死人の二度目   作:かゆ、うま2世

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追跡

「リンネ!怪我は……大丈夫みたいだね。よかった」

「勿論無事無事〜」

 

 

翌日、カヨコが俺の病室に来た。どうも心配してくれていたようだ。嬉しい。素直に嬉しい

 

 

「ごめん、私を庇ったせいでこんな事に……」

「気にすんなって。それに、俺が勝手にやったことだし」

 

 

実際そうだ。カヨコは悪くないし、俺が勝手に飛び出しただけなんだし

 

 

「……ありがと」

「どういたしまして」

 

 

カヨコが俺の手を握る。暖かい手だ。カヨコは体温が高いのか、それとも俺が冷えているのか

 

 

「……怪我、本当に大丈夫?」

「大丈夫だって。もう殆ど痛くないし。カヨコの方こそ怪我はない?」

「お陰様で無傷だよ」

「そっか。よかった」

 

 

せっかく庇ったのに怪我してたら本末転倒だしな。カヨコが無事なら庇った甲斐が有るというものだ

 

 

「……ごめん、余計なものまで背負わせちゃって」

「余計なもの?」

「いや、ほら。ただでさえ色々抱えてるのに、私を庇ったりしたらさ、もっと負担が増えちゃうっていうか」

「変な事気にするんだな」

「……そりゃ気になるよ。大事な友達だもん。何かお礼、させて欲しいんだけど」

 

 

……お礼、か

 

 

「俺の事抱いてくれない?」

「抱く!?」

 

 

滅茶苦茶驚かれた。確かにアレだけどそんなに驚く事かな。もしかしてカヨコって奥手だったりする?

 

 

「だ、抱くって…私が?私がリンネを抱くの?」

「うん」

「ぎ、逆じゃないの?リンネが私を抱くんじゃなくて、私がリンネを抱くの?私が、私が、私が……!?」

「……ごめん、そんなに嫌ならいいよ」

「あ、いや、その……本気、なの?」

「うん。俺はカヨコに抱かれたい」

「……わ、わかった」

「マジ!?ありがと〜!」

 

 

了承を得たので、腕を広げて待機しておく。すると、これ以上ない程焦った表情を浮かべた

 

 

「い、今ここで!?」

「うん。今すぐ」

「ま、待って。心の準備が」

「早く早く、めっちゃ強くお願い」

「つ、強くって」

 

 

可愛い。真っ赤になって慌てふためく姿は、普段とのギャップも相まってとても可愛らしく見える。抱きしめたい。これから抱きしめられるんだったわ

 

 

「もう痛いぐらいのハグを頼むよ」

「……ハグ?」

「そうそう。ハグ」

「……抱いてって、そういう意味?」

「どんな解釈だよ。それ以外の意味ないだろ」

「……馬鹿みたい」

 

 

先程までの焦った様子は消え去り、いつも通りの顔に戻った。一体何を勘違いしていたのやら。抱く…抱く……?あっ

 

 

「はい、これでいい?」

「いい……」

 

 

優しく、包み込むように抱き締められた。暖かさと柔らかさが伝わってくる。カヨコの匂いも、鼓動の音も感じ取れる。凄い、幸せだ

 

 

「どう?満足した?」

「全然足りない。もっと」

「欲張りだね」

「うん。だからもっとちょうだい」

「……しょうがないなぁ」

 

 

今度は胸に抱き寄せるようにしてくれた。柔らかく……はないけど気持ち良い。このまま眠ってしまいそうだ。でもまだ寝たくない。もっとこの幸福感を感じていたい

 

 

「まだ足りない?」

「あと少しだけ」

「はいはい」

 

 

本当に、記憶なんて一ミリも残っていない筈なのに、この行為には何か覚えが有る気がする。懐かしいような、安心するような、不思議な感覚だ

 

 

「……ユメ先輩」

「……ねぇ、誰の事?寝ぼけてるの?」

「え?」

 

 

俺、今なんて言った?

