死人の二度目   作:かゆ、うま2世

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山海経の日々

そんなこんなで早一ヶ月。新しいスマホも用意して、新しい生活にも慣れてきた

玄武商会の仕事は飲食店みたいなものだったので、柴関でバイトしてた経験が生きてきた

キサキもルミ会長もすごい良い人だ。怪しさマックスの俺にここまで良くしてくれるなんて、本当に感謝してもしきれない

 

さて、ここからはわかった事を整理していこうと思う

 

まず、俺が死んだ日から大体一年が経過していた

……俺だって驚いた。新しく買ったスマホの日付を見た時、それはそれは驚いた。死んでから転生するまでの間にはタイムラグがあるらしい。バラバラに砕けた肉体を新しく用意するのに時間が掛かるのか、理由に関してはよく知らない

 

次、黒服についてだ

あの後、俺が生きてることをどっかから知ったあいつは俺の元にやって来た。相当驚いてたのは面白かったな

どうやら、あいつは骨の腕とその能力をミメシス?しようとしたらしいが上手くいかなかったようで、どうせなら骨の力が見たかったので俺をあの化け物の所に送り込んだらしい。きっしょ、死ねや

 

未だに記憶は戻らないし、わからない事も結構多いけど、とりあえずは玄武商会での毎日を楽しく過ごしている。とりあえずはこのまま山海経で暮らしていってもいいかな

 

 

「おいしー!」

「あははっ、そんなに美味しそうに食べてもらえるとこっちも嬉しいよ」

 

 

時々、ルミ会長の新作を試食させてもらえる事もある。レイジョは嫌がってたけど、普通に美味しいんだよな。流石に萬年参はダメだったけど

 

 

「うんうん。それじゃ、食べてもらったとこ悪いんだけどさ、一仕事頼まれてくれないかな」

「構いませんけど、どんな内容ですか?」

「梅花園に食材を届けて欲しいんだ」

「梅花園…ですか?」

 

 

確か、山海経内での幼稚園的な施設だった筈だ。玄武商会が食材を届けているのは初めて知ったけど、ルミ会長の頼みだし、新しい知り合いを作るチャンスでもあるし、断る理由はない

 

 

「食べ終わったら行ってきますね」

「ありがとう。それじゃよろしく頼むよ」

 

 

──────────────────

 

 

 

「ここか…」

 

 

骨と一緒に食材の入った段ボールを抱えながら、目的地である梅花園まで辿り着いた。思ったより広いし、中々綺麗な所だ。子供の声が聞こえてくるし、多分合ってるだろう

 

 

「──あれ、食材を届けに来てくれたんですか?」

「ん?」

 

 

声のする方を向くと、子供がいた。白い髪の子供だ。キサキも身長は低いけど、子供と言い切れるような年齢でない事は雰囲気でわかった。でもこの子は間違いなく子供だ

 

 

「梅花園には教官がいるって聞いたんだけど、どこにいるかわかる?」

「……私ですけど」

「んー?」

 

 

これはあれだな。園児なりのおふざけという奴だ。大人としてきちんと対応しないと

 

 

「あはは、面白い子だね。冗談はほどほどに……」

「本当です!私が教官ですよ!」

「……マジ?」

「マジです!」

 

 

やばい。必死さが嘘に見えない。ということは本当に子供が教官なのか?そんな馬鹿な話があってたまるか。でも実際目の前にいるわけだし……

あ、そうだ、ルミ会長から名前聞いてたんだった

 

 

「名前は?」

「春原ココナです」

「すいませんでした」

「……え?」

 

 

一秒もかからずに頭を地面につけた。もうこれしかないと思った。これが正解だと

 

 

「え、ちょ、ちょっと!?」

「本当に本当にごめんなさい」

「と、とりあえず食材を運んでください!」

 

 

建物の中に食材を運び込んだ後、改めて土下座しようとしたら止められた。怒っていないとの事だ、女神かな?全然足舐める覚悟だったんだけど

 

 

「とにかく、食材ありがとうございました」

「俺は運んだだけだから。お礼ならルミ会長に言ってくれ」

「ところで、その……見慣れない顔ですが、貴方は?」

「俺?俺は──」

「──骨崎リンネさん、ですよね?」

 

 

振り向くと──そこには、母性があった

全てを優しく包み込んでくれる母親のような、幼き頃に幾度となく関わり、一生の思い出として残る幼稚園の先生のような───とにかく、そこには圧倒的なまでの母性があった

 

 

「………そう、です」

「骨崎リンネさん……あぁ!貴方が噂の!」

 

 

危なかった。あとちょっと気を張っていなかったら何を口走っていたかわからない

……しかし、何かやけに好感が湧く。何でだろう?

