「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
異界に響き渡る雄叫びと共に突貫するカノン。
その手には彼女に合わせて2m程の長さに調整された最新型ルガーランスが握られていた。*1
そのまま前方の【妖獣 バイコーン Lv14】へ肉薄、ルガーランスを突き出し運動エネルギーが乗せられた一撃は抵抗も無く胸部へ突き立てられた。
同時に刀身表面に施された刻印が起動し刀身強化に用いられているMAG量が増加、最新型に追加された溶断機能を作動、バイコーンの胸を刳り広げながら刀身と基部が展開し射撃形態へ移行した。
「【ルガーランス】*2【火炎ブースタ】*3【アギラオ】ッ!!*4」
放たれたその一射はバイコーンを穿ち、その身を内側から焼き尽くす。
その隙を突かんと殺到する悪魔達だが彼等はもう一人の存在を失念していた。
迫る悪魔達を迎え撃たんと人間体の総士が前に出た。
――いや、人間体というには語弊があった。
肌や瞳は平時のまま、サイズも人間体に合わせてダウンサイジングしているが右腕は肘から下が悪魔体であるサーガラのものに変化していた。
忘却していた存在の乱入により虚を突かれた悪魔達を意に介する事無く総士は右腕を振り抜き先頭を走っていた【地霊 ツチグモ Lv13】の頭部を粉砕、自身の足でブレーキを掛けるとその場に踏み止まった。
瞬間、その背からMAGの光が溢れ出しその背に円形の発光器官と刃の様に鋭利な翼が姿を現した。
円形の発光器官が無色に発光、その周囲に大量の茶色の小さなMAGの光が灯った瞬間、眼前の悪魔達を真下から打ち上げる様にして無数の石礫が放たれた。
その一撃によって2体のツチグモは蜂の巣、10体ほど居た【幽鬼 オバリヨン Lv12】と【凶鳥 チン Lv14】はあるものはダルマになり地にひれ伏し、またあるものは空中でミンチになりながらその肉片をまき散らし、MAGへと変換され消滅していった。
それを横目で見遣るとMAGの光を発生させ悪魔体へ変身、右掌に闇色の光を迸らせ、カノンが使っている物より遥かに長大だが同じく最新型ルガーランスを出現させた。
「【チャージ】*7……【SDP:増幅】」
何かしらのスキルを発動させた瞬間、総士の右手から緑色の結晶が生えると覆い尽くしルガーランスの柄と一体化させた。
それに伴いルガーランスの刀身が先程カノンが作動させた溶断機能の時以上に大量のMAGの光を纏いだした。
そのまま突進し大量に存在していた【外道 レギオン Lv19】の群れを直線上に居る者は貫き、周りに居る者は衝撃波で磨り潰して突破した。
陣形の最奥に居たこの異界の主である【堕天使 ベリス Lv24】は迫る脅威を迎え撃たんと槍を構え、スキルを発動した。
「【鎧通し】ッ!!!!*8」
「【トラフーリ】*9……【SDP:消失】」
振り抜かれた槍より放たれたスキル、しかしそれは空を切った。
前方に居たはずの総士が球状に展開された緑の光と共にその姿を消したからだ。
予想だにしなかった現象に瞠目するベリス。
次の瞬間、ベリスの右側方に再び球状の緑光が展開、中から総士が姿を現した。
ただでさえ取り回しの悪い槍を持つ右手側、しかも振り抜かれた状態では対処など出来よう筈もなく、肉薄され振り抜かれたルガーランスに右上腕ごと胴を貫かれ、愛馬は質量弾と化した総士の突撃によって轢殺されながらベリスは岩壁に縫い付けられた。
「【ルガーランス】【氷結プレロマ】*10【ブフーラ】*11」
ベリスの全身を覆う鎧を飴細工かの如く刳り広げながらルガーランスを展開、内部に青色の弾丸を撃ち込んだ。
体内に弱点である氷結属性の攻撃という通常よりも大きなダメージを受け悶え苦しむベリス。
そこに更なる追撃が放たれる。
「【喰いちぎり】*12」
一歩踏み込み放たれた左拳がベリスの頭部を捉え、岩壁に叩きつけながらまとめて砕いた。
