死人の二度目   作:かゆ、うま2世

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邂逅

 

 

 

「深夜徘徊楽しー」

 

 

最近の趣味は深夜徘徊だ。なんか独特な雰囲気を感じられるから好き。そもそもまともに出歩けるのブラックマーケット内だけだし、買い出しとかじゃないと外出ないから体が鈍るんだよね

あと、こういう時は流石に一人だ。ここまで付き合ってもらう訳にもいかないし、プラナも置いてきてある

 

 

「……ん、あの人…」

 

 

珍しく人を見つけた。それも一人。深夜のブラックマーケットで一人ってのは珍しい。不良にも見えないから、純粋に迷った人なのかな

まぁ、そのままにしておくのもなんかアレなので、ピンク髪の彼女に話しかけてみる

 

 

「ねぇ君。どこの子か知らないけど、ここは危ないよ」

「───あ」

 

 

ボロボロのクジラのキーホルダーがついたショットガンを持っていて、身長が結構低い。見た目的には中学生くらいで通ると思う

 

 

「道に迷ったなら……まぁ、ブラックマーケットの外までぐらいは送ってくけど」

「え?なんで……」

「……返事しなきゃわからないよ」

 

 

そういう会話が苦手なタイプかもしれないけど、流石にここは喋ってもらわないと困る。というか、普通に女の子だし、一人で放置するのはちょっとね

 

 

「……その、怒ってる、よね」

「は?」

 

 

会話が成り立ってなくないか?怒ってはいないけど、意味がわかんないし困惑してはいる。俺が何をしたっていうんだ

……まさか、知り合い?深夜のブラックマーケットに?

 

 

「私があんな態度しちゃったから、怒ってるんだよね?」

「待て待て、何の話だよ。返事してくれなきゃ困るってだけで別に怒ってないから」

「ちょ、ちょっと待ってよ。何でそんな他人行儀なの?」

 

 

……他人行儀?

 

 

「だって初対面じゃん」

「……え」

 

 

俺はこいつを知らない。知らない奴には他人行儀になるのは当然だと思うんだけど

 

 

「ひ、酷いな〜。そこまで言う必要無いじゃん」

「いや、誰かと勘違いしてないかお前。俺はお前を知らないぞ」

 

 

本当に記憶にない。こんな特徴的なピンク髪をしている奴がいたら、忘れたくても忘れられないだろう。だから、多分他人の空似

 

 

「……やっぱり、怒ってるじゃん」

「いやいや、マジで覚えが無いんだけど」

「ほ、本当に何も思ってないの!?」

「うわびっくりした」

 

 

急に声が大きくなる。本当になんなんだこいつは

 

 

「や、やめてよ。私何でもするからさ、怒らないでよ」

「いや、だから───」

「な、何して欲しい?なんでも言って!本当になんでもやるから!」

 

 

正直声を掛けた事を後悔してきた

 

 

「……お前さ、疲れてんだよ。だから他人と俺を間違えるんだ。何度も言うけど、冗談とかじゃなくて俺はお前を知らないからさ」

「………ぁ」

「旨いもん食べてゆっくり寝ろ。ほら着いてきて、ブラックマーケットの外まで連れていってあげるから」

 

 

様子が変だからさっさと外に出して帰ろう。そのまま二度と関わらないようにしよう。それが一番いい気がしてきた

 

 

「行くよ」

 

 

彼女に背を向けて歩き出し───

 

 

「ごめん、リンネ」

 

 

後頭部に感じた強い衝撃と共に、意識を失った

 

 

──────────────────

 

 

「……最悪だ」

 

 

まずい事になった。あの訳わかんない女に拉致られたのは理解できる。縛られてるし、どっかの建物の中だ。窓もないから外の様子も確認できない

 

 

「二度と一人で外でない」

 

 

もう常にプラナと一緒に行動しようと心に決めた。とにかくこの状況を何とかしないと

 

 

「動きづらい……」

 

 

手足を縛られている以上、芋虫のように動くしかない。せめてこの倉庫みたいな部屋の構造ぐらいは把握したい

 

 

「あ、起きた?」

「っ!」

 

 

あのピンク髪の女が入ってきた。こうして俺を監禁してきた以上、何をどうやっても友好的にはできない

こいつが来る前ならまだ骨の腕を動かせばやりようがあったかもしれないが、こうなってしまってはどうすることも出来ない

 

 

「誰だお前、何が目的だ」

「あはは、とぼけちゃって。ま、髪も伸びたししょうがないか」

 

 

……そういう事か、平和ボケしすぎて思い至らなかった。こいつは、過去に俺が会った事のある人間だったのか

 

 