 

 

「……悪い。確かに寝ぼけてるのかも。俺なんて言ったんだ?」

「ユメ先輩……って言ってた。知り合い?その人にもこんな事頼んでるの?」

「いや……聞き覚えのない名前」

「ふーん」

 

 

ユメ先輩…誰の事だろう。前の俺が出会った人だろうか。記憶は消える筈だ。もしそうなら口からその名前が出てくる筈がない

……まぁ、思い出せない以上、考えてもしょうがないか

 

なんて事を考えていると、カヨコの抱きしめる力が強まった

 

 

「ちょ、力強…どうしたの?」

「別に。ちょっとムッとしただけだから」

「あー…ごめん」

「……謝りたいならさ、リンネも私のこと抱きしめてよ」

「いいの?」

「勿論。ほら、早く」

 

 

言われるがままに、俺からも強くカヨコを抱きしめた。柔らかいし暖かい。それに、やっぱり甘い香りがする。好きな匂いだ

 

 

「……なんかさ、こうしてると恋人同士みたいじゃない?」

「どしたの急に」

「別に、思っただけ」

「………」

 

 

俺とカヨコは友達だ。それ以上ではない。変な事を言うんだな、なんて思いながら、俺達はお互いを抱き合う。強く、互いの存在を確かめ合うかのように

 

 

「───リンネ!怪我したっ……て」

「フウカ!?」

「……誰?」

 

 

──────────────────

 

 

 

「疲れた……」

 

 

あの後、バチバチになってしまったフウカとカヨコをどうにか諌め、二人にお礼をして帰ってもらった。今日は厄日かもしれない。精神的疲労が半端じゃない

 

 

「あ〜……癒されたい…のかな」

 

 

前の俺もそうだったんだろうが、最近の抱きしめられたい欲求はちょっと異常だと思う。何でこんなに誰かとのハグを求めるのかさっぱりわからない

 

 

「……ま、いいや」

 

 

久しぶりに骨でも眺めよう。死にまくった結果、四本にまで増えた骨の腕。これを見ると不思議と落ち着くんだよな。前の自分がいた証なわけだから

 

 

「……最近、お前動かないよな」

 

 

一本だけだった時はよく動いてた覚えがある。二本になってから以降だったか、殆ど動かなくなったのは

人差し指の第一関節が無くなっている骨が二本。中指と人差し指の第一関節が無くなっているのが一本。全て残っているのが一本。運命を定める力が五指の第一関節にあると考えると、一回死ぬ事に弾丸は五発装填される事になる

 

同じ性能の腕が死ぬ度に増えていく理由はきっとそこにあるだろう。ここまで過剰供給されると、俺から運命を定める力が消えることは無いだろう

 

 

「……ユメ先輩、か」

 

 

本当に、誰の事なんだろうか。記憶を失っている筈なのに、この謎の喪失感はなんだ?胸が締め付けられるような、悲しい気持ちになる。でも──きっと、前の俺が関わっているなら、追うことはできない。今の俺は、その人のことを何も知らないのだから

 

 

「お悩みですか?」

「どっから来たんだよ気持ち悪いなお前」

 

 

黒服。相変わらずどこからくるのかわからない奴だ。実際こいつのおかげで助かっている事も多いけど、基本的にはろくでもないやつだ。俺以外の生徒と関わらせるのは止めなければ。少なくとも、俺の見える範囲では

 

 

「それで、何の用?」

「ああ、そうでした。今回は少しまずいですよ」

「…………」

 

黒服がそう言うって事は、本当にまずい状況になっているんだろう。俺じゃなく、キヴォトスか他の生徒かは分からないけど

 

 

「少し前、風紀委員会が存在を確認した爆弾……風紀委員長がアレの調査に赴きました」

「……それがどうしたんだ?よりにもよってヒナがやられるとは思えないが」

「爆弾、ですよ。貴方の死因は教えた筈です」

 

 

爆弾、死因……まさか!?

 

 

「彼女、このままだと死にますよ」




ちなみにリンネ君はやたら抱きついてくるおっぱい大きいゆるふわな先輩に脳を破壊されています
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