飲めば透明人間になれる秘密のエッチな飲み薬、気が付けば異世界で巨乳剣士が目の前に!?~天才科学者と呼ばれたこの私が女剣士の召使を始めたら~   作:でぃくし

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キメラ

「ん?」

 

屁だろうか?あるいはおならか?

それとも、まさか……実!?

 

いや違う。

 

老人が引きつったような表情で瓦礫を見つめている。

よく見れば折れた木材と瓦礫の隙間に、栗色の、くりくりとした毛の塊のようなものが挟まっているのがわかった。

 

どうやら生き物のようだ。

 

「おお!ローさん!ほれ!よう見てちょうだや!なんかいごきようて!ケツ向けとるがや!」

「ああ……」

 

老人は静かに腰を落とすと、腕を引いて拳に力を込める。

 

魔法だ。ぱちんという音がなり、空気が張り詰めていくのがはっきりとわかった。

腕の毛が逆立って、冷や汗が一気に吹き出した。

 

屁、あるいはおなら、または毒ガスも出たかもしれない。

 

「ちょ……ちょっと、ローさん?」

 

私は老人に語りかけるが、彼はじっと毛の塊を見つめている。

 

見た感じはちょこんと突き出たしっぽを持つ小さめのブタのようだが、こちらにケツを向けてじたばたと足を動かしているため顔はわからない。

 

そして、老人の魔法が炸裂するかと思われたその時だ。

 

「ぎゅきいーっ」

 

生き物は瓦礫の穴から頭を引っこ抜くと、ぼてんと地面に転がった。

 

「ひっ、ひぃい!でっ、出たあ!」

 

思わず声を漏らす。

 

その生き物は、ブタのような体と耳とブタそっくりの鼻を持ち、それからブタのごとき脚とヒヅメを持った……。だがそれでもパグ犬ほどの大きさのそれは、明らかに普通のブタではなかった。

 

「……えっ、ヘビ?」

 

ちなみに、私は自分の脳天に放水が直撃するまで救急車と消防車の違いがわからないほど目が悪い。

しかし生命の危機において覚醒でもしたのかこの時ははっきりと生き物の姿を捉えることができた。

 

生き物はその体に不釣り合いなまでに大きなヘビを絡みつかせている。

 

ブタがヘビにめちゃんこやられとるだけだがね……とでも言えば話はわかりやすかろうがそうではない。

 

ヘビはまるで水面に沈むかのようにブタのケツの周辺から体組織に潜り込んだかと思えば、今度はブタの脇腹からぬるりと頭を出すのだ。

 

ヘビは完全にヘビだった。

 

ニシキヘビのような見た目で、ちろちろと舌を動かし、もはやヘビとしか言いようがない。

ブタが捕食者をちょらかす目的、すなわち擬態などのために毛やしっぽなどの体組織を変化させているようには見えない。

 

しかもだ!もじゃもじゃとしたブタの体毛の下にはやはりニシキヘビを思わせる鱗が生えている。

生物学において、遺伝情報の異なる細胞が共存している状態の個体をキメラと呼ぶが、こいつはまさにそう呼ぶにふさわしいだろう。

 

こんな恐ろしいものは見たことがない!

 

見ているだけで頭がおかしくなりそうだった。

 

「ほああーーっ!なっ、なんじゃこりゃああ!?」

「ぽぎ?」

 

『キメラブタ』はその小さな体を起こすと私を見上げる。

その丸い瞳はブタでもヘビでもなく、深海に棲むサメを思わせる不気味なまでにぎょろぎょろとした大きなものであったが、まあまあ愛らしいとは言えるかもしれない。

 

……ていうかこいつ見た覚えがあるな。

村のボロ小屋の中で野菜をかじっていた妙なブタで、泥に塗れた私のツラを見て逃げ出したヤツだ。あれと同じ個体かどうかは分からないが……。

 

「うえへへ……驚かせてすまないね坊や。このまま静かに行かせてもらえたらありがたいんだがね」

「ぴ?」

 

にこやかな表情を浮かべてキメラブタに話しかけてみた。

しかしヤツは小さな前足を持ち上げ、ヘビと一緒にその首をこてんとかしげるだけでその場から動こうとしない。

 

その様子を見ていた老人が気の抜けたように笑う。

 

「アズマーキラ……こいつはただの弱っちい怪物だ。イモでも投げてやればそっちに行くだろう」

 

「うは!なるほど!」

 

私は袋の中に手を突っ込んでジャガもどきを取り出すと、キメラブタに向けて投げつけてやった。

 

「おおっ!」

 

すると驚くなかれ、キメラブタからヘビが触手のように伸びてイモをキャッチし、そのまま丸呑みにしたのだ!

 

今度は足元へと転がしてやる。

そして二度びっくり!今度はブタの口がイモをキャッチし、そのまま丸かじりだ!

 

「ウェハハッ、こいつはすごいな!」

 

思わず感嘆の声を上げると老人が言葉を続ける

 

「あいつはああやって虫や小鳥なんかを食うんだよ。まあ、大して害のある奴じゃない。毒も持ってないようだし。ちょっかい出した奴が体当たりされて転ぶくらいだ」

 

「ほほう……不思議なもんだ。しかも、よく見たらかわいいじゃないか」

「そうか?目玉が変にデカくて、見ていると不安になってくるがなあ……それよりアズマーキラ、そろそろ戻」

 

老人が言いかけたその時だった。

 

耳元で空を切るような音がしたかと思うとキメラブタの顔面が水風船のようにばしゃりと弾け飛んだのだ。

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