「おのれこの神てぺっ」
怒りの形相で叫びを上げようとしていた【天使 アークエンジェル Lv18】はその言葉を言い切れず事切れた。
その原因は総士の鉄拳によりその頭部を粉砕されたからである。
崩壊してゆく天使を気にも留めず、総士は最後の敵に対峙する。
事の発端は幼稚園児の大規模失踪の調査の増援依頼だった。
白昼堂々、園児や保育士問わず消えたこの事件は現地で活動している転生者とも連絡が取れないという異常事態もあり緊急を要すると判断、先約が入れられていた霊能組織に断りを入れた総士は現地に急行した。*1
到着早々に向かった現場である幼稚園で忘れもしない天使の霊的痕跡を感知、依頼人である霊能組織に説明して調査したところ、すぐさま事件の概要が判明した。
どうやら事件の数日前に町の一神教系教会に見慣れぬ外国人が数人出入りするようになったこと、加えて事件の前日に件の転生者の一家が行方不明になっているというものだった。
以上の点からメシア教の過激派と思われる集団によって転生者は家族を人質に取られ無力化され、予想通り緊急性のある事態だと再確認した総士と霊能組織の面々はガイア連合本部に報告し許可を貰った上でその夜に教会へ強襲し速やかに対象を殲滅、要救助者達を救出する電撃作戦の立案と実行が決定した。
慢心していた為かロクな結界も張られていなかったので力ずくで破壊、現地民数名と共に教会内へ突入した*2一同が目にしたものは、怯える園児や保育士と一組の家族、そしてその身を切り裂かれ血の海に沈む男性とそれを嘲笑う天使とメシアン達という光景だった。
そのような光景を目にした突入班の面々の心にすぐさま怒りの炎が燃え上がり、一方的な蹂躙劇が繰り広げられた。
一番槍として総士が【チャージ】*3を付与した【ぶっ潰し】*4を発動、低い命中率もレベル差や【突撃の狼煙】*5の効果も相まって全て命中、一瞬にして敵勢力を半壊させた。
虫の息の【天使 エンジェル Lv4】や金仮面の【天使 エンジェル Lv10】にメシアン共は念の為【破魔ブレイク】*6で援護しつつ霊能組織に任せ*7、自分は強力な個体であるアークエンジェル数体を相手取る事にした。
――――そして、最後のアークエンジェルを倒した冒頭に戻る。
今回敵の勢力が小規模だったこともあり、残る敵はこの教会の神父だけであったが
圧倒的不利な状況であるはずなのに、神父は不敵な笑みを崩すことなくこちらを見つめていた。
「紫紺の肉体を持つ竜が如き悪魔の姿へ変じる異端者…………貴様があの【ガイア連合】などというふざけた異教徒共の集団に属する怨敵【紫竜】か。貴様を討てば我等の正義は示され、神もお喜びになるであろう」
そう、総士はこれまで各地で活動する転生者の手が回らない所の応援として転々としている傍ら、今回の様に不審な動きを見せるメシア教の勢力を見つけると単独或いは当事者達と協力して殲滅を繰り返していたのだ。
調査の結果、その全てが表向きはこの地には存在しない筈の人員であり、自分が過剰覚醒した時のケースのような後ろ暗い活動を行っている部隊である為、メシア教は表立ってガイア連合を非難することが出来ずこちらを恨んでいるのは容易に想像が付いていた。
今回の集団もそういった部隊とその尖兵だったのだろう。
「残るは貴様一人、そして周りはこちら側に囲まれているというのに、随分と余裕だな」
そう言いながら総士はその左掌に闇色の光を迸らせた。
ぬるりした流れで光の中から切先が、刀身が、機械的な基部が、柄が姿を現し、全長3.5m程の長大な西洋剣にも見える槍型の武装【ルガーランス】を出現させ柄を握ると振り返る事なく左手にある扉へと向けた。
続けて刀身と基部が展開、正面から見ると十字型の形を取るとバレルとなった刀身の間でMAGが紫電の様に帯電し奔る。
立て続けに闇色の弾丸と化した【ムド】が数発放たれ、背後の扉ごと建物の一部を吹き飛ばした。
