大人っぽい印象を持たせた
「あー、えーっと、その」
ただ、いきなり美人に来られたら俺だって困る。俺はもごもごしてるけど、彼女はそうでもないようで。息を切らしながら、俺に話しかけてきた
「やっと…!見つけた……!リンネ先輩!」
「え?何で俺の名前知って───!?」
刹那の一瞬だった。ドアを閉められ、構えようとした銃を弾き飛ばされ、そのまま両手を掴まれて押し倒された
「え、は──だ、誰!?何でいきなり俺の家に入って来て、こんな事するんだよ!?」
「っ──やっぱり、記憶が…」
「記憶?」
この女の言葉を真実として推測するなら、俺は記憶喪失という事になる。そして、記憶を失っている事自体を忘れてる訳だ。もちろん、その言葉が真実なら、だけど
「もう──もう絶対離さない。私が一生守るから」
「っ、訳わかんないか…らっ!」
彼女の腹に向けて蹴りを入れようとするも、片手で軽々と受け止められる。だが、これで俺の片腕が自由になった。あとはこの片腕を上手く使って────
「──無駄。貴方は逃げられません、リンネさん」
いつのまにか後ろにいた誰かに、腕を拘束された。黒い服に、白髪の──幼さの中に、大人っぽさが混ざったような──
「……え?」
ガチャリ、と金属音。俺の両手が、手錠の様な物で拘束された
「私はプラナ。貴方のOSです」
「私、シロコ。リンネ先輩は覚えてないみたいだけど別にいいよ。忘れないように、身体に刻み込むだけ」
プラナとシロコに挟まれる。手錠は外れないし、骨もこの状況じゃ役に立たない。何より、俺じゃシロコのフィジカルに勝ち目はない
「っ……」
「……記憶って、不思議。こんなに変わっちゃうなんて」
「誰、なんだ。一体……!」
「安心して。忘れたくても、忘れられないようにしてあげるから」
「大丈夫です、リンネさん。これからずっと、永遠に、側にいますから」
二人の手が俺の頬に触れる。恐怖からか、体の震えが止まらない
「あ、っ……ぅ……」
二人が俺に触れる度、頭がぼんやりしてくる。俺は……二人の事を、忘れているの……か?
「……震えてる。リンネ先輩、怖いの?」
「っ…当たり前、だろ……こんな状況じゃ」
「大丈夫ですよ。痛くはしませんから」
俺は、二人に何をした?彼女達は一体──俺が忘れてしまったものは、何だ?
「リンネさん、好きです。大好きですよ」
「リンネ先輩、絶対離してあげないから」
二人の手が俺の服の中に潜り込む、その感覚がどこか懐かしくて────あぁもう──何が何だか分からない!
何でもいい!どうにかこの状況を切り抜ける方法を探さなければ……!
「クソッ、離せ……っ!離せこのっ───!?」
「……あんまり騒ぐと、優しくしてあげられないよ」
シロコが持っていたアサルトライフルのストックで、思いっきり横っ腹を殴られる。俺を大人しくさせる為の強行手段。効果は抜群で、あまりの痛みに声が出ない
「ごめんね先輩。でも、先輩が悪いんだよ?私達を置いて、一人でどこかに行っちゃうから」
「うっ……が、ぁ……」
「痛いよね?ごめんね、リンネ先輩。でも、もう手段を選んでられないんだ」
「どうすればリンネ先輩を失わずに済むか考えたんだ。どうにかして、リンネ先輩が私達の元にいるようにすればいいって」
「その為には、無理矢理閉じ込めても良かったんだけど……心を折って、私達無しじゃ生きられないようにする方が安心かなって」
「限界まで痛くすればいいの?それとも気持ちよくさせてあげればいいの?どっちが──いや、リンネ先輩はどっちが好き?」
「な、にを……言って……」
痛みで頭が上手く回らない。シロコが何を言っているのかが理解できない
「まずは痛くしてみよっか」
──首筋に、鋭い痛み。シロコが噛み付いたと理解するまで、そう時間はかからなかった
「いっ───!?」
「動かないでください。もっとも、無意味ですが」
シロコの嚙み跡から血が流れ出る。傷口を舐めるシロコは、どこか妖艶に見えた──気がするだけかもしれないけど
「……っ、やめ──!?」
より一層鋭い痛み。単純に、より強い力で噛み付いただけのことだった
「っ、ぁ……」
「……ん。いい味した」
既に舐め取ったのか、シロコの口周りは綺麗だった。代わりに俺の首筋が血まみれになったけど
「痛い?リンネ先輩が素直になるなら、痛いのはやめてあげるけど」
「っ…手口が……強引すぎるだろ……!」
「……そうさせたのは貴方です」
「ん、素直になるまでやるだけ」
「んっ───!?」
今度は首じゃない。俺の唇──キス、された
「ん──ん、っ──」
「んっ……ふっ……」
