「──結論から言いましょう。貴方は……いえ、今回の貴方はもう長くない」
現在、俺は入院中だ
吐血をキサキに見られ、速攻で病院に連れてかれて検査された。結果、理由はわからないが殆どの内臓が碌に機能してないらしい
転生が関わってるのはまず間違いないだろうし、この手の話は医者よりも黒服相手の方が良いと思い、今は呼びつけた黒服と二人で話している
「バラバラに砕け散った貴方の体を、貴方の魂が未知の方法で一から作り直した。しかし──神秘を有する『生徒』の肉体を形作るには、一年という期間は短すぎた」
「…………」
「結果、貴方の体は神秘の保有量も前とは比べ物にならず、そもそも肉体の機能自体が大きく低下してしまった。あと数日で貴方は死ぬでしょう」
「ふーん」
……今回の俺は、こういう終わりを迎えるのか。正直最悪だ。前のように、戦って誰かを守って死ぬのなら良い。後悔は残らない
だが、こんな死に方は御免だ。かといってどうにかする方法も思いつかないしなぁ……
「……黒服、頼みがあるんだけど。拒否権は無しね」
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「キサキ、あんまり入り浸ってていいの?」
「構わぬよ。あと数日、なんじゃろ?」
「……そんな顔しないでくれ」
俺の体のことを聞いて、色んな人がお見舞いに来てくれた。ここで過ごしたのは大体二ヶ月程度なのに、こんなにも多くの人が俺のことを気にかけてくれる。ありがたいことだ
「せっかく良いとこだったのになぁ」
「……全くじゃの」
そう言って、彼女はベッドに乗り、俺の側に腰掛けた。そのまま俺の手を握ってくる。そしてもう片方の手で頭を撫でてくる。これはあれだ、バブみを感じる
「ん〜……」
「……この程度なら、いくらでもしてやるぞ」
「じゃあもっとして」
「……仕方ないのう」
そう言う彼女の表情はとても優しげなもので、慈愛に満ちた聖母のような微笑みを浮かべていた。とても綺麗だ。ずっと見ていたくなるような、不思議な魅力があった
「───!?」
「そう動揺するな」
思いっきり抱きしめられた
……何だか、前にもこんなことがあったような気がする。でも、今回は彼女の温もりをより鮮明に感じることが出来た。それが嬉しくて、心地よくて───
うん、今死んでも後悔無いわ
「……俺」
「ん?」
「……いや、何でもない」
───俺は、また生まれ変わるのだろうか
だとしたら、それはいつまで続くのだろう。俺が、本当の意味で終わる時が、いつか訪れるのだろうか
「……まぁ、いっか」
考えるだけ無駄だ。今は、目の前の幸せを享受しよう
その手段は、ただ一つ
「すぅぅぅぅぅぅ……」
「こら、吸うな」
「無理」
「まったく……」
呆れたようにため息をつく彼女。でも、嫌がる素振りは全く見せない。むしろ受け入れてくれている。すっごい良い匂いするし、柔らかくて温かい。このまま寝てしまいそうだ
「……願いがあるのなら、なんだって叶える。何かあるか?」
「今はこれで十分だよ」
前と比べて良かった事は、こうして話ができる事だ。以前は速攻死んで話なんてできなかった事を覚えている
「……はぁ、そろそろ時間じゃの。またすぐに戻るからの」
「えー」
「我儘を言うでない」
そう言いながら、名残惜しげに手を離し、立ち上がる。そして振り返り、笑顔でこう言った
「───待っておれ、必ず会いに行くからの」
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「……暇や」
キサキもいない。お見舞いも来ない。黒服はなんか忙しいらしい。つまんねえ。マジで暇すぎる
「……こういう時こそ研究だな」
ベッドの上に生やした二本の骨の腕を見比べてみる。まぁ、何か変わるわけでも無い。いつも通りだ
だが──これは因果を撃ち込む骨の腕だ。必ず何かある。せっかく時間があるんだし、これについてもうちょっと調べてみよう
「……壊してみるか」
手首の部分で二つに割ってみる。すまんな骨。お前には恨みは無いが、実験台になってもらうぜ
「うおっ!?」
床に落とした手首は、数秒固まった後、吸い寄せられるように元に戻った。まるで磁石みたいだし、結構勢いが強い。当たったら痛そうだ
「……てことは」
今度は指の第一関節を千切り、少し遠くに投げてみる。骨自体が小さかったのでそこまで威力は無かったが、スピードが段違いだ。離れれば離れるほど、速く骨と骨は繋がるんだろう
「今度は粉々にしてみるか…」
原型がなくなるまで砕いてみた。だが、それも一瞬で再生してしまう。つまり、この腕は壊れることが無いのだ。流石にここまで来ると気味が悪いな
「……ていうか」
なんか、変だ
二本の腕を見比べた時に、何だか違和感がした。見た目は同じ…同じ?
