旧ルートに関しては、物語としてのクオリティの低さとかいろんな観点からボツにすることに決定して、もっかい書き直すことに決定しました
勝手なことしてマジごめん
喪失
「…………」
「そう固くなさらず。心配せずとも何もしませんよ」
そう言って、目の前の……黒服、とか名乗った男………男?は小さく笑った
さっきからわからない事だらけだ。目覚めるなり変な街だし、頭に何か浮かんだ変な人だらけだし、最初に会うのは人かどうか怪しいような化け物みたいな奴だし
「……まぁ、とりあえず。お前の言うキヴォトスがどうとか言うのは無理矢理飲み込む事にする。でもさ、あんたは俺にどうして欲しいのよ」
「どうして欲しい、ですか……特には考えていませんね」
「何それ」
「ですから……そうですね。我々としてはこのままゲマトリアに身を置いていただくのもいいですが、貴方の意思を尊重しましょう。因みに、私はシャーレで先生の世話になるのをお勧めします」
「…………」
ゲマトリア。黒服みたいな見た目化け物だらけの集団
シャーレ。見た目普通の先生がいる所
比べるまでもなかった
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「お願いしまあああああす!!!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて……」
その後、何とかシャーレに突撃した俺は、件の先生に土下座をかましていた。目の前であたふたしてるおっぱいのでけー黒髪のねーちゃんが先生だ
身分も無い、人脈もほぼ初対面の化け物だらけ、そもそも状況をそんなに理解できてない。もう見た目からいい人だってわかるこの人に縋る以外の道は無かった
「えっと……シャーレに入部したいって事でいいのかな?」
「……そう、なりますね」
「とりあえず、君のことが知りたいな。教えてくれる?」
「……あー、すいません。わかんないんです、自分の事。骨崎リンネって名前ぐらいしかわからなくて、どこの学園に所属してるのかも……そもそも、キヴォトスっていうのもよくわからない、です」
「記憶喪失……ってこと?」
「そう、なんですかね……あー、やっぱ駄目ですよね、こんな怪しい奴」
「あ、違うの!ごめん、ちょっとびっくりしちゃって……頭上げて?」
いきなりこんなん言われても困るよな……でも他にどうしようもなくて……
そんな気持ちを込めた視線を先生に送っていると、先生は少し考えるような素振りを見せてから口を開いた
「……よし、いいよ。君はこれからシャーレの部長。よろしくね、リンネ」
「え?」
受け入れられてしまった
正直、黒服から聞いた時は無理だと思ってた。身分も証明できない怪しい奴を受け入れてくれる所なんて普通無い。この人もしかしてお人好しか?
「じゃあ……改めてよろしくね、リンネ」
「あ、えと……はい。お願いします」
でもまぁ、こんないい人に出会えたんだ。キヴォトスだとか言うよくわからん所だけど、とりあえず生きていけそうだしそれで充分だろう
あれから数日経ったので、とりあえず今の状況を整理しようと思う
まず、目覚めたらキヴォトスって所に居た。記憶は無い。自分の名前以外の事は一切覚えていない。身分は無かった。持ってるのは服一式とやたら高性能なハンドガン。なんやかんやあってシャーレって組織に拾ってもらった。知り合いは先生と黒服、あと黒服以外のゲマトリアも一応連絡自体は取れると思う
「先生って激務だねぇ」
「あはは……まぁ、ね」
そう言って笑う先生は、今日も忙しそうに書類に目を通している。ほぼ泊まり込みらしい。どこまで人がいいのかこの先生は
「二人でこれだもんね、前まで一人だったんでしょ?」
「いや?ユウカとかが手伝ってくれてたから、実は一人ってそんなに無かったんだ。最近はあっちも忙しいみたいで来れてないんだけどね」
「へー」
ユウカ。知らない名前だ。先生の知り合いだろうか
「……よし、一旦休憩にしようか」
「はーい」
シャーレに身を置かせてもらう代わりと言っては何だが、先生の仕事をちょっと手伝っている。わからない事も多いが、そこは先生を頼らせてもらってる
「疲れた…」
「お疲れ様。手伝わせちゃってごめんね?」
「別に、これぐらいは構いませんよ。養ってもらってるようなもんですし」
「ならいいんだけど」
先生が淹れてくれたコーヒーを飲む。すっかり舌に馴染んだ味だ。いや本当、感謝してもしきれない
「……あの、先生」
「なーに?」
「近くないですか」
「そう?」
そう言って先生は首を傾げた。近いのだ、距離が近い。ほぼ密着してるようなもんだ。別に今に限った話でもない。この人、俺との距離感がバグってるのだ。普段からやたら距離が近い
俺だって健全な男の子。優しくておっぱいと身長のでかいお姉さんは大好物だが、意図的か偶然なのかよくわからないスキンシップは心臓に悪い
