先祖の兄弟喧嘩に巻き込むな   作:氷陰

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うちはマダラについて考えてました。
全然出てこないのができました。


願わくば

 

 

 何故か、自分以外の魂が後ろにあることを知っていた。

 その魂はこちらに何も語りはしない。自身が生まれた時から存在する気配はオレに何かをさせたい訳でもないらしい。それなら無視していいか。

 

 ……その楽観は、戦場で無に化した。

 

 初めて一人前として戦場へ連れられた日。

 同じか、少し年上に見える齢の少年から目が離せなくなったのだ。

 我々は雑兵ではなく忍、かつここは戦場。生存率・撃破率を上げるに必要だったのは敵の力量を把握すること。「あいつ」とオレが同等と、互いを引き連れてきた大人に看做された。

 だから、「あいつ」とオレは相対する。

 

「貴様、名は」

「千手だ」

「それはわかっている」

「お前たち、うちはと殺し合うその名以外必要なかろう!」

 

 感傷だ。

 初めて会う敵に? 

 まるで……生き別れの兄弟に再会したような、最愛の家族が死んだような、この気持ちはなんなんだ? 

 

 オレに兄弟はいないから、この例えが正解に近いかも確信が得られない。ムズムズする。戦場だぞ、しっかりしろ。

 

「あいつ」は刀を構えたまま訝しげな顔でオレを睨む。

 不可解なのだろう。オレもだ。

 あるいは、「あいつ」も何か感じているのか。

 

「……そうか」

 

 納得したと返事する。事実だ。

 オレたちの間に殺し合う以外の選択肢はない。

 

「戯れに付き合う余裕もないか」

「正気か? 戦場で遊ぶ傲慢さを悔いて逝け」

「正気で人を殺すならば狂人と相違ないだろう」

 

 話を引き延ばす。欺瞞だ。

 オレの心は、後ろの魂は、「こいつを殺せ」「断ち切れ」と叫んでいる。

 

「まるでおれを殺したくないような物言いをするな、うちはの者よ。眼を赤くしても騙されんぞ」

 

 図星だった。本当で、嘘だ。

 殺すべきだと叫ぶ魂と同じくらい、殺したくないと泣きたくなるような心が重さを増している。

 

 ……オレは写輪眼を開眼したのか。身内を守るためではなく、己の精神の矛盾で開眼するか。自分が嫌になりそうだ。

 

 反射的に刀を振るうが、そんな剣筋は当然弾かれる。

 ああ、結局はどちらかが滅ぶまでやめられない戦いらしい。

 

 諦めにも似た心持ちは、オレを戦場へ適合させた。

 次の軌道は確かなもので、「あいつ」の刀を返し、遠くへ弾き飛ばす結果を出す。

 

「あいつ」がすぐにクナイでオレの刀から身を守る。2合角度を変えて狙ってみるも受け流され隙はない。ならばと3合目に足払いをしかければ、気づいたものの対応できず姿勢を崩した。首を狙えどもすかさず結ばれた印は土遁。視認した瞬間距離を取れば、オレと「あいつ」の間には壁が盛り上がってくる。

 

 クソ、見失う。写輪眼はチャクラの動きは見れるが透視できるわけではない。

 雷遁で土の壁を破壊し、視界を確保するがもちろんやつはいない。左右には行ってない。上か、下か。

 

 ——上! 

 火の国はどこも大木だらけで隠密に向くが視界が悪い。利を取られるとかなり後手に回る。

 風遁の斬撃が降りそそぐ。

 

「うちはに挑む術が風でいいのか? 千手の」

「ぐ……!」

 

 火遁・豪火球の術。最大火力。風を巻き込んで火勢を増し「あいつ」を襲う。風遁がお得意か。

 豪火球の術はうちは一族にとって使えねば話にならない。が、オレのいま練れるチャクラ量では連発できない大技。ここで仕留められるなら良いが……。

 

「……水遁!」

 

 まあ、そうすべきだろうな。火遁の大きさに合わせられる水の量とは……「あいつ」のチャクラ量は相当なものだ。得意なのは水だったか。素直に感嘆する。

 