必死に、貪るように求めるシロコに、俺はされるがままになっていた
「ぷはっ──!はーっ、はーっ……!」
「……足りない」
「ふざっ……んっ!?」
もう抵抗も出来ず、されるがままに口の中に舌を入れられる
「ん、っ……ふ……」
「……随分と、よさそうですね」
「っ、ん……ぷはっ!」
プラナが何か言ってたけど、気にしてる余裕なんてなかった。シロコに口内を犯されながら、彼女の柔らかい舌が俺の舌と絡み合う。お互いの唾液が混ざり合い、いやらしく音を立てていた
「酸欠……そっか、そういうのもあるんだ。じゃあ、もう一回」
「やめっ──んんっ!?」
また、唇を奪われた。酸欠の状態で、シロコにまた口の中が犯される。何度も何度も、貪るように──
「っ──!?──!!?」
「私の事、忘れていませんか?」
首を、絞められた。後ろから、つまりプラナだ。苦しさのまま必死に体を動かすが、ただ足先や拘束された腕が震えるように動くだけ
「っ───はぁ──はぁ──っ!」
「まだ抵抗出来るんですね……リンネさん、貴方は凄い人です」
「はーっ!はーっ……!」
シロコの唇は離れたが、それでもプラナの手は離れていない。力は少し緩まったが、絞められている以上上手く息を吸えない
「……リンネ先輩をシャーレに連れて行く。こんな風に捕まえてね。でも──見つけた人は、遊んでいいっていうルール」
「あぐっ!?」
プラナの力がさらに強くなる。ろくに息を吸えていないのに、今のでまた吸えなくなった
「シャ、ーレって……連れて行くって、何の事だよ……」
「皆で、リンネ先輩を守ろうって話になったの。色んな学園から人が集まったし、ホシノ先輩に先生も──あぁ、覚えてないんだったね」
「……それは一旦置いておいて、楽しみましょう?リンネさんの記憶が全部、私達の事で埋め尽くされるように」
「っ──!」
プラナの力が、また少し強くなる。少ししか息が吸えなくて、俺の意識が朦朧としてきた
「はーむ」
「んっ!?」
首を絞めながら、シロコが俺の耳を甘噛みしてきた。酸欠で意識が飛びかけながらも、何とか保った状態だったけど、それでまた意識を持っていかれた
「ちゅる……っ、ちゅ……」
「んっ──ふぁ──ん──」
もう、抵抗も出来ない。酸欠で思考回路が上手く回らないし、脳がふわふわしてくる感覚がある。もう、考えるのも億劫になってきた
「ぷぁ……んむっ」
シロコがまた、俺の唇を奪ってくる。プラナの力は弱まってない。酸欠でぼんやりする頭が、何故かシロコとキスしてる事だけをひたすらに認識していた
「ちゅるっ……んっ、んー……」
「ふっ──!?んんん────!!」
酸素を求めて口を開くと、すかさず舌が入ってきた。シロコの舌と俺の舌が絡まり合い、お互いの唾液が口内で混ざり合う。息ができない。苦しい。気持ちいい───
「───ぷは……リンネ先輩、いい顔。可愛い」
「ん───ぁ──なん、で……」
「聞いているのは行為の理由ではない……中断の理由?」
「……リンネ先輩、続けて欲しいの?」
「……なわけ、ない」
「そう」
「っ───!」
首に手を添えられたまま、両耳を二人に同時に舐められる。脳に伝わる快感に溺れそうで、口を閉じて声をを必死に抑えた
「声、我慢しなくていいのに」
シロコは耳舐めを続けながら言葉を紡いだ。その言葉が、俺の中の何かをぶっ壊したような気がした
「──っ、あっ……やぁっ……!やめろ……!」
「あは、やっと喋ってくれた」
「リンネさん。もっと声を聞かせてください」
耳に舌が這い、時折噛まれる。今までよりもずっと強い刺激に、俺は抗えなくなっていた
でも──それはある時終わりを告げた
「え…?何で……」
「やっぱり、もっとして欲しいんだ。なら、言うことあるよね」
少しでも動けば触れられる距離に二人がいる──のに、二人は全く動こうとしない。シロコに至っては、俺の手錠を外した。もういらない、ということだろうか
「……大人しく、するから……だから───んんっ!?」
それからの事は、あまりよく覚えていない。苦しくて、痛くて──気持ち良かったことだけは、覚えている
──────────────────
「……ここ、は」
起きたのは、どこかのベッドの上。俺の家の物ではない。体を動かそうとして──鎖のような金属音が鳴った
「……手錠と、足枷」
「目が覚めましたか、リンネさん」
「……プラナ」
そばに置いてあったタブレットに、プラナの姿が映って、俺に話しかけてきた
「ここは?」
「連邦捜査部シャーレです。端的に言うと──貴方の監禁場所、でしょうか」