「「「「「「ギャアァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!」」」」」」
続けて煙の中から教会に響き渡る断末魔と何かがひれ伏す音。
よく見れば3人とメシアン、それと同数の【天使 エンジェル Lv4】の姿が在り、その全てが息絶えエンジェル達は身体を崩壊させていた。
「正義に酔って他者に絡み酒をする迷惑な酔っ払いのやる事が奇襲とは、正義が聞いて呆れるな」
「フン、あのような腰抜け達を倒して勝利を確信とは、随分とこちらを甘く見ているのだな?【紫竜】よ」
鼻で笑ってしまうほど拙い隠れ方をしていたメシアンと天使達を尻目に、神父は余裕の表情を崩すことは無い。
彼我の戦力差が理解出来ていないのか。
…………あるいは、
(奴が有している異能か)
恐らく神父の切り札はそれなのであろう。
総士はメガテンシリーズをある程度しか把握していない為、この状況を覆し得る異能に見当が付かない。
もしかしたらこの世界だからこそ使えるものなのかもしれない。
どちらにしろ、油断は禁物であるが。
「さぁ、刮目せよ!!これが神の奇跡の具現である!!!!」
そう神父が叫ぶと同時にMAGの光が溢れ出し、そこから人ならざる影が姿を現した。
現地民達が驚愕する中、総士は素早くこの現象の正体を看破した。
(あの男、【ペルソナ使い】だったのか…!)
ペルソナ。
『女神転生シリーズ』より派生した『ペルソナシリーズ』の根幹を成す言葉であり存在である。
人の心の奥底にある「もう一人の自分」が具現化した存在を使役する特殊能力であり、それを行使出来るものを総じてペルソナ使いと呼ぶ。
拳銃型の【召喚器】で頭を撃ち抜き疑似的な臨死体験、自らの気付かなかった本音と向き合い天より舞い降りるカードを砕く、反逆の意志を示し自らが付けている仮面を自分の手で剥がすといった風に発現・発動方法がナンバリングによって異なるが基本はシリーズ通して共通している。
また、ペルソナ使いとは資質に恵まれた転生者の中でも希少であり、確認されているだけでも入即出やる夫さん*11に輪にかけて希少な複数のペルソナを使い分けることが出来るワイルドである汐見琴音さん*12を筆頭にごく少数、その上現地民数名という少なさである。
そしてその数少ない人員でペルソナ使いのみが対応出来る人の認知に関する異界である【タルタロス】【マヨナカテレビ】【メメントス】の探索及び攻略をどうにか熟しているという現状である。*13
なるほど、確かに希少性のあるペルソナ能力に覚醒し、しかも発現したペルソナの姿を見れば、余裕の態度も納得であった。
【正義 プリンシパリティ Lv29】
【調律の心得】*14を発動し【ぶっ潰し】と入れ替えた【デビルアナライズ】*15によって判明したレベルは現在のGP*16を思えば強大な存在であった。
【デビルアナライズ】を再び【ぶっ潰し】に戻しつつ思案、取るべき方針を決定する。
「総員、あの天使へ攻撃せず生存と要救助者の確保を優先してください!!アレは私が対処します!!」
「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」
「フハハハハハ!!!!その余裕、いつまで持ちますかなぁ!!神に選ばれた私に跪くが良いわァァァァァ!!!!!!!!」
総士の指示をその場しのぎのものと勘違いしたのか、高笑いを上げながら神父はプリンシパリティをこちらへ差し向けた。
ガイア連合に於ける立ち位置的に、滅多に表に出ないが故にガイア連合にペルソナ使いは居ないと判断し優越感に浸っているがあろう故の余裕と希少性に酔っているのが丸分かりの態度に、変身してるが故に表情は伝わらないが総士は侮蔑の眼差しを向ける。
しかし、体高2.5m程もある総士の体格に加えて全長3.5mオーバーもあるルガーランスが立ち回るには教会は狭く、プリンシパリティが杖を振るい立て続けに放つ【ハマオン】*17を経験と勘を頼りに発生のタイミングを見極めステップで回避していた。
