違和感
「はじめまして、ですね。大丈夫ですよ、応答は最初から期待していません」
「要件は見ての通りです。現在の彼の状態は我々としても興味深いですが、そんな事を言っている場合ではないですからね」
「クックックッ、貴方をここまで変えるとは……いやはや、彼には以前から驚かされてばかりです」
「外には出しますが、それからはお願いします。彼に関わると私も危ないのでね」
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銃を撃ち、時には殴り、敵を制圧する。今は無きSRTでの訓練は、彼女達四人の圧倒的なまでの力の源泉───の一つに過ぎなかった
その本質は、過去に彼女達の目の前で消えていった一人の男にあった
「……制圧完了」
「……ねぇ、ユキノちゃん」
FOX1ではなく、名前を呼ぶ声。その声に、ユキノは動きを止める
「いつまで続けるつもり?」
SRT特殊学園は解体された。SRT所属の生徒は大半がヴァルキューレに転入した。FOX小隊はそれを拒否し、こうして単独で犯罪組織や不良生徒を狩り続けている
誰からのバックアップも受けていない以上、物資は少しづつ枯れていく。ヴァルキューレに所属してもできる事を、所属せずに続けている理由があった
「……ヴァルキューレの上層部は腐敗している。私達の正義は、あそこにはない」
「物資も尽きるし、環境も良くない。こんな事続けても、私達は報われないよ」
「報われる必要など無い」
呪いのように頭にへばりついた、一人の人間の末路。それが彼女達を縛り付ける
「正しい者が報われるのなら、何故あいつは報われなかった」
その言葉を聞いていた誰も、反論なんてできなかったし、する必要も感じなかった。それはきっと、ここにいる全員が抱いている感情だから
「……二人とも、まだ一つ部屋があるわ。早く行きましょう」
諌めるようなクルミの声に従うように、二人は最後に残った部屋の入り口へと歩みを進めた
何が起こるかわからない、それが戦場だ。FOX小隊としての幾度とない戦い───何よりも、あの日の経験がそれを嫌という程刻みつけた
あらゆる事態を想定し、備え───尚、それを超える事態が起こる事など珍しくもない。だが───
「………は?」
予想外にも、限度というものが必要だろう
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「どういう事だ!?答えろ!何故──何故リンネがここにいる!?」
武装を奪われ、拘束された機械の住人達に怒鳴りつける。その声は怒りに満ちていたが、動揺と怯えも感じ取れた
「し、知らねえよ!俺たちはただその辺に寝てたそいつを使って身代金でも取ろうかと思っただけなんだ!だからそいつが誰とかよく知らねえんだよ!これから調べるって時にお前らがいきなり乗り込んで来たんだ!」
早口で捲し立てるように、知らないという単純な事実を言い放った。それは錯乱した子供のようでもあり、命乞いをしているようでもある
あの日、間違いなく目の前で骨崎リンネは死んだ。その肉体は跡形もなく砕け散った。生き返る事などあり得ない、完全な死を迎えた
だがどうだ。今こうして、目の前に死んだ筈の人間がいる。意味がわからなかった
「……FOX1、どうするの?」
「……今考えている」
よく似た別人───はあり得ない。別人と断言するには、余りにも似すぎている
骨崎リンネは未だ眠ったままだ。何度呼びかけようと起きる気配はなかった。寝ているのではなく、何かの要因で意識を失っていると言った方が自然だった
……この事が公になれば、リンネがどうなるかわからない。死んだ筈の人間が生きていた。まず間違いなく普通の生活は送れないだろう
「……それは、駄目だ」
許容なんてできる筈もなかった。リンネには、普通に生きて幸せに暮らす権利がある
……かといって、リンネを預けられる程信用に足る者も知らない。ならいっそ、私達で───
「……え?」
ニコの、心の底から驚いて、思わず漏れてしまったかのような声。咄嗟にニコの方へ顔を向け────
「……FOX小隊、主のいない猟犬」
リンネが、目覚めていた。怪しく光る赤い双眸が私達を射抜く。違和感を、覚えた。怪しく光る赤い瞳に、根源的な恐怖を呼び起こさせるような威圧感
「俺の命を使って生き延びた償いの時間だ。俺に従え」
「………お前、は────」
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「そん、な……事が…?」
「……残念ながら全て事実です。この体に必要なのは時間。貴女達がやるべきはそれを稼ぐ事」
私だけじゃない、この場の全員が聞いた、骨崎リンネの真実。全てを聞いた。前の事も、今の事も
「何をすればいい?」
小隊の意思は一つ。確認を取るまでもない。自分達が持つ全てを、骨崎リンネの為に費やす覚悟は出来ている
「……玄龍門へ。安全を確保しつつ外部との関わりを断ちます。この体を危険から遠ざけなくては」
「わかった。今すぐ行こう」
「……待ち、なさい」
私を止める、リンネの声。荒い呼吸と、辛そうな声音。死が訪れる訳ではないとわかっていても、その姿はまるで死が近づいているように見えて
「分かってはいましたが、この体、余りにも………少し眠ります。頼みましたよ」
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「先生、少しいいかな」
「……ウタハ?」
一人が消えた、いつも通りの日常。シャーレの業務に、ゲーム開発部の事に、忙しさだけは変わらないままだった
……骨崎リンネの捜索も、同時に進めている。再び全てを忘れ、蘇っている筈の私の生徒。……私が今、生きている理由
「骨崎リンネ、この名前を知っているかな?」
だからこそ、その言葉には酷く驚いた
「私が彼にプレゼントした銃にはね、生体認証があるんだ。私と彼だけが触れられる。それ以外の人間が触れれば弾かれる。……彼の要望で普段から起動するGPSは付けなかったがね、私か彼以外の人間が触れた時だけ、それが起動して銃の場所がわかるんだ」
少し、彼女らしくもない。冷静さに欠けた、捲し立てるような喋り方
「最近忙しくてね、気づくのが遅れてしまった。……あぁ、返答には気をつけるといい」
そして何より───明確な敵意
「……先生、何故リンネの