――――分かっている。自分が行っている活動を思えば、いずれこうなるであろうことは。
「今回の依頼はその性質上、君が適任と上層部が判断したから僕から説明させてもらうよ。先方は今まで少ない戦力でどうにかやれてたけど【恐山】異界の間引きから逃れた一部悪魔が流れて来て戦力バランスが崩壊、それによって緊急性を有する事態になってしまったんだ」
神主に呼び出され、応接間にて直々に今回の依頼を説明されている間、総士の表情はまるで能面の様なあらゆるものが削ぎ落されたかの様な表情で聞いていた。
隣で説明を聞きながら不安そうに自分へ視線を向けるカノンにすら気付いてない程彼の心は混沌の無という矛盾した状態に陥っていた。
「…………………………」
「…………続けるね。依頼先の戦力は、県北の霊能組織は長が負傷で引退、更には他の戦闘員も全員負傷で戦線離脱してレベル12の件の転生者と現地民SSR枠であろうレベル12とSR枠のレベル10の計3人。県南勢は平均レベル15が10名。対して悪魔達は移動しながら悪魔達を併呑してその数約800、恐らく最高レベルは20前半代で10超えも相当数居るものと推測されるね」
事の発端は先日雑談スレに現れた最近転生者として自覚した者の書き込みと
岩手県南部を管理している霊能組織所属の柏木武から『県北が危険だ』という連絡を受けたからであった。*1
元々県北側は低レベルかつ悪魔の出現頻度も少なく対処出来ていたのだが、同時に霊能組織の戦力も質は高くとも頭数が少なくとても地元を離れられず総士主催の教導にも参加出来ない状況が続いていた故に発生した事態だった。
…………県南側もそこまで余裕がある訳でもなかったのもあるが、それ以上に彼等自身がとある理由から【ガイア連合】に頼ろうとしなかったのも理由だが。
「今は県南の霊能組織の加勢と悪魔側も少数の侵攻なのもあってどうにか押し留められている。けれど、何れ吞み込まれるのは火を見るよりも明らかだ。よって我々【ガイア連合】は君をリーダーとしてベルネキの他に君の知己であり出動可能なルネ山ニキ、2Bネキ、リベリオンニキ、みつみんネキ、エチカネキ、スカルニキと志願してくれたシラカワニキの計9名の派遣を決定した。
…………総士君、行ってくれるかい?」
普段は転生者の事をハンドルネームで呼ぶ神主がわざわざ本名で呼びながら気遣わしげに尋ねる声を聴いて、総士は彼の目を真っ直ぐに見据えた。
「来たる【恐山】異界の攻略を考えると戦力となり得そうな人材の確保は急務です。その任務、謹んでお受けいたします。先日スキルカードで【トラエスト】*2を習得したのでそれを起点にした【SDP:消失】*3を使えば全員で転移が可能です。いつ頃出立すれば?」*4
「うん、よろしく頼むよ。他のメンバーにはこれから正式に指令を出してから先方に連絡をするからざっと1~2時間ってところかな?」
「分かりました、早速準備をしますのでこれにて失礼します」
そう言うと一礼し足早に退出していく総士。
襖が締められ、その場にカノンと神主が残される。
しばし不安そうな表情を浮かべていたが意を決して彼の後を追おうとするカノンに神主が声を掛ける。
「ベルネキ」
「ショタおじ?」
「…………お願いね?」
その言葉にゆっくりと頷いてからカノンは退出した。
一人残された神主は湯飲みを手に取り口にした。
中の緑茶は温くなっており、心を落ち着ける為に飲んだはずだったが胸中の不安は消えてくれることは無かった。
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「嫌ァァァァァーーーーーッ!!!!」
準備を終え、総士とカノンが本部から出ようとした瞬間、女性の悲鳴が響き渡った。
一瞬驚いたものの、外に出てみればある意味見慣れた光景が繰り広げられていた。
「ぐへへ~♪良いではないか~♪良いではないか~♪ちょっとそこの草むらで一発キメようぜ~?」
「やめろぉぉぉぉぉ!!!!離せーーーーー!!!!きゃっ」
「エリカ、無理矢理はダメだ。それにもうすぐ総士さん達が来るか――――」
目の前では後ろから組み付き、蜜葉の胸を鷲掴みし執拗に揉みながら迫る赤髪ロングヘアーの女性、責められ悶え苦しむ蜜葉、二人を引き離そうとする宗介という【俺ら】ならば一度は見たことのあるものだった。
赤髪の女性の名は牙野原エリカ。
前回の【進捗報告】に参加していなかった宗介や蜜葉とチームを組む二人と同じく凍京NECROに登場するキャラである牙野原エチカの容姿を持つ転生者である。
…………のだが、彼女は男女どっちもウェルカムなバイセクシャルであり、こうして同胞相手にセクハラをかますという悪癖持ちであった。
そんなある意味いつも通りな光景が繰り広げられていたのだが、総士とカノンが来たのを見るや静まり返った。
