D.U.地区、とある建物内にて───
「──な、何故!?私に従えば、SRTを復活させると言っているのですよ!?」
「何度聞いても答えは同じだ、防衛室長。その提案には乗らない」
そこにいたのは、連邦生徒会の防衛室長──不知火カヤと、FOX小隊隊長の七度ユキノ
「私達には、果たすべき正義がある。形にはこだわらない」
「SRTが無ければ、それも不可能な話でしょう!?」
「形にはこだわらない、と言った筈だ。SRTが無くなればヴァルキューレでも、どこへだって行く。お前に従い、悪事を為してSRTを守ったとして、そんなものに価値は無い」
「ッ……!」
「この場は見過ごす。何か企んでいるなら今のうちにやめておけ。……もっとも、何をしようと私達が止めるがな」
「何故、そこまで───」
「……何故、か」
「私達は…一人の命の上に、ここに立っているからだ」
──────────────────
「SRTが解体?」
アビドスでの一件から少しして、いつものようにカフェをやりながら平穏な毎日を過ごしていた俺達に衝撃的なニュースが届いた
「……まぁ、連邦生徒会長の指揮下の組織だったもんな…今会長居ないし、持て余しちゃったんだろうな」
「……SRT、ですか」
「あれ、ワカモ知ってるの?」
「……いえ、特には」
あれから、たまにアビドス組が遊びに来たりこっちから行ったりして過ごしてる。シロコも最初はぎこちなかったけど、最近は割と自然体でいられるようになってきた
「……ま、俺たちには関係ないかな」
あれっきり、先生とは会っていない。多分俺がどういう存在なのかは知っただろうけど、音沙汰がないって事はそういう事だ
まぁ、いつも通り。カイの不味い薬を飲んだり、アキラに私物を盗まれたり、ワカモに暑苦しいぐらいひっつかれたりして、毎日過ぎていくんだろう────
「……?」
ガチャリと、店のドアが開く音がした
「まだ開店時間じゃないですけど……」
「──リンネ様!」
俺を守るように、ワカモが前に出た
視線の先──店の扉を開けたのは、狐耳の生えた一人の少女だった
「待て、争いに来たわけじゃない。ただ──会いに来ただけなんだ、リンネ」
「……ワカモ、下がって」
「……はい」
ゆっくりと、警戒しながら近づいてくる。そして、目の前まで来たところで立ち止まった
「……君は、俺を知ってるんだね」
「あぁ。よく…知っている」
「……でも、俺は君を知らない。記憶喪失でさ、覚えてないって言った方が正確かもしれないけど」
「……そうか」
「名前を、教えてくれる?」
彼女は『七度ユキノ』というらしい。解体されてしまったSRT所属の特殊部隊であるFOX小隊の隊長なんだとか
多分、ヴァルキューレに所属していた時に交流があったのだろう
「……少し前から、お前のことを見ていた。最初は捕まっているのかと思った。……でも、わからなくなった。お前のあんなに楽しそうな顔を、誰も見たことがなかったから」
「……」
「外に、あと三人いる。全員、お前に会うためにここに来た」
「……俺、覚えてないけど、それでもいいなら」
「……構わない」
──────────────────
「リンネ君!」
「ぐぇ」
そうして、店に入って来た三人の少女──ニコ、クルミ、オトギと言うらしい──に思い切り抱き着かれていた
「ちょ、くるし……っ」
「本当に…リンネ、なのよね」
「……生きてる。本当に…良かった…!」
泣きじゃくりながら抱きしめてくる彼女達を見て、何も思わないほど鈍感ではない。けれど、やっぱり何も思い出せない。ユキノから聞いた名前と、大まかな関係を知っているだけなのだから
大人しく待っててくれてるワカモには後で何かしてあげよう
「……ごめん。俺、覚えてないんだ」
「……いいの。また、仲良くなればいいだけだから」
それから暫くして落ち着いたのか、俺から離れる三人。ちょっと名残惜しかったりするけどそれは言わないようにしよう
「……そういえば、SRT解体されちゃったみたいだけど、大丈夫なの?」
「実は…ここに来たのはそれ絡みでもあるんだ」
「あー…話が見えた。うちでお前らの面倒見ろって話?」
ユキノは小さく頷いた
「いきなり押しかけておいて図々しいとは思うが……頼む。何だってやる。お前だけの武器となるから」
「採用。今日からお前らうちの従業員な」
「……従業員?」
「カフェやってるから。うちに住むなら働いてもらうよ」
「……ありがとう。恩に着る」
そうして、FOX小隊はうちのカフェで預かる事になった。急な話だったけど皆は受け入れてくれた。FOX小隊の皆はたまーにワカモとバチバチしながらも、結構いい働きをしてくれている
……ただ、まぁ。一つ気になるのが…
「……リンネ」
「ん?」
カフェの仕事も終わり。いつものように客のいなくなった店内で、ユキノが話しかけて……話し…
「……ユキノ、手…」
「…………すまない」
指を絡めて手を繋いでくる。ユキノ……というより、FOX小隊全員こんな風にかなりひっついてくる。ワカモが可愛く思えてくるぐらいには
「……不安、なんだ。また、お前が消えてしまいそうで」
「……」
黙って手を握ってあげると、少し安心したような表情になった。こういうところは、年相応だなって思った
「……生きている、よな」
「生きてるからそんなにひっつかなくてもいいと思う」
俺の左胸に耳を当てて心音を確かめてくる。非常に恥ずかしいからやめてほしい
「……心臓の音、早いぞ」
「そりゃ早くもなるだろ……」
「……記憶を失っても、お前は変わってない。いや、ちょっと変わったようにも思えるが…多分、芯は変わってないんだろう」
「……そう、かな」
「だから…きっと、お前はまた私達を庇おうとする」
そのままユキノが体重をかけて来て、テーブル席の椅子に押し倒される形になってしまった
「……どうすればいい?どうすれば、私はお前を繋ぎ止められる?」
「ユキノ…?」
「もう…もう二度と、お前を失いたくない…」
(……何やったんだ、前の俺)
涙を流しながら俺の胸に顔を埋めるユキノを撫でながら、なんとなくそんな事を思った