「ちがーう!」
わかりづらいが気付いた。片方の腕、人差し指の第一関節が無くなっている。俺が化け物を殺す時に撃ち込んだ部分だ。ここだけ再生していない
「……運命を決めるのに使った部分は消えて無くなるのか」
また一つ賢くなったな。だからどうしたという感じではあるが
「ここまでにして、とりあえずどうにかしないとな」
転生する度に数ヶ月で死ぬような体にされても困る。まぁ、対策はもう考えてあるけど
人差し指が欠けていない方の骨を腕に纏わせ、指で形作った銃を自分の肩に突きつける。俺の力は運命を決定づける。そう、運命を決めるのだ。殺す事だけじゃない
「転生しても健康な体になるように定めて……と」
流石にこの程度で死ぬ事はないだろう。多分
人差し指の第一関節が俺の肩を貫いた。ちょっと痛いが、すぐに治るから問題ない。よし、これで大丈夫なはずだ
「さ、眠いし寝よ───」
……ミスを、した。この、感覚は───!
「────ッ!」
胸を突き破って、骨の腕が生えてきた。一目散に俺の頭に手を伸ばしてくる。末路なんて考えるまでも無い。今回の俺の死因は衰弱死ではなく、頭を握りつぶされて終わりだ
「定めた運命に関係なく──使った時点で死が確定するのか!」
抵抗なんてできる筈もなく──俺の頭は握りつぶされた
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「遅くなってしまったの……」
彼の病室へ向け歩く。足取りは軽く──未来への絶望は、少しだけ目を瞑って
あの路地裏から始まった関係。玄龍門の門主ではなく、竜華キサキを見てくれた彼。最初は興味本位だった。でも、今はきっと違う
……あと、数日で死んでしまう。それは、変えられない事実なのだ
「……それでも」
歩みを止めない。たとえ終わるとしても、彼に会わなければいけない。そして、伝えなければならない事がある
「……」
彼が入院している部屋の前に立つ。扉に手をかけ、ゆっくりと開く。そして、中に入って───
「────え?」
───頭が、無かった
正確には、原型が無かった。圧倒的な力で握り潰されたような、直感的にわかった。そして──死んでいる事は、誰が見ても明らかだった
「……りん、ね」
震える声で名前を呼ぶ。返事はない。当然だ。だって、彼はもう、死んでしまったのだから
「……っ」
涙が溢れ出す。止めどなく流れ落ちる。拭っても意味がない。一度決壊してしまったものは、もう戻らない
「だ、れじゃ。誰が──!」
一瞬遅れて、怒りがやってきた。バカでもわかる。他殺だ。犯人は間違いなく存在する。だけど、今ここにはいない。逃げたのか?
「誰が殺した!許さぬ、許さぬ許さぬ許さぬ!!」
決意は固く、叫ぶ
必ずだ、持てる力の全てを用いて、必ず見つけ出して───
「───殺してやる!」