 

 

「……あの、貴方は?」

「春原シュンです。よろしくお願いしますね?」

「こちらこそ」

 

 

手を差し出されたので、こちらも差し出して握手した。柔らかい。そして温かい。俺の手とは大違いだ

 

 

「そういえば、どうして俺の名前を知ってたんですか?」

「門主様から。山海経の各組織のトップは貴方のことを知っていますよ。訳ありなので、丁重に扱うように、と」

「門主……誰だか知らんけど助かるな」

「……あら?知らないのですか?」

「…?はい、そりゃあ…会った事無いですし。俺が会った事ある玄龍門の人とか、キサキだけですし…」

「会ってるじゃないですか」

「え?」

 

 

話が微妙に噛み合わない。俺が玄武商会の人以外に誰かと会う機会なんて今まで無かった。少なくとも、玄武商会の人達以外でまともに会話したのはキサキくらいしかいないはずだけど

 

 

「キサキ、というのは…竜華キサキで合っていますか?」

「はい」

「竜華キサキ…彼女は玄龍門の門主ですよ?」

「…………えぇ!?」

 

 

キサキが玄龍門の門主!?

待て、だとしたら今着てるこの上着は!?アビドスの制服に代わる服は手に入れたけど、妙に気に入ったからずっとつけてるこの上着は!?

玄龍門の門主のもの!?

 

 

「……知らなかったんですか?」

「は、はい。全く知りませんでした」

 

 

キサキとはあれから何回か会って話しているが、そんな事気にした事も無かった。言われてみれば、初めて会った時もなんか変な反応してたような気がする

 

 

「……まぁ、どうでもいいか。ていうか、ココナは?」

「ココナちゃんなら……」

 

 

シュンさんが指す方に目を向けると、そこには園児に囲まれているココナの姿があった。大変そうではあるが、しっかり園児たちを纏めているその姿は確かに梅花園の教官だ

 

 

「お兄ちゃん誰〜?」

「お、俺のところにも来た」

 

 

子供達に囲まれてしまった。何だか微笑ましい気分になってくる

……しかし、見事なまでに全員女の子だ。だから幼稚園児時代とか結構肩身狭かったんだよなぁ…

 

 

「よしよし。リンネお兄ちゃんと呼びなさい。いいな?」

「「「「うん!」」」」

「良い返事だ」

 

 

子供って可愛いな。こんな気持ちになるのは初めてかもしれない

 

 

「懐かれましたね」

「なんか嬉しいですね。こういうの」

「ふふっ、そうですね」

 

 

──────────────────

 

 

あの後、あんまり遅くなるのも良くないので割とすぐに戻ってきた。しかし子供というのはどうしてこう……疲れた。離してもらうのにかなり苦労した

 

玄武商会に戻った後は、今日の仕事はもう終わりだからと家に帰された。今ちょうど玄関前に着いたところだ

 

 

「ただいま〜」

 

 

返事が返ってくる筈もないが、つい癖で言ってしまう。靴を脱いで、家に上がり、部屋の扉を開き───

 

 

「おかえり、と言っておこうかの」

「……キサキ、また勝手に入ったのか」

「合鍵を渡しておく方が悪いんじゃろ」

「事前に連絡くれればいいの」

 

 

ここで目覚めたあの日、一番最初に出会った彼女。今の家を手に入れた時から、どうやってか家の場所を調べてやって来たのだ

相当くつろいでるが……こいつ、玄龍門の門主なんだよな

 

 

「あー!俺が買ったポテチ食べたな!?」

「うむ。美味かったぞ」

「お前……マジで……」

 

 

駄目だ。もう門主様とかの目で見れない。何を隠そうこの女、結構図々しいし、遠慮がない。でも、そういう所を少しだけ気に入ってしまった自分がいるのもまた事実だ

 

 

「そういやお前、玄龍門の門主だったんだな。びっくりしたよ」

「…………」

 

 

キサキは一瞬動きを止めて、こちらを見つめてきた。まるで何かを考えているかのように……しかしそれもほんの数秒だった

 

 

「……なんじゃ、知られてしまったか。ならば、門主に対する対応の仕方というものが───」

「ヤダ。人のポテチ食うやつに今更威厳とか感じられない」

「……ふふっ、そうか。それでよい」

 

 

期待通り、と言った感じで笑って見せた。実際、こいつがどんな奴かは大体わかってきた。意外と気さくだし、面白いやつだ。だからこそ、玄龍門の門主という肩書きはどうしても結びつかない

 

 

「どうせだしご飯食べてく?」

「そうさせてもらうかの」

 

 

これも初めてではない。こうしてたまに晩飯を食べていく事がある。今ではすっかり慣れてしまった。なんだか家族みたいだ

 

 

「……あ、流石にこの上着恐れ多いんだけど…」

「持っておれ。もう其方の物じゃ」

「はーい……」

 

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