頭部を失ったベリスの肉体は霧散してゆき、接触した拳からダイレクトに生体マグネタイトと情報因子が総士へと取り込まれた。
要である主を失ったことで異界が崩壊し、当たり前の光景が眼前に広がる。
前回のゾンビアタック事件に於いて長時間の羅刹モード発動は、自身の肉体への理解度を高める要因となった。
1つは全身ではなく腕部や背部のみを悪魔化させ、その部位のみだが変身体と同様のステータスを反映させる事が可能となった部分変身。
これにより変身体が大柄故に苦手であった建物内といった狭所・閉所でも問題無く活動、並びに人間時には不可能だったスキルの発動及び適用が可能となった。*13
2つ目は情報に対する理解力の向上による生産系スキルの効率化。
これによりアイテムやスキルカードの作成速度が2~3倍にまで向上した。
3つ目は2つ目にも挙げたが情報に対する理解力の向上によるスキルの応用・発展による新スキルの習得である。
『蒼穹のファフナーシリーズ』のTVシリーズ2作目の『EXODUS』より機体・ファフナーパイロットに発現したフェストゥムの有するSDP(超次元現象)の限定的に再現した異能、その再現を可能にした。
それぞれ
①アイテム作成の応用によってチャージ系スキルの持続的な付与を可能にした増幅。*14
②【トラフーリ】の適用距離の限定化による消失。*15
と現状では【こそうし】も多用していた2つを再現しており、これらの再現SDPの検証を神主立ち合いの下、カノンと共に行ったところ
①【SDP:増幅】の方は接触し発動さえすれば他者への効果付与も可能と疑似的な【ドナム系スキル】*16としても使用可能。
②【SDP:消失】は起点としたスキルが逃走用スキルである【トラフーリ】である為原作のような長距離転移は不可能だが強襲手段や緊急回避手段としては使用可能、【トラエスト】*17や【トラポート】*18といった長距離転移スキルを起点にすれば長距離転移が可能と推測される。
といった検証結果となった。
神主からも実戦に耐え得るスキルと太鼓判を押され、今回が初の実戦使用となったが問題無く使用出来たので総士としても満足の行く結果になった。
「終わったな。お疲れ様、総士」
「そっちこそお疲れ様だカノン。これでこの地域は一先ず落ち着くことだろう」
「「「「「総士さん/柴竜殿!!!!」」」」」
変身を解除した総士の下へ歩み寄りながらカノンが労いの言葉を掛けてくるのに対して淡々と返す総士。
そんな二人の下へ駆け寄るのは周囲の悪魔達に対処していた現地の霊能者達であり、少なからず負傷や消耗はあれど誰一人欠けることなくこの場に揃っていた。
その中には見知った人物も居た。
「総士さん、今回もありがとうございました!!お陰で悪魔の大量流出を阻止することが出来ました」
「久しぶりだな、武君。そちらも元気そうで何よりだ」
以前の依頼で出会ってから個人的にも親交がある柏木武だった。
後方を見遣れば彼の恋人である広瀬香織がおり、総士の視線に気付くと静かに会釈していた。*19
今回の依頼は彼等の管轄とその隣の管轄その境で異界が発生、だがこれまでの異界と違い悪魔が出てこないという奇妙なものだった。
その為彼等は掲示板によって生まれた繋がりを生かして会議を開き、その結果異界の主が悪魔を統率し大規模攻勢を計画していると推測。
これまでにない大規模な悪魔事件が発生する可能性があると判断した彼等は武達の霊能組織を介してガイア連合に応援を要請、それに応えて派遣されたのが総士とカノンだった。
そして調査の結果懸念は当たっており、既存の方法では悪魔の流出の可能性があると判断した総士は技術部より購入した異界の出入口を塞ぐ霊具で限定、そこを霊能組織に待機してもらい迎撃、自身とカノンで異界の主を討伐するという作戦を立案した。
後は件の異界を利用して教導と間引きを実施しつつ獲得した資金や物資を使って結界用霊具と装備やアイテムを準備し実行、無事に成功したというのが今回の異界攻略の全容である。