「ハハハハハ!!!!先程までの威勢はどうしたどうしたどうしたぁ!?【ハマオン】!!【ハマオン】!!【ハマ、お、お"ぉ"…ッ!?」
自分の力を見せつけるように振る舞っていた神父の動きが止まる。
よく見ればプリンシパリティの身は教会の全方位から飛び出た8本の尾によって雁字搦めにされており、それによってペルソナとリンクしている神父も同じ部位を締め付けられる痛みを感じているが故であった。
よく見れば拘束している尾は総士の肉体と同色であり、彼の背より生えている左右の4本の尾は4対8本に分岐し地面に突き立てられていた。
それが分かれば導き出される答えは単純明快だった。
総士は神父の攻撃を避けながら勝利の為の布石を整えていたのだと。
誤解を恐れず言うならば、この様な回りくどい手段を取らず手数に物を言わせれば今と同じ状況に持ち込む事は総士からすれば容易だった。
ならば何故、この作戦を執ったかというと……
「正義に酔い、力に酔って人を傷付け貶める奴が勝利を確信していた所を一瞬にして窮地に立たされ敗北する。貴様のような奴にはお似合いの末路だ」
「お…………おぼべぇ…………」
全てはこの為だった。
独り善がりな正義を振り翳すメシアンに対して圧倒的な絶望を叩きつける。
到底褒められない事だろう。
自分も同じく独り善がりなのだろう。
傲慢なのだろう。
何様のつもりなのだろうと我ながら思う。
でも、それでも。
それでも、この男は許せなかった。
故に、こんな手段を取ったのだ。
そう自分の意志を確認すると総士はその右掌に闇色の光を迸らせ、もう1本のルガーランスを取り出した。
「【チャージ】【チャージ】【コンセントレイト】【コンセントレイト】*18」
本来ならば自身に1度しか付与出来ない【チャージ】や【コンセントレイト】といったチャージ効果を付与する補助スキル。
しかし、ルガーランスを媒体にする事によって本来ならば不可能な複数使用と付与を可能とした。*19
「ヅッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!?!?!?!?」
オーバーキルと言っても過言ではない【チャージ】によって強化されたルガーランス2本から繰り出される合計4連撃がプリンシパリティを切り裂き、その切先を突き立てた。
締め付けられ言葉もロクに発せず苦しむ神父を気にも留めることなく刀身と基部が展開、射撃形態へと移行した。
「【ルガーランス】【呪殺プレロマ】【ムド】!!」
「ヴおォォォォォォォォォォア"ァァァァァァァァァァ!?!?!?!?」
そして、無慈悲に放たれた【コンセントレイト】によって強化された【ムド】の弾丸2発が炸裂、プリンシパリティを内部から呪い尽くし、その身が弾け尾から解放された胴が宙を舞う。
それに伴い、全身を絶え間無く襲う激痛に叫びを上げる神父。
そして総士は次の行動を実行する。
「(【調律の心得】発動。【暗夜剣】を【喰いちぎり】へ)【喰いちぎり】…!*22」
ある狙いがありそれが可能か試す為にハントスキルを発動、ルガーランスをしまい無手になった右腕をプリンシパリティへと叩きつけた。
振り下ろされた剛腕は狙い能わず標的を捉え粉砕、生体マグネタイトと情報因子の集合体である赤いエネルギーが出現しそれをいつも通り総士は取り込んだ。
いつもの様に取り込んだが数舜遅れて、自分の中で何かが脈動するのを感じた。
(狙い通りに行ったかは本部でのアナライズ次第だな。それよりも……)
「ア"ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
これからの行動を思案していると、突然神父が苦悶の絶叫を上げた。
ペルソナの破壊によるフィードバックによって前肢を襲う想像を絶するであろう激痛にのたうち回っていた。
しかし、それだけではないようだ。
