死人の二度目   作:かゆ、うま2世

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俺たちは……水着ハナコが下を履いているのかどうかという真実に到達することは決してない……これが、レクイエム、だ


理由

「水族館だー!」

「いぇーい!」

「……元気ですね」

 

 

いつも通りのユメ先輩と、少し前から何だかよそよそしいホシノを連れて、俺達は水族館を訪れていた

 

連れてってもらっといてユメ先輩にはほんと非常に申し訳ないんだけど何故かよそよそしいホシノが怖すぎて気が気じゃないですはい

 

……できる限りユメ先輩に引っ付いて歩こう

 

 

「ユメ先輩!早く行きましょう!」

「わかったわかった。あんまり急ぐと危ないよ?ホシノちゃんもこっち」

「……はい」

 

 

こ、怖え……何でそんなに不機嫌なんだよ……いや、まぁ当然と言えば当然か

 

 

「ゆ、ユメ先輩…手繋ぎません?」

「ん?いいけど、急にどうしたの?」

「ちょっと不安で……」

「……?」

 

 

不思議そうな顔をしながらも、手を繋いでくれる。柔らかくて暖かい感触が伝わってきて、少し安心する。これなら大丈夫そうだ

 

 

「よし、じゃあ出発ー!」

「おー」

「……」

 

 

 

 

 

 

「サメですよサメ。今度皆でB級のよくわかんないサメ映画観ません?」

「観るー!」

「……私も、観ます」

 

 

 

 

「ペンギンだー!……あの、骨が水槽の中入って餌やり体験してるんで辞めさせますね」

「できるだけ早くお願いね」

「…………」

 

 

 

 

「うわっ!?イルカショーって結構水飛ぶんだね。濡れちゃった……リンネ君?急にそっぽ向いてどうしたの?」

「……いや、別に」

「…………」

 

 

 

 

「これがシーラカンス……ずっと昔から変わらない魚…なんかすごいな……」

「へー………」

「……」

 

 

 

 

 

「私ちょっとお手洗い行ってくるねー」

「はーい」

「………」

 

 

終わった

この状態のホシノと二人きりにされてしまった。怖い。絶対めっちゃ怒ってるよこの子

 

 

「……売店見に行ってくるわ」

「私も行く」

 

 

なんで来るの??

別にいいけども、すっごい気まずいんですが

 

 

「……………」

 

 

まぁ、ホシノからすれば廃校の危機に何やってるんだって話だし。俺がいくらバイトしてようと、アビドスがなくなってユメ先輩に会えなくなるのは困るっていう自分本位な理由で頑張ってるのはホシノにはバレてるだろうし

 

 

「……リンネ、その──」

「……ごめんね、ホシノ」

「え?」

「いや、さ。廃校の危機に何してんだって話だし、俺がバイトしてるのもさ、結局突き詰めていけば自分の為だし。俺が謝るからさ、ユメ先輩は責めないであげてくれないかな」

 

 

心底驚いたような表情のホシノ。俺がいきなりこんな事言い出したらそうなるのも当然だろう。だが、俺のせいでユメ先輩にまで矛先が向くのはよくない。それだけは避けないと

 

 

「いや、違、私──!?」

「ホシノ、ほい」

 

 

小さなクジラのキーホルダーを投げ渡す。こっそり買っておいたものだ。折角の皆で来てるのに、プレゼントの一つもできないのはアレだからな。後でユメ先輩にもあげよう

 

 

「俺はどこまで行っても自分本位な人間だからさ、これも俺の為。いらなかったら捨てといてよ」

「リンネ、私──」

「あ、ユメ先輩だ。おーい!」

「リンネ君、ホシノちゃん、待たせてごめんね。……それ、どうしたの?」

「あぁ、これですか。いや、ちょっとお土産でもと思って。ユメ先輩もどうぞ!」

「ありがと〜!大切にするね」

「リンネ、その、私は──」

「じゃ、次行きましょうか」

「うん。行こうか、ホシノちゃん」

「…………はい」

 

 

結局、その日は何事もなく過ぎていった。ホシノが何か言う事もなく、ユメ先輩が責められる事もなく。ただ、いつも通り楽しかった。そう思う事にしよう。少なくとも、今日だけは

 

 

──────────────────

 

 

 

 

「……この辺か?黒服の野郎、訳わかんない事言いやがって…」

 

 

翌日、黒服から連絡が入った。内容は、アビドス砂漠のある座標に向かえ、というもの。そうすればまた借金と利子を減らしてくれる、との事だった。胡散臭いことこの上ないが、乗らないわけにはいかない

 

 

「この辺はなんもないだろ……」

 

 

砂塗れになり、人一人いなくなった市街地。それが指定の座標だったが、特に何もない。もう向かった証拠の写真だけ撮って帰ろう。砂漠は嫌いなんだ

 

 

「嫌がらせに自撮りにしよ」

 

 

そう言って、スマホを取り出した瞬間───スマホを投げ捨てて建物の陰に隠れた

 

 

「─────」

 

 

耳を塞ぎ、目を閉じ、響く轟音から逃避する。あの時、スマホのカメラで見えた何か。白い、機械のような体を持った、超巨大な蛇のような化け物

 

 

「──何だ、あれ。何なんだよあれ……!」

 

 

全身が震える。恐怖が体を支配する。建物の陰に咄嗟に隠れられたのは、本能が体を突き動かしたからだ。あの化け物が視界に入った瞬間、死を感じた。だから隠れる事ができた

 

……死、か

 

 

「……早く、逃げないと」

 

 

あんなのと一対一でやり合えば死ぬ。まだ、俺の人生には悔いが残っている。やりたい事がたくさんあるんだ。こんなところで死んでたまるか

アビドスまで戻って、ユメ先輩とホシノを呼ぼう。三人なら、必ず勝てる筈だ

 

 

「……でも、もしダメだったら?」

 

 

無意識に、そう呟いた。たったの三人で、あの化け物を倒せるのか?無理だ。きっと全員殺される

なら──最善策は?

 

 

「……馬鹿、何やってんだ俺」

 

 

背中に背負ったスナイパーライフルに、ゆっくりと手を近づける。体が勝手に動いている。今この場で取れる選択肢の中で、もっとバカみたいな選択肢を、俺は選ぼうとしている

 

 

「……本当、馬鹿だな俺」

『────』

 

 

いつのまにかそこにいた骨が、親指を立てていた

 

 

「……ずっと、わからなかった」

 

 

建物の陰から少しだけ体を出して、化け物の頭に狙いを定める

 

 

「テレビの中のヒーローとか、消防士とか警察とか、なんで赤の他人の為に命張れるのか」

 

「消防士やら警察やらは、それが仕事だからって言っちまえばまだ理解できた。でも、テレビの中のヒーローは違うよな。金が貰える訳でもねえのに、何で戦えるんだって」

 

「あぁ──でも、こういう事だったんだな」

 

 

消防士も、警察も、ヒーローも、きっと同じだ。誰かの為に危険に向かえる理由。それは──きっと

 

 

「あの化け物が……ユメ先輩やホシノに手を出したらって考えるとさぁ…!」

 

 

きっと、それだけの事だったんだ

 

 

「そりゃあ──俺だってそうしたぜッ!」

 

 

引き金を引き、建物の陰から飛び出した。銃弾によって、奴は完全に俺の存在を認知しただろう。もう後には引けない

それでも、この二度目の生を賭けるだけの価値はある

 

……あぁ、でも

 

 

「……本当、馬鹿な事した」

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