「そちらの方は何とか切り抜けられたようだな。被害は?」
「こっちは何人か負傷しましたが命に別状は無いですね。回復魔法や霊薬で事足りるといった感じです」
「こちらは最も被害を受けておりますが同様に時間さえあれば全員復帰に支障は無いですじゃ」
「翁殿」
そう言って会話に入ってきたのはもう一つの霊能組織を纏めている老人だった。
高齢ながら前線に立ち指揮を執るそのスタンスから自身の組織のみならず他の組織からも信頼されている御仁であった。
「柴竜殿。此度は我等の要請の受諾並びに教導と支援、そして異界攻略。誠にありがとうございます」
「いえ、これも私の仕事ですので。しかし、霊的資源を全て頂いても構わないのですか?」
「えぇ、ワシ等よりもそちらの方が役立てて下さるのは間違いないですしの。それに大量の装備や物資を支援して頂いたにも関わらずこちらからは依頼料だけなど、恥知らずにも程がありますわい」
「……分かりました、ご厚意感謝します。っと、失礼…………カノン!」
そういった遣り取りをしつつ事後処置と行っていると携帯端末に通信が入った。
通話が終わると表情を引き締めカノンを呼んだ。
それに反応したそちら側でも纏めていた物資と彼女のルガーランスを受け取りながら両組織の纏め役に視線を向ける。
「すいません、緊急の応援要請が入りましたので失礼いたします。カノン、行けるか?」
「問題無い、連戦も慣れてきたからな」
そんな遣り取りを終えると受け取った物を巻き込み変身、カノンを肩に乗せると目の前に居る面々に視線を向ける。
「慌ただしくなってしまい申し訳ないですがこの辺で失礼いたします」
「皆さんお元気で」
「「「「「「「「「「ご武運を!!」」」」」」」」」」
彼等に見送られながら二人は次の戦場へ飛び去った。
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(その後、山梨支部で物資の引継ぎと補給を済ませ次の戦場へ)
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「先の依頼で獲得した物も併せて物資はこのリストを参照してそれぞれ制作班、農業部、特撮部、ロボ部へ分配お願いします」
「はい、確かに承りました。後から届く物に関してもこちらで分配しておきますので今日はもう上がってもらって大丈夫ですよ。お疲れ様でした」
「お願いします。それとちひろさん、明日からですが…………ハイ、えぇそうです……ハイ、すいませんよろしくお願いします」
その後緊急の依頼の対処を終え、受付担当の千川ちひろさんに応対してもらい獲得した物資の引継ぎを完了した。
今回の依頼2件はどちらも低レベルの悪魔が大量に出現した為、入手難度は低いが使用頻度の高い霊的資源を多く獲得することが出来、技術班からの依頼分全てを達成するほどで後方部隊に持ち切れなかった分も振り分けを指示して先に引き上げてきたのだった。
その後いくつかやりとりを終えると総士はカノンの元へ戻り、告げた。
「カノン、私達は明日から一週間は休みだ」
「…………へ?」
まさか仕事人オブ仕事人な総士の口からそんな言葉が聞けるとは思わず、鳩が豆鉄砲を食ったような表情で呆けるカノンを尻目に総士は続ける。
「今回の依頼、根願寺の方から手を回してもらって公欠扱いとはいえ、まだ学生の身分である君の生活に影響が出るのは問題だ。最近は実働部隊全体の稼働効率も安定してきているし、緊急性の高いもの以外は依頼を受けるのを控えようと思う」
「待ってくれ、それはダメだ!!私はお前のサポートの為にコンビを組んだのにその私が枷になるなどあってはならんことだ!!それに私は転生者だから今更学生生活など……」
「学生生活だけじゃない、ご家族の事もだ」
まさかの言葉に思わず声を荒げるカノンだが、そこに被せる様に総士は言葉を続ける。