よく観察すれば、痛みがフィードバックしているだけでなく、手の甲の皮が裂けて中身が露わになっていた。
…………いや、この表現は正確ではない。
肉体の表裏が反転し始めているのだ。
これと似た事例はすぐに思い出せた。
リバース事件。
『ペルソナ3』の世界から10年後にあたるパラレルワールドを描いた派生作品である『PERSONA -trinity soul-』やこの世界でも連続して発生している猟奇殺人事件の通称である。
その真相はペルソナ能力者及びその素養を持つ者がペルソナを剥離させられた場合に生じる現象で、激痛に苛まれながら肉体の表裏が反転した様な状態へと肉体が変質し死亡するといったものである為、この名が付けられた。
ハントスキルによってペルソナの破壊と生体マグネタイト及び情報因子の集積・吸収によってペルソナの剥奪と似た様な現象を引き起こされたのだと総士は判断した。
肉が裏返り、のたうち回り死への下り坂を転げ落ちる神父の様子を何を思うでもなく観察していると、神父がこちらへ手を伸ばし懇願した。
「だ、だずげ」
「断る」
その手を払い除けるかの如く、神父が言い切る前に拒否の意を口にした。
「お"、お"べがい"でず……だずげでぐだざい"ぃ"ぃ"ぃ"…………な"、な"ん"でも"じま"ずがら"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"…………」
「そう言って助けを乞うた人達に対し、貴様は何をしてきた?善因善果、悪因悪果、因果応報。自分が正義と信じ行ってきた行為が自分に返ってきただけだ。ただ享受しろ」
お前は助けを求める手を払い除け、踏み付けてきただろう?
そんなお前が自分だけ助けられ救われるなんて都合の良い話がある訳ないし、そんな結末を迎える権利も資格も無い。
ただただ惨めに死ね。
そんな思いを込めて再び拒絶の意志を示せば神父はみっともなく涙を流しながら喚き散らし始めた。
「ぞ…ぞん"な"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"…………………………………………い"……い"や"だぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"…………じに"だぐな"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"……じに"だぐな"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"……………………」
そんな風に死にたくないと声が掠れか細くなるのも構わず喚き続ける神父を見るに堪えなくなった総士は近くに適当な幕を見つけると尾を使って乱暴に取り外し、神父へ投げその姿を覆い隠すと背を向けて歩き出した。
壊れた機械の様に同じ言葉を繰り返す声を聴くよりやらなければならない事があるのだから。
「「おとうさん!!返事をして、おとうさん!!」」
「あなたぁ!!お願い、目を開けてあなたぁ!!」
思考を短時間で纏めながら視線を向ける。
そちらは霊能組織の人員と要救助者が居り、予め現地民に支給していた簡易結界に保護された状態であり児童や職員達は呪符によって眠っていた。*23
記憶に関しては後方部隊に引き継いで処理してもらうとして、問題は未だに目覚めている彼女達であった。
栗色の髪の女性と赤毛と長い黒髪の2人の少女が血の海に横たわり、既に息を引き取っている男性に必死に呼び掛けていた。
赤毛の少女はその身はガイア連合で支給されている装備一式を身に纏っていた。
少女二人に夫婦という家族構成、情報通りならば彼女等が件の転生者とその家族なのだろう。
事態がある程度落ち着いた事で改めて確認してみれば、彼女等の容姿は見覚えのあるものだった。
しかも、自分の容姿である皆城総士と深く関係している者達であった。