「……悪いけど、お前の事は何も覚えてない」

「もうすぐユメ先輩も来るからさ、それまでお話ししよ?ほら、積もる話もあるでしょ?」

「いや、だから俺はお前を覚えてないっての」

「───いい加減にして!」

 

 

いきなり叫ばれてビクッとする。確定だ、逃げなければ駄目なやつだ。うちの従業員が俺を見つけた時は、ここまでの反応は示さなかった

記憶を無くす事を知らなかったカヨコでさえも、こいつのように荒れてはいなかった。監禁なんてもっての外だ

 

 

「私だよ!小鳥遊ホシノ!」

「覚えてないって言ってるだろ。こんな事する奴の事なんか尚更知らない」

 

 

だから、一度カイには滅茶苦茶怒った。俺を追ってくるのはいい。でもその過程で誰かに迷惑を掛けるような奴は嫌いだ

 

 

「……本当に、覚えてないの?」

「あぁ」

「アビドスの事も?ユメ先輩の事も?……私の、事も?」

「……悪いけど、本当に知らない。俺を待ってる奴らがいる。早く帰してくれないかな」

「嫌だよ」

 

 

……どうにかして自力で脱出?拘束をどうにもできない以上、それは難しいだろう。なら助けを待つ?プラナが見つけてくれる事を願うしかないが、これが一番現実的だろう

 

 

「……最初はさ、見間違いかと思ったんだ。でも、ああやって話してみてわかった。声も、顔も、性格も、全部リンネそのものなんだよ」

「……それは残念だ。見間違いならよかったのにな」

「もう、忘れてるとか忘れてないとかどうでもいいや。ずっと会って謝りたかったんだ。誰よりもアビドスの為に頑張ってたリンネに、あんな事言っちゃったから」

「……覚えてないって言ってるだろ」

 

 

話が通じない。一生平行線のままだ。俺はこいつを知らない。こいつは俺を知っている。そしてこいつはイカれてる。多分、何を言っても無駄なんだろう

 

 

「……いいよ。忘れちゃってるなら、思い出させてあげるから」

「……やめろ。近寄るな」

「痛くしないから大丈夫だって」

「お前の為に言うぞ、それ以上近寄るな」

「……何?そんなに怖がらなくてもいいじゃん」

 

 

ホシノが一歩、俺に近づいた

 

 

「だから言ったんだ。近寄るなって」

 

 

瞬間──飛んできた骨の腕の、切り離された手の部分を口でキャッチする

 

 

「……え?」

「んぐっ……ふぅ。言ったはずだぞ、お前の為に」

 

 

後ろで縛られた手で骨を握る。単純な事だ。恐らく倉庫であるこの部屋の扉、そこに骨の腕を生やし、それを別の腕で手の部分を切り離し、切り離された手をまた別の手で投げた

 

 

「切り離された手は……元に戻る」

「っ───!?」

 

 

俺とホシノを一緒に軽々飛ばして、高速で扉まで吹き飛ぶ。人二人分がこの勢いだ。扉の一個程度簡単に破壊できる

 

 

「っ──!知らなかったか?こういう時の俺はやたら頭切れるんだぜ」

 

 

扉を破って廊下に出た。外は明るい。周囲の景色に見覚えは無い、ここはブラックマーケットではないようだ

 

 

「……無駄だよ、絶対に逃がさないから」

「束縛されんのは大嫌いなんだ。悪いけど、お前とはここでさよならだ」

 

 

部屋の外に出れた以上、やる事は決まっている。こいつが嫌がる事を全力でやるだけだ。窓を開けて、俺はここにいると全力で叫ぶ。あとは骨を使って逃げ回ればいずれ助けがやってくるだろう

 

 

「────」

 

 

息を吸って、出来るだけ大きな声を───

 

 

「───リンネ君!」

 

 

息が、止まった

初めて聞く声だ。そのはずなのに、この──妙な懐かしさは一体

 

 

「……本当に、リンネ君、なの?」

 

 

水色の髪の、女性だった。何だろう、この感覚は。名前も知らない。そもそも初対面だ。そのはずなのに、この胸を締め付けられるような気持ちは

 

 

「捕まえた」

「あ───」

 

 

固まっている間に、ホシノに捕まった

 

 

「あ──やだ。やめろ、離せ!」

「嫌だって。逃す訳ないじゃん」

 

 

さっきまでいた倉庫に引き摺られていく。また骨を投げる?駄目だ、縛られて立たない今では姿勢が低すぎる。外に出られない

 

 

「……ホシノちゃん、待って」

「………」

 

 

眼前の女性の言葉で、ホシノは止まった。正直、あまりこの人を見たくない。胸が苦しくなるから

 

 

「……本当に、誰────」

 

 

言い終わる前に、抱きしめられた

 

 

「────ぁ」

 

 

 

「──ユメ、先輩?」

 

 

 

 

「────は?」

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