その静寂に我関せずを決め込んでいた颯と依羽、愁介に大善も総士とカノンの到着に気付き合流した。
「全員揃っているようだな。早速だがこれから【SDP:消失】で現地に転移、現地の霊能組織と合流して状況の確認を行いたい。改めて確認するが今回の任務は【ガイア連合】の活動史上トップクラスの規模の任務だ。装備や所持品の準備は?」
「私は大丈夫です」
「こちらもだ」
「同じくです」
「うむ」
「オッケ~♪」
「はい」
「おうよ…………なぁ旦那」
あくまで事務的に返す総士に対して思わずといった様子で颯が口を開いた。
「どうした颯」
「イヤどうしたって…………旦那こそどうしたんだよ。そりゃあ旦那からすりゃ今回の任務は……」
「別にどうもしないさ。特に無ければこのまま転移を行うぞ」
「旦那…………」
取り付く島もないが如き総士の受け答えに颯はそれ以上言葉が見つからず口を噤まざるを得なかった。
そんな二人の会話を言葉には出さないものの、思うところはあるといった体で他の面々は見つめていた。
「さぁ、始めようか」
そう呟くと左手首を返し、正面に掌を向け前方に翳すとそこに刻まれた【アートマ】が発光、それを中心にして光の線がひび割れるように全身を覆い、それに反比例して肉体は黒く陰った。
そして総士を中心にMAGの光が溢れ出し全身を包み込むとやがて一際強い光が奔り、収まれば悪魔体への変身を完了していた。
変身を終えると総士が全員に視線を向ける。
それに対して全員が同時に頷いた。
「よし、では行こうか。【トラエスト】……【SDP:消失】」
スキル発動と共にその場に居た全員を球状に展開された緑の光が包み込んだ。
光が消失すると、その場に居た筈の全員は姿を消していた。
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――――岩手県北上市、某所
山奥に存在する日本家屋の庭に複数の人間が存在していた。
杖を突いた男性を中心に亜麻色の長髪の女性と黒髪の短髪の女性、長身の20代の男性とこの場に似つかわしくない黒髪の少年と茶髪の少女。
彼等は皆一様にこれから来るであろう者達を待っていた。
依頼した【ガイア連合】からは転移でこの家に直接来ると言われていたが皆半信半疑であったが先方の言葉を信じこの場で待機していた。
予定とされていた時刻まで後数分となった時、彼等の前に突如として緑の光の球体が出現したのだ。
「「「「「「!?」」」」」」
突然発生した、しかもこの場の誰もが見たこともない現象を目にし思わず身構える。
しかしそれ以上は何も起こらず球体は消滅、代わりに8人の男女と1体の悪魔がその場に立っていた。
全員が多種多様な装いだが皆共通してこちら側の誰よりも遥かに格上の存在だと見て取れる程の風格を有しており、その中で最も年若い赤毛の少女ですら単独で自分達を容易く屠れるであろう事は容易に察することが出来た。
(これが……【ガイア連合】……か)
中心人物であろう男性は自分の頬を汗が伝うのを感じながら、その強さの一端を垣間見てひとり感嘆する。
なるほど、これほどの力を持つ者達が集う組織ならば救国の希望と謳われるのも納得であった。
かつて天才だと言われた自分が吹けば飛ぶような遥か格上の、現代の英傑と呼ばれるに相応しい面々よりも彼は、いや男性を除くこちら側の人間はある一点から目を離すことが出来なかった。
突如現れた【ガイア連合】の面々の中央に存在する1体の悪魔から目を離すことが、出来なかった。
――――あぁ、彼だ。己の身に起きた事象よりも真っ先に自分達を護ろうとした彼だ。なのに、なのに自分達は彼を――――
すると悪魔からMAGの光が立ち上り、その身が黒く陰った。
みるみる内に身体が縮んでゆき、人の輪郭を形作ると光が収まった。
そこに居たのは、一人の男性だった。
その姿を見た瞬間、唯一悪魔を注視していなかった男性を含めた霊能組織側の面々の表情が驚愕に染まった。
穏やかな表情をよくしていた彼とは似ても似つかない張り詰めた表情をしているが、左眼を横切る様にして斜めに走る鋭利な傷跡があれど、彼は…………
「そう、」
「真壁史彦殿、【ガイア連合】所属のデビルバスター総勢9名、現着いたしました。早速で申し訳ないのですが状況の確認と作戦の立案を行いたいのですが宜しいでしょうか?」
「「お兄ちゃん/兄さん!!」」
「「一騎/真矢!!」」
思わず口をついて出ようとした男性――――史彦の言葉を遮るように事務的な言葉を発する総士。
そこへ声を挙げながら駆け寄るのは二人の少年少女だった。
それぞれの母親であろう黒髪の女性と亜麻色の髪の女性が引き留めようと声を掛けるが聞き入れず二人は総士の下へ駆け寄った。