(羽佐間翔子に羽佐間容子……父親の方は原作より老けてはいるが、手塚一平か)
今挙げた人物の名前は全て『蒼穹のファフナーシリーズ』の登場人物であり、全員が主人公陣営であるAlvis*24に所属していた。
この世界に転生前のサブカルのキャラクターと同じ容姿や名を持った人物が存在するのは他の転生者や自分を筆頭に義理の家族を見て分かっていたのだが、まさかこのタイミングで遭遇するとは思わなかったが、それよりも先にすべき事があった。
そう判断し、総士は一家の下へ歩み寄るが異形が自分達に近付いてくるという事実に栗色の髪の女性と黒髪の少女は怯えるが、赤毛の転生者であろう少女が二人の手を握り、諭すかの様に優しく語り掛けた。
「「カノン…?」」
「大丈夫だよ。養姉さん、義母さん…………頼む」
縋る様な視線に応える様に頷くと、その手を男性に翳し歩み寄りながらセットしていたスキルを発動した。
「【リカーム】*25……【回復プレロマ】*26【ディアラマ】*27」
何れ遭遇するであろう事態を想定し習得していた蘇生スキル【リカーム】を発動、続け様に中位回復スキル【ディアラマ】をその効果を上げる自動効果スキル【回復プレロマ】を併用し使用した。
【リカーム】直後は不規則だった呼吸も【ディアラマ】を受けた後は安定し、肌は土気色だが弱々しくも規則性を持って呼吸していた。
その光景を目の当たりにした家族は大粒の涙を流し、霊能組織の面々は思わず息を呑んだ。
「「「お父さん/あなたぁ!!」」」
持ち直した男性の様子を見て喜びの声を挙げる女性陣を見ながら総士は変身を解除すると、肩や背に背負った鞄を床に下ろしそのうちの一つを開けると中を物色し始めた。
これは人間時に装備及び所持していた物を巻き込んで変身するという喰人の特性を逆に利用したものであり、物資を詰め込んだ鞄を巻き込んで変身することで大量の物資の運搬と支給を可能としていた。
中から目当ての物である2つのケースを取り出すと中に入っている呪符の束からそれぞれ1枚ずつ取り出し、男性へ張り付けた。
呪符は神主が監修し製造部が量産した物であり、それぞれ肉体の状態を安定・保存させるものと悪魔に遭遇したことによって不安定となった精神を落ち着けさせる効果がある。
「蘇生したとはいえ失われた血液は戻りませんが峠を越えました。これから本部より応援が来ますのでしばらくお待ちください」
「「「ありがとうございます!!」」」
「いえ、これも仕事ですのでお気になさらず。そちらの要救助者や皆さんはどうですか?治療が必要な場合は遠慮せず言ってください!!」
一家の感謝の言葉に返答しつつ現地民や要救助者の状態の確認を取ったが負傷者は彼のみであり、霊能組織の面々も僅かな疲労のみとの事だったので周囲への経過を怠らず、後方部隊の到着を待つことにしたのだった。
・
・
・
・
・
(その後、後方部隊が到着し引継ぎが行われた)
・
・
・
・
・
「すまない、少し良いだろうか?」
霊能組織との対談を終えた総士は教会の外、息抜きに煙草を吸っていた。
神の家で喫煙などという神に唾吐くが如き行いをしていると、ふと声が掛けられた。
先程の家族の一人である、恐らく転生者であると推測した赤毛の少女だった。
その姿を確認すると吸っていた煙草を携帯灰皿で揉み消し、懐に仕舞うと話し始めた。
「構わない。……と、まずは自己紹介だな。俺は総士、ただの総士だ。改めて言う必要も無いだろうがニヒトニキ、と言えば分かってもらえるかな?」
「ご丁寧にどうも。では私も。羽佐間・M・カノンだ。まぁ、ファフナーを知っている奴があの姿を見れば特定は容易だろうしな。それにしても、やはり不思議な気分だな」
「君もか?」
「ということは貴方もか。ファフナーを知っている身からすれば、容姿だけとはいえ14歳のカノンと20歳の総士が同じ場に立っているのだからな。あ、勝手に20歳と判断したが合っていたか?」
「あぁ、合っているから気にする必要は無い」
「そうか、それは良かった」
そうして、二人は自然と笑みを浮かべた。
カノンが言ったことに関しては総士自身も疑問に思っていた。
どういう訳か自分が遭遇する『蒼穹のファフナーシリーズ』の登場人物と同じ容姿の人物達と自分とでは作中の時間軸を基準にすると5年程のズレが存在しているのだ。
なので原作ではカノンは総士の1歳年下で彼女の義姉である翔子と同級生だったのにこの世界では年齢が大きく離れているという原作を知っている者からすれば何とも言えないものを感じていたのだった。
そんな会話をしていると彼女の表情が真剣なものに変わった。
「まずは今回の件、改めて対応感謝する。本来なら私が対処するべきだったのだが家族を人質に取られて……イヤ、これは言い訳だな」
「礼は不要だ。先程も言った通り各地の応援や緊急の対応が俺の仕事だし、家族の命が懸かっていたんだ。気に病む必要は無い」
「それだけじゃない、養父さんの事もだ。貴方が居てくれなければ養父さんを失っていたのだから…………本当に、ありがとう」
「そうか、大切な人を失わずに済んでこちらとしても嬉しい限りだ」
そう言って穏やかに微笑むカノンを見て総士も自然と笑みを浮かべていた。
誰かが理不尽に奪われる事が無く、穏やかに日々を過ごす。
自分が失った幸福を守れたのだと実感する度に、この道を選んだ事は間違いでは無かったと総士は再確認していた。
すると、教会内から中で作業していた後方部隊の面々が出てきた。
どうやら、事後処理が完了して撤退を始めたようだった。
「どうやら向こうも終わったようだし俺も行くとするよ。待たせている案件があるからね」
「すまない、私のせいで……」
「先ほども言ったように気に病む必要は無い。こちらの方が緊急性を要すると俺が判断したからこれについては自己責任なのだから。それより君の方が大変じゃないのか?家族に話さずデビルバスターとして活動していたのだろうし」
「大丈夫。まずは黙っていた事を謝って、それから私の気持ちを、ちゃんと皆と向き合って話すよ。皆良い人達だからきっと分かってくれる」
「そうか、健闘を祈る。ではな」
事態の完全なる終息を確認し、総士はその場を去ろうとする。
「…………総士!!」
そんな彼に、堪らずと言わんばかりにカノンが声を掛けた。
その場に立ち止まり、振り返ることなく総士は耳を傾ける。
「その……………………一人は、寂しくないか?活動するにしても、シキガミなり気の合う誰かと、」
「喰人の宿命は運営から説明されているから知っているはずだろう?ならばそれが無駄で無意味なのは分かるはずだ」
「無意味って……」
「それに…………」
これが、自分の選んだ道で俺の全てなのだから。
その言葉は飲み込み、話はこれで終わりだと言わんばかりに悪魔体へ変身した。
背から生える中央の尾のヒレがオレンジ色に発光、そのまま周囲に影響の無い高度まで上昇すると光の軌跡を描きながら飛び去った。
カノンはしばらく総士が飛び去った方角を黙って見つめていた。
その手を、自分でも気付かない内に強く握りしめながら…………
【阿修羅 ■■総士/サーガラ】
年齢:20歳 転生者
ステータスタイプ:力中心のバランス型
レベル:30
HP:238
MP:192
力31 体27 魔16 速19 運16
得意属性:万能属性*28
防御相性:なし
:ムド*33
:破魔ブレイク*38
:物理プレロマ*39
特殊スキル:飛行、調律の心得*42、指揮官適性、スキルカード作成、?????
装備:ルガーランス*43×2、退魔刀、退魔銃(ハンドガン型)、基本装備一式
キッカケがあったとしても人はそう簡単には変わらないし変えられない。
少し前向きになろうとしたけれど、やっぱり自分の危険性を考えたらこのスタンスは正しいだろうと判断し、何より彼の始まりが尾を引いてて自分に対する命の見積もりは相変わらず最底辺……というお話でした。