「まぁ、別にいいんですけど…なんでこっち来るんです?」
「なんとなく。落ち着くんだよね、リンネの隣」
そう言って先生は俺の頭を撫でた。気持ちいいし嫌いじゃないけど心臓に悪いからやめて欲しいんだよなぁ……そんな俺の思いは先生に届かず、先生は撫でるのをやめない。諦めてなすがままになる事にした
「……なんかね、リンネを見てると心配になってくるんだ」
「心配?」
「うん。なんて言えばいいのかな…リンネを見てると、守ってあげなきゃって気持ちになるの」
「えー……俺そんな弱々しいイメージですかね」
「あ、そうじゃなくてね!何て言えばいいのかな……」
少し考え込むような仕草を見せてから、先生は静かに口を開いた
「……自分を顧みない、自己犠牲の塊って感じ」
「何ですかそれ。俺そんな所見せましたっけ。そもそも自分のこともよく分かってないのに」
「ま、ほとんど勘だし。リンネはもう少し我儘になってもいいと思うんだよね」
「もう十分我儘でしょ」
身分が保証できない状態で突っ込んで、初対面で土下座かましてまで養ってもらおうとしてる俺が我儘言ってたら世話ない。先生には本当に頭が上がらない
「うーん、何だろうね。何でかリンネには幸せになって欲しいなって思っちゃうんだよ。先生としてってだけじゃなくて、個人としてね」
「何ですかそれ、俺の事好き?」
「あはは!そうだね、そうかもしれない」
冗談で言ったつもりが肯定されてしまった。この人たまによくわからない方向にぶっ飛ぶんだよな。先生の机の引き出しからゲヘナの生徒の小学校の頃の卒アルが出てきた事あるし
「……我儘、か」
「お、興味でてきた?」
「ない訳じゃないですけど、これ以上何を望むのかってのはありますね。もう既に貰いすぎなぐらいですし。何でもいいんですか?」
「…………お金が掛からなければいいよ」
「頼みませんよそんな事」
先生は色々買って金欠になる事が多い。別に何買ってもいいと思うけど、何事も節度ってものがあると思う
……でも、我儘。そうか、我儘か…
「……あ」
「お、思いついた?」
「あーいや、その……」
思いついたと言えば思いついた。でも……何というか、流石にこれは無茶ぶりすぎるというか、いやでもこれは確かに我儘だしなぁ……
「大丈夫。何でも言って?」
先生の目は、確かに何でも受け入れてくれそうな迫力がみたいなものがあった
「……えっと、先生」
「なーに?」
「我儘なんですけど」
「うん」
意を決し、俺は口を開く
「ハ……グが、したい、です」
「え?」
一瞬、時間が止まったような気がした。その言葉の意味が先生に伝わってしまった……ような気がする。流石にこれは引かれるよなーとか思いながら俺は先生の反応を待った
「そんな事でいいの?」
「……はい?」
返ってきた反応は予想外のものだった。想像では流石に駄目ーとか、そういう風に言われると思っていたのだ。そんな事で?今この人そんなことって言ったか?え??
「ほら、おいで」
視線の先には、両手を広げて柔らかな笑みを浮かべる先生の姿。恐らく、今俺は間抜けな表情をしているだろう
「どうしたの?ほら」
先生がゆっくりと手招きする。まだ混乱したままの頭で、それでも先生の所へ行くべきという衝動に駆られて俺は一歩を踏み出し──── そして、次の瞬間には抱き締められていた
「どう?」
「……あったかい、です」
「そっか。よかった」
後頭部と背中に回された腕に力が込められる。優しい温かさに包まれて、とてつもない安心感に心が満たされていくような感じがした ずっとこうしていたい……そう思った時にはもう抱き締め返していた
「……不安とか、色々?」
「……そうかもしれないです」
「大丈夫。何があっても、私はリンネの味方だからね」
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「ふぅ……」
先生は外に行ったので、今はシャーレに俺一人
あれ以来、先生との仲は深まった……と思う。少なくとも、俺たちの間には確かな信頼が芽生えている。色々あって疲れてるはずなのに、どことなく身体は軽いような気がする
「……なんか俺ちょろくない?」
いや仕方ないだろ。あのおっぱいだぞ?正直メチャクチャに甘え倒したいぐらいだがそれは流石に駄目だろ常識的に考えて。……でも本当にいい匂いがするんだよなあの人、近いといつも思う
「ぐぬぬ……」
駄目だ、最近ちょっと変態寄りになってきた気がするぞ俺……気をつけねば
ていうか、何気にシャーレで一人になるのは初めての経験だ。まぁ、別にそんなに大したことは起きないだろう。一人で留守番できるかどうかとか、幼稚園児じゃないんだから
「……?誰か来た。先生?」
オフィスの扉が開いて、誰かが入ってくるのがわかる。ちょうどモニターで見えないので、身を乗り出して姿を見てみる
「……えっと、お客さん?」