「お兄ちゃん/兄さん――――」
「真壁真矢さん、それから真壁一騎さん。申し訳ないが事態は一刻を争う。話は後にしてもらえないだろうか?」
「お兄ちゃん……私、あの時、」
「史彦殿、頼めますか?」
「待ってくれ兄さん!!話を聞いて、」
「真矢!一騎!!」
真矢と一騎の方を見ることなく淡々と事実を述べる総士と駆け寄ったはいいものの、そんな紅音の様子に言葉にならない二人を史彦が一喝した。
…………だが、そんな彼の顔は苦渋に満ちておりどうにか絞り出すように言葉を紡ぐ。
「…………二人とも、私達は大事な話がある。待っていなさい」
「でも父さん!!兄さんが、兄さ、」
「一騎!!」
「か、あさん……」
尚も言い募ろうとする一騎の肩に手が置かれる。
振り返ればそこにはそこには自分の母が、紅音が居た。
傍らを見れば真矢の方にも彼女の母である千鶴が彼女の肩に手を置いて何か言葉を掛けていた。
改めて視線を母に向ければ、母も苦しそうな表情を浮かべながら無言で首を振る。
それだけで、自分達と義兄の距離がどうしようもなく離れてしまった事を実感し目の前が滲んで見えなくなった。
後はもう俯くことしかできなかった。
「…………大変失礼しました。総士……殿、こちらへ。皆様全員で参加されますか?」
「いえ、私一人で問題ありません。厚かましいのですがどこか部屋をお借りする事は可能ですか?」
「分かりました、では客間に案内させましょう…………紅音」
「……分かりました。では皆様、どうぞこちらへ。客間へ案内させていただきます」
「よろしくお願いします」
そう言って史彦は一騎の傍に居る紅音に視線を向けると、紅音は頷くことで返答とし彼等の下へ歩み寄った。
代表として愁介が返答し、後ろ髪を引かれる思いを感じながらも【ガイア連合】の面々は紅音に先導されその場を後にした。
それを見た総士と史彦も続けてその場を去った。
すると一騎の頭に手が乱暴に置かれた。
そのまま顔を上げれば居たのはもう一人の義兄だった。
「道生、さん…………」
「泣いとけ、一騎」
「…………でも……俺が、俺が悪いから…………」
「確かにそうかもしれない」
「……………………」
「けどよ、大好きな兄ちゃんに冷たい態度を取られたんだ。なら、泣いていいんだ。子供でいられる内に。男ってのは大人になればロクに泣くことも出来なくなるんだからよ」
「道生さん…………」
「誰も見てないんだ、泣いたって別に構わないさ」
そう言って、こちらを見ることなく日野道生は語り掛ける。
彼はあの時、あの場所に居なかった。
だから概要は知っていても詳細は知らない。
…………だからこその、言葉だった。
気付けば、誰かが泣いていた。
横目で見れば、真矢が千鶴に抱きしめられながら声を挙げて泣いていた。
千鶴もまた、とても辛そうな表情をしていた。
「う……っ、くっ…………」
それを見た一騎は再び俯き、声を殺して泣いた。
その傍らに立ちながら道生は空を見上げた。
空は雲が厚く立ち込め、今にも泣き出しそうな曇り空だった……………………
【阿修羅 ■■総士/サーガラ】
年齢:20歳 転生者
ステータスタイプ:力中心のバランス型
レベル:35
得意属性:万能属性*5
防御相性:なし
スキル:喰いちぎり*6
ブフーラ*7
:マハテラ*8
:トラエスト*9
:チャージ*10
:トラフーリ*11
:氷結プレロマ*12
:地変プレロマ*13
特殊スキル:飛行、調律の心得*14、指揮官適性、スキルカード作成、認知異界適性、攻撃アイテム作成、属性弾作成、○障石系アイテム作成、部分変身、SDP:増幅*15、SDP:消失*16、教導*17、スキルカード適性
装備:ルガーランス*18×2、退魔刀、退魔銃(ハンドガン型)、基本装備一式
効果としては1ターンの間、味方全体に全ての攻撃・スキルに対する完全回避状態を付与する。
前回は【トラフーリ】を起点としていたので短距離の瞬間移動しか出来なかったが【トラエスト】を習得・起点とすることでMP次第では部隊規模での列島横断が可能になった。
効果としては3ターンの間、自身に起点としたチャージ系スキルと同様のチャージ効果を付与する。
効果としては1ターンの間、味方全体に全ての攻撃・スキルに対する完全回避状態を付与する。
また、【トラエスト】を起点とすることでMP次第では部隊規模での列島横断が可能。
パーティメンバー全員の獲得経験値を増加させた上でスキル所持者の獲得経験値を他のメンバーに分配、レベルアップ時に成長限界の上限増加とスキル習得確率の増加させる自動効果スキル。
適用中のパーティーメンバーの獲得経験値は
((スキル所持者獲得経験値×増加分÷所持者以外のメンバー数)+メンバー経験値)×増加分=メンバー最終獲得経験値
ヤバい、今回の話長くなりそう……