 打ち消された火は水を蒸発させ、辺りの視界と冷えた空気を奪う。写輪眼には見えているが、追撃をかけようとしたところでクナイと手裏剣が大量に飛んできた。単純だが手間のかかる手を打つ。

 小童め。

 

 走る。

 避ける。避ける。弾く。避ける。弾く弾く。

 追加を土遁で防ぐ。待つ。待つ。待つ。待つ。待つ……。

 

「チッ。後ろではなく、前へ跳ぶべきだったな」

 

 戦いの経験が足りない。

「あいつ」のチャクラはもう遥か彼方である。近くには似たような性質のチャクラを感じる。多分千手の連中だろう。追うのは無謀。

 ……殺したくない気持ちがあったにせよ、完封もできず逃走を許すとは! これはこれで面白くない。

 

 

 

 今までうんともすんとも言わなかった背後の魂が、オレを叱責するかのようにざわめいている。うるさい。お前のせいだ。お前の心が矛盾するからオレもブレたのだ! 

 

「ああ、ああ! もう!! なんなんだ!」

 

 未熟な戦闘! 未熟な肉体! 未熟な精神!! 何もかもが弱い、己が醜い! 

 イライラして、ムシャクシャして、こんな場所には居たくなくて衝動的に刀の先を己の心臓に突き立てようとした。

 

「何をやっている!! カナタ!!」

 

 ビクッ。大声と腕が大きな手に掴まれたことで思考が止まる。その方向を見れば。

 

「……あ、父上」

「何をしようとした。まさか命を自ら無駄にする気だったのか」

「しかし、しかし」

「……」

「逃げられました。力が足りず、戦っていた千手の者を、倒しきれませんでした」

 

 本当はそれだけじゃない。しかしこれも自分の心の真実だ。どうすればいいんだ。

 

「悔しいか」

「……はい」

「ならば修行してより強くなれ。お前ならば六道仙人すら超える力を身につけられるだろう」

「精進します」

「ではまずこの手を離しなさい。……よく生き延びたな、カナタ」

 

 自分に向けるには長い得物。刀身を握りしめて血だらけの手は、初陣唯一の怪我だった。

 

 

 

 六道仙人という名前を聞いて、少し心が怒ったような、苦しいような気分になった。オレにとっては、オレたち忍の祖というだけで思うところはないから、おそらくオレの後ろのやつの心だ。

 

 もしかしたらこいつは、うちは一族の祖・インドラかもしれないな。ならば、「あいつ」の背後霊はさしずめ大筒木アシュラか。ははは、つまらん。

 

 兄弟喧嘩に子孫を巻き込みやがって……! 

 

 一族の集落に帰ると、まず生存を喜ばれ、思っていたよりも殺せなかったことは怒られなかった。「初陣で千手が尻尾を巻いて逃げる程度なら及第点」らしい。

 それよりも写輪眼が開眼したことに周囲の熱が上がっていた。齢10に満たず開くのは優秀だと。祝いの席まで開かれた。

 そしてまた、次の戦場だ。

 

「うちはのますますの繁栄と、うちはカナタ様の武運長久を祈りまして……」

 

 オレは祈らない。祈ったところで何も届きはしないから。誰にも届かないから。

「あいつ」が気になるのは暫定インドラが暫定アシュラの魂に気づいて荒ぶっていたのに引っ張られているだけ。殺したいのと殺したくない心の矛盾もインドラの。そういうことにしておこう。

 

 だから今のあいつ(アシュラ)の名前くらい知りたいと()()のは、オレの方の心ではないんだろう。そういうことにしておく。

 

 





カナタ
叶岳、叶多。
一応転生者で、一桁年齢から殺し合いさせるとかこの世界やばくね?と思いつつなんとか適応している。今代のインドラの転生体。そこそこ勤勉で優秀な将来有望のうちは。

千手の子
カナタの二つ上。この後だいぶ絞られた。あの変なうちは野郎に次は勝つ!と思ってる。多分今代のアシュラの転生体。チャクラは多いがまだ弱い。
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