「ちゃんと向き合って納得してもらったとはいえ、家族が戦場に居るなど不安は尽きないだろう。だから元気な姿を見せて安心させてやれ。……………………それに」
――――大切な人とちゃんと向き合っていれば良かった、と後悔しても遅いんだ。
言外に込められた総士の想いにカノンは口を噤まざるを得なかった。
顔合わせの後、神主自身から表向き以外の事情を説明されていたカノンからすれば彼がどんな思いで戦ってきたのか全てとまでは口が裂けても言えない、それでも依頼先での他者に対する振る舞いから痛いほど伝わってきたのは確かだ。
そんな彼が自分を曲げてでもこちらを慮ってくれている、そのことに後ろめたさと申し訳なさ、それ以上に嬉しさをカノンは感じていた。
「…………分かった、お前がそれで良いのならそうしよう」
「ありがとう、カノン。さて、時刻もちょうど夕食時前だ。飛んで自宅に送って行こう」
「だったらウチで夕飯を食べていかないか?養姉さんと義母さんも会いたいと言っていたし、養父さんも直接会ってお礼が言いたいと言っていたんだ。ホラ、皆も是非連れて来いって言ってるし!!」
そう言っていつの間にかL○NEで遣り取りをしていた画面を見せてくるカノン。
これは最早断れないと思いつつも、家族水入らずの時間に紛れ込むのは悪いと思い断ろうと抵抗する。
「イヤ、問題無い。食事に関してもハントスキルで、」
「スキルでの捕食を食事と言い張るなぁ!!!!!!!!
…………って、待て。前に食堂で見かけたことが無いと聞いたことがあったがまさかお前……」
「あぁ、今まで捕食をすれば事足りていたから修行や依頼先でのハントスキルで済ませていた。ちなみに食堂は利用したことはあるぞ?検査を受けていた頃に」
「何獣みたいな生活をしているんだ文化的な生活をしろ総士ぃぃぃぃぃ!!!!!!!!
もう良い、さっさと行くぞ!!!!」
「待てカノン、引っ張るな!!せめて身支度を整え……………………」
そんな遣り取りをしながら腕を掴み引っ張る怒髪天を突くが如きカノン、引っ張られながらも何故怒っているのか分からないがとにかく宥めようとする総士。
((((((((((グッジョブ、ベルネキb))))))))))*20
そんな二人の(というよりはカノンの)背へ向けて、遣り取りを見ていたちひろや周囲の人間達はサムズアップをして見送っていた。
【阿修羅 ■■総士/サーガラ】
年齢:20歳 転生者
ステータスタイプ:力中心のバランス型
レベル:35
HP:270
MP:228
力37 体30 魔20 速22 運19
得意属性:万能属性*21
防御相性:なし
スキル:喰いちぎり*22
ブフーラ*23
:マハテラ*24
:ディアラマ*25
:チャージ*26
:トラフーリ*27
:氷結プレロマ*28
:地変プレロマ*29
特殊スキル:飛行、調律の心得*30、指揮官適性、スキルカード作成、認知異界適性、攻撃アイテム作成、属性弾作成、○障石系アイテム作成、部分変身、SDP:増幅*31、SDP:消失*32
装備:ルガーランス*33×2、退魔刀、退魔銃(ハンドガン型)、基本装備一式
【覚醒者 羽佐間・M・カノン】
年齢:14歳 転生者
ステータスタイプ:力・速型
レベル:28
HP:174
MP:188
力21 体13 魔17 速23 運13
得意属性:物理・火炎・補助
防御相性:火炎耐性・氷結弱点・破魔無効
スキル:パワースラッシュ*34
:電光石火*35
:アギラオ*36
:マハラギ*37
:ディアラマ*38
:タルカジャ*39
:物理ブースタ*40
:火炎ブースタ*41
特殊スキル:アギストーン作成
装備:ルガーランス、退魔刀、退魔短刀、退魔銃(サブマシンガン型)、基本装備一式
効果としては3ターンの間、自身に起点としたチャージ系スキルと同様のチャージ効果を付与する。
効果としては1ターンの間、味方全体に全ての攻撃・スキルに対する完全回避状態を付与する。