良かったら見ていって下さい(^^)
1話 マーズファイト
夜風が辺り一面に吹き、その風が古びた洋館を揺らす。
洋館があるのは、東京都内にある
とある場所だ。
人通りの少ない通りの奥にひっそりと建つこの洋館に、1人の若い男が来客したのは、午後10時を少しまわった頃だった。
洋館の入り口に、立ったのは20代半ばぐらいの男。
短い黒髪に、両耳にピアスと縁なしのメガネを掛けている、一見知性的に見える若者。
だが、見るものが見ればその目の奥に不気味なモノを感じていただろう。
来客したこの男の名は、風神総司(かぜかみそうじ)
UNASA日本支部に勤める、研究員である。
わずか24歳にして、特殊研究所副所長に任命されたほどの天才、容姿端麗でもあり、また頭だけでなく格闘技にも精通してる、まさに文武両道を
絵に書いたような存在だ。
そんな将来を約束されたような、超エリートが、こんな人気のない場所に建つ古びた洋館に、一体どんな用があると言うのだろう。
風神が、入り口に立って一分程したころ。
入り口がゆっくりと、音を立てて開くと、1人のスーツをきっちりと着た、四十代とおぼしき細身の男が出てきた。
挙動や動作から、恐らくこの館の使用人だろうと思われる。
「風神様ですね。
お待ちしておりました」
入り口から出てきた、男は風神を見つけると、深く腰を折ってお辞儀をする。
「うむ……ご苦労」
風神は、そう言って労うと手振りで
顔を上げるように伝える。
20代半ばというのに、その行動には、年に見合わない貫禄があった。
お辞儀していた、迎えに出てきた男はすかさず頭を上げる。
「恐れ入ります。
それではご案内させていただきます」
スーツの男は、こちらですと言うと、
入り口の中へと入っていく。
風神はその後をゆっくりと歩いて、
ついて行った。
2
絨毯の上を歩きながら、風神は、前を
先導する、スーツの使用人の背中を見る。
(よく教育が行き届いてるな)
客に対する、礼儀と気配りのいき届いた手際を見て風神は感心する。
「ところで、先に弟が来てるはず何だが……」
周りを見渡しながら、風神は前を歩いてる、使用人に聞く。
実は風神は、本来、ここへ弟と2人でくるはずだった。
だが、その日に限って仕事が残業になってしまったのだ。
仕事を終えた風神が、向かう途中、弟から、先に入っとくと言う、電話が来たのは今から20分前だ。
「弟様ならば既に、闘技場の方の観覧席にいらっしゃいます」
「もう試合は始まってるのか?」
「いえ風神様に、見て頂かないと困ると、オーナーから指示がありまして
まだ本日の試合は行っておりません」
風神の問いに、使用人は振り向き丁寧に答える。
「それは、助かる。
オーナーに感謝を」
風神は立ち止まり、手を胸に置き、使用人に小さく礼をする。
「いえいえ、我らがマーズファイトを
行えるのは、風神様の御協力合ってのこと。
これぐらい礼など、無用でございますよ」
使用人は微笑みを浮かべて、返事する。
この洋館は、ほんの1ヶ月前までは、
とある珍味を売りにする、都内に隠れたレストランだった。
しかしひと月前、複数の集団が夜中に襲撃し、このレストランの会員を何十人も殺すと言う、凶悪な事件が発生した。
それを三週間前に、風神の友人である
マーズファイトのオーナーが、買い取り新たな、興行場に改装したのだ。
「確か今日は3試合だったな」
風神が確認の意味で、使用人に問う。
「はいそうです。
3試合目には、風神様からご提供された例の物を装備した者が出場予定です」
ニヤリと使用人が笑う。
「それは楽しみな事だ」
風神は興味深いとばかりに頷いた。
3
「お疲れ様です。
こちらが闘技場でございます」
あれから10分かけて、目的の闘技場に着いた、風神に使用人が労いの言葉をかけ、目の前にある扉を開ける。
使用人が扉を開けた瞬間、風神を熱気と歓声が包みこむ。
「観覧席は、こちらです」
使用人は、五メートル先の階段の方を
手のひらで差す。
風神は、ひとしきり周りを見渡した後、無言で使用人の後を追った。
4
観覧席は、満員だった。
観客達は、興奮した様子で試合の始まりを、今かいまかと待つ。
その目は血走り、異様な雰囲気を醸し出している。
マーズファイトそれは、非合法な人と化け物の殺し合いを見せ物とする
死の興行、現在に蘇ったローマのコロシアム。
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