ERROR
「……どこだよ、ここ」
目覚めると、どこかの市街地だった
これ自体は割と良くある事だ。問題は、その街自体にある
「明らかに人が住んでる状況じゃない……」
空は曇り、嫌な風が肌を撫でる。割れた窓ガラスも、壊れた壁もそのままだ。人の気配は一切無い。滅んだ街。この表現が一番似合う
「今度は何があったっていうんだ……」
少なくとも、俺の記憶の中にはこんな街は存在しない。また、復活まで時間がかかったのだろうか
「……とりあえず、歩くしかないよな」
行く宛も無いので、適当に進む事にした
本当に、どこを見ても同じ様子だ。騒がしさの塊の筈のキヴォトスが、今はこんなにも静かだ
「……!」
後ろから、何か──機械の足音のような音が聞こえてきた。振り返ると、どこか紫色っぽいイメージの丸いロボットがいる。なんか見覚えがある。何故かは知らないけど
「時よ止まれ」
六本の触手のような腕を伸ばしてきたので、俺に当たる前に時を止める。例外なく全てが止まり、触手も俺の前で静止する────
「────何ッ!?」
事はなく、俺の腹を勢いよく殴打した。何故?止まった時の中を動けるのは俺だけの筈だ。なのに何故──いや、考えるのは後でいい。今はこの状況を切り抜ける方法を────
「あ……?」
次に敵を視界に入れた時には、止まっていた。何度も見た、止まった時の中の光景。なら、何故あの一瞬動けた?
「っ───!」
考えるのを後にして、高火力の特殊弾をロボットに撃ち込む。やがて時が動き出し、敵は爆散した
「……なんだったんだよ、今の」
今までにない出来事だった。わからない事だらけで頭が痛くなる。何がどうしてこんな状況になってるのかがさっぱりわからない
「…………」
建物の陰に隠れて、もう一体いたさっきのロボットを見つめる。ちょっと実験と行こう
「……やっぱり、動いてる」
俺が時を止めても、あのロボットは動いていた。だが、それもせいぜい二秒程度だ。残りの三秒間はしっかり止まっている。考えれば考えるほど意味不明だ
「とにかく、二秒動けるならそれを念頭に置いて動こう」
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まずやったのは情報収集だ
役に立たないスマホは仕舞って、新聞やら辛うじて生きてたテレビとかから情報を仕入れていく。その結果わかった事はいくつかあった
まず、ここは間違いなくキヴォトスだ。生徒はおらず、学園都市の面影はどこにもないが、ここは確実にキヴォトス。それは疑いようのない事実だ
そして二つ目──これが一番大きいだろう
「シャーレの先生、ね」
聞いた事のない単語だった。キヴォトスに先生はいない。シャーレなんて組織も……忘れているだけなのかもしれないが、知らないものは知らない
「……でも、これじゃ助かりそうもないな」
ニュースを聞く限り、重体になってから七十五日が経過しているらしい。それだけの間意識不明であれば、助かる見込みは無いだろう
……俺が運命を定めれば、何とかできるだろうか
「……ダメだな、リスクが大きい」
骨で定めた運命由来の力である時間停止がこの有様では、骨の弾丸も上手く働かない可能性がある。死ぬのは怖くないが、死にたい訳じゃない。無駄死にの可能性が少しでもあるならやりたくないし、そもそも先生を起こした所でこの街が元通りになるとも思えない
「どうなってんだマジで」
調べても、結局は謎が増えるだけ。どうするのが正解だろうか。時を戻す能力を──駄目だ、迂闊に骨は使えない。となると……
「……駄目だ、どうにもできん」
八方塞がりとはまさにこういう事を言うのだろう。打つ手無しだ。
「ま、とりあえず歩くか」
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「……歩いた先で行き着くのがここかよ」
俺が立っていたのは校門の前。それも、アビドス高等学校だ。覚えていない、キヴォトスに来てからの一度目の学校。それがアビドスだ。
「どうせ誰もいないだろうし、入るか」
そうして、校舎の中を歩く。妙な懐かしさを覚えなくもないが、やはり知らない場所だ
「この部屋だけ妙に物が多い……」
掠れた文字が書かれたホワイトボードに、くっつけるように集められた机。部活か何かのものだろう。教室というより部室のような印象を受ける
「……これ、は」
写真だ。俺と、六人の少女が写った写真。俺が写ってるのは、まぁ前の俺と考えれば不自然な事じゃない。問題はとある一人。水色の髪の、この少女
「俺、どこかで────」
「───え?」
後ろから、声が聞こえた
写真に写っている、銀髪の獣耳が生えた少女。その人物が、目の前にいる
「……